米国株 税金 特定口座|確定申告不要と外国税額控除の全手順

公開日: 2025/10/19

米国株の税金、特定口座なら確定申告不要と聞いたけれど...

米国株を始める際、多くの日本人投資家が「特定口座(源泉徴収あり)なら確定申告不要」と聞いて安心します。しかし、配当金に関しては「二重課税」の問題があり、外国税額控除を受けるには確定申告が必要です。

この記事では、特定口座で米国株を取引する際の税金の仕組み、譲渡益と配当金の課税方法、外国税額控除の申告手順を詳しく解説します。

この記事のポイント:

  • 特定口座(源泉徴収あり)なら譲渡益の確定申告は原則不要
  • 配当金は米国で10%、日本で20.315%の二重課税
  • 外国税額控除を受けるには確定申告が必須
  • 配当が少額なら申告しない選択肢もある
  • 年間取引報告書を元に確定申告すれば還付を受けられる

特定口座で米国株を取引するメリット

特定口座は、税金計算を証券会社が代行してくれる便利な仕組みです。

(1) 税金計算を証券会社が自動で行う

特定口座では、株式の売買による譲渡益や配当金に対する税金を、証券会社が自動的に計算してくれます。投資家は複雑な税金計算をする必要がなく、確定申告の手間を大幅に減らせます。

一般口座の場合、自分で全ての取引を記録し、譲渡益を計算して確定申告する必要がありますが、特定口座ならその手間が不要です。

(2) 年間取引報告書の自動発行

特定口座では、年間の取引内容をまとめた「年間取引報告書」が証券会社から自動的に発行されます。この報告書には、譲渡益、配当金、外国税額などが記載されており、確定申告が必要な場合に利用できます。

年間取引報告書は、通常、翌年1月中旬〜下旬に証券会社のWebサイトからダウンロードできます。

(3) 一般口座との違い

項目 特定口座(源泉徴収あり) 特定口座(源泉徴収なし) 一般口座
税金計算 証券会社が自動 証券会社が自動 自分で計算
確定申告 原則不要 必要 必要
年間取引報告書 自動発行 自動発行 発行されない

特定口座(源泉徴収あり)が最も手間が少ないため、初心者におすすめです。

特定口座の種類(源泉徴収あり・なし)

特定口座には「源泉徴収あり」と「源泉徴収なし」の2種類があります。

(1) 源泉徴収ありの特徴(確定申告原則不要)

特定口座(源泉徴収あり)では、譲渡益や配当金が発生するたびに、証券会社が自動的に税金を差し引いて税務署に納付します。

メリット:

  • 確定申告が原則不要
  • 会社員の場合、副業所得として扱われず、年末調整だけで完結
  • 税金の納付漏れがない

デメリット:

  • 外国税額控除を受けるには確定申告が必要
  • 複数口座の損益通算も確定申告が必要

(2) 源泉徴収なしの特徴(確定申告必要)

特定口座(源泉徴収なし)では、証券会社が税金を源泉徴収しません。投資家自身が確定申告して税金を納付します。

メリット:

  • 年間の譲渡益が20万円以下なら確定申告不要(会社員の場合)
  • 確定申告で外国税額控除や損益通算を自由に行える

デメリット:

  • 確定申告が必須
  • 自分で税金を納付する手間がかかる

(3) どちらを選ぶべきか

源泉徴収ありがおすすめの人:

  • 会社員で確定申告をしたくない人
  • 投資額が大きく、譲渡益が20万円を超える可能性がある人

源泉徴収なしがおすすめの人:

  • 年間譲渡益が20万円以下で確定申告不要の人
  • 外国税額控除や損益通算を積極的に活用したい人

多くの投資家は、手間を減らすため「源泉徴収あり」を選択しています。

特定口座での譲渡益の税金処理

米国株の売却益(譲渡益)には、日本で税金がかかります。

(1) 申告分離課税20.315%の自動徴収

米国株の譲渡益には、申告分離課税として20.315%(所得税15.315%、住民税5%)が課税されます。特定口座(源泉徴収あり)では、売却時に自動的にこの税金が差し引かれます。

例(譲渡益100万円の場合):

  • 税金: 100万円 × 20.315% = 203,150円
  • 手取り: 100万円 - 203,150円 = 796,850円

(2) 損益通算の仕組み

同じ年に複数の取引で利益と損失が発生した場合、自動的に損益通算されます。

例:

  • A株で50万円の利益
  • B株で30万円の損失
  • 課税対象額: 50万円 - 30万円 = 20万円
  • 税金: 20万円 × 20.315% = 40,630円

特定口座(源泉徴収あり)では、この損益通算が自動的に行われます。

(3) 譲渡損失の繰越控除

年間で譲渡損失が出た場合、確定申告をすれば、翌年以降3年間にわたって損失を繰り越せます。

例:

