ニデック(6594)ADRの株価動向と投資ガイド:米国市場で日本株に投資する方法

著者: Single Stock編集部公開日: 2025/11/17

ニデック(6594)ADRの株価と投資ガイド|米国市場から日本株に投資する方法

「ニデック(旧日本電産)のADRって何?」「米国市場でニデック株を買えるの?」と疑問に感じている方は多いのではないでしょうか。ニデックADR(ティッカー: NJDCY)は米国OTC市場で取引されており、日本の証券会社から簡単に購入できます。

この記事では、ニデックADRの仕組み、株価・配当、取引方法、2024年の会計不正問題の影響、東証のニデック株との比較まで徹底解説します。

この記事のポイント:

  • ニデックADR(ティッカー: NJDCY)は米国OTC市場に上場し、米ドル建てで取引可能
  • 2024年10月に1株を2株に分割する株式分割を実施
  • 2024年後半に中国子会社で会計不正疑惑が発覚し、東証から「特別注意銘柄」に指定
  • 2025年10月にADRは1日で22.44%急落、日経平均からも除外
  • 配当課税は日本で20.315%のみ(米国非課税で二重課税なし)

ニデック(6594)ADRとは|NJDCY(OTC市場)で米国から日本株に投資

(1) ニデックADR(ティッカー: NJDCY)の基本情報

ニデックADRは、ニデック株式会社の株式を米国OTC市場で取引できる形にした米国預託証券(ADR)です。ティッカーシンボルは「NJDCY」で、米ドル建てで取引されます。

ニデックADRの基本情報:

  • ティッカーシンボル: NJDCY
  • 取引市場: OTC市場(Over-The-Counter、店頭市場)
  • 東証の証券コード: 6594(ニデック株式会社)
  • ADR比率: 1 ADR = 0.25株(株式分割前)
  • 時価総額: 約235.9億ドル(2025年2月時点)

ADRの歴史: ニデックは2016年5月2日にNYSE(ニューヨーク証券取引所)から上場廃止となり、以降はOTC市場で取引されています。OTC市場は主要取引所と比べて流動性が低く、スプレッドが広がる可能性があるため、注意が必要です。

※出典: Yahoo Finance「Nidec Corporation (NJDCY)」https://finance.yahoo.com/quote/NJDCY/、Nasdaq「Nidec Corporation ADR (NJDCY)」https://www.nasdaq.com/market-activity/stocks/njdcy

(2) ニデックの企業概要(精密モーター大手、EV・産業用ロボット)

ニデック株式会社(旧日本電産)は、精密モーターの世界的大手企業です。1973年に永守重信氏が創業し、HDD(ハードディスクドライブ)用モーターで世界シェア1位を獲得しました。

ニデックの主な事業:

1. EV(電気自動車)駆動モーター 電気自動車の心臓部である駆動モーター(トラクションモーター)を製造。EV市場の成長に伴い、今後の成長分野として注目されています。

2. 産業用精密モーター 産業用ロボット、工作機械、家電製品用のブラシレスDCモーター(電力効率、静音性、耐久性に優れたモーター)を製造。

3. HDD用モーター ハードディスクドライブ用のスピンドルモーターで世界シェア約80%。データセンター向け需要は堅調です。

4. 家電・商業用機器 エアコン、洗濯機、冷蔵庫、業務用空調等のモーターを製造。

ニデックはモーター技術を核に、EV・産業用ロボット・データセンターなど、成長分野に事業を展開しています。

※参考: ニデック公式サイト https://www.nidec.com/ja/

ニデックADRの株価・配当・2024年株式分割の影響

(1) 2024年10月の株式分割(1株→2株)

2024年10月9日、ニデックは1株を2株に分割する株式分割を実施しました。

株式分割の詳細:

  • 分割比率: 1株→2株(2対1の株式分割)
  • 基準日: 2024年9月27日
  • 効力発生日: 2024年10月9日

株式分割後の影響:

  • 保有株数: 2倍になる(例: 100株→200株)
  • 1株あたりの価格: 半分になる(例: 10,000円→5,000円)
  • 保有資産の総額: 変わらない(200株 × 5,000円 = 1,000,000円)

