米国株に投資したいけれど、どれくらいのリターンが期待できる?
米国株への投資を検討している方の中には、「平均的にどれくらいの利回りが期待できるのか」と気になっている方も多いでしょう。配当利回りやトータルリターンの違い、セクター別の特徴を理解することで、より適切な投資判断ができます。
この記事では、米国株市場の平均利回り・配当利回り・過去リターンを詳しく解説します。
この記事のポイント:
- S&P500のトータルリターンは過去30年で年平均約10-11%(配当込み)
- 配当利回りは1.5-2.0%程度、残りは株価上昇によるリターン
- セクター別で利回りは大きく異なる(REITs 4-8%、テクノロジー 0.5-1.5%)
- 日本人投資家は税金(米国10%+日本20.315%)と為替リスクを考慮する必要がある
1. 米国株の平均利回りとは【配当利回りとトータルリターン】
米国株の「平均利回り」には複数の意味があります。
(1) 配当利回りの定義(年間配当÷株価)
配当利回りは、株価に対する年間配当金の割合です。
計算式: 配当利回り(%)= 年間配当金 ÷ 株価 × 100
例えば、株価100ドルの銘柄が年間2ドルの配当を出す場合: 配当利回り = 2ドル ÷ 100ドル × 100 = 2.0%
配当利回りは、インカムゲイン(配当収入)を重視する投資家にとって重要な指標です。
(2) トータルリターンの定義(配当+値上がり益)
トータルリターンは、配当金と株価上昇(キャピタルゲイン)を合計した投資収益です。
計算式: トータルリターン = (株価上昇 + 配当金) ÷ 投資額 × 100
例えば、100ドルで購入した株が1年後に110ドルになり、配当2ドルを受け取った場合: トータルリターン = (10ドル + 2ドル) ÷ 100ドル × 100 = 12.0%
トータルリターンは、長期投資の成果を評価する際に最も重要な指標です。
(3) 平均利回りと個別銘柄利回りの違い
「平均利回り」は、S&P500のような市場全体の指数のリターンを指します。個別銘柄のリターンは、市場平均より大きく上下することがあります。
市場平均を上回る銘柄もあれば、下回る銘柄もあるため、分散投資が重要です。
2. S&P500の過去リターン【10年・20年・30年】
S&P500は、米国株市場を代表する指数です。
(1) 10年平均リターン(約10-12%)
S&P500の過去10年間(2015-2024年)の年平均リターンは約10-12%です(S&P Dow Jones Indices公式データ)。
この期間は、テクノロジー株の成長や低金利政策が追い風となりました。
(2) 20年平均リターン(約9-10%)
過去20年間(2005-2024年)の年平均リターンは約9-10%です。
この期間には、2008年のリーマンショック、2020年のコロナショックなど、大きな暴落も含まれています。それでも長期では年平均約10%のリターンを維持しています。
(3) 30年平均リターン(約10-11%)
過去30年間(1995-2024年)の年平均リターンは約10-11%です(Vanguard "Long-Term Investment Returns")。
30年という超長期で見ると、米国株市場は安定して年率10%程度のリターンを生み出してきました。
(4) 過去リターンは将来を保証しない
過去の実績は将来の成績を保証するものではありません。
短期的には大きく変動し、暴落年には-30%以上のマイナスリターンになることもあります。ただし、長期投資(20年以上)では、歴史的に年平均8-10%のリターンが期待されています。
3. 米国株の配当利回り【セクター別・歴史的平均】
配当利回りは、セクターや企業によって大きく異なります。
(1) S&P500全体の配当利回り(1.5-2.0%)
S&P500全体の配当利回りは、1.5-2.0%程度です(2025年時点)。
日本株(東証プライム)の平均配当利回りが2-3%程度であることと比べると、米国株はやや低めです。これは、米国企業が配当よりも自社株買いや成長投資を優先する傾向があるためです。
(2) 高配当セクター(REITs 4-8%、通信 3-5%)
高配当が期待できるセクター:
セクター | 配当利回り目安 | 特徴 |
---|---|---|
REITs | 4-8% | 不動産投資信託、法律で配当義務あり |
通信 | 3-5% | 安定キャッシュフロー |
生活必需品 | 2-3% | 景気に左右されにくい |
公益事業 | 3-4% | 安定した配当、値動き小さい |
高配当セクターは株価上昇率が低い傾向があるため、トータルリターンは市場平均を下回る場合があります。
