米国株信用取引ガイド|レバレッジと追証リスク完全解説

公開日: 2025/10/20

米国株で信用取引をして、レバレッジ効果を狙いたい…

日本株で信用取引の経験がある方の中には、「米国株でも信用取引ができるのか」と気になっている方も多いでしょう。レバレッジを効かせて大きなリターンを狙いたい一方で、リスクも気になるところです。

この記事では、日本の証券会社での米国株信用取引の対応状況・仕組み・リスク・代替手段を詳しく解説します。

この記事のポイント:

  • SBI証券、楽天証券、マネックス証券で米国株信用取引が可能
  • 通常は最大2倍のレバレッジ(初期証拠金率50%)
  • 元本以上の損失リスクがあり、追証(マージンコール)による強制決済も
  • 代替手段としてCFDやオプション取引も検討できる

1. 米国株の信用取引とは

米国株の信用取引は、証拠金を担保に資金を借りて取引する仕組みです。

(1) 信用取引の基本的な仕組み

信用取引とは、証券会社から資金や株式を借りて売買する取引です。

現物取引との違い

  • 現物取引: 自己資金の範囲内で取引
  • 信用取引: 証拠金の数倍の取引が可能(レバレッジ効果)

例えば、100万円の証拠金で200万円分の株を購入できます(レバレッジ2倍)。

(2) マージン取引(Margin Trading)

米国では、信用取引を「マージン取引(Margin Trading)」と呼びます。

SECやFINRAによる厳格な規制があり、投資家保護が図られています(SEC "Margin Trading and Short Selling")。

(3) 日本株信用取引との違い

項目 日本株信用取引 米国株信用取引
最大レバレッジ 約3.3倍(委託保証金率30%) 2倍(初期証拠金率50%)
維持証拠金率 約20% 約25%
取引期間 制度信用は6ヶ月 無期限
空売り 可能 可能(取扱銘柄は限定的)

米国株信用取引は、日本株より低いレバレッジですが、無期限で保有できます。

2. 日本の証券会社での米国株信用取引の対応状況

主要ネット証券での対応状況を確認しましょう。

(1) SBI証券の対応状況

SBI証券では、米国株の信用取引(マージン取引)が可能です(SBI証券「米国株信用取引」)。

主な条件

  • 初期証拠金率: 50%
  • 維持証拠金率: 25%
  • 取扱銘柄: 主要銘柄(約1,000銘柄以上)
  • 金利: 年率2-5%程度(変動あり)

SBI証券のウェブサイトで最新の取扱銘柄と条件を確認できます。

(2) 楽天証券の対応状況

楽天証券でも米国株の信用取引が可能です(楽天証券「米国株信用取引ガイド」)。

主な条件

  • 初期証拠金率: 50%
  • 維持証拠金率: 25%
  • 取扱銘柄: 主要銘柄(SBI証券とほぼ同等)
  • 金利: 年率2-5%程度

楽天ポイントを証拠金として利用できる場合もあります。

(3) マネックス証券の対応状況

マネックス証券でも米国株の信用取引に対応しています(マネックス証券「米国株マージン取引」)。

主な条件

  • 初期証拠金率: 50%
  • 維持証拠金率: 25-30%(銘柄により異なる)
  • 取扱銘柄: 主要銘柄
  • 金利: 年率2-5%程度

マネックス証券は時間外取引にも対応しており、デイトレードにも適しています。

(4) その他の証券会社

松井証券: 現時点では米国株の信用取引に未対応 auカブコム証券: 一部銘柄で対応

証券会社により取扱銘柄や条件が異なるため、公式サイトで最新情報を確認してください。

3. 米国株信用取引の仕組みとレバレッジ

信用取引の仕組みを詳しく見てみましょう。

(1) 初期証拠金率(通常50%)

初期証拠金率は、取引開始時に必要な証拠金の割合です。

**米国の規制(Regulation T)により、初期証拠金率は50%**と定められています(Federal Reserve "Regulation T")。

例えば、200万円分の株を購入する場合:

  • 必要証拠金: 200万円 × 50% = 100万円
  • 借入額: 100万円

(2) 維持証拠金率(通常25%)

維持証拠金率は、取引継続に必要な最低証拠金の割合です。

FINRAの規制により、維持証拠金率は25%以上とされています(FINRA "Understanding Margin Accounts")。

証拠金維持率の計算式: 証拠金維持率(%)= (現在の資産評価額 - 借入額) ÷ 現在の資産評価額 × 100

(3) 追証(マージンコール)の仕組み

証拠金維持率が維持証拠金率を下回ると、追証(マージンコール)が発生します。

追証の例

  1. 100万円の証拠金で200万円の株を購入(証拠金維持率50%)
  2. 株価が20%下落し、資産評価額が160万円に
  3. 証拠金維持率 = (160万円 - 100万円) ÷ 160万円 × 100 = 37.5%
  4. まだ追証は発生しない(維持証拠金率25%を上回っている)

さらに株価が下落し、資産評価額が130万円になった場合:

  • 証拠金維持率 = (130万円 - 100万円) ÷ 130万円 × 100 = 23%
  • 追証発生! 証拠金を追加入金するか、ポジションを縮小する必要がある

