米国株おすすめ高配当|配当貴族と税制・安全性の見極め

公開日: 2025/10/20

米国高配当株で定期収入を得たいけど、税金や減配リスクが心配

米国株投資に関心がある日本人投資家の多くが、「高配当株で定期的な収入を得たい」という目標を持っています。しかし、米国での源泉徴収税・日本の課税・為替リスク・配当の持続性など、考慮すべき点が多く、どのように選べばよいか迷う方も少なくありません。

この記事では、米国高配当株の選定基準、配当貴族・配当王の概念、税制(二重課税と外国税額控除)、配当の安全性チェック方法までを詳しく解説します。個別銘柄の推奨は行わず、情報提供として選定基準を提示します。

この記事のポイント:

  • 米国高配当株の配当利回り目安は3-7%(7%超は減配リスクに注意)
  • 配当貴族(25年連続増配)・配当王(50年連続増配)は安定性が高い
  • 米国で10%源泉徴収、日本で20.315%課税(確定申告で外国税額控除可能)
  • NISA口座では日本の課税は非課税だが、米国の源泉徴収10%は避けられない
  • 配当性向・フリーキャッシュフロー・業績推移で配当の持続性を確認

米国高配当株投資の魅力

米国高配当株は、日本の投資家にとって以下のメリットがあります:

定期的なキャッシュフロー: 四半期配当(年4回)が主流のため、日本株(年1-2回)より頻繁に配当を受け取れます。

連続増配銘柄が多い: 25年以上連続増配の「配当貴族」が69銘柄、50年以上連続増配の「配当王」が30銘柄以上存在します(2025年)。

グローバル分散投資: 米国企業は世界中で事業展開しており、日本株だけに偏らない分散効果が期待できます。

株価上昇も狙える: 高配当株でも、成長性のある企業なら配当と株価上昇の両方を狙えます。

ただし、税制の複雑さ・為替リスク・減配リスクもあるため、正しい知識が必要です。

高配当株の定義と選定基準

高配当株を選ぶ際の基準を解説します。

(1) 配当利回りの目安(3-7%)

配当利回りは、年間配当金を株価で割った値です。

配当利回り(%) = 年間配当金 ÷ 株価 × 100

一般的な目安:

  • 3-5%: 安定した配当利回り
  • 5-7%: 高配当だがリスクも高め
  • 7%超: 減配リスク・株価下落リスクに注意(「罠銘柄」の可能性)

配当貴族の平均配当利回りは2-4%程度ですが、配当の安定性が高いです。

(出典: Yahoo Finance「High Dividend Stocks Screening」https://finance.yahoo.com/screener/predefined/high_dividend_stocks)

(2) 配当性向の確認(50-70%が健全)

**配当性向(Payout Ratio)**は、純利益のうち配当に回す割合です。

配当性向(%) = 配当金 ÷ 純利益 × 100

健全な範囲:

  • 30-50%: 余裕があり、増配余地も大きい
  • 50-70%: 標準的な配当性向
  • 70%超: 利益の大半を配当に回しており、減配リスクが高まる
  • 100%超: 利益以上に配当を出しており、持続不可能

配当性向が高すぎる銘柄は、業績悪化時に減配される可能性があります。

(3) フリーキャッシュフローの重要性

**フリーキャッシュフロー(FCF)**は、企業が配当や投資に使える現金です。

FCF = 営業キャッシュフロー - 資本的支出

FCFがプラスで、配当金総額を上回っていれば、配当の持続可能性が高いと判断できます。

(出典: Simply Safe Dividends「Dividend Safety Analysis」https://www.simplysafedividends.com/)

配当貴族・配当王の概念

配当の安定性を示す指標として、配当貴族・配当王があります。

(1) 配当貴族(25年以上連続増配)

配当貴族(Dividend Aristocrats)とは、S&P500のうち25年以上連続で増配している銘柄を指します。

2025年時点で69銘柄が配当貴族に該当します。

代表的な配当貴族(例示):

銘柄 ティッカー 連続増配年数 配当利回り(目安)
3M MMM 60年超 4-5%
Procter & Gamble PG 60年超 2-3%
Johnson & Johnson JNJ 60年超 2-3%
Coca-Cola KO 60年超 3-4%

※配当利回りは株価により変動します。2025年10月時点の目安です。

(出典: S&P Dow Jones Indices「Dividend Aristocrats Index」https://www.spglobal.com/spdji/en/indices/strategy/sp-500-dividend-aristocrats/)

(2) 配当王(50年以上連続増配)

**配当王(Dividend Kings)**は、50年以上連続で増配している銘柄です。

2025年時点で30銘柄以上が該当します。配当王は、複数の景気後退を乗り越えてきた実績があり、配当の安定性が非常に高いです。

(3) 連続増配の価値

連続増配銘柄には、以下のメリットがあります:

配当収入の増加: 毎年増配されるため、長期保有で配当収入が増えます。

経営の安定性: 連続増配を維持するには、安定した業績が必要です。

株価の下支え: 配当が増え続けることで、株価下落時も配当利回りが魅力的になり、買い支えが入りやすい。

高配当株投資の税制

米国高配当株の配当には、二重課税がかかります。

(1) 二重課税の仕組み(米国10%・日本20.315%)

米国株の配当金には、以下の税金がかかります:

米国での源泉徴収: 配当金の**10%**が米国で自動的に源泉徴収されます(日米租税条約により軽減税率適用)。

日本での課税: 米国で源泉徴収された後、日本でさらに**20.315%**が課税されます。

内訳:

  • 所得税: 15.315%
  • 住民税: 5%

例(100ドルの配当を受け取る場合):

