新NISAで米国株投資を始めたいけれど、どうすれば良いのか...?
2024年から始まった新NISA制度により、米国株投資への注目が高まっています。配当金や売却益が非課税になり、非課税保有期間も無期限となったため、長期的な資産形成に最適な制度と言えます。しかし、「新NISAで米国株は買えるのか」「つみたて投資枠と成長投資枠の使い分けは」「税金はどうなるのか」といった疑問を持つ投資家は少なくありません。
この記事では、新NISAで米国株投資を始める方法、成長投資枠の活用、おすすめ証券会社、注意点と税金を詳しく解説します。
この記事のポイント:
- 新NISAの成長投資枠で米国株個別株・ETFが購入可能(年間240万円まで)
- 配当・売却益は日本の税金(20.315%)が非課税(米国10%は課税)
- 非課税保有期間は無期限(旧NISAの5年・20年制限なし)
- つみたて投資枠(年間120万円)は対象外だが、米国株投資信託は可能
- NISA口座では外国税額控除が使えない点に注意
1. 新NISAで米国株投資が注目される理由
新NISA制度により、米国株投資の税制メリットが大きく向上しました。
(1) 配当・売却益が非課税になるメリット
通常、米国株の配当金や売却益には日本で20.315%の税金がかかります。しかし、新NISA口座で保有すれば、この税金が非課税になります。
税金の比較(配当金10万円の場合):
口座タイプ | 米国課税 | 日本課税 | 手取り額 |
---|---|---|---|
特定口座 | 1万円(10%) | 約1.8万円(20.315%) | 約7.2万円 |
NISA口座 | 1万円(10%) | 0円(非課税) | 9万円 |
NISA口座なら、日本の税金が非課税になるため、手取り額が約1.8万円増えます。長期投資では、この差が大きな資産の差につながります。
(2) 成長投資枠で個別株・ETFが購入可能
新NISAの成長投資枠では、米国株の個別株やETFが購入できます。年間240万円までの投資が非課税対象となります。
購入可能な商品:
- 米国個別株(Apple、Microsoft、NVIDIA等)
- 米国ETF(VOO、VTI、QQQ等)
- 米国REIT(不動産投資信託)
つみたて投資枠では米国株個別株・ETFは対象外ですが、一部の米国株投資信託(eMAXIS Slim米国株式S&P500、楽天・全米株式インデックス等)は購入可能です。
(3) 非課税保有期間が無期限
旧NISAでは、非課税保有期間が5年(一般NISA)または20年(つみたてNISA)でしたが、新NISAでは無期限になりました。
新NISAのメリット:
- 保有期間の制限なし(何年でも非課税で保有可能)
- ロールオーバー(非課税期間延長手続き)不要
- 長期投資に最適
無期限で非課税保有できるため、数十年単位の長期投資が可能になりました。
2. 新NISA制度の基本と米国株投資への適用
新NISA制度の基本を理解しましょう。
(1) つみたて投資枠と成長投資枠の違い
新NISAには、つみたて投資枠と成長投資枠の2つがあります。
項目 | つみたて投資枠 | 成長投資枠 |
---|---|---|
年間投資枠 | 120万円 | 240万円 |
対象商品 | 金融庁指定の投資信託 | 個別株、ETF、投資信託、REIT |
米国株個別株 | ✕ | ○ |
米国株ETF | ✕ | ○ |
米国株投資信託 | ○(一部) | ○ |
購入方法 | 積立のみ | スポット購入・積立両方可 |
つみたて投資枠は、長期・積立・分散投資向けの投資信託に限定されます。米国株個別株・ETFは、成長投資枠での購入となります。
(2) 年間投資枠:つみたて120万円、成長240万円
新NISAの年間投資枠は以下の通りです。
- つみたて投資枠: 年間120万円まで
- 成長投資枠: 年間240万円まで
- 合計: 年間360万円まで
つみたて投資枠と成長投資枠は併用可能です。例えば、つみたて投資枠で年間120万円、成長投資枠で年間240万円を投資すれば、合計360万円まで非課税投資ができます。
(3) 非課税保有限度額:生涯1,800万円(成長枠は1,200万円まで)
新NISAには、生涯の非課税保有限度額があります。
