Joby Aviation(NYSE: JOBY)とは?eVTOL企業の事業内容と投資リスクを解説

著者: Single Stock編集部公開日: 2025/11/13

1. 空飛ぶタクシー(eVTOL)市場への投資関心

次世代モビリティとして注目を集める「空飛ぶタクシー」。その中でも、電動垂直離着陸機(eVTOL)を開発するJoby Aviation(NYSE: JOBY)への投資関心が高まっています。

Joby Aviationは、2009年に創業され、2021年にSPAC合併でニューヨーク証券取引所(NYSE)に上場した米国企業です。eVTOL市場は2040年に190兆円規模、2050年には9兆ドル規模に成長すると予測されており、長期的な成長が期待されています。

しかし、現時点ではまだ収益を上げておらず、2029年時点でも黒字化の見通しが立っていません。この記事では、Joby Aviationの事業内容、eVTOL市場の展望、最新動向、投資リスクを詳しく解説します。

この記事のポイント:

  • Joby Aviationは2009年創業のeVTOL開発企業、2021年にNYSE上場
  • eVTOL市場は2040年に190兆円、2050年に9兆ドル規模に成長予測
  • トヨタが累計8.94億ドル(約1314億円)を投資、部品供給・生産技術支援を実施
  • 継続的な赤字、高バリュエーション、規制リスクなど投資リスクに注意が必要

2. Joby Aviation(NYSE: JOBY)企業概要とeVTOL技術

(1) 企業概要(2009年創業、カリフォルニア州本社、1700名以上のエンジニア)

Joby Aviation, Inc.は、2009年にカリフォルニア州サンタクルーズで創業された電動垂直離着陸機(eVTOL)開発企業です。1700名以上のエンジニアを擁し、空飛ぶタクシーの実用化を目指しています。

企業情報:

  • 創業: 2009年
  • 本社: カリフォルニア州サンタクルーズ
  • CEO: JoeBen Bevirt(創業者)
  • 従業員数: 1700名以上(エンジニア中心)
  • 上場: 2021年8月、SPAC合併でNYSE上場
  • ティッカーシンボル: JOBY

2021年8月にSPAC(Special Purpose Acquisition Company、特別買収目的会社)との合併を通じてNYSE(ニューヨーク証券取引所)に上場しました。

(2) eVTOL技術と機体性能(パイロット+4名乗客、時速200マイル)

Jobyが開発するeVTOL機体は、垂直離着陸が可能な電動航空機で、都市部の短距離移動に特化しています。

機体性能:

  • 乗客数: パイロット+4名の乗客(計5名)
  • 最高速度: 時速200マイル(約320km/h)
  • 航続距離: 5-150マイル(約8-240km)
  • 有効積載量: 最大1,000ポンド(約450kg)
  • 離着陸: 滑走路不要、垂直離着陸が可能

eVTOL(electric Vertical Take-Off and Landing)技術により、空港や滑走路を必要とせず、都市部のヘリポートや専用拠点から離着陸できます。電動化により、従来のヘリコプターに比べて騒音が低く、環境負荷も小さいのが特徴です。

(3) NYSE上場の経緯(2021年SPAC合併)

Jobyは2021年8月、Reinvent Technology Partners(SPAC)との合併を通じてNYSE(ニューヨーク証券取引所)に上場しました。

SPAC上場の特徴:

  • 既存のSPACと合併することで、通常のIPOよりも短期間で上場可能
  • 上場時の企業評価額は約60億ドル
  • LinkedInの創業者Reid Hoffmanらが支援

SPAC上場により、Jobyは研究開発・認証取得・商用化に向けた資金を調達しました。

3. eVTOL市場の現状と将来展望

(1) 市場規模予測(2040年190兆円、2050年9兆ドル)

eVTOL市場は、長期的に大きな成長が見込まれています。

市場規模予測:

  • 2040年: 190兆円規模(日本政府・民間予測)
  • 2050年: 9兆ドル規模(Goldman Sachs予測)

ただし、これらの予測は2040-2050年時点の話であり、短期的な収益化は困難です。市場が本格的に立ち上がるまでには、規制整備、インフラ構築、消費者の受容、コスト低減など、多くの課題があります。

