日本企業のADRに投資したいけれど、どの銘柄があるのか分からない...
米国市場で日本株を取引できるADR(米国預託証券)に興味を持ったものの、「どの日本企業がADRを発行しているの?」「ティッカーは何?」「どの取引所で買えるの?」と疑問だらけではありませんか?
この記事では、日本株ADRの完全一覧を業種別・取引所別に整理し、投資方法、メリット・デメリット、注意点まで網羅的に解説します。
この記事のポイント:
- 日本株ADRは約300銘柄が登録、そのうち約20銘柄がNYSE/NASDAQに上場
- 主要銘柄:トヨタ(TM)、ソニー(SONY)、三菱UFJ(MUFG)、三井住友(SMFG)、ホンダ(HMC)等
- Sponsored ADR(企業主導型)とUnsponsored ADR(銀行発行型)の2種類がある
- メリット:少額投資、翌日株価予測の参考に/デメリット:為替リスク、預託銀行手数料
- 日本の主要ネット証券(楽天、マネックス、SMBC日興等)で取引可能
1. 日本株ADRとは:仕組みと特徴
まずADRの基本的な仕組みを理解しましょう。
(1) 米国預託証券(ADR)の基本的な仕組み
ADR(American Depositary Receipt:米国預託証券)とは、米国の銀行が外国企業の株式を預かり、それを裏付けとして米国市場で発行する証券です。外国企業の株式を、米国株と同様にドル建てで取引できるようにする仕組みです。
例えば、トヨタのADRは、シティバンク等の預託銀行が東京証券取引所でトヨタ株を購入し、それを裏付けとしてNYSEに上場したものです。投資家は米国市場でティッカー「TM」を検索すれば、トヨタ株をドル建てで購入できます。
(2) 日本株ADRの市場規模(約300銘柄)
2025年6月時点で約300銘柄の日本株ADRが登録されています。これは日本の全上場企業約3,900社(2025年4月時点)の約8%に相当します。
そのうち、NYSE/NASDAQなど主要取引所に上場しているのは約20銘柄、残りの約280銘柄はOTC市場(店頭市場)で取引されています。
(3) ADR変換比率と取引単位
ADRには「変換比率」があり、1ADRが原株式の何株分に相当するかが銘柄ごとに異なります。例えば、トヨタは1ADR=原株2株、ソニーは1ADR=原株1株、三井住友FGは1ADR=原株0.6株といった具合です。
また、日本市場では単元株制度(100株単位での取引)が主流ですが、ADRは1株から取引可能です。少額から投資できる点は大きなメリットです。
2. 日本株ADR完全一覧(業種別・取引所別)
日本株ADRの主要銘柄を取引所別・業種別に整理します。
(1) NYSE/NASDAQ上場ADR(約20銘柄)
主要取引所に上場している日本株ADRは以下の通りです:
自動車:
- トヨタ自動車(TM - NYSE)
- 本田技研工業(HMC - NYSE)
電機・エレクトロニクス:
- ソニーグループ(SONY - NYSE)
- キヤノン(CAJ - NYSE)
- パナソニック(PCRFY - OTC、以前はNYSE)
金融:
- 三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG - NYSE)
- 三井住友フィナンシャルグループ(SMFG - NYSE)
- みずほフィナンシャルグループ(MFG - NYSE)
通信:
- NTT(NTTYY - OTC、以前はNYSE)
- KDDI(KDDIY - OTC)
製造業・その他:
- デンソー(DNZOY - OTC)
- 三菱商事(MSBHY - OTC)
- 伊藤忠商事(ITOCY - OTC)
(2) OTC市場ADR(約280銘柄)
OTC市場(店頭市場)で取引される日本株ADRは約280銘柄あります。主要銘柄には以下が含まれます:
- セブン&アイ・ホールディングス(SVNDY)
- ファーストリテイリング(FRCOY)
- 任天堂(NTDOY)
- ソフトバンクグループ(SFTBY)
- 武田薬品工業(TAK - NYSE、Sponsored ADR)
完全な一覧は、TopForeignStocks.com(https://topforeignstocks.com/foreign-adrs-list/the-full-list-of-japanese-adrs/)で確認できます。
(3) 業種別分布(自動車・金融・電機・通信・商社等)
日本株ADRは、製造業(自動車、産業用ロボット、工作機械)に強みがある日本企業が多数を占めます。特に以下の業種が目立ちます:
- 自動車: トヨタ、ホンダ、日産、マツダ、スバル等
- 金融: 3メガバンク(三菱UFJ、三井住友、みずほ)
- 電機・エレクトロニクス: ソニー、キヤノン、パナソニック等
- 通信: NTT、KDDI等
- 商社: 三菱商事、伊藤忠商事、三井物産等
3. Sponsored ADRとUnsponsored ADRの違い
ADRには2つのタイプがあります。
(1) Sponsored ADR(企業主導型)の特徴
Sponsored ADRは、企業と預託銀行が正式に契約して発行するADRです。約80銘柄が該当します。
特徴:
- NYSE/NASDAQなど主要取引所に上場
- 企業が公式に認めているため、情報開示が充実
- 配当金の支払いや株主総会の議決権行使が容易
- 例:トヨタ(TM)、ソニー(SONY)、武田薬品(TAK)
(2) Unsponsored ADR(銀行発行型)の特徴
Unsponsored ADRは、預託銀行(Bank of New York Mellon、JPMorgan、Citibank、Deutsche Bank等)が企業の直接的な関与なしに発行するADRです。
特徴:
- OTC市場(店頭市場)で取引されることが多い