- 非課税保有限度額: 1,800万円(取得価格ベース)
- 成長投資枠の上限: 1,200万円まで
- つみたて投資枠: 1,800万円まで(成長投資枠と合わせて)
例:
- つみたて投資枠600万円 + 成長投資枠1,200万円 = 合計1,800万円
- つみたて投資枠1,800万円 + 成長投資枠0円 = 合計1,800万円(成長枠を使わない選択も可)
(4) 米国株・米国ETFは成長投資枠で購入可能
米国株の個別株・ETFは、成長投資枠で購入できます。証券会社によって取扱銘柄数が異なるため、事前に確認しましょう。
主要証券会社の米国株取扱銘柄数:
- SBI証券: 約5,000銘柄
- 楽天証券: 約4,800銘柄
- マネックス証券: 約4,500銘柄
3. 新NISAで米国株を買う方法:成長投資枠の活用
新NISAで米国株を購入する具体的な手順を見ていきましょう。
(1) NISA口座の開設手順
NISA口座の開設手順は以下の通りです。
ステップ1: 証券会社を選ぶ
- SBI証券、楽天証券、マネックス証券等から選択
- 取扱銘柄数、手数料、使いやすさで比較
ステップ2: 証券口座を開設
- オンラインで本人確認書類を提出
- 数日で口座開設完了
ステップ3: NISA口座を開設
- 証券口座開設後、NISA口座を申請
- マイナンバー提出が必要
- 税務署の審査後、NISA口座開設完了(通常1-2週間)
NISA口座は1人1口座のみ開設可能です。複数の証券会社でNISA口座を持つことはできません。
(2) 成長投資枠での米国株・ETF購入方法
成長投資枠での米国株購入方法は以下の通りです。
ステップ1: 証券口座に入金
- 銀行振込、即時入金サービス等で入金
ステップ2: 米国株を検索
- ティッカーシンボル(例: AAPL、MSFT、VOO等)で検索
ステップ3: NISA口座で注文
- 注文画面で「NISA口座」を選択
- 買付金額を入力(成長投資枠の残高内で注文)
- 指値注文または成行注文で購入
ステップ4: 約定確認
- 注文が約定したら、NISA口座で保有開始
(3) つみたて投資枠との併用戦略
つみたて投資枠と成長投資枠を併用することで、効率的に投資できます。
併用戦略の例:
- つみたて投資枠(月10万円): eMAXIS Slim米国株式S&P500等のインデックスファンドを積立
- 成長投資枠(年間240万円): 米国株個別株(Apple、Microsoft等)やETF(VOO、VTI等)を購入
つみたて投資枠は自動積立で放置できるため、初心者向けです。成長投資枠は、柔軟に銘柄を選べるため、個別株投資に挑戦したい投資家に適しています。
(4) 定期買付・積立投資の活用
成長投資枠でも、定期買付(積立投資)が可能です。
定期買付の設定:
- SBI証券、楽天証券、マネックス証券等で設定可能
- 毎月一定額を米国株ETF(VOO、VTI等)に自動投資
- ドルコスト平均法で価格変動リスクを軽減
定期買付を設定すれば、手間なく長期投資を継続できます。
4. 新NISAで米国株投資におすすめの証券会社
新NISAで米国株投資を始める際のおすすめ証券会社を紹介します。
(1) SBI証券:米国株取扱数No.1、手数料競争力
SBI証券の特徴:
- 米国株取扱銘柄数: 約5,000銘柄(国内最多)
- 手数料: 約定代金の0.495%(最低0ドル、上限22ドル)
- 為替手数料: 1ドルあたり25銭(住信SBIネット銀行経由で4銭)
- NISA対応: つみたて投資枠・成長投資枠両方対応
SBI証券は、米国株取扱銘柄数が最多で、手数料も競争力があります。
(2) 楽天証券:楽天ポイント活用、使いやすいUI
楽天証券の特徴:
- 米国株取扱銘柄数: 約4,800銘柄
- 手数料: 約定代金の0.495%(最低0ドル、上限22ドル)
- 為替手数料: 1ドルあたり25銭
- 楽天ポイントで米国株投資信託を購入可能
- NISA対応: つみたて投資枠・成長投資枠両方対応
楽天証券は、楽天ポイントを活用できる点が魅力です。アプリも使いやすく、初心者におすすめです。
(3) マネックス証券:米国株情報の充実
マネックス証券の特徴:
- 米国株取扱銘柄数: 約4,500銘柄
- 手数料: 約定代金の0.495%(最低0ドル、上限22ドル)