追証に応じないと、強制決済(ロスカット)されます。

(4) 金利負担と手数料

信用取引では、資金を借りるための金利がかかります。

主なコスト

  • 金利: 年率2-5%程度(証券会社により異なる)
  • 売買手数料: 通常の取引手数料と同じ(約0.495%、上限22ドル)
  • 為替手数料: 片道25銭程度

長期保有すると金利負担が大きくなるため、信用取引は短期取引向きです。

4. 信用取引のリスクと注意点

信用取引はハイリスク・ハイリターンの取引です。

(1) 元本以上の損失リスク

信用取引では、元本以上の損失が発生する可能性があります。

最悪のシナリオ

  1. 100万円の証拠金で200万円の株を購入
  2. 株価が50%暴落し、資産評価額が100万円に
  3. 借入額100万円を返済すると、手元資金はゼロ
  4. 証拠金100万円が全額消失

さらに株価が下落すれば、元本以上の損失が発生します(金融庁「信用取引のリスクについて」)。

(2) 強制決済(ロスカット)

追証に応じない場合、証券会社が強制的にポジションを決済します。

強制決済のリスク

  • 株価が一時的に下落しただけでも、強制決済される可能性
  • 強制決済後に株価が回復しても、損失は確定してしまう

強制決済を避けるため、証拠金に余裕を持つことが重要です。

(3) 為替変動による影響

米国株はドル建て資産のため、為替変動の影響を受けます。

為替リスクの例

  1. 株価が横ばいでも、ドル円が10%円高になれば円建て評価額は10%減少
  2. 証拠金維持率が低下し、追証が発生する可能性

レバレッジをかけた取引では、為替変動のリスクも拡大します。

(4) 金利負担の積み重ね

金利は日割りで発生します。

金利負担の例

  • 借入額: 100万円
  • 金利: 年率3%
  • 1ヶ月の金利負担: 約2,500円
  • 1年の金利負担: 約3万円

長期保有すると、金利負担が利益を圧迫します。

5. 代替手段:CFDやオプション取引

信用取引以外にも、レバレッジを効かせる方法があります。

(1) CFD(差金決済取引)の特徴

CFD(Contract for Difference)は、実際に株式を保有せず、価格差だけを取引する仕組みです。

CFDのメリット

  • 高いレバレッジ: 最大5-10倍(証券会社により異なる)
  • 取扱銘柄が豊富: 米国株・欧州株・コモディティ等
  • 空売りが容易: 下落相場でも利益を狙える

CFDのデメリット

  • 金利負担: オーバーナイト金利がかかる
  • 配当を受け取れない: 配当調整金が発生
  • 税制: 総合課税(累進課税)の対象

(2) オプション取引の活用

オプション取引は、将来の一定価格で売買する権利を取引する仕組みです。

オプション取引のメリット

  • リスク限定: 購入したオプションのプレミアム(購入価格)以上の損失はない
  • 高いレバレッジ: 少額で大きなポジションを取れる

オプション取引のデメリット

  • 複雑: 仕組みが難しく、初心者には不向き
  • 時間価値の減衰: 時間が経過するとオプション価値が減少

(3) 信用取引との比較

項目 信用取引 CFD オプション取引
最大レバレッジ 2倍 5-10倍 10倍以上
金利負担 あり あり(高め) なし(プレミアムのみ)
税制 申告分離課税20.315% 総合課税(累進) 申告分離課税20.315%
初心者向け ×

リスク許容度と投資経験に応じて選択しましょう。

6. まとめ:米国株信用取引の向き不向き

米国株の信用取引は、レバレッジを効かせた取引が可能ですが、元本以上の損失リスクもあります。

向いている人:

  • 信用取引の経験があり、リスク管理ができる
  • 短期的な値動きを予測できる
  • 追証に対応できる余裕資金がある

向いていない人:

  • 投資経験が浅い
  • 長期保有を前提とする(金利負担が大きい)
  • 追証のリスクを許容できない

次のアクション:

  • まずは現物取引で米国株に慣れる
  • 少額で信用取引を体験し、リスクを理解する
  • 証拠金に余裕を持ち、追証リスクを抑える
  • CFDやオプション取引も選択肢として検討する

信用取引は大きなリターンを狙える反面、大きな損失リスクもあります。リスクを十分に理解した上で、慎重に判断してください。投資判断は最新情報を確認の上、ご自身の責任で行ってください。

よくある質問

Q1日本の証券会社で米国株の信用取引はできますか?

A1SBI証券、楽天証券、マネックス証券など主要ネット証券で取り扱いがあります。ただし、取扱銘柄や条件は証券会社により異なるため、公式サイトで最新情報を確認してください。

Q2米国株信用取引のレバレッジは何倍ですか?

A2通常は最大2倍(初期証拠金率50%)です。維持証拠金率は25%程度です。日本株の信用取引(最大約3.3倍)より低いレバレッジですが、無期限で保有できます。

Q3追証(マージンコール)とは何ですか?

A3証拠金維持率が維持証拠金率(通常25%)を下回った際の追加証拠金要求です。追証に応じないと強制決済されます。急激な株価下落時や為替変動時に発生しやすいです。

Q4米国株信用取引の金利はどのくらいですか?

A4証券会社により異なりますが、年率2-5%程度です。金利は日割りで発生するため、長期保有すると金利負担が大きくなります。信用取引は短期取引向きです。

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