日本の保険株を米国市場で取引したいけれど、どうすればいいか分からない...
東京海上ホールディングス(証券コード8766)は、日本を代表する損害保険会社であり、国内シェアトップクラスの企業です。実は、米国市場でADR(American Depositary Receipt、米国預託証券)として取引されており、日本人投資家も米国株口座で投資できます。しかし、「ADRって何?」「東京証券取引所の株式と何が違うの?」といった疑問を持つ方も多いでしょう。
この記事では、東京海上ホールディングスADRの仕組み、取引方法、投資のメリット・デメリット、日本株との違いを詳しく解説します。
この記事のポイント:
- 東京海上ADR(ティッカー:TKOMY)は米国OTC市場で取引され、時価総額$71.723B(約10兆円)
- 配当利回り約3%、5年間の配当成長率+22.12%と安定成長している
- 2024年6月に配当を$0.76から$0.80に増配(3%以上増)し、株主還元を強化
- 2024年度は3大損保(東京海上・MS&AD・SOMPOホールディングス)が過去最高益を記録
- メリット:ドル建て資産として保有、配当成長性/デメリット:為替リスク、OTC市場の流動性低下
1. 東京海上ホールディングスADRとは何か
東京海上ホールディングスADRとは、日本を代表する損害保険会社「東京海上ホールディングス(証券コード8766)」が米国市場で発行している米国預託証券(ADR)のことです。ティッカーシンボルは「TKOMY」で、米国のOTC(店頭)市場で取引されています。
基本情報(2025年1月時点):
- 銘柄名: Tokio Marine Holdings Inc.
- ティッカーシンボル: TKOMY
- 取引市場: OTC Markets(店頭市場)
- 時価総額: $71.723B(約10兆円)
- PER(株価収益率): 10.67
- 配当利回り: 3.04%
- 52週レンジ: $30.14 - $46.23
- 配当: 年2回(半年ごと)、年間$1.32
(出典: Morningstar https://www.morningstar.com/stocks/pinx/tkomy/quote、NASDAQ https://www.nasdaq.com/market-activity/stocks/tkomy)
東京海上ホールディングスは、損害保険を中心に生命保険、金融サービスを提供するグローバル企業で、日本の3大損保(東京海上・MS&AD・SOMPOホールディングス)の中で時価総額が最大です。特に海外事業の規模が大きく、2008年以降に米国で4つの専門保険会社(Philadelphia Consolidated、Delphi Financial、HCC、PURE)を買収し、米国市場での存在感を高めています。
2. ADRの仕組み(米国預託証券の基礎知識)
(1) ADR(American Depositary Receipt)とは
ADR(米国預託証券)は、外国企業の株式を米国市場で取引できるようにした証券です。仕組みは以下の通りです。
ADRの仕組み:
- 外国企業(例: 東京海上ホールディングス)の株式を預託銀行が保管
- 預託銀行がその株式を担保にADRを発行
- 投資家は米ドル建てでADRを購入・売却
- 配当金も米ドルで受け取る
ADRを利用することで、米国の投資家は日本の証券取引所にアクセスせずに日本株に投資できます。同様に、日本人投資家も米国株口座で東京海上ホールディングスを取引できるメリットがあります。
(2) OTC市場での取引(TKOMY)
TKOMYは米国のOTC Markets(店頭市場)で取引されています。OTC市場とは、NYSE(ニューヨーク証券取引所)やNASDAQ(ナスダック)のような取引所を経由せず、証券会社間で直接取引される市場です。
OTC市場の特徴:
- 取引所上場銘柄よりも流動性が低い
- スプレッド(買値と売値の差)が広がりやすい
- 成行注文ではなく指値注文が推奨される
- リアルタイム株価は証券会社のプラットフォームで確認可能
OTC市場は流動性が低いため、大量の売買をする際には価格が大きく動く可能性があります。少額投資家にとっては問題ありませんが、大口取引の場合は注意が必要です。
3. 東京海上ホールディングスの企業概要と業績
(1) 損害保険大手・国内シェアトップクラス
東京海上ホールディングスは、以下の事業を展開する総合保険グループです。
主要事業:
- 損害保険: 自動車保険、火災保険、海上保険など(国内トップクラスのシェア)
- 生命保険: 東京海上日動あんしん生命
- 海外保険事業: 米国、欧州、アジアでの保険事業(特に米国での買収実績が豊富)
- 金融サービス: 資産運用、リスクコンサルティング
日本の3大損保(東京海上・MS&AD・SOMPOホールディングス)は、国内市場シェア88%を占めており、安定した収益基盤を持っています。
(2) 2024年の業績(過去最高益、3大損保の比較)
