確定拠出年金で外国株式100%は正解か?
確定拠出年金(DC)の運用商品を選ぶ際、「若いうちは外国株式100%がいい」という情報を目にすることがありますが、本当にそれで大丈夫なのでしょうか?
外国株式100%配分には、長期的な成長期待や信託報酬の低さというメリットがある一方、短期的な価格変動リスクや為替リスクというデメリットもあります。また、年齢やリスク許容度によって適切な配分は異なります。
この記事では、確定拠出年金で外国株式100%配分のメリット・デメリット、年齢別の推奨ポートフォリオ、リバランスのタイミングを詳しく解説します。
この記事のポイント:
- 外国株式100%は長期的な成長期待があり、信託報酬も低い
- 短期的な価格変動リスクと為替リスクがある
- 20〜30代なら外国株式80〜100%が推奨される
- 50〜60代は株式比率を50〜60%に下げ、債券を混ぜるべき
- 年齢に応じてリバランスやスイッチングが必要
外国株式100%のメリット
確定拠出年金で外国株式100%配分にするメリットを見ていきましょう。
(1) 長期的な成長期待
外国株式(先進国株式)は、長期的に見ると安定した成長を続けてきました。
MSCI-KOKUSAI(日本を除く先進国株式指数)の過去の傾向:
- 過去30年間で年平均リターン約7〜9%(ドルベース、配当再投資込み)
- リーマンショックやコロナショックなどの危機を経ても、長期的には回復
- 世界経済の成長に連動
※過去の実績は将来のパフォーマンスを保証するものではありません。
長期投資を前提とするなら、外国株式100%配分により高い成長が期待できます。
(2) 信託報酬の低さ
確定拠出年金の外国株式インデックスファンドは、信託報酬が非常に低いです。
主要DC商品の信託報酬(年率):
- 外国株式インデックスファンド: 0.1〜0.2%程度
- バランス型ファンド: 0.2〜0.5%程度
- アクティブファンド: 0.5〜1.5%程度
信託報酬は保有期間中ずっと発生するコストです。長期投資では、低コストのインデックスファンドが有利です。
信託報酬の差が30年後に与える影響(100万円投資、年率リターン7%の場合):
信託報酬 | 30年後の資産 |
---|---|
0.1% | 約730万円 |
0.5% | 約640万円 |
1.0% | 約560万円 |
信託報酬が0.1%と1.0%の差で、30年後に約170万円の差が生まれます。
(3) 分散投資効果(先進国全体)
MSCI-KOKUSAIなどの外国株式インデックスは、先進国全体に分散投資できます。
MSCI-KOKUSAIの主な構成国(概算):
国 | 構成比 |
---|---|
米国 | 約70% |
英国 | 約5% |
フランス | 約4% |
カナダ | 約4% |
ドイツ | 約3% |
その他 | 約14% |
複数国に分散されているため、特定国の経済リスクを軽減できます。
外国株式100%のデメリットとリスク
外国株式100%配分には、デメリットやリスクもあります。
(1) 短期的な価格変動リスク
株式は、短期的に大きく変動します。
過去の大きな下落例:
- リーマンショック(2008年): 約50%下落
- コロナショック(2020年3月): 約30%下落
これらの下落は、数年以内に回復しましたが、退職間近で下落すると受取額が大きく減少します。
(2) 為替リスク(円高で目減り)
外国株式はドル建てやユーロ建てで運用されるため、為替変動の影響を受けます。
為替リスクの例(米ドルの場合):
時点 | 株価(ドル) | 為替レート | 円換算 |
---|---|---|---|
投資時 | 100ドル | 150円/ドル | 15,000円 |
10年後 | 150ドル | 110円/ドル | 16,500円 |
株価が50%上昇しても、円高(150円→110円)により円換算では10%しか増えていません。逆に、円安なら為替差益で資産が増えます。
(3) 60歳まで引き出せない制約
確定拠出年金は、原則として60歳まで引き出せません。
- 途中で資金が必要になっても引き出せない
- 運用成果が悪くても売却できない