- 企業が公式に関与していないため、情報開示は限定的
- 預託銀行手数料が高めの場合がある
- 例:任天堂(NTDOY)、ファーストリテイリング(FRCOY)
(3) どちらを選ぶべきか
投資初心者や長期保有を考える投資家には、Sponsored ADRの方が安心です。理由は以下の通りです:
- 企業が公式に認めているため、情報開示が充実
- 主要取引所上場で流動性が高い
- 配当金の受取や議決権行使がスムーズ
Unsponsored ADRは、流動性が低い、情報が限定的、預託銀行手数料が高めといったデメリットがあるため、投資判断には注意が必要です。
4. 日本株ADR投資のメリット・デメリット
ADR投資には明確なメリットとデメリットがあります。
(1) メリット:少額投資・オプション取引・翌日予測
少額投資: ADRは1株から取引可能です。日本市場の単元株制度(100株単位)と異なり、少額から投資できます。例えば、トヨタ株を東京証券取引所で買うには数十万円必要ですが、ADRなら数千円から購入できます。
オプション取引: ADRにはオプション取引が可能な銘柄があります。証拠金が少額で済むため、より戦略的な投資が可能です。
翌日株価予測: 日本市場が閉まった後も、米国市場でADRは取引されます。日本市場引け後のニュースに反応してADR価格が変動するため、翌日の日本株の値動きを予測する参考指標として活用できます。
(2) デメリット:為替リスク・預託銀行手数料・価格乖離
為替リスク: ADRはドル建てで取引されるため、為替レートの変動リスクがあります。円高ドル安になると、円換算での資産価値が減少します。
例:購入時1ドル=150円→売却時1ドル=130円の場合、ドル建てで利益が出ていても円換算では損失となる可能性があります。
預託銀行手数料: 預託銀行に支払う管理手数料が年間0.25-5セント/株の範囲で、四半期または年次で発生します。この費用は取引手数料や為替手数料とは別にかかります。配当受取時に差し引かれることが多いです。
価格乖離: ADR価格は基本的に日本株の円→ドル換算価格に連動しますが、米国市場での需給により乖離(プレミアム・ディスカウント)が生じることがあります。
(3) 2024-2025年の上場廃止事例
最近、複数の日本企業ADRが上場廃止となっています:
- NTTデータグループ(2025年9月東証上場廃止)
- 三菱重工業(2024年9月OTC Sponsoredに変更)
- JSR(2024年6月東証上場廃止)
- ベネッセホールディングス(2024年5月東証上場廃止)
投資先企業の上場維持状況を定期的に確認する必要があります。
5. 日本株ADRの投資方法と証券会社
実際にADRを購入する方法を見ていきましょう。
(1) 日本の証券会社での取引方法
日本株ADRは、以下の主要ネット証券で購入できます:
- 楽天証券
- マネックス証券
- SMBC日興証券
- SBI証券(米国株口座で取引可能)
いずれも米国株口座を開設後、ティッカーシンボル(例:TM、SONY、MUFG等)で検索して注文を出すことができます。
(2) 取引手数料・為替手数料・預託銀行手数料
ADR取引には3種類の手数料がかかります:
取引手数料: 証券会社により異なりますが、一般的に約定代金の0.495%(税込、上限22ドル程度)です。新NISA口座(2024年〜)を利用すれば、米国株(ADR含む)の取引手数料が無料になる証券会社もあります。
為替手数料: 日本円から米ドルへの両替時にかかる手数料です。証券会社により異なりますが、片道25銭程度が一般的です。
預託銀行手数料: 年間0.25-5セント/株の範囲で、四半期または年次で発生します。配当受取時に差し引かれることが多いです。
(3) 主要ネット証券の比較
各証券会社のADR取引サービスを比較すると:
- 楽天証券: ADRの仕組みを詳しく解説した特集ページあり。初心者向け情報が充実
- マネックス証券: 手数料体系が明確。ADR取引ガイドが充実
- SMBC日興証券: ADR基本用語の解説が丁寧。対面相談も可能
- SBI証券: 米国株取扱銘柄が豊富。新NISA口座で手数料無料
各社の最新情報は公式サイトでご確認ください。
6. まとめ:日本株ADRで海外から日本企業に投資
日本株ADRの完全一覧と投資方法を解説しました。
まとめのポイント:
- 日本株ADRは約300銘柄、主要銘柄はトヨタ、ソニー、3メガバンク等
- Sponsored ADR(企業主導型)の方が情報開示が充実し、初心者向け
- メリット:少額投資、翌日予測/デメリット:為替リスク、預託銀行手数料
- 日本の主要ネット証券で取引可能、新NISA口座なら手数料無料
- 投資判断は自己責任で。為替・税金の影響も理解が必要
次のアクション:
- TopForeignStocks.comで最新のADR一覧を確認する
- 各企業の公式IR(投資家向け情報)で最新決算情報を確認する
- 証券会社の手数料や取扱銘柄を比較検討する
- NISA口座の活用を検討する
- 為替リスクや税金についても理解を深める
重要な注意事項:
- 為替リスク:ドル建て投資のため、円高ドル安になると円換算での資産価値が減少します。
- 預託銀行手数料は外国税額控除の対象外です。実質的なコストとして認識しておく必要があります。
- ADR価格と日本株の価格は連動しますが、米国市場での需給により乖離(プレミアム・ディスカウント)が生じることがあります。
- 2024-2025年に複数の日本企業ADRが上場廃止となっています。投資先企業の上場維持状況を定期的に確認してください。
- 投資判断は自己責任で行ってください。この記事は情報提供を目的としており、特定銘柄の購入を推奨するものではありません。
※この記事の情報は2025年時点のものです。最新情報は各公式サイトでご確認ください。