  1. 米国で10ドル源泉徴収 → 手取り90ドル
  2. 日本で約18ドル課税(90ドル × 20.315%)
  3. 最終手取り: 約72ドル(実質税率約28%)

(2) 外国税額控除の活用方法

外国税額控除を利用すれば、米国で源泉徴収された10%を日本の所得税から差し引けます。

確定申告が必要: 外国税額控除を受けるには、年末調整ではなく確定申告が必要です。特定口座(源泉徴収あり)でも、外国税額控除は別途申告が必要です。

控除額の計算:

外国税額控除には上限があり、所得税額によっては米国分の10%を全額回収できない場合もあります。

(出典: 国税庁「外国税額控除の計算」https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1240.htm)

(3) NISAでの高配当投資(米国源泉徴収は控除されない)

NISA口座で米国株を購入すると、日本の課税(20.315%)は非課税です。

ただし、米国での源泉徴収10%は避けられません。さらに、外国税額控除も使えないため、課税口座で外国税額控除を使った場合より不利になることもあります。

NISA vs 課税口座(外国税額控除あり)の比較:

口座種類 米国源泉徴収 日本課税 外国税額控除 実質税率
課税口座(控除なし) 10% 20.315% なし 約28%
課税口座(控除あり) 10% 20.315% 一部還付 約23%
NISA口座 10% 非課税 使えない 10%

NISA口座の方が有利ですが、外国税額控除を満額受けられる高所得者の場合は差が縮まります。

(出典: 金融庁「NISA(成長投資枠)」https://www.fsa.go.jp/policy/nisa2/about/nisa2024/index.html)

配当の安全性チェック

配当が持続可能か確認する方法を解説します。

(1) 配当性向の適正範囲

前述のとおり、**配当性向が50-70%**であれば健全です。70%を超える銘柄は減配リスクに注意してください。

(2) 業績推移と配当維持力

過去5-10年の売上・利益・FCFの推移を確認しましょう。

チェックポイント:

  • 売上が右肩上がりか、横ばいか
  • 純利益が安定しているか
  • FCFが配当金総額を上回っているか

IR資料(年次報告書:10-K、四半期報告書:10-Q)で確認できます。

(3) セクター別のリスク(REITは金利敏感)

セクターによりリスクが異なります。

REIT(不動産投資信託): 高配当(5-10%)だが、金利上昇局面で株価が下落しやすい。利益の90%以上を配当で分配する義務があり、配当利回りは高い。

公益事業(電力・ガス): 安定した配当だが、成長性は低い。

テクノロジー: 配当利回りは低いが、株価上昇が期待できる。

(出典: Nareit「REIT Dividend Analysis」https://www.reit.com/data-research/reit-indexes)

(4) 為替リスクの影響

米国株はドル建てのため、円高になると円ベースの配当受取額が減少します。

例:

  • 配当金: 100ドル
  • 為替レート: 1ドル=150円 → 円換算15,000円
  • 円高後: 1ドル=140円 → 円換算14,000円(1,000円減少)

長期投資では為替変動は平準化されやすいですが、短期的には影響があります。

まとめ:持続可能な高配当投資

米国高配当株は、定期的な配当収入と連続増配のメリットがあります。ただし、税制(二重課税)・為替リスク・減配リスクを理解した上で、配当性向・FCF・業績推移を確認して銘柄を選ぶことが重要です。

次のアクション:

  • 配当貴族・配当王から安定性の高い銘柄を検討する
  • 配当性向が50-70%、FCFがプラスの銘柄を選ぶ
  • NISA口座を活用して日本の課税(20.315%)を非課税化する
  • 確定申告で外国税額控除を受けて米国源泉徴収10%の一部を還付する
  • 為替リスクを考慮し、長期保有で為替変動を平準化する

持続可能な高配当投資で、安定した配当収入を目指しましょう。

(出典: SBI証券「米国高配当株ガイド」https://www.sbisec.co.jp/...)

よくある質問

Q1米国高配当株の配当利回りの目安は?

A13-7%が一般的です。7%を超える銘柄は減配リスクに注意してください。配当貴族の平均配当利回りは2-4%程度ですが、25年以上連続増配しており安定性が高いです。配当利回りだけでなく、配当性向・フリーキャッシュフローも確認することが重要です。

Q2米国株配当にかかる税金は?

A2米国で10%源泉徴収され、日本でさらに20.315%課税されます(実質税率約28%)。ただし、確定申告で外国税額控除を受けることで、米国分の10%の一部を還付できます。NISA口座なら日本の課税は非課税ですが、米国の源泉徴収10%は避けられません。

Q3NISAで米国高配当株を買うと税金はどうなりますか?

A3NISA口座では日本の課税(20.315%)は非課税になります。ただし、米国での源泉徴収10%は避けられず、外国税額控除も使えません。そのため、実質税率は10%となり、課税口座で外国税額控除を受けた場合(約23%)より有利です。

Q4配当利回りが高すぎる銘柄は危険ですか?

A4はい。業績悪化で株価が下落し、結果的に配当利回りが高く見える「罠銘柄」の可能性があります。配当性向が70%を超えていないか、フリーキャッシュフローがプラスか、業績推移が安定しているかを必ず確認してください。配当貴族・配当王のような連続増配銘柄がおすすめです。

Q5配当は円とドル、どちらで受け取るべきですか?

A5配当を再投資するならドル受取がおすすめです。為替手数料を節約でき、米国株の買い増しがスムーズです。一方、生活費として使うなら円受取が便利です。証券会社(楽天証券など)で受取通貨を選択できるため、投資方針に合わせて設定してください。

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