2024年度、日本の3大損保は2期連続で過去最高益を記録しました。
2024年度の業績ハイライト:
- 東京海上、MS&AD、SOMPOホールディングスの3社すべてが過去最高益
- 自然災害リスクの適切な価格設定と、海外事業の成長が寄与
- 東京海上は3大損保の中で時価総額が最大
(出典: S&P Global「Tokio Marine, MS&AD Insurance expect lower profits in fiscal 2025」https://www.spglobal.com/market-intelligence/en/news-insights/articles/2025/7/tokio-marine-msad-insurance-expect-lower-profits-in-fiscal-2025-90332281)
ただし、2025年度については減益予想も出ており、業績の変動リスクには注意が必要です。
(3) 海外事業の規模が最大(米国での買収実績)
東京海上は、3大損保の中で海外事業の規模が最も大きいのが特徴です。
海外事業の特徴:
- 2008年以降、米国で4つの専門保険会社を買収(Philadelphia Consolidated、Delphi Financial、HCC、PURE)
- 米国市場での存在感が強く、グローバルな収益基盤を確立
- 海外事業は全体収益の約40-50%を占める
このグローバル展開が、長期的な成長の原動力となっています。
4. 東京海上ホールディングスADRの取引方法
(1) 米国株取引可能な証券会社(Nasdaq等)
米国でTKOMYを取引する場合、以下の証券会社が利用可能です。
米国の主要証券会社:
- Interactive Brokers: プロ向けプラットフォーム、手数料が安い、グローバル市場に対応
- Fidelity: 米国最大級のネット証券、豊富な情報ツール
- Charles Schwab: 手数料無料、初心者向けのサポートが充実
NASDAQの公式サイト(https://www.nasdaq.com/market-activity/stocks/tkomy)では、株価、配当履歴、SEC提出書類などの公式データを確認できます。
(2) 日本の証券会社での取扱(moomoo証券等)
日本からTKOMYを取引する場合、以下の証券会社が対応しています。
日本の証券会社:
- moomoo証券: リアルタイムチャート、アナリスト評価、財務データを日本語で提供
- SBI証券: 米国株取引に対応、手数料0.495%(上限22ドル)
- 楽天証券: 楽天ポイントが貯まる、UIが使いやすい
- マネックス証券: 情報ツールが充実
日本語での情報提供やサポートを重視する場合、日本の証券会社を選ぶと便利です。
(出典: moomoo証券「東京海上ホールディングス (ADR) (TKOMY)」https://www.moomoo.com/ja/stock/TKOMY-US)
(3) 購入時の注意点(指値注文推奨)
OTC市場は流動性が低いため、以下の点に注意してください。
購入時の注意点:
- 成行注文は避ける: 思わぬ高値で約定する可能性がある
- 指値注文を使う: 希望価格を指定して注文を出す
- 複合チャートで価格確認: 東京証券取引所の株価とADR価格を比較し、乖離がないか確認
- 為替レートを考慮: ドル円レートの変動も価格に影響する
複合チャートは、Nikkei225jp(https://nikkei225jp.com/adr/adr.php?a=8766)などで確認できます。
5. ADR投資のメリットとデメリット
(1) メリット:ドル建て資産、配当利回り約3%、配当成長率+22.12%
東京海上ADRに投資するメリットは以下の通りです。
メリット:
- ドル建て資産として保有: 円安時には為替差益が期待できる
- 配当利回り約3%: 安定した配当収入(年間$1.32、配当利回り3.04%)
- 配当成長率+22.12%: 5年間の配当成長率が高く、増配傾向
- 2024年6月に増配: $0.76から$0.80に増配(3%以上増)、株主還元を強化
- 米国口座で一元管理: 米国株と日本株ADRを同じ口座で管理できる
(出典: NASDAQ「Tokio Marine ADR Dividend History」https://www.nasdaq.com/market-activity/stocks/tkomy/dividend-history)
(2) デメリット:為替リスク、流動性が低い(OTC市場)、2025年減益予想
一方、デメリットも存在します。
デメリット:
- 為替リスク: 円高・ドル安時には為替差損が発生する
- 流動性が低い: OTC市場のため、大量売買時に価格が動きやすい
- 2025年減益予想: 2024年度は過去最高益だったが、2025年度は減益予想も出ている
- 配当性向26.65%: 増配余地はあるが、過度な期待は禁物
- 東京市場との価格乖離: 為替や市場の需給により、東京株価と乖離する可能性
