米国株が下落して含み損が出ている...どうすればいい?
米国株に投資している方の中には、2025年の下落局面で含み損を抱え、「今すぐ売却すべきか」「このまま保有し続けるべきか」と悩んでいる方も多いのではないでしょうか。FRBの金融政策・インフレ率・地政学リスクなど、下落要因が複雑に絡み合い、判断に迷うのは当然です。
この記事では、2025年の米国株下落の理由と、下落局面で投資家がすべき対応策を解説します。
この記事のポイント:
- 米国株下落の主な原因は、FRB金融政策・インフレ・経済指標悪化・地政学リスクの複合要因
- 調整局面(-10%)と弱気相場(-20%)では対応が異なる
- 長期投資前提なら、パニック売りは避け、ドルコスト平均法で積立継続が基本
- 為替リスク(ドル円)も考慮し、円ベースでの損益を確認
- 短期資金や生活費で投資している場合は、リスク許容度を見直す
1. 2025年の米国株下落が気になる理由
2024年まで好調だった米国株式市場(S&P500・NASDAQ)は、2025年に入って調整局面を迎えています。多くの日本人投資家が「つみたてNISAで積み立てているS&P500連動ファンドが含み損になった」「高値で買ってしまったのではないか」と不安を感じています。
下落局面では、SNSやニュースで悲観的な情報が溢れ、冷静な判断が難しくなります。しかし、過去のデータを見ると、調整局面や弱気相場は株式市場の正常なサイクルの一部であり、適切に対応すれば長期的なリターンを得ることができます。
この記事では、下落の理由を理解し、感情的な売買を避けるための判断基準を提示します。
2. 米国株下落の主な原因と仕組み
(1) 調整局面と弱気相場の違い
株価の下落には、大きく分けて2つの段階があります:
用語 | 定義 | 平均期間 | 過去の例 |
---|---|---|---|
調整局面(Correction) | 直近高値から-10%以上の下落 | 約4ヶ月 | 2018年末、2020年2〜3月(コロナ初期) |
弱気相場(Bear Market) | 直近高値から-20%以上の下落 | 約13ヶ月 | 2008年(リーマンショック)、2022年 |
調整局面は比較的短期間で回復することが多いですが、弱気相場は景気後退を伴う場合が多く、回復に時間がかかります。
現在の下落がどちらに該当するかを見極めることが、対応策を決める第一歩です。
(2) 金利上昇が株価に与える影響
FRB(米連邦準備制度)が政策金利を引き上げると、以下の理由で株価が下落しやすくなります:
- 債券の魅力が相対的に高まる:金利上昇で債券利回りが上がると、リスクの高い株式から債券に資金が移動
- 企業の借入コストが増加:金利上昇で企業の資金調達コストが上がり、利益が圧迫される
- 消費者の支出減少:住宅ローン金利や自動車ローン金利が上がり、個人消費が冷え込む
2025年の下落局面でも、FRBの金融政策が市場の注目を集めています。
(3) インフレと景気後退のリスク
インフレ(物価上昇)が過度に進むと、FRBは金利を引き上げてインフレを抑制しようとします。しかし、金利上昇が急激すぎると、景気後退(GDP成長率がマイナスになる)を引き起こすリスクがあります。
市場は「インフレが収まらないリスク」と「金利上昇による景気後退リスク」の両方を織り込んで動きます。この不確実性が、株価のボラティリティ(変動幅)を高めます。
3. 2025年に米国株が下落している具体的要因
(1) FRB金融政策の影響
2024年後半から2025年にかけて、FRBは政策金利の引き下げペースを調整しています。市場は「利下げ期待」で株価が上昇していましたが、FRBがインフレ懸念から利下げを見送ると、期待が裏切られた形で株価が下落しました。
FRBのパウエル議長の発言や、FOMC(連邦公開市場委員会)の声明が、株価に大きな影響を与えています。
(2) 経済指標の悪化(雇用統計・GDP)
米国の雇用統計やGDP成長率などの経済指標が予想を下回ると、景気後退懸念が高まり、株価が下落します。