  • 2025年: -100万円の損失 → 確定申告で繰越控除を申請
  • 2026年: +50万円の利益 → 前年の損失-100万円と通算して課税なし
  • 2027年: +60万円の利益 → 残りの損失-50万円と通算して課税対象は10万円

ただし、繰越控除を受けるには、損失が出た年も含めて毎年確定申告が必要です。

特定口座での配当金の税金と二重課税

米国株の配当金には、米国と日本の両方で税金がかかります。

(1) 米国での源泉徴収10%

米国企業が配当を支払う際、米国で自動的に10%が源泉徴収されます。これは、日米租税条約に基づく税率です。

W-8BENフォームの提出: この10%税率を適用するには、証券会社を通じて「W-8BENフォーム」を米国当局に提出する必要があります。未提出の場合、税率が30%になるため注意が必要です。

主要ネット証券(SBI証券・楽天証券・マネックス証券等)では、口座開設時に自動的にW-8BENを提出してくれます。

(2) 日本での課税20.315%

米国で10%源泉徴収された後、日本でさらに20.315%が課税されます。特定口座(源泉徴収あり)では、この税金も自動的に差し引かれます。

例(配当金100ドル、為替レート150円/ドルの場合):

  • 米国で10ドル源泉徴収 → 手取り90ドル(13,500円)
  • 日本で20.315%課税 → 約2,742円
  • 最終的な手取り: 約10,758円

(3) 特定口座では外国税額控除が自動適用されない

二重課税を解消する「外国税額控除」は、特定口座(源泉徴収あり)では自動適用されません。外国税額控除を受けるには、年間取引報告書を元に自分で確定申告する必要があります。

これが、特定口座でも確定申告が必要になる主なケースです。

外国税額控除を受けるための確定申告

外国税額控除を受けることで、米国で課税された10%の一部を取り戻せます。

(1) 年間取引報告書の確認方法

証券会社から発行される「年間取引報告書」には、以下の情報が記載されています。

  • 譲渡益・損失: 売却益の合計
  • 配当金: 受け取った配当金の合計
  • 外国税額: 米国で源泉徴収された税額

外国税額控除を申告する際は、この「外国税額」の欄を確認します。

(2) 確定申告書の記入手順

外国税額控除を受けるには、確定申告書に以下を記入します。

  1. 確定申告書B(第一表・第二表): 配当所得を記入
  2. 外国税額控除に関する明細書: 外国で課税された税額を記入
  3. 年間取引報告書(添付): 証券会社発行の報告書を添付

e-Tax(電子申告)を利用すれば、自宅からオンラインで申告できます。

(3) 申告すべきケース・しないケース

外国税額控除を受けるには確定申告が必要ですが、配当が少額の場合は申告しない選択肢もあります。

申告すべきケース:

  • 年間配当金が10万円以上(還付額が数千円〜数万円見込める)
  • 複数の証券口座で損益通算したい
  • 譲渡損失を繰越控除したい

申告しなくても良いケース:

  • 年間配当金が数万円程度(還付額が数百円〜千円程度)
  • 確定申告の手間を避けたい

還付額と確定申告の手間を比較して、判断しましょう。

まとめ:特定口座で米国株の税金を最適化

特定口座(源泉徴収あり)なら、譲渡益の確定申告は原則不要です。しかし、配当金の二重課税を解消する外国税額控除を受けるには、確定申告が必要になります。

次のアクション:

  • 特定口座(源泉徴収あり)で米国株取引を始める
  • 年間取引報告書を確認して、外国税額を把握する
  • 配当が一定額以上なら、確定申告で外国税額控除を受ける
  • e-Taxを利用してオンラインで申告する

重要なポイント:

  • 譲渡益は確定申告不要: 特定口座(源泉徴収あり)なら自動納税
  • 配当の二重課税: 米国10%、日本20.315%
  • 外国税額控除は手動: 確定申告が必要
  • 少額配当なら申告不要も選択肢: 手間と還付額を比較

米国株投資では、税金の仕組みを理解することが重要です。特定口座を活用すれば、税金計算の手間を大幅に減らせます。配当が増えてきたら、確定申告で外国税額控除を受けることで、税負担を最適化しましょう。

よくある質問

Q1特定口座(源泉徴収あり)なら確定申告は不要ですか?

A1譲渡益のみなら確定申告不要です。ただし、外国税額控除を受けるには確定申告が必要です。配当が少額なら申告しない選択肢もあります。

Q2特定口座で外国税額控除は自動適用されますか?

A2自動適用されません。外国税額控除を受けるには、年間取引報告書を元に自分で確定申告する必要があります。

Q3源泉徴収ありとなしはどちらが良いですか?

A3会社員で確定申告したくない場合は「あり」、外国税額控除や損益通算を積極的に活用したい場合は「なし」がおすすめです。

Q4複数の証券会社で特定口座を持っている場合は?

A4各証券会社から年間取引報告書が発行されます。損益通算や外国税額控除を受けるには、全ての口座分をまとめて確定申告が必要です。

関連記事