米国株の確定申告、できればやりたくない...
米国株を保有しているものの、「確定申告は面倒」「税金の計算がわからない」と不安に感じている投資家は少なくありません。
この記事では、米国株の確定申告が不要になるケース、特定口座やNISAの活用法、外国税額控除のメリットまで、確定申告の要否を判断するための情報を詳しく解説します。
この記事のポイント:
- 特定口座(源泉徴収あり)なら確定申告は原則不要
- NISA口座での取引も確定申告不要(売却益・配当が非課税)
- 給与所得者で給与以外の所得が20万円以下なら申告不要
- 確定申告すれば外国税額控除で税金が還付されるケースがある
- 配当額が多い人は申告した方が得になる可能性
米国株の確定申告が不要になる条件
(1) 特定口座(源泉徴収あり)で取引
特定口座(源泉徴収あり)で米国株を取引している場合、証券会社が税金計算・納税を代行するため、確定申告は不要です。
仕組み:
- 売却益・配当金の受取時に20.315%が自動的に源泉徴収される
- 証券会社が年間取引報告書を作成(税務署に提出)
- 投資家は何もしなくてOK
(2) NISA口座での取引
NISA口座で米国株を保有している場合も、確定申告は不要です。
理由:
- 売却益が非課税
- 配当金も非課税(米国での10%源泉徴収は除く)
- 非課税口座のため税務申告の必要がない
(3) 20万円ルール(給与所得者)
給与所得者(会社員等)の場合、給与以外の所得が20万円以下なら確定申告は不要です。
例:
- 米国株の売却益が15万円
- 配当金が3万円
- 合計18万円(20万円以下) → 確定申告不要
(4) 確定申告が必須になるケース
以下の場合は、特定口座(源泉徴収あり)でも確定申告が必要です:
- 年収2,000万円を超える給与所得者
- 給与以外の所得が20万円を超える場合
- 医療費控除・住宅ローン控除等で還付を受けたい場合
特定口座(源泉徴収あり)の仕組み
(1) 証券会社が税金計算・納税を代行
特定口座(源泉徴収あり)では、証券会社が以下を代行します:
- 売却益の計算:取得価額と売却価額の差額を計算
- 配当金の計算:受け取った配当金を集計
- 源泉徴収:20.315%の税金を自動的に差し引き
- 納税:証券会社が税務署に納付
投資家は何もする必要がありません。
(2) 売却益・配当の源泉徴収
売却益と配当金には、以下の税率で源泉徴収されます:
項目 | 税率 |
---|---|
所得税 | 15.315% |
住民税 | 5% |
合計 | 20.315% |
(3) 米国での10%源泉徴収は別途
米国株の配当金には、米国で10%が源泉徴収されます。これは日本の特定口座とは別の税金です。
例(配当100ドル):
- 米国で10ドル源泉徴収 → 手取り90ドル
- 日本で20.315%源泉徴収 → 約72ドル
(4) 源泉徴収なし・一般口座との違い
口座タイプ | 確定申告 | 納税 |
---|---|---|
特定口座(源泉徴収あり) | 不要(原則) | 証券会社が代行 |
特定口座(源泉徴収なし) | 必要 | 自分で納税 |
一般口座 | 必要 | 自分で損益計算・納税 |
NISA口座での米国株投資
(1) 売却益・配当が非課税
NISA口座では、以下が非課税になります:
- 売却益:株を売却した際の利益が非課税
- 配当金:配当金が非課税(日本での課税20.315%が免除)
(2) 年間投資枠(つみたて枠120万円、成長投資枠240万円)
新NISA制度では、以下の枠が使えます:
- つみたて投資枠:年間120万円まで(投資信託のみ)
- 成長投資枠:年間240万円まで(個別株・ETF・投資信託)
- 合計:年間最大360万円
(3) 米国での10%源泉徴収は避けられない
NISA口座でも、米国株の配当金には米国で10%が源泉徴収されます。
比較:
口座タイプ | 米国課税 | 日本課税 | 合計 |
---|---|---|---|
NISA口座 | 10% | 0% | 10% |
特定口座 | 10% | 20.315% | 約28%(外国税額控除で調整可能) |
NISA口座の方が税負担は軽くなります。
(4) NISA口座での取引は確定申告不要
NISA口座での取引は、非課税口座のため確定申告は一切不要です。
確定申告した方が得なケース
(1) 配当額が多く外国税額控除が大きい
米国株の配当が多い場合、確定申告で外国税額控除を使うと税金が還付されます。
例(年間配当10万円):
- 米国で10%源泉徴収 → 1万円
- 外国税額控除で約8,000円還付 → 実質負担2,000円
(2) 複数口座で損益通算したい
複数の証券会社で取引している場合、確定申告で損益通算できます。
例:
- A証券で50万円の利益
- B証券で30万円の損失
- 確定申告で損益通算 → 課税対象は20万円のみ
(3) 医療費控除等の他の控除がある
医療費控除や住宅ローン控除を受ける場合、どうせ確定申告するなら外国税額控除も併せて申請すると効率的です。
(4) 還付額のシミュレーション例
ケース1: 配当金10万円の場合
- 米国源泉税:1万円
- 外国税額控除:約8,000円還付
- 実質負担:約2,000円
ケース2: 配当金50万円の場合
- 米国源泉税:5万円
- 外国税額控除:約4万円還付
- 実質負担:約1万円
配当額が多いほど、還付額も大きくなります。
外国税額控除のメリットと申告方法
(1) 二重課税の調整(米国10%+日本20.315%)
米国株の配当には、米国と日本で二重に課税されます。外国税額控除を使えば、米国で課税された分を日本の所得税から差し引けます。
仕組み:
- 米国で10%課税された配当金
- 日本でも20.315%課税される(特定口座の場合)
- 外国税額控除で米国分を日本の税金から控除
(2) 控除額の計算方法
外国税額控除の上限額は、以下の式で計算されます:
控除限度額 = 所得税額 × (国外所得 ÷ 所得総額)
例:
- 所得税額:30万円
- 国外所得(配当):10万円
- 所得総額:500万円
- 控除限度額 = 30万円 × (10万円 ÷ 500万円) = 6,000円
米国源泉税が1万円でも、控除できるのは6,000円まで。
(3) 確定申告書への記入方法
外国税額控除を受けるには、以下の書類が必要です:
- 確定申告書(第一表・第二表)
- 外国税額控除に関する明細書
- 証券会社の年間取引報告書
- 配当金の支払通知書
国税庁のe-Taxを使えば、オンラインで申告できます。
(4) 必要書類(年間取引報告書等)
証券会社から送付される以下の書類を用意します:
- 年間取引報告書:売却益の詳細
- 配当金等の支払通知書:配当金と源泉徴収額
- 外国源泉徴収税額の計算明細書(証券会社により提供)
まとめ:申告不要と申告メリットの使い分け
米国株の確定申告は、特定口座(源泉徴収あり)やNISA口座を使えば不要ですが、配当額が多い場合は申告した方が得になります。
確定申告不要にするには:
- 特定口座(源泉徴収あり)で取引
- NISA口座を優先的に活用
- 給与以外の所得を20万円以下に抑える
確定申告した方が得なケース:
- 年間配当が10万円以上ある
- 複数口座で損益通算したい
- 医療費控除等で確定申告する予定がある
配当額が少ない場合は申告不要でOK、配当額が多い場合は還付を受けられるため確定申告を検討しましょう。自分の投資状況に合わせて、最適な方法を選んでください。