(3) 配当の二重課税と外国税額控除
ADRの配当には、米国と日本で二重課税が発生します。
配当課税の仕組み:
- 米国で10%源泉徴収(ADR配当は米国内の配当として扱われる)
- 日本でも課税されます。詳しくは税理士や国税庁のウェブサイトをご確認ください
- 外国税額控除で一部調整可能(詳細は税理士や国税庁に確認)
外国税額控除制度を利用すれば、米国で課税された分の一部を日本の所得税から差し引けますが、計算は複雑です。不明点があれば、税理士や国税庁のウェブサイトを参照してください。
(出典: 国税庁「外国税額控除」https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1240.htm)
6. 日本株との違いと投資判断のポイント
東京海上ADRと東京証券取引所の株式には、以下のような違いがあります。
主な違い:
| 項目 | ADR(TKOMY) | 東京証券取引所(8766) |
|---|---|---|
| 通貨 | 米ドル | 日本円 |
| 取引市場 | OTC Markets | 東京証券取引所 |
| 流動性 | 低い | 高い |
| 為替リスク | あり | なし |
| 配当課税 | 米国10%+日本20.315% | 日本20.315% |
| 配当支払 | 年2回(米ドル) | 年2回(円) |
投資判断のポイント:
- ドル建て資産を増やしたい場合: ADRが適している
- 流動性を重視する場合: 東京証券取引所が適している
- 配当成長性を重視する場合: ADR(5年配当成長率+22.12%)が適している
- 為替リスクを避けたい場合: 東京証券取引所が適している
最終的な投資判断は自己責任で行ってください。自分の投資スタイルやリスク許容度に合った選択をすることが重要です。
まとめ:東京海上ADRへの投資判断
東京海上ホールディングスADR(TKOMY)は、米国OTC市場で取引される米国預託証券で、時価総額$71.723B(約10兆円)の大型株です。配当利回り約3%、5年間の配当成長率+22.12%と安定成長しており、2024年6月には増配も実施されました。
要点整理:
- TKOMY(東京海上ADR)は米国OTC市場で取引、時価総額$71.723B、PER 10.67
- 配当利回り約3%、5年配当成長率+22.12%、2024年6月に増配($0.76→$0.80)
- 2024年度は3大損保が過去最高益を記録、東京海上は時価総額最大で海外事業が最も大きい
- moomoo証券、SBI証券、楽天証券、マネックス証券などで購入可能
- メリット:ドル建て資産、配当成長性/デメリット:為替リスク、OTC市場の流動性、2025年減益予想
- 配当は年2回(半年ごと)、次回権利落ち日は2025年9月29日
次のアクション:
- moomoo証券やNASDAQで最新株価と配当情報を確認する
- 証券会社で米国株口座を開設し、NISA口座の利用を検討する
- 東京証券取引所株価とADR価格を複合チャートで比較する
- 為替レート(ドル円)の動向を注視する
- 少額から投資を始め、長期的な視点で配当再投資を検討する
投資判断は最終的に自己責任で行ってください。リスクを理解し、自分の投資スタイルに合った判断をしましょう。
よくある質問:
Q1: 東京海上ADRと東京証券取引所の株式の違いは何ですか? A: ADRは米ドル建てで米国OTC市場で取引され、配当も米ドルで支払われます。一方、東京証券取引所の株式は円建てで、配当も円で支払われます。為替の影響を受けるか否かが大きな違いです。
Q2: 日本の3大損保の中で東京海上を選ぶメリットは何ですか? A: 時価総額が最大で、海外事業の規模が3大損保の中で最も大きいのが特徴です。配当成長率+22.12%(5年間)と安定成長しており、配当利回りも約3%と魅力的です。
Q3: 東京海上ADRの配当スケジュールはいつですか? A: 配当は年2回、半年ごとに支払われます。次回の権利落ち日は2025年9月29日です。2024年6月には増配($0.76→$0.80、3%以上増)が実施されました。
Q4: ADR投資時の配当にかかる税金はどうなりますか? A: 配当金は米国で10%源泉徴収され、その後日本で約20.315%課税されます。外国税額控除制度を利用すれば、米国で課税された分の一部を日本の所得税から差し引けますが、計算は複雑です。詳細は税理士や国税庁に確認してください。
Q5: 2025年度は減益予想と聞きましたが、投資しても大丈夫ですか? A: 2024年度は過去最高益を記録しましたが、2025年度は減益予想も出ています。ただし、配当成長率は高く、配当性向26.65%と増配余地は十分あります。短期的な業績変動よりも、長期的な配当成長性を重視する投資家に適しています。投資判断は自己責任で行ってください。
※この記事は2025年1月時点の情報に基づいています。最新の株価や業績については、公式サイトや証券会社の情報をご確認ください。投資判断は自己責任で行ってください。