(2) 主要プレイヤー(Joby Aviation、Archer Aviation等)

eVTOL市場の主要プレイヤーは以下の通りです。

米国企業:

  • Joby Aviation(JOBY): トヨタが投資、FAA認証で先行
  • Archer Aviation(ACHR): United Airlinesと提携
  • Lilium(LILM): ドイツ系、ジェット推進方式

その他:

  • Volocopter(ドイツ)
  • EHang(中国)
  • Vertical Aerospace(英国)

Joby AviationとArcher Aviationが、FAA(米国連邦航空局)認証で先行しており、商用化に向けた競争が激化しています。

(3) 日本企業の関与(トヨタ、ANA、大阪万博2025)

日本企業もeVTOL市場に積極的に関与しています。

トヨタとJoby:

  • 2019年から協業開始
  • 2024年10月に5億ドル(約735億円)の追加投資
  • 累計投資額は8.94億ドル(約1314億円)
  • 電動化部品の供給、生産技術の支援
  • 2024年に日本初飛行を実施 (出典: トヨタ公式ニュースリリース、2024年10月2日)

大阪万博2025:

  • JobyとANA(全日本空輸)が大阪・関西万博2025で空飛ぶタクシーを運航予定
  • 万博会場と周辺地域を結ぶ実証実験

日本政府も「空の移動革命」を推進しており、eVTOL市場の成長を後押ししています。

4. Joby Aviationの最新動向(2024-2025年)

(1) FAA認証の進捗状況(Stage 4の62%完了、TIA機体テスト開始)

Jobyは、FAA(米国連邦航空局)認証の取得に向けて着実に進捗しています。

FAA認証プロセス(5段階):

  • Stage 1-3: 設計審査、試験計画策定(完了)
  • Stage 4: 適合性検証(2025年Q3時点で62%完了)
  • Stage 5: 最終認証審査(未開始)

2025年Q3の進捗:

  • FAA Type Inspection Authorization(TIA)機体の電源投入テストを開始
  • 認証の最終段階に向けた重要なマイルストーンを達成 (出典: Joby Aviation IR、2025年Q3決算発表)

JobyはeVTOL業界でFAA認証において先行しており、2025年後半-2026年初頭の商用化を目指しています。

(2) トヨタとの提携(累計8.94億ドルの投資、部品供給、生産技術支援)

トヨタとの提携は、Jobyにとって最も重要な戦略的パートナーシップです。

提携内容:

  • 2019年から協業開始
  • 2024年10月に5億ドル(約735億円)の追加投資
  • 累計投資額は8.94億ドル(約1314億円)に到達
  • 電動化部品(バッテリー、モーター等)の供給
  • トヨタ生産方式(TPS)を活用した生産技術支援
  • 2024年に日本で初飛行を実施

トヨタの投資と技術支援により、Jobyは量産化に向けた体制を強化しています。

(3) 商用化計画(2025年後半ドバイ、大阪万博2025)

Jobyの商用化計画は以下の通りです。

2025年後半-2026年初頭:

  • ドバイで初の旅客運送開始予定
  • カザフスタンと2.5億ドル規模の機体・サービス販売契約を締結

2025年大阪万博:

  • ANAと協力して空飛ぶタクシーを運航予定
  • 万博会場と周辺地域を結ぶ実証実験

2025年8月:

  • Blade Air Mobilityの旅客輸送事業を最大1.25億ドルで買収
  • ニューヨーク市などの専用ターミナルを含む重要インフラを獲得

これらの計画が順調に進めば、2025年後半から商業運航が始まる可能性があります。

5. Joby Aviation投資のリスクと注意点

(1) 継続的な赤字(2029年でも黒字化予測なし)

Jobyは現時点で収益を上げておらず、継続的な赤字が続いています。

業績予測:

  • 2025年EPS予想: -$0.79(1株当たり損失)
  • 2029年EPS予想: -$0.48(1株当たり損失)
  • 3年以内の黒字化は見込めない (出典: TipRanks、アナリストコンセンサス)

赤字が続くため、定期的な資金調達(増資)が必要となり、既存株主の持分が希薄化するリスクがあります。

(2) 高いバリュエーション(時価総額150億ドル超、PSR約370倍)

