日本版VIX指数とは?米国VIXとの違い・見方・投資への活かし方を解説

著者: Single Stock編集部公開日: 2025/11/17

日本の株式市場にもVIX指数のような指標はあるの?

米国株投資をしている方は、「VIX指数(恐怖指数)」という言葉を耳にしたことがあるでしょう。VIX指数は米国株式市場の変動性(ボラティリティ)を測る重要な指標で、市場が急落すると急上昇します。では、日本の株式市場にも同様の指標はあるのでしょうか?答えは「はい」です。

この記事では、日本版VIX指数の仕組み、日本の主要ボラティリティ指数(日経平均VI、VXJ、S&P/JPX JGB VIX)、米国VIXとの違い、VIX指数の見方と水準の目安、日本からの投資方法を詳しく解説します。

この記事のポイント:

  • 日本には3つの主要ボラティリティ指数(日経平均VI、VXJ、S&P/JPX JGB VIX)が存在
  • 日経平均VIは2010年11月19日に算出開始、日経225オプション価格から30日先のボラティリティを予測
  • 米国VIXと日経平均VIは異なる市場を測定するため、必ずしも連動しない
  • VIX指数の目安は「10-20正常、20以上危険、30超警戒、40超パニック」
  • 日本では2025年1月15日に東証上場したETF 318A(VIX短期先物ETF)で投資可能

1. 日本版VIX指数とは

(1) VIX指数とは(恐怖指数の意味)

VIX指数(Volatility Index、ボラティリティ指数)は、株式市場の変動性(ボラティリティ)を測る指標です。米国のCboe(シカゴオプション取引所)が算出する米国版VIX指数は、S&P500のオプション価格から30日間の予想変動率を算出しています。

VIX指数の特徴:

  • 市場の不安や警戒感が高まると上昇
  • 別名「恐怖指数(Fear Index)」
  • 通常は10-20の範囲で推移
  • 市場急落時には40-80に急上昇

日本版VIX指数も、同様の仕組みで日本株式市場のボラティリティを測定します。

(出典: Simplex Asset「VIX指数とは」https://www.simplexasset.com/etf/column/052.html)

(2) 日本にVIX指数が必要な理由

日本株式市場は米国市場と連動することも多いですが、独立した動きをする場合もあります。そのため、日本独自のボラティリティ指数が必要です。

日本版VIXの必要性:

  • 日本市場固有のリスクを測定(為替、政治、自然災害など)
  • 日本株投資家にとっての市場不安度のバロメーター
  • 米国VIXとの比較により、グローバルリスクと国内リスクを区別できる

(3) 市場のボラティリティを測る指標としての役割

ボラティリティ指数は、以下のような役割を果たします。

役割:

  • 市場の不安度を数値化
  • リスク管理の参考指標
  • 逆張り投資のタイミングを測る(VIXが異常に高い時は買い場の可能性)
  • ポートフォリオのヘッジ戦略に活用

2. 日本の主要ボラティリティ指数

(1) 日経平均VI(日経平均ボラティリティ・インデックス)

日経平均VI(Nikkei Stock Average Volatility Index)は、日本経済新聞社が2010年11月19日に算出を開始した日本で最も有名なボラティリティ指数です。

日経平均VIの特徴:

  • 日経225オプション価格から算出
  • 30日先の予想変動率を示す
  • 大阪取引所(OSE)の先物・オプション価格を使用
  • 米国VIXと同じCboeの算出方法を採用

(出典: 野村證券「日経平均ボラティリティー・インデックス」https://www.nomura.co.jp/terms/japan/ni/j_vix.html、日経インデックス公式サイト https://indexes.nikkei.co.jp/nkave/index/profile?idx=nk225vi)

(2) VXJ(Volatility Index Japan)

VXJ(Volatility Index Japan)は、大阪大学の研究グループ(MMDS: Mathematical Methods for Data Science)が算出している日本市場のボラティリティ指標です。

VXJの特徴:

