NYSE: MMM(3M)とは:多角化コングロマリットの概要
米国の老舗企業で配当株としても知られる3M Company(ティッカーシンボル:MMM)は、ポストイット、スコッチテープ、マスクなど多様な製品を製造する多角化コングロマリットです。長年にわたり安定配当を続けてきた企業ですが、近年は訴訟リスクや減配トレンドが注目されています。
この記事では、MMM株の基本情報、事業内容、日本の証券会社での購入方法、投資リスクについて解説します。
この記事のポイント:
- 3MはNYSE上場の多角化コングロマリットで、6万種類以上の製品を製造
- 配当利回り1.73%で、過去32年間配当を支払っているが、過去10年間で減配が続いている
- 2024年にヘルスケア事業をSolventumとして分社化し、工業・安全・消費者製品に特化
- PFAS環境訴訟や軍用イヤープラグ訴訟など大型訴訟が複数進行中で、財務リスクが懸念される
- アナリスト平均目標株価は161ドルで、現在の株価167ドルとほぼ同水準
(1) 3M(スリーエム)の企業概要(設立、本社、時価総額)
3M Company(スリーエム)は、1902年に米国ミネソタ州で設立された多角経営企業です。本社は同州セントポールにあり、2025年11月時点での時価総額は約890億ドルです。
3Mは、工業製品、安全製品、消費者製品の3つの主要事業部門で、6万種類以上の製品を製造・販売しています。代表的な製品には、ポストイット(付箋)、スコッチテープ、N95マスク、研磨剤、接着剤などがあります。
(2) NYSEとは(ニューヨーク証券取引所)
NYSE(New York Stock Exchange、ニューヨーク証券取引所)は、世界最大の株式市場で、約2,800社が上場しています。NASDAQと並ぶ米国の主要市場で、IBM、コカ・コーラ、ウォルマートなどの大企業もNYSEに上場しています。
NYSEの通常取引時間は米国東部時間の午前9時30分~午後4時(日本時間の午後11時30分~翌朝6時、夏時間は1時間早まる)です。プレマーケット取引とアフターマーケット取引もあります。
(3) ティッカーシンボル「MMM」の由来
ティッカーシンボルとは、株式市場で企業を識別するための略称です。3Mのティッカーシンボルは「MMM」で、これは旧社名「Minnesota Mining and Manufacturing Company」の頭文字に由来します。1902年の創業時はミネソタ州の鉱業・製造会社として設立され、1946年に「3M Company」に社名を変更しましたが、ティッカーシンボルは「MMM」のまま引き継がれています。
3Mの事業内容とセクター
3Mは、3つの主要事業部門で多様な製品を展開しています。
(1) 工業製品部門(接着剤、研磨剤、不織布等)
工業製品部門は、自動車、航空宇宙、電子機器などの産業向けに接着剤、研磨剤、不織布、テープ類を提供しています。たとえば、自動車の内装や外装に使われる接着剤、スマートフォンのディスプレイに使われる反射防止フィルムなどが含まれます。
この部門は3Mの売上の大きな部分を占めており、産業界の需要に左右されやすい特徴があります。
(2) 安全製品部門(マスク、個人用保護具等)
安全製品部門は、N95マスク、防護服、聴覚保護具、安全メガネなどの個人用保護具(PPE)を製造しています。COVID-19パンデミック時にはN95マスクの需要が急増し、3Mの業績に大きく貢献しました。
ただし、パンデミック後は需要が正常化し、この部門の成長は鈍化しています。
(3) 消費者製品部門(ポストイット、スコッチテープ等)
消費者製品部門は、ポストイット(付箋)、スコッチテープ、コマンドフック(壁掛けフック)、スポンジなどの日用品を製造しています。これらの製品は一般家庭やオフィスで広く使われており、ブランド認知度が高いのが特徴です。
この部門は比較的安定した収益源ですが、競合が多く、価格競争が激しい市場です。
(4) 2024年のヘルスケア事業分社化(Solventum)の影響
3Mは2024年にヘルスケア事業をSolventum Corporation として分社化しました。これにより、3Mは工業・安全・消費者製品の3部門に特化し、事業の効率化を図っています。
Solventumは医療用テープ、外科用製品、歯科製品などを扱う独立企業として運営されており、3Mの株主はSolventumの株式も受け取りました。この分社化により、3Mは訴訟リスクが高いヘルスケア事業を切り離し、コア事業に集中する戦略をとっています。
MMM株の基本情報(株価・配当・分社化)
MMM株の投資判断に必要な基本情報を確認しましょう。
(1) 現在の株価と時価総額(2025年11月時点)
2025年11月時点でのMMM株の主要指標は以下の通りです。
- 株価: 約167ドル
- 時価総額: 約890億ドル
- 52週レンジ: 121.98ドル~171.60ドル
- PER(株価収益率): 21~27倍
(2) 配当利回りと配当履歴(32年間の支払い実績と減配トレンド)
3Mの配当利回りは約1.73%で、年間配当は2.89ドルです。3Mは過去32年間にわたり配当を支払い続けている実績がありますが、近年は減配トレンドが続いています。
配当の減少トレンド:
- 過去3年間の配当成長率: -21.17%
- 過去5年間の配当成長率: -13.06%
- 過去10年間: 年率13-21%のペースで減配