(3) 低配当セクター(テクノロジー 0.5-1.5%)
テクノロジーセクターの配当利回りは0.5-1.5%と低めです。
テクノロジー企業は、配当よりも研究開発や成長投資に資金を振り向ける傾向があります。配当は少ないですが、株価上昇によるキャピタルゲインが期待できます。
(4) 配当貴族・配当王の利回り(2-4%)
配当貴族(25年以上連続増配)、配当王(50年以上連続増配)と呼ばれる企業の配当利回りは2-4%程度です。
これらの企業は、安定した配当増加が期待できるため、長期投資に適しています。
4. セクター別の平均利回り【テクノロジー vs 生活必需品】
セクターによってリターン特性が異なります。
(1) テクノロジーセクター(配当低・値上がり重視)
テクノロジーセクターの特徴:
- 配当利回り: 0.5-1.5%
- トータルリターン: 高い(過去10年で年平均15%以上)
- ボラティリティ: 高い(株価変動が大きい)
成長性を重視する投資家に向いています。
(2) 生活必需品セクター(配当高・安定重視)
生活必需品セクターの特徴:
- 配当利回り: 2-3%
- トータルリターン: 中程度(過去10年で年平均8-10%)
- ボラティリティ: 低い(株価変動が小さい)
安定したインカムゲインを重視する投資家に向いています。
(3) 金融セクター(配当中程度・景気敏感)
金融セクターの特徴:
- 配当利回り: 2-4%
- トータルリターン: 景気により変動
- ボラティリティ: 中程度(景気敏感)
金利動向に敏感なセクターです。
(4) セクターローテーションの考慮
セクター別のリターンは、景気サイクルにより変動します。
- 景気拡大期: テクノロジー・金融が強い
- 景気後退期: 生活必需品・公益事業が強い
ポートフォリオを複数のセクターに分散することで、リスクを抑えられます。
5. 日本人投資家が考慮すべきコスト【税金・為替】
米国株投資では、税金と為替の影響を考慮する必要があります。
(1) 配当課税(米国10% + 日本20.315%)
米国株の配当には、米国と日本の両方で税金がかかります:
- 米国での源泉徴収: 10%(日米租税条約により軽減)
- 日本での課税: 20.315%(所得税15.315% + 住民税5%)
配当100ドル(為替レート150円/ドル)の場合:
- 米国で10ドル徴収 → 手取り90ドル
- 日本で約18ドル徴収 → 最終手取り約72ドル(約10,800円)
実質的な税負担: 約28%
ただし、外国税額控除を申請すれば、米国で徴収された税金の一部を取り戻せます。
(2) 為替リスク(円高で実質利回り低下)
米国株はドル建て資産のため、為替変動の影響を受けます。
例えば:
- 株価が10%上昇しても、ドル円が10%円高になれば円建てリターンはゼロ
- 株価が横ばいでも、ドル円が10%円安になれば円建てリターンは10%
長期的には、ドル高・円安傾向があるため、為替がプラスに働く可能性もあります。
(3) 外国税額控除で税負担軽減
外国税額控除を確定申告で申請すれば、米国で徴収された税金の一部を日本の所得税・住民税から差し引けます。
控除可能額は所得額により異なりますが、配当10万円なら約0.7-1万円の控除が期待できます。
(4) NISA口座での非課税メリット
NISA口座で米国株を保有すれば、日本での課税(20.315%)が非課税になります。
ただし、米国での源泉徴収10%は避けられません。また、外国税額控除も適用できないため、米国での10%は取り戻せません。
6. まとめ:米国株の平均利回りと投資判断
米国株市場の平均利回りは、長期的に年率10%程度のリターンが期待できます。
投資判断のポイント:
- S&P500のトータルリターンは過去30年で年平均約10-11%
- 配当利回りは1.5-2.0%程度、残りは株価上昇
- セクター別で利回りは大きく異なる(REITs 4-8%、テクノロジー 0.5-1.5%)
- 税金(米国10%+日本20.315%)と為替リスクを考慮する
次のアクション:
- 長期投資(20年以上)を前提に、S&P500インデックスファンドやETFへの投資を検討する
- 配当重視ならREITsや生活必需品セクター、成長重視ならテクノロジーセクターを検討する
- NISA口座を活用して日本での課税を非課税にする
- 外国税額控除を確定申告で申請して税負担を軽減する
過去のリターンは将来を保証するものではありませんが、長期的には年率8-10%のリターンが歴史的な平均です。投資判断は最新情報を確認の上、ご自身の責任で行ってください。