  • 学術的な研究グループによる算出
  • 日経225のオプション価格を使用
  • 日経平均VIと類似の仕組み
  • 研究機関による独立したベンチマーク

(出典: Osaka University MMDS「VOLATILITY INDEX JAPAN (VXJ)」https://www-mmds.sigmath.es.osaka-u.ac.jp/en/activity/vxj.php)

(3) S&P/JPX JGB VIX(債券市場向け)

S&P/JPX JGB VIXは、株式市場ではなく、日本国債(JGB: Japanese Government Bond)のインプライド・ボラティリティを測定する指数です。

S&P/JPX JGB VIXの特徴:

  • 10年物国債先物オプションの価格から算出
  • 債券市場のボラティリティを測定
  • 日本取引所グループ(JPX)が公表
  • 金利変動リスクの指標として活用

(出典: JPX「S&P/JPX JGB VIX Index」https://www.jpx.co.jp/english/markets/derivatives-indices/sp-jpx-jgb-vix/index.html)

(4) 3つの指数の違いと使い分け

日本の3つのボラティリティ指数は、それぞれ異なる市場を測定しています。

使い分け:

  • 日経平均VI: 日本株式市場の一般的なボラティリティ指標(最も広く利用される)
  • VXJ: 学術的なベンチマーク、研究目的での利用
  • S&P/JPX JGB VIX: 債券市場のボラティリティ、金利リスクの測定

日本株投資家は、主に日経平均VIを参照するのが一般的です。

3. 米国VIX指数との違い

(1) 算出対象の違い(S&P500 vs 日経225)

米国VIXと日経平均VIの最大の違いは、算出対象となる株価指数です。

算出対象の比較:

  • 米国VIX: S&P500のオプション価格から算出
  • 日経平均VI: 日経225のオプション価格から算出

S&P500は米国株式市場全体の約70-80%をカバーする広範な指数ですが、日経225は日本を代表する225銘柄に限定されています。

(2) 市場特性の違い(米国市場と日本市場の独立性)

米国市場と日本市場は、グローバルな経済動向に影響を受けつつも、独立した動きをすることがあります。

市場特性の違い:

  • 米国市場: 世界最大の株式市場、グローバル経済のバロメーター
  • 日本市場: アジア最大級の市場だが、為替(円高・円安)の影響を大きく受ける
  • 営業時間の違い: 米国市場は日本時間の夜間、日本市場は日本時間の昼間

このため、米国VIXと日経平均VIは必ずしも連動しません。

(3) 連動性と乖離のタイミング

米国VIXと日経平均VIは、グローバルな危機時には連動することが多いですが、地域固有のイベントでは乖離します。

連動する場合:

  • リーマンショック、コロナショックなどのグローバル危機
  • 米国市場の急落が翌日の日本市場に波及

乖離する場合:

  • 日本固有の政治イベント(選挙、政策変更)
  • 為替の急変動(急激な円高・円安)
  • 自然災害(地震、台風)

4. VIX指数の見方と水準の目安

(1) VIX指数の目安(10-20正常、20以上危険、30超警戒、40超パニック)

VIX指数の水準には、以下のような目安があります。

VIX水準の目安:

  • 10-20: 正常な状態、市場は比較的安定
  • 20以上: 危険領域、市場に不安が広がっている
  • 30超: 警戒状態、市場の変動性が非常に高い
  • 40超: パニック状態、市場が急落している可能性

この目安は、米国VIXでも日経平均VIでも概ね当てはまります。

(出典: 三井住友DSアセットマネジメント「【Vol.215】株式市場の急変時に注目される「VIX指数」って何ですか?」https://www.smd-am.co.jp/market/naruhodo/2024/naruhodo_vol215/)

(2) 2024年8月5日の令和ブラックマンデー(VIX一時65.73)

2024年8月5日、日本株式市場は「令和ブラックマンデー」と呼ばれる歴史的な急落を経験しました。

令和ブラックマンデーの概要:

  • 日経平均株価: 過去最大の4,451.28円下落
  • VIX指数: 一時65.73を記録(終値38.57)
  • 背景: 米国の景気後退懸念、円高の急進行