配当性向は45.9%と適正水準ですが、フリーキャッシュフローでの配当カバー率が97.7%と低く、事業からの現金創出が配当支払いに十分でない状況です。訴訟費用の増加や成長鈍化により、今後も減配が続くリスクがあります。
(3) PERと株価評価
MMM株のPERは21~27倍で、S&P500の平均PER(約20倍前後)と比較すると若干割高です。アナリストの平均目標株価は161ドルで、現在の株価167ドルとほぼ同水準のため、大幅な上昇余地は限定的とされています。
(4) 事業再編(分社化)の実務的影響
2024年のヘルスケア事業分社化により、3Mの株主はSolventum株も受け取りました。この分社化は、3Mがコア事業に集中し、訴訟リスクを切り離すための戦略ですが、短期的には株価への大きな影響は限定的とされています。
日本の証券会社でのMMM株の買い方
日本からMMM株を購入する方法を確認しましょう。
(1) 主要ネット証券でのMMM取扱い(SBI証券、楽天証券、マネックス証券等)
MMM株は、日本の主要ネット証券で取引可能です。
- SBI証券: 米国株の取扱銘柄数が最多。手数料は約定代金の0.495%(最低0ドル、上限22ドル)
- 楽天証券: 楽天ポイントが貯まり、UI/UXが使いやすい。手数料はSBI証券と同水準
- マネックス証券: 米国株の情報提供が充実。手数料は約定代金の0.495%(上限22ドル)
これらの証券会社では、MMM株を1株から購入できます。
(2) 銘柄コード検索方法(NYSE: MMM)
証券会社の取引画面で、銘柄コードを検索する際には「MMM」または「3M」と入力します。ティッカーシンボル「MMM」を入力するのが最も確実です。
(3) 円貨決済と外貨決済の選択
米国株を購入する際、円貨決済と外貨決済(ドル決済)の2つの方法があります。
円貨決済: 日本円で注文を出すと、証券会社が自動的にドルに両替して購入。為替手数料が割高(片道25銭~1円程度)
外貨決済: 事前にドルを購入し、ドルで株を買う。為替手数料が安い(片道10銭~25銭程度)
長期投資の場合、外貨決済の方が為替手数料を抑えられます。
(4) 最低購入金額と手数料
MMM株は1株から購入できます。2025年11月時点での株価が約167ドルであるため、1ドル=150円と仮定すると、最低購入金額は約25,050円(167ドル×150円)となります。
これに加えて、取引手数料(約定代金の0.495%程度)と為替手数料が発生します。
MMM株投資のリスク(訴訟・減配・成長鈍化)
MMM株には、いくつかの重要な投資リスクがあります。
(1) PFAS環境訴訟と軍用イヤープラグ訴訟の現状
3Mは現在、複数の大型訴訟に直面しています。
PFAS(フッ素系化学物質)環境訴訟:
PFASは「永遠の化学物質」とも呼ばれ、環境中で分解されにくく、人体への悪影響が懸念されています。3MはPFASを製造してきた企業として、複数の環境汚染訴訟に直面しており、和解費用が数十億ドル規模に達する可能性があります。
軍用イヤープラグ訴訟:
3Mが製造した軍用イヤープラグに欠陥があり、米軍兵士の聴覚障害を引き起こしたとして、大規模な訴訟が進行中です。和解費用や賠償金が業績に大きな影響を与えるリスクがあります。
これらの訴訟関連ニュースは、株価に短期的な変動をもたらすため、定期的なチェックが必要です。
(2) 配当の減少トレンド(過去10年間で年率13-21%減配)
3Mは過去32年間配当を支払い続けていますが、過去10年間で年率13-21%のペースで減配が続いています。配当のフリーキャッシュフローカバー率が97.7%と低く、事業からの現金創出が配当支払いに十分でないため、今後も減配が続く可能性があります。
高配当株を求める投資家にとっては、減配リスクが大きな懸念材料となります。
(3) 有機成長率の低下(7-8% → 3-5%)
3Mの長期的な有機成長率の目標は、金融危機後の7-8%から現在は3-5%に低下しています。成長鈍化が長期的な株価上昇を制限する可能性があります。
ただし、3Mは2024年に36の新製品発売を計画し、広告費も増やしているため、成長戦略の見直しが進められています。
(4) 為替変動リスク(ドル建て資産のリスク)
MMM株は米ドル建てで取引されるため、為替レートの変動が投資成績に影響します。円高ドル安が進むと、円換算での資産価値が減少するリスクがあります。
まとめ:MMM株の特徴と投資判断のポイント
3M(MMM)は、長年にわたり多様な製品を製造してきた老舗企業ですが、近年は訴訟リスク、減配トレンド、成長鈍化などの課題を抱えています。
投資判断のポイント:
- 配当株としての魅力は低下: 過去10年間の減配トレンドと低い配当カバー率から、高配当株を求める投資家には不向き
- 訴訟リスクに注意: PFAS訴訟や軍用イヤープラグ訴訟の動向を定期的にチェックする必要がある
- 事業再編の成果に期待: ヘルスケア事業の分社化により、コア事業に集中する戦略が成功するかが鍵
- アナリスト評価は中立的: 平均目標株価161ドルで、現在の株価167ドルとほぼ同水準のため、大幅な上昇余地は限定的
次のアクション:
- 3Mの公式IRサイトで最新の決算資料を確認する
- 訴訟関連ニュースを定期的にチェックする
- 証券会社で口座を開設し、少額から投資を始める
- 配当の持続性とフリーキャッシュフローの動向を継続的に確認する
情報を収集し、慎重に投資判断を行いましょう。
※投資判断は自己責任で行ってください。本記事は情報提供を目的としており、特定銘柄の推奨ではありません。
