米国株を特定口座で保有しているけど、確定申告は必要?
「米国株を特定口座(源泉徴収あり)で保有しているけど、確定申告は必要なの?」「外国税額控除を受けるにはどうすればいいの?」と疑問を持っている方は多いのではないでしょうか。特定口座の種類によって、確定申告の要否や手続きが異なります。
確定申告が不要だと思っていても、外国税額控除を受けたい場合は申告が必要です。一方、申告すると国民健康保険料が増える可能性もあります。自分の状況に合わせた判断が求められます。
この記事では、米国株の確定申告と特定口座の関係、確定申告が必要・不要なケース、外国税額控除の申告手順、e-Taxでの申告方法を解説します。
この記事のポイント:
- 特定口座(源泉徴収あり)は原則確定申告不要だが、外国税額控除には申告必要
- 特定口座(源泉徴収なし)・一般口座は確定申告が必要
- 外国税額控除を受けるには「確定申告書第三表」と明細書を提出
- 年間取引報告書で外国所得税の額を確認できる
- e-Taxならマイナンバーカードで自宅から申告可能
米国株の確定申告と特定口座の関係
米国株投資では、日本と米国の両方で税金がかかります。特定口座を利用している場合、証券会社が税金の計算や納税を代行してくれますが、それだけでは二重課税が解消されません。
外国税額控除を受けることで、米国で課税された税金を日本の所得税から差し引くことができますが、そのためには確定申告が必要です。
特定口座の種類:源泉徴収あり・源泉徴収なし・一般口座
口座の種類によって、確定申告の扱いが異なります。
(1) 源泉徴収あり特定口座:証券会社が税金を源泉徴収
源泉徴収あり特定口座では、証券会社が自動的に税金(所得税15.315%+住民税5%)を計算し、源泉徴収します。原則として確定申告は不要です。
年間取引報告書が証券会社から発行されるため、損益計算の手間がかかりません。
(2) 源泉徴収なし特定口座:自分で申告
源泉徴収なし特定口座では、証券会社が年間取引報告書を発行しますが、税金の源泉徴収は行いません。投資家自身が確定申告を行い、税金を納める必要があります。
(3) 一般口座:自分で損益計算・申告
一般口座では、年間取引報告書も発行されないため、投資家自身が売買記録をもとに損益を計算し、確定申告を行う必要があります。
確定申告が不要なケースと必要なケース
自分が確定申告をすべきかどうかを判断しましょう。
(1) 不要:源泉徴収あり特定口座で外国税額控除不要
源泉徴収あり特定口座で米国株を保有しており、外国税額控除を受けるつもりがない場合は、確定申告は不要です。
ただし、外国税額控除を受けないと、米国で10%課税された後、日本でさらに20.315%課税されるため、実質的な税負担が高くなります。
(2) 必要:源泉徴収なし・一般口座
源泉徴収なし特定口座または一般口座で米国株を保有している場合は、確定申告が必要です。申告期限は翌年2月16日〜3月15日です。
期限内に申告しないと、無申告加算税や延滞税が課される可能性があります。
(3) 任意:外国税額控除・損益通算・繰越控除希望時
源泉徴収あり特定口座でも、以下の場合は任意で確定申告を行うことができます:
- 外国税額控除を受けたい: 米国で課税された10%を日本の所得税から差し引ける
- 損益通算を行いたい: 複数の証券会社での損益を合算
- 繰越控除を適用したい: 損失を翌年以降3年間繰り越す
ただし、確定申告を行うと所得が増えるため、国民健康保険料が上がる可能性があります。控除額と保険料増加額を比較して判断しましょう。
外国税額控除を受けるための確定申告手順
外国税額控除の申告手順を解説します。
(1) 年間取引報告書で外国所得税の額を確認
証券会社から発行される「特定口座年間取引報告書」には、以下の項目が記載されています:
- 配当等の額: 米国株から受け取った配当金の合計
- 源泉徴収税額: 日本で源泉徴収された税額(所得税+住民税)
- 外国所得税の額: 米国で源泉徴収された税額(10%)
この「外国所得税の額」が、外国税額控除で差し引ける金額です。
(2) 確定申告書第三表・外国税額控除に関する明細書を作成
確定申告書第一表・第二表に加えて、第三表(分離課税用)と「外国税額控除に関する明細書」を作成します。
年間取引報告書の「外国所得税の額」を明細書に転記します。
(3) e-Taxまたは税務署窓口で提出
e-Tax(電子申告)を利用すれば、自宅から申告できます。マイナンバーカードとICカードリーダー(またはスマホ)があれば、本人確認が完了します。
国税庁の「確定申告書等作成コーナー」では、画面の案内に従って入力するだけで申告書が作成できます。
年間取引報告書の見方とe-Tax申告
年間取引報告書の見方とe-Taxでの入力方法を解説します。
(1) 配当等の額・源泉徴収税額・外国所得税の額
年間取引報告書の主要項目:
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 配当等の額 | 米国株の配当金合計(税引前) |
| 源泉徴収税額(所得税) | 日本で徴収された所得税15.315% |
| 源泉徴収税額(住民税) | 日本で徴収された住民税5% |
| 外国所得税の額 | 米国で徴収された税額10% |
外国税額控除を受ける際は、「外国所得税の額」を確認します。
(2) e-Taxでの入力方法(項目別ガイド)
国税庁の「確定申告書等作成コーナー」にアクセスし、以下の手順で入力します:
- 所得の種類を選択: 配当所得
- 配当等の額を入力: 年間取引報告書の「配当等の額」
- 源泉徴収税額を入力: 日本での源泉徴収額
- 外国税額控除を選択: 「外国税額控除に関する明細書」を作成
- 外国所得税の額を入力: 年間取引報告書の「外国所得税の額」
e-Taxでは、画面の指示に従って入力すれば、自動的に控除額が計算されます。
(3) 提出期限:翌年2/16-3/15
確定申告の提出期限は、翌年の2月16日から3月15日までです。期限を過ぎると、無申告加算税や延滞税が課される可能性があります。
e-Taxなら24時間受付可能で、還付金の振込も早くなります(約3週間)。
まとめ:状況に応じて確定申告を選択
米国株を特定口座で保有している場合、確定申告の要否は口座の種類と目的によって異なります。
次のアクション:
- 源泉徴収あり特定口座なら、外国税額控除のメリットと国民健康保険料増加を比較
- 源泉徴収なし・一般口座なら、必ず確定申告を行う(期限厳守)
- 年間取引報告書を1月中に入手し、外国所得税の額を確認
- e-Taxでの申告を検討(マイナンバーカード取得が必要)
- 不明点があれば税務署や税理士に相談
外国税額控除を受けることで、二重課税を軽減できます。確定申告の手間はかかりますが、長期的には税負担を抑えることができます。
※税制は変更される可能性があります。最新情報は国税庁のウェブサイトをご確認ください。個別の税務相談は税理士にご相談ください。