この日のVIX水準65.73は、2020年のコロナショック時に匹敵する異常値でした。

(出典: 三井住友DSアセットマネジメント「【Vol.215】株式市場の急変時に注目される「VIX指数」って何ですか?」https://www.smd-am.co.jp/market/naruhodo/2024/naruhodo_vol215/)

(3) VIX指数を使った投資判断の注意点

VIX指数を投資判断に活用する際は、以下の点に注意してください。

注意点:

  • VIXが高い=買い場とは限らない: VIXが高いのは市場がパニック状態だからであり、さらに下落する可能性もある
  • 逆張り投資のタイミング: VIXが異常に高い時は、「売られ過ぎ」のサインとして逆張り買いのチャンスになることもある
  • 短期的な指標: VIXは短期的な市場心理を反映するため、長期投資の判断には不向き
  • 他の指標と併用: VIX単独ではなく、PER、PBR、業績などの他の指標と併せて判断する

5. 日本でVIX指数に投資する方法

(1) ETF 318A(2025年1月15日東証上場)

2025年1月15日、Simplex Asset Managementが運用する「VIX短期先物指数ETF(ティッカー:318A)」が東京証券取引所に上場しました。

ETF 318Aの特徴:

  • S&P 500 VIX短期先物超過リターン指数に連動
  • 円建てで投資可能
  • 日本の証券会社で購入できる
  • VIX先物を直接取引するよりも簡便

(出典: JPX「Approval of Initial listing (ETF):SIMPLEX VIX Short-Term Futures ETF」https://www.jpx.co.jp/english/news/1070/20241226.html)

(2) CFD取引(楽天証券、GMOクリック証券等)

日本の一部のCFD業者では、VIX指数やVIX先物に連動したCFD(差金決済取引)を提供しています。

CFD取引の特徴:

  • 対応業者: 楽天証券、GMOクリック証券、IG証券など
  • メリット: 少額の証拠金で取引可能(レバレッジ取引)
  • デメリット: スプレッドや手数料が高い、証拠金不足でロスカットリスクあり

CFD取引は証拠金取引であり、投資額以上の損失が発生するリスクがあるため、リスク管理が重要です。

(3) 米国VIX先物へのアクセス

海外証券口座を利用すれば、米国VIX先物に直接投資することも可能です。

米国VIX先物の取引:

  • 証券会社: Interactive Brokers、TD Ameritradeなど
  • メリット: 直接VIX先物を取引できる、流動性が高い
  • デメリット: 先物取引の経験が必要、証拠金要件が高い、コンタンゴによる減価リスク

(4) VIX連動ETF・ETNの上場廃止リスク

日本国内の証券取引所で取引されていたVIX連動ETF・ETNは、2024年現在すべて上場廃止となっています。

上場廃止の歴史:

  • 過去に複数のVIX連動商品が上場されていた
  • 流動性の低さや運用の難しさから、次々と上場廃止
  • 2025年1月15日に新規上場したETF 318Aも、同様のリスクがある

投資する際は、この上場廃止リスクを理解しておく必要があります。

6. まとめ:VIX指数を投資判断に活かす

日本版VIX指数は、日本株式市場のボラティリティを測る重要な指標です。日本には3つの主要ボラティリティ指数(日経平均VI、VXJ、S&P/JPX JGB VIX)が存在し、中でも日経平均VIが最も広く利用されています。米国VIXと日経平均VIは異なる市場を測定するため、必ずしも連動しませんが、グローバル危機時には連動する傾向があります。

要点整理:

  • 日本には3つの主要ボラティリティ指数(日経平均VI、VXJ、S&P/JPX JGB VIX)が存在
  • 日経平均VIは2010年11月19日に算出開始、日経225オプション価格から30日先のボラティリティを予測
  • 米国VIXと日経平均VIは異なる市場を測定し、必ずしも連動しない
  • VIX指数の目安は「10-20正常、20以上危険、30超警戒、40超パニック」
  • 2024年8月5日の令和ブラックマンデーでVIXは一時65.73を記録
  • 日本では2025年1月15日に東証上場したETF 318A(VIX短期先物ETF)で投資可能
  • VIX連動商品には上場廃止リスクがあるため注意が必要