Jobyの株価は、将来の成長期待に大きく依存しています。

バリュエーション(2025年10月時点):

  • 時価総額: 150億ドル超
  • 2025年売上予想: 4,040万ドル
  • PSR(株価売上高倍率): 約370倍 (出典: The Motley Fool)

一般的なテクノロジー企業のPSRは数倍-十数倍程度であり、Jobyのバリュエーションは非常に高い水準です。市場の成長予測が下方修正された場合、株価が大きく下落するリスクがあります。

株価ボラティリティ:

  • 52週レンジ: $4.96-$20.95
  • 直近1ヶ月で20.2%下落($19.57→$15.61) (出典: TipRanks、2025年10月時点)

短期的な株価変動が激しく、長期投資として位置づける必要があります。

(3) 規制・競合・資金調達リスク

Joby Aviationへの投資には、以下のリスクがあります。

規制リスク:

  • FAA認証が遅延する可能性
  • 認証基準の変更
  • 各国規制当局の対応差

競合リスク:

  • Archer Aviation等の競合企業も認証を進行中
  • 先行者利益が確保できない可能性

資金調達リスク:

  • 継続的な赤字のため定期的な増資が必要
  • 既存株主の持分が希薄化するリスク

これらのリスクを理解した上で、長期的な視点で投資判断を行う必要があります。

6. まとめ:Joby Aviation投資判断のポイント

Joby Aviation(NYSE: JOBY)は、電動垂直離着陸機(eVTOL)を開発する空飛ぶタクシー企業で、2009年創業、2021年にNYSE上場しました。

投資判断のポイント:

  • 長期成長市場: eVTOL市場は2040年に190兆円、2050年に9兆ドル規模に成長予測
  • 戦略的パートナーシップ: トヨタが累計8.94億ドルを投資、部品供給・生産技術支援
  • FAA認証で先行: 2025年Q3時点でStage 4の62%完了、2025年後半の商用化を目指す

投資リスク:

  • 継続的な赤字: 2029年でも黒字化予測なし
  • 高バリュエーション: PSR約370倍、将来の成長期待に大きく依存
  • 株価ボラティリティ: 52週レンジ$4.96-$20.95と変動が激しい
  • 規制・競合・資金調達リスク

アナリスト評価:

  • コンセンサスレーティング: Hold(買い1、保留4、売り1)
  • 平均目標株価: $15.50(レンジ$8.00-$22.00) (出典: TipRanks)

次のアクション:

Joby Aviationへの投資は、次世代モビリティ市場の成長を取り込む手段の一つです。情報収集を続け、自己責任で投資判断を行いましょう。

よくある質問

Q1Joby Aviationとは何ですか?

A1カリフォルニア州サンタクルーズに本社を置く、電動垂直離着陸機(eVTOL)を開発する空飛ぶタクシー企業です。2009年創業、2021年にSPAC合併でニューヨーク証券取引所(NYSE)に上場しました。パイロット+4名の乗客を時速200マイルで輸送するeVTOL機体を開発しています。

Q2トヨタとの関係は?

A22019年から協業を開始し、2024年10月に5億ドル(約735億円)の追加投資を実施、累計8.94億ドル(約1314億円)に到達しました。トヨタは電動化部品(バッテリー、モーター等)の供給、トヨタ生産方式(TPS)を活用した生産技術支援を行っており、2024年に日本で初飛行も実施しました。

Q3いつ商業運航が始まりますか?

A32025年後半-2026年初頭にドバイで初の旅客運送開始を予定しています。また、大阪・関西万博2025でANA(全日本空輸)と協力して空飛ぶタクシーを運航する計画もあります。FAA認証は2025年Q3時点でStage 4の62%完了、商用化に向けて着実に進捗しています。

Q4投資リスクは何ですか?

A4継続的な赤字(2029年でも黒字化予測なし)、高いバリュエーション(時価総額150億ドル超に対し2025年売上予想4,040万ドル、PSR約370倍)、株価ボラティリティ(52週レンジ$4.96-$20.95)、規制承認の遅延、競合激化、資金調達による既存株主の希薄化リスクがあります。長期投資として位置づける必要があります。

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Single Stock編集部

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