米国株式手数料の仕組み
「米国株の手数料って、結局いくらかかるの?」
米国株投資を始める際、多くの投資家が手数料体系の複雑さに戸惑います。「売買手数料だけでなく為替手数料もかかるの?」「口座管理費は?」「どの証券会社が一番安い?」といった疑問が次々に浮かんできます。
この記事では、米国株取引にかかる手数料の種類、主要証券会社(SBI証券・楽天証券・マネックス証券)の料金比較、手数料を抑えるコツを詳しく解説します。
この記事のポイント:
- 米国株の売買手数料は主要3社とも約定代金の0.495%(上限22ドル、最低0ドル)で横並び
- 為替手数料は片道25銭が標準、マネックス証券は買付時無料で有利
- 口座管理費は主要ネット証券では基本無料
- 手数料を抑えるコツは外貨決済の活用、住信SBI銀行経由で為替手数料を片道4銭に削減可能
- 新NISA口座でも売買手数料は発生するが、一部ETFは買付手数料無料
(1) 主な手数料の種類
米国株取引には、主に以下の手数料がかかります:
売買手数料:
- 株式を売買する際に証券会社に支払う手数料
- 約定代金(株価×株数)に対して一定率がかかる
為替手数料:
- 円をドルに換える際、またはドルを円に換える際にかかる手数料
- 片道で0.25円〜1円/ドル程度
口座管理費:
- 証券口座の維持にかかる年間費用
- 主要ネット証券では基本無料
配当金受取手数料:
- 配当金を受け取る際にかかる手数料
- 多くの証券会社では無料
(2) この記事でわかること
この記事を読むことで、以下のことが理解できます:
- 各証券会社の売買手数料の具体的な料金体系
- 為替手数料の比較と削減方法
- トータルコストで最もお得な証券会社の選び方
- 手数料を抑えるための実践的なテクニック
売買手数料の比較(証券会社別)
(1) SBI証券(約定代金の0.495%、上限22ドル)
売買手数料:
- 手数料率: 約定代金の0.495%(税込)
- 最低手数料: 0ドル
- 上限手数料: 22ドル
具体例:
- 1,000ドル(約15万円)の株を購入: 手数料4.95ドル(約740円)
- 10,000ドル(約150万円)の株を購入: 手数料22ドル(約3,300円、上限適用)
買付手数料無料ETF:
- 9銘柄(VOO、VTI、QQQなど主要ETF)
- NISA口座でも適用
特徴:
- 住信SBIネット銀行との連携で為替手数料を大幅削減可能(片道4銭)
- 取扱銘柄数が国内最多(約5,400銘柄)
(2) 楽天証券(約定代金の0.495%、上限22ドル)
売買手数料:
- 手数料率: 約定代金の0.495%(税込)
- 最低手数料: 0ドル
- 上限手数料: 22ドル
具体例:
- SBI証券と同じ料金体系
買付手数料無料ETF:
- 15銘柄(VOO、VTI、QQQ、VYMなど)
- NISA口座でも適用
特徴:
- 買付手数料無料ETFが主要3社で最多(15銘柄)
- 楽天ポイントで米国株を購入可能
- 楽天経済圏を活用している人に有利
(3) マネックス証券(約定代金の0.495%、上限22ドル)
売買手数料:
- 手数料率: 約定代金の0.495%(税込)
- 最低手数料: 0ドル
- 上限手数料: 22ドル
具体例:
- SBI証券・楽天証券と同じ料金体系
買付手数料無料ETF:
- 13銘柄(VOO、VTI、QQQなど)
- NISA口座でも適用
特徴:
- 買付時の為替手数料が無料(売却時は片道25銭)
- 米国株の企業分析レポートが充実
- 米国株専用アプリ「トレードステーション」が使いやすい
(4) その他の証券会社
DMM株:
- 取引手数料: 0ドル(完全無料)
- ただし取扱銘柄数が約1,600と少なめ
- 為替手数料は片道25銭
PayPay証券:
- 1,000円から米国株を購入可能(1株未満も購入可)
- スプレッド(実質的な手数料)が約0.5〜0.7%
- 少額投資向けだが、大口投資では割高
為替手数料の比較
(1) SBI証券(片道25銭)
標準為替手数料:
- 片道: 25銭/ドル
- 往復: 50銭/ドル
具体例(10万円をドルに両替、1ドル=150円):
- 両替金額: 10万円 ÷ 150円 = 約667ドル
- 為替手数料: 667ドル × 0.25円 = 約167円
住信SBIネット銀行経由(外貨積立):
- 片道: 4銭/ドル
- 往復: 8銭/ドル
具体例(100万円をドルに両替):
- 標準(25銭): 約1,667円
- 住信SBI経由(4銭): 約267円
- 差額: 約1,400円
(2) 楽天証券(片道25銭)
為替手数料:
- 片道: 25銭/ドル
- 往復: 50銭/ドル
特徴:
- SBI証券と同じ標準手数料
- 外貨決済の活用で為替コストを抑えることは可能だが、住信SBI銀行のような大幅削減策はなし
(3) マネックス証券(買付時無料、売却時25銭)
為替手数料:
- 買付時: 無料
- 売却時: 25銭/ドル
具体例(100万円をドルに両替して購入):
- 買付時の為替手数料: 0円
- 売却時の為替手数料(100万円分売却): 約1,667円
メリット:
- 長期保有前提なら、買付時の為替コストがゼロで非常に有利
- 積立投資との相性が良い