次のアクション:

  • 日経平均VIの現在値を日経インデックス公式サイトで確認する
  • VIXが異常値を示した時の市場環境を観察する
  • VIX指数を他の指標(PER、PBR等)と併せて投資判断に活用する
  • VIX連動商品への投資は短期的なヘッジ手段として検討し、長期保有は避ける
  • リアルタイムチャートでVIXの動きを日常的に観察する

投資判断は最終的に自己責任で行ってください。VIX指数は市場の短期的な心理を反映する指標であり、長期投資の判断には不向きです。リスクを十分に理解した上で慎重に判断しましょう。

よくある質問:

Q1: 日経平均VIと米国VIX指数の違いは何ですか? A: 日経平均VIは日経225オプション価格から算出される日本市場の予想変動率を示します。一方、米国VIXはS&P500オプション価格から算出される米国市場の予想変動率です。市場が異なるため、必ずしも連動しません。

Q2: VIX指数はどこで見られますか? A: 日経平均VIは日経インデックス公式サイト(https://indexes.nikkei.co.jp/nkave/index/profile?idx=nk225vi)や野村證券などで確認できます。米国VIXはBloomberg、Yahoo!ファイナンス、Investing.com等で閲覧可能です。

Q3: 日本でVIX指数に投資できますか? A: はい、2025年1月15日に東証上場したETF 318A(VIX短期先物ETF)を利用するか、CFD取引(楽天証券、GMOクリック証券等)で投資可能です。ただし、上場廃止リスクやコンタンゴによる減価リスクがあるため注意が必要です。

Q4: VIX指数の目安は何ですか? A: VIX水準の目安は、10-20が正常、20以上が危険、30超で警戒、40超で市場パニックとされています。2024年8月5日の令和ブラックマンデーでは一時65.73を記録しました。

Q5: VIX連動商品は上場廃止リスクがありますか? A: はい、あります。日本の証券取引所で取引されていたVIX連動ETF・ETNは、2024年現在すべて上場廃止となっています。2025年1月15日に新規上場したETF 318Aも、同様のリスクがあることを理解しておく必要があります。

※この記事は2025年1月時点の情報に基づいています。最新のVIX指数や投資商品の情報については、日本取引所グループ(JPX)や各証券会社の公式サイトをご確認ください。投資判断は自己責任で行ってください。

よくある質問

Q1日経平均VIと米国VIX指数の違いは何ですか?

A1日経平均VIは日経225オプション価格から算出される日本市場の予想変動率を示します。一方、米国VIXはS&P500オプション価格から算出される米国市場の予想変動率です。市場が異なるため、必ずしも連動しません。

Q2VIX指数はどこで見られますか?

A2日経平均VIは日経インデックス公式サイト(https://indexes.nikkei.co.jp/nkave/index/profile?idx=nk225vi)や野村證券などで確認できます。米国VIXはBloomberg、Yahoo!ファイナンス、Investing.com等で閲覧可能です。

Q3日本でVIX指数に投資できますか?

A3はい、2025年1月15日に東証上場したETF 318A(VIX短期先物ETF)を利用するか、CFD取引(楽天証券、GMOクリック証券等)で投資可能です。ただし、上場廃止リスクやコンタンゴによる減価リスクがあるため注意が必要です。

Q4VIX指数の目安は何ですか?

A4VIX水準の目安は、10-20が正常、20以上が危険、30超で警戒、40超で市場パニックとされています。2024年8月5日の令和ブラックマンデーでは一時65.73を記録しました。

Q5VIX連動商品は上場廃止リスクがありますか?

A5はい、あります。日本の証券取引所で取引されていたVIX連動ETF・ETNは、2024年現在すべて上場廃止となっています。2025年1月15日に新規上場したETF 318Aも、同様のリスクがあることを理解しておく必要があります。

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Single Stock編集部

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