そのため、短期的な価格変動を気にせず長期保有できる年齢・状況でないと、精神的な負担が大きくなります。
年齢別の推奨ポートフォリオ配分
年齢によって、適切な資産配分は異なります。
(1) 20-30代:外国株式80-100%
20〜30代の方は、**外国株式80〜100%**が推奨されます。
理由:
- 退職まで30〜40年あり、時間分散効果が効く
- 短期的な下落も、長期的には回復する可能性が高い
- 若いうちはリスクを取って高いリターンを狙える
推奨配分例(30代):
- 外国株式インデックス: 100%
または
- 外国株式インデックス: 80%
- 国内株式インデックス: 20%
債券を混ぜる必要は低いです。
(2) 40代:外国株式70-80%、債券20-30%
40代は、少しずつ債券を混ぜ始めるタイミングです。
理由:
- 退職まで20年前後あり、まだリスクを取れる
- ただし、退職が近づいてきたため、安定性も考慮する
推奨配分例(40代):
- 外国株式インデックス: 70%
- 債券(国内・外国): 30%
または
- 外国株式インデックス: 80%
- 国内株式インデックス: 10%
- 債券: 10%
(3) 50-60代:外国株式50-60%、債券40-50%
50〜60代は、退職が近いため、株式比率を下げて安定性を確保すべきです。
理由:
- 退職まで5〜15年で、大きな下落があると回復する時間がない
- 受取時に株式市場が暴落していると、受取額が大きく減少
推奨配分例(50代後半〜60代):
- 外国株式インデックス: 50%
- 債券(国内・外国): 50%
または
- 外国株式インデックス: 40%
- 国内株式インデックス: 10%
- 債券: 50%
退職5年前には、株式比率を50%以下に下げることを検討しましょう。
リバランスとスイッチングのタイミング
年齢に応じて、ポートフォリオの見直しが必要です。
(1) リバランスの必要性
リバランスとは、資産配分を元の比率に戻す作業です。
例:外国株式70%、債券30%の配分が、株価上昇で外国株式80%、債券20%になった場合
- 外国株式を10%分売却
- 債券を10%分購入
- 元の70:30に戻す
リバランスにより、リスクを一定に保つことができます。
リバランスの頻度:
- 年1回程度が推奨
- 株式比率が目標から±10%以上ズレたら実施
(2) 年齢に応じた配分見直し
年齢が上がるにつれて、株式比率を下げるべきです。
配分見直しのタイミング:
- 40歳: 債券を20〜30%混ぜ始める
- 50歳: 債券比率を40%程度に引き上げる
- 55歳: 債券比率を50%程度に引き上げる
退職が近づくほど、安定性を重視した配分にします。
(3) スイッチングの手順
スイッチングとは、保有している商品を売却し、別の商品に変更することです。
確定拠出年金では、スイッチングに手数料がかからない場合が多いです(商品により異なる)。
スイッチングの手順:
- DC運用サイトにログイン
- 「スイッチング」メニューを選択
- 売却する商品と金額を指定
- 購入する商品と金額を指定
- 内容を確認して実行
年齢に応じて、外国株式の一部を債券に切り替えましょう。
まとめ:自分に合った配分を見つけよう
確定拠出年金で外国株式100%配分は、長期的な成長期待があり、信託報酬も低いというメリットがあります。ただし、短期的な価格変動リスクや為替リスクもあり、年齢によって適切な配分は異なります。
20〜30代なら外国株式80〜100%が推奨されますが、40代からは徐々に債券を混ぜ、50〜60代は株式比率を50〜60%に下げるべきです。年齢に応じてリバランスやスイッチングを行い、自分に合った配分を見つけましょう。
次のアクション:
- 自分の年齢とリスク許容度を確認する
- 現在のポートフォリオ配分を見直す
- 20〜30代なら外国株式80〜100%を維持
- 40代以降は徐々に債券比率を増やす
- 年1回程度リバランスを実施する
- 信託報酬の低い商品(0.1〜0.2%以下)を選ぶ
投資判断は自己責任で行い、ご自身の状況に合わせて配分を調整してください。