- 為替手数料: 1ドルあたり0銭(買付時無料)
- 銘柄スカウター(米国株分析ツール)が充実
- NISA対応: つみたて投資枠・成長投資枠両方対応
マネックス証券は、為替手数料が買付時無料で、米国株分析ツールが充実しています。
(4) 各社の手数料・為替コスト比較
証券会社 | 取引手数料 | 為替手数料(買付時) | 取扱銘柄数 |
---|---|---|---|
SBI証券 | 0.495% | 25銭(住信経由4銭) | 約5,000 |
楽天証券 | 0.495% | 25銭 | 約4,800 |
マネックス証券 | 0.495% | 0銭(無料) | 約4,500 |
手数料はほぼ横並びですが、為替手数料と取扱銘柄数に違いがあります。自分の投資スタイルに合わせて選びましょう。
5. 新NISAで米国株投資する際の注意点と税金
新NISAで米国株投資をする際の注意点を見ていきましょう。
(1) 米国での源泉徴収10%は避けられない
NISA口座で米国株を保有していても、配当金には米国で10%の源泉徴収税がかかります。
配当金の税金:
- 米国での源泉徴収: 10%(NISA口座でも課税)
- 日本での課税: 0%(NISA口座なら非課税)
例(配当金10万円の場合):
- 米国で1万円課税 → 手取り9万円
- 日本では非課税 → 追加課税なし
NISA口座でも、米国での10%課税は避けられない点に注意が必要です。
(2) NISA口座では外国税額控除が使えない
特定口座では、米国で課税された10%を外国税額控除で一部取り戻せますが、NISA口座ではこの制度が使えません。
外国税額控除の比較:
口座タイプ | 米国課税 | 外国税額控除 | 実質負担 |
---|---|---|---|
特定口座 | 10% | 一部控除可能 | 約8%程度 |
NISA口座 | 10% | 控除不可 | 10% |
NISA口座では日本の税金20.315%が非課税になる一方、外国税額控除が使えないため、配当課税は10%負担となります。
(3) 為替変動による損益は非課税対象外
為替変動による損益は、NISA口座でも課税対象となります。
為替変動の扱い:
- 株価上昇による売却益 → NISA口座なら非課税
- 為替変動による損益 → 課税対象(円転時に確定)
ただし、実務上は為替損益と株価損益を分けて計算することは困難であり、NISA口座での為替課税は限定的です。
(4) 年間投資枠を超えると課税される
成長投資枠は年間240万円が上限です。これを超えて購入すると、超過分は課税口座(特定口座等)での購入となります。
年間投資枠の管理:
- 成長投資枠の残高を常に確認
- 240万円を超えないよう計画的に投資
- 証券会社の管理画面で残高を確認
(5) 売却後の枠の再利用はできない
NISA口座で米国株を売却しても、売却した分の年間投資枠は復活しません。
例:
- 2025年に成長投資枠で200万円を投資
- 2025年中に100万円分を売却
- 2025年の残り投資枠は40万円(売却した100万円は復活しない)
ただし、翌年2026年には、新たに240万円の投資枠が与えられます。
6. まとめ:新NISAで米国株投資を始めるポイント
新NISAの成長投資枠を活用すれば、米国株の個別株・ETFを年間240万円まで非課税で投資できます。配当金や売却益は日本の税金(20.315%)が非課税となり、非課税保有期間も無期限のため、長期的な資産形成に最適です。
ただし、米国での源泉徴収10%は避けられず、NISA口座では外国税額控除も使えない点に注意が必要です。つみたて投資枠(年間120万円)と成長投資枠を併用することで、効率的に投資できます。
証券会社は、SBI証券(取扱銘柄数最多)、楽天証券(楽天ポイント活用)、マネックス証券(為替手数料無料)から選びましょう。自分の投資スタイルに合わせて、新NISAで米国株投資を始めてください。
次のアクション:
- 証券会社を選び、NISA口座を開設する
- つみたて投資枠と成長投資枠の併用戦略を立てる
- 成長投資枠で米国株個別株・ETFを購入する
- 年間投資枠(240万円)を計画的に使う
- 長期投資の視点で、短期的な変動を気にせず保有を継続する
新NISAを活用して、米国株投資で長期的な資産形成を目指しましょう。