日経VIX指数(日経平均VI)とは
株式市場を見ていると、「恐怖指数」「VIX指数」という言葉を耳にすることがあります。この指数は、投資家の不安心理を数値化したもので、市場のリスクを測る重要な指標です。
日経VIX指数(日経平均VI)は、日本株市場における恐怖指数であり、投資家が予想する日経平均の1ヶ月先のボラティリティ(価格変動の大きさ)を示します。市場が不安定になると、この指数が上昇します。
この記事では、日経VIX指数の仕組み、チャートの確認方法、株価との関係、投資への活用法を初心者向けに解説します。
この記事のポイント:
- 日経VIX指数は日経平均先物・オプション価格から算出される日本版恐怖指数
- VIXと株価は逆相関関係 - VIX上昇時は株価下落、VIX低下時は株価上昇の傾向
- VIX数値の目安:10-20で通常推移、20超えで不安上昇、30超えで注意、40超えで混乱
- 日経VIXのチャートは日経電子版、証券会社で確認可能
- VIX高騰時は割安株の買い場となる可能性があり、VIX関連ETFでヘッジも可能
(1) 恐怖指数の意味
VIX指数は「恐怖指数」とも呼ばれます。これは、投資家が市場の将来的な変動に対してどれだけ不安を感じているかを数値化したものです。
VIXが高い状態は、投資家が大きな価格変動を予想していることを示し、市場に不安感が広がっていることを意味します。逆に、VIXが低い状態は、市場が安定しており、投資家が安心している状態を示します。
(2) 算出方法と歴史
日経VIX指数(日経平均VI)は、大阪取引所の日経平均先物・オプション価格から算出されます。具体的には、日経平均の1ヶ月先の価格変動率(ボラティリティ)を予測した数値です。
日経VIXは、2010年11月19日から算出が開始され、2012年1月30日からリアルタイムで公開されています。米国のCBOE VIX Index(S&P 500のオプション価格から算出)をモデルにしています。
(3) ボラティリティとは
ボラティリティ(Volatility)は、価格変動の大きさを示す指標です。ボラティリティが高い状態は、価格が大きく上下に変動することを意味し、ボラティリティが低い状態は、価格が安定していることを意味します。
VIX指数は、このボラティリティを予測した数値であり、市場参加者が将来の価格変動をどれだけ大きく予想しているかを示します。
日経VIX指数と米国VIXの違い
(1) 算出の基礎(日経平均 vs S&P 500)
日経VIX指数は日経平均先物・オプション価格から算出されるのに対し、米国のCBOE VIX Index(通称「VIX」)はS&P 500指数のオプション価格から算出されます。
算出方法は基本的に同じですが、対象となる市場が異なります。日経VIXは日本株市場、米国VIXは米国株市場のボラティリティを測定します。
(2) 市場特性の違い
日本株市場と米国株市場には、取引時間、参加者の構成、市場の流動性などの違いがあります。これにより、日経VIXと米国VIXの動きには差が生じることがあります。
例えば、米国市場で大きなイベントが発生した場合、米国VIXが急騰しても、日経VIXがすぐに連動するとは限りません。ただし、グローバルな株式市場の連動性が高まっている現在、両者は似た動きをすることが多いです。
日経VIX指数のチャートを確認する方法
(1) 日経電子版でのリアルタイム確認
日経VIX指数のリアルタイムチャートは、日経電子版で確認できます。
- URL: https://www.nikkei.com/smartchart/?code=N145/O
- 機能: 3分足から月足まで複数の時間軸で確認可能
- 現在値: 28.17(2025年11月14日時点、前日比-2.52%)
日経電子版では、無料でリアルタイムの日経VIXチャートを閲覧でき、時間軸を変更して過去のトレンドも確認できます。
(2) 証券会社での確認方法
日本の主要証券会社のサイトでも、日経VIX指数を確認できます。
- SBI証券: マーケット情報→指数→日経平均VI
- 楽天証券: マーケット情報→指数→日経平均VI
- 松井証券: マーケット情報→指数→日経平均VI
証券会社のサイトでは、日経VIXと併せて日経平均株価のチャートも確認できるため、両者の関係を視覚的に理解しやすくなっています。
(3) 2024-2025年のVIX推移
2024年8月5日、円キャリートレードの巻き戻しにより、米国VIXが65まで急騰しました(通常は10-20で推移)。これは、2020年3月のコロナショック以来の高水準でした。