(4) 為替手数料を抑える方法
外貨決済の活用:
- 円貨決済(自動両替)ではなく、外貨決済(事前にドル転)を選ぶ
- 住信SBI銀行の外貨積立を活用すれば、為替手数料を片道4銭に削減可能
手順(SBI証券+住信SBI銀行):
- 住信SBIネット銀行の口座を開設
- 「外貨積立」サービスに申込
- 毎月の積立額を設定(例: 月3万円)
- 為替手数料片道4銭でドルを購入
- SBI証券の外貨建てMMFにドルを入金
- 米国株を外貨決済で購入
長期積立での効果(月10万円、10年間):
方法 | 総為替手数料 |
---|---|
円貨決済(25銭) | 約20万円 |
外貨決済(4銭) | 約3.2万円 |
差額 | 約16.8万円 |
その他の費用(口座管理費等)
(1) 口座管理費(基本無料)
主要ネット証券:
- SBI証券: 無料
- 楽天証券: 無料
- マネックス証券: 無料
対面証券会社:
- 一部の証券会社では口座管理費が年間数千円かかる場合もあるため、事前に確認が必要
(2) 配当金受取手数料
配当金受取時の手数料:
- 主要ネット証券では無料
配当金の受取方法:
- 円貨受取: 自動で円に換算して証券口座に入金(為替手数料片道25銭)
- 外貨受取: ドルのまま外貨口座に入金(為替手数料不要、再投資に有利)
おすすめ:
- 配当金を再投資する場合は、外貨受取にして為替手数料を節約
(3) その他の費用
ADR管理費用:
- 米国預託証券(ADR)の管理にかかる費用
- 年間数セント程度(微々たるもの)
- 一部の外国企業(例: トヨタのADR)に投資する場合のみ発生
口座維持費:
- 主要ネット証券では無料
手数料を抑えるコツ
(1) 大口取引で手数料率を下げる
売買手数料は上限22ドルのため、大口取引ほど実質的な手数料率が下がります。
手数料率の比較:
取引金額 | 手数料 | 実質手数料率 |
---|---|---|
1,000ドル | 4.95ドル | 0.495% |
5,000ドル | 22ドル(上限) | 0.44% |
10,000ドル | 22ドル(上限) | 0.22% |
大口取引(5,000ドル以上)なら、実質的な手数料率が0.44%以下に抑えられます。
(2) 為替手数料の安い証券会社を選ぶ
長期保有前提:
- マネックス証券: 買付時の為替手数料が無料
- 売却時の為替手数料(片道25銭)はかかるが、長期保有なら買付コストを抑えられる
積立投資:
- SBI証券 + 住信SBI銀行: 外貨積立で為替手数料を片道4銭に削減
- 毎月の積立額が大きいほど、為替コスト削減の効果が大きい
(3) 頻繁な売買を避ける
頻繁な売買は、手数料と税金(短期譲渡所得)が積み重なります。
頻繁な売買のコスト(年10回売買、1回10,000ドル):
- 売買手数料: 22ドル × 10回 = 220ドル(約3.3万円)
- 為替手数料(円貨決済、往復50銭): 約3.3万円
- 総コスト: 約6.6万円
長期保有のコスト(年1回売買、10,000ドル):
- 売買手数料: 22ドル × 1回 = 22ドル(約3,300円)
- 為替手数料(外貨決済、住信SBI経由): 約533円
- 総コスト: 約3,800円
長期保有なら、手数料を約95%削減できます。
まとめ:手数料を理解して賢く米国株投資
米国株取引の手数料は、証券会社選びと工夫次第で大きく変わります。以下のポイントを押さえて、トータルコストを抑えましょう。
手数料比較まとめ:
証券会社 | 売買手数料 | 為替手数料 | 買付無料ETF | 特徴 |
---|---|---|---|---|
SBI証券 | 0.495% | 25銭(住信SBI経由で4銭) | 9銘柄 | 住信SBI銀行連携で為替コスト削減 |
楽天証券 | 0.495% | 25銭 | 15銘柄 | 買付無料ETF最多、楽天ポイント活用 |
マネックス証券 | 0.495% | 買付時無料 | 13銘柄 | 買付時の為替手数料無料 |
投資スタイル別の推奨:
- 積立投資・長期保有: SBI証券(住信SBI銀行経由)またはマネックス証券(買付時為替無料)
- 楽天経済圏ユーザー: 楽天証券(楽天ポイント活用、買付無料ETF15銘柄)
- 大口投資: SBI証券(住信SBI銀行経由で為替コスト削減)
コスト削減のチェックリスト:
- 買付手数料無料ETF(VOO、VTI等)を活用しているか
- 外貨決済で為替コストを抑えているか(大口投資の場合)
- 配当金を外貨受取にして再投資に活用しているか
- 住信SBI銀行の外貨積立を活用しているか(SBI証券ユーザー)
- 頻繁な売買を避け、長期保有を心がけているか
注意点:
- 手数料は変更される可能性があるため、最新情報は各証券会社の公式サイトで確認
- 手数料だけでなく、取扱銘柄数、情報ツール、サポート体制も考慮して選択
- 新NISA口座でも売買手数料は発生するが、一部ETFは買付手数料無料
米国株投資は、手数料を工夫すれば長期的に大きな差が生まれます。まずは買付手数料無料ETFから始めて、コストを抑えた投資を実践しましょう。
投資は元本保証がありません。投資判断は自己責任で行い、必要に応じてファイナンシャルプランナーなどの専門家に相談しましょう。