2025年前半には、失業率の上昇や消費者信頼感指数の低下が報じられ、市場の不安を煽りました。
(3) 地政学リスクと市場の不安定化
国際情勢の緊張(戦争・貿易摩擦・政治不安)も、株価下落の要因になります。2025年は以下のような地政学リスクが市場を揺さぶっています:
- 中東情勢の緊迫化(原油価格の高騰リスク)
- 米中貿易摩擦の再燃
- 欧州経済の停滞
これらのリスクは予測が難しく、市場のボラティリティを高めます。
(4) 為替(ドル円)の影響
米国株は米ドル建てで取引されるため、為替レート(ドル円)の変動が円ベースの評価額に影響します。
例えば、株価が横ばいでも、円高(ドル安)が進めば、円換算の評価額は下がります。逆に、株価が下落しても、円安(ドル高)が進めば、円ベースの損失は軽減されます。
為替リスクも含めて、総合的に判断することが重要です。
4. 下落局面で投資家がすべき対応策
(1) ポートフォリオの見直しと分散投資
下落局面では、ポートフォリオのバランスを見直しましょう。特定のセクター(ハイテク株など)に集中投資していると、下落時のダメージが大きくなります。
分散投資の例:
- 米国株 60% + 債券 30% + 現金 10%
- S&P500連動ファンド 50% + 全世界株式ファンド 30% + 高配当株 20%
債券や現金を一定割合保有することで、下落局面でのリスクを軽減できます。
(2) ドルコスト平均法の活用
ドルコスト平均法とは、毎月一定額を投資し続ける手法です。下落局面でも積立を続けることで、平均取得単価を下げることができます。
例:
- 株価10,000円のときに1万円投資 → 1株購入
- 株価8,000円に下落したときに1万円投資 → 1.25株購入
- 平均取得単価: 8,888円(10,000円+8,000円)÷2株
下落局面こそ、ドルコスト平均法の効果が発揮されます。ただし、生活費を圧迫しない範囲で継続できる金額設定が重要です。
(3) 長期投資視点の維持
過去のデータを見ると、S&P500は長期的には右肩上がりで成長しています。リーマンショック(2008年)やコロナショック(2020年)でも、長期保有した投資家は回復後に利益を得ています。
短期的な下落に惑わされず、10年以上の長期視点で投資を続けることが、資産形成の基本です。
5. 下落時にやってはいけないNG行動
(1) パニック売りで損失を確定
下落局面で「これ以上損したくない」と感じて全額売却すると、含み損が確定損になります。過去のデータでは、パニック売りをした投資家の多くが、回復後に後悔しています。
売却を検討する場合は、「本当に今売る必要があるのか」「生活費に困っているわけではないか」を冷静に判断しましょう。
(2) 信用取引での無理な買い増し
「下落したから買い増しチャンス」と考えて、信用取引(借金での投資)で無理な買い増しをすると、さらに下落した場合に追証(追加保証金の請求)が発生し、強制決済で大損するリスクがあります。
買い増しは、余裕資金の範囲で行いましょう。
(3) 根拠のない底値予測に基づく行動
SNSやYouTubeで「ここが底だ!」「来月反発する」といった予測を見かけますが、将来の株価を正確に予測することは不可能です。
根拠のない予測に惑わされず、自分のリスク許容度と投資目的に基づいて判断しましょう。
6. まとめ:下落を理解して冷静に判断する
米国株の下落は、FRB金融政策・インフレ・経済指標悪化・地政学リスクなど、複合的な要因で発生します。下落局面では、パニック売りを避け、長期投資視点を維持することが重要です。
次のアクション:
- ポートフォリオのバランスを見直す(分散投資)
- ドルコスト平均法で積立を継続(生活費を圧迫しない範囲で)
- 短期的な株価予測に惑わされず、長期視点を維持
- 必要なら、ファイナンシャルプランナーに相談
下落局面は株式投資の正常なサイクルの一部です。冷静に対応し、長期的な資産形成を目指しましょう。投資判断は自己責任で行ってください。