2025年11月時点では、日経VIXは28.17、米国VIXは17.28と比較的落ち着いた水準に戻っています。ただし、日経VIXは米国VIXよりやや高い水準であり、日本株市場にやや不安感が残っていることを示しています。
VIX指数と株価の関係:数値の目安
(1) VIXと株価の逆相関関係
VIX指数と株価は、逆相関関係にあります。つまり、VIXが上昇すると株価は下落し、VIXが低下すると株価は上昇する傾向があります。
この関係が成り立つ理由は、投資家の不安心理と株価の動きが連動するためです。市場が不安定になると、投資家はリスクを避けるために株を売却し、株価が下落します。同時に、オプション市場では価格変動に対する懸念が高まり、VIXが上昇します。
(2) VIX数値の目安(10-20、20超、30超、40超)
VIX指数の数値には、以下のような目安があります。
- 10-20: 通常の範囲。市場は安定しており、投資家は比較的安心している状態
- 20超: 不安が上昇。市場にやや不安感が広がり始めている状態
- 30超: 注意が必要。市場に強い不安感が広がり、価格変動が大きくなっている状態
- 40超: 市場混乱。パニック売りが発生し、株価が急落している状態
これらの数値は目安であり、必ずしも株価が下落することを意味するわけではありません。しかし、VIXが高い水準にある場合は、市場の不安定さを示しているため、注意が必要です。
(3) 歴史的な急騰事例(2020年コロナショック、2024年円キャリートレード巻き戻し)
歴史的にVIXが急騰した主な事例は以下の通りです。
- 2020年3月(コロナショック): 米国VIXが82.69まで急騰。新型コロナウイルスのパンデミックにより、世界中の株式市場が暴落しました。
- 2024年8月(円キャリートレード巻き戻し): 米国VIXが65まで急騰。日本の金利上昇により、円キャリートレードが一気に巻き戻され、株式市場が混乱しました。
これらの事例では、VIXが40を大きく超え、市場が極度の混乱状態にあったことを示しています。VIXが異常に高い水準に達した後は、市場が落ち着きを取り戻し、VIXが低下する傾向があります。
VIX指数を投資に活用する方法
(1) VIX高騰時の買い場判断
VIX指数が高騰している時は、市場全体に不安感が広がっている状態です。この時、企業の業績が悪化しているわけではなく、単に市場心理が悪化している場合があります。
VIX高騰時は、割安な株を追加購入するチャンスとなる可能性があります。ただし、VIXが高いだけで購入を判断するのではなく、企業の財務状況や業績を確認し、長期的な視点で投資することが重要です。
(2) VIX関連ETFによるヘッジ
VIX関連ETF(例: VIX短期先物指数ETF)に投資することで、株価下落時のヘッジ(リスク回避)として活用できます。
VIXと株価は逆相関関係にあるため、株価が下落してVIXが上昇すると、VIX関連ETFの価格が上昇します。これにより、株式ポートフォリオの損失を一部相殺できます。
ただし、VIX関連ETFは短期トレンドを追う投資家向けであり、長期保有には適さないことに注意が必要です。VIX先物とVIX現物指数には乖離があり、ETFのパフォーマンスは指数と一致しない場合があります。
(3) 注意点とリスク
VIX指数を投資に活用する際の注意点は以下の通りです。
- 過度な依存は避ける: VIX指数が高いからといって必ずしも株価が下落するわけではありません。他の指標や企業の業績も併せて確認することが重要です。
- パニック売りは避ける: VIX急騰時にパニック売りをすると、底値で売却してしまう可能性があります。冷静な判断を心がけましょう。
- 長期保有には不向き: VIX関連ETFは短期トレンドを追う投資家向けであり、長期保有には適しません。
まとめ:VIX指数でリスク管理を強化する
日経VIX指数(日経平均VI)は、日本株市場の恐怖指数であり、投資家の不安心理を数値化した指標です。VIXと株価は逆相関関係にあり、VIX上昇時は株価下落、VIX低下時は株価上昇の傾向があります。
VIX数値の目安は、10-20で通常推移、20超えで不安上昇、30超えで注意、40超えで市場混乱を示します。VIX高騰時は割安株の買い場となる可能性があり、VIX関連ETFでヘッジも可能です。
次のアクション:
- 日経電子版(https://www.nikkei.com/smartchart/?code=N145/O)で日経VIXのチャートを確認する
- 日経VIXと日経平均株価の動きを比較し、逆相関関係を理解する
- VIX高騰時には冷静に市場を分析し、長期的な視点で投資判断を行う
- VIX関連ETFの活用を検討する場合は、短期保有を前提とする
VIX指数を賢く活用し、リスク管理を強化した投資を実践しましょう。