ADR保有者も同様に、保有ADR数が2倍になり、1ADRあたりの価格は半分になります。過去の株価データを見る際は、分割調整が必要です。

※出典: moomoo証券「ニデック (ADR)は2024年10月9日付をもって1株を2株に分割」https://www.moomoo.com/ja/news/post/44020518/nidec-adr-to-carry-out-2-for-1-stock-split

(2) 配当利回り0.94%と配当状況

ニデックADRの配当状況は以下の通りです。

配当データ(2025年2月時点):

  • 配当利回り: 約0.94%
  • 配当支払頻度: 年2回(中間配当・期末配当)

注意: 2025年度は中国子会社の会計不正問題により、中間配当を見送ることが発表されています。期末配当の支払いも、第三者委員会の調査結果次第で変更される可能性があります。

配当金は米ドル建てで証券口座に入金されます。日本株ADRは米国では配当非課税、日本で20.315%課税されるため、東証で直接買う場合と税率は同じです。

※出典: Nasdaq「Nidec Corporation ADR (NJDCY)」https://www.nasdaq.com/market-activity/stocks/njdcy

(3) OTC市場の特徴(流動性が低い)

ニデックADRはOTC市場で取引されるため、主要取引所(NYSE・NASDAQ)上場のADRと比べて以下の特徴があります。

OTC市場の特徴:

  • 流動性が低い: 取引量が少なく、売買が成立しにくい場合がある
  • スプレッドが広い: 買値と売値の差が大きく、取引コストが高くなる可能性
  • 情報開示が限定的: 主要取引所と比べて情報開示義務が緩い

大口の売買注文では価格が不利に動く可能性があるため、注意が必要です。

※参考: Nasdaq「Nidec Corporation ADR (NJDCY)」https://www.nasdaq.com/market-activity/stocks/njdcy

ニデックADRの取引方法と証券会社(moomoo証券・SBI証券等)

(1) 米国株口座の開設と取引手順

ニデックADRを購入するには、以下の手順で証券会社に口座を開設します。

1. 証券会社で口座開設 主要ネット証券(moomoo証券、SBI証券、楽天証券、マネックス証券等)で証券総合口座を開設します。

2. 外国株式口座を開設 証券総合口座開設後、外国株式取引専用の口座を開設します(オンラインで手続き可能)。

3. 米ドルを入金または購入 ニデックADRは米ドル建てで取引されるため、事前に米ドルを証券口座に入金するか、円から米ドルに両替します。

4. NJDCYを検索して購入 通常の米国株と同じ取引画面で、ティッカーシンボル「NJDCY」を検索し、購入します。

(2) 日本の主要証券会社の取扱状況

日本の主要ネット証券は、すべて米国ADRの取引に対応しています。

moomoo証券:

  • 取扱銘柄: 米国株7,000銘柄以上(ニデックADRを含む)
  • 取引手数料: 業界最安級
  • リアルタイムチャート: 無料提供
  • NISA対応: 未対応(2025年2月時点)

SBI証券:

  • 取扱銘柄: 5,000銘柄以上(ニデックADRを含む)
  • 取引手数料: 約定代金の0.495%(最低0ドル、上限22ドル)
  • 為替手数料: 片道25銭
  • NISA対応: あり

楽天証券:

  • 取扱銘柄: 4,000銘柄以上(ニデックADRを含む)
  • 取引手数料: 約定代金の0.495%(最低0ドル、上限22ドル)
  • 為替手数料: 片道25銭
  • 楽天ポイント: 取引で貯まる・使える
  • NISA対応: あり

マネックス証券:

  • 取扱銘柄: 5,000銘柄以上(ニデックADRを含む)
  • 取引手数料: 約定代金の0.495%(最低0ドル、上限22ドル)
  • 為替手数料: 片道25銭(買付時は無料キャンペーンあり)
  • NISA対応: あり

各証券会社の手数料やサービス内容を比較し、自分に合った証券会社を選びましょう。

※参考: moomoo証券「ニデック (ADR)NJDCY株価リアルタイムチャート」https://www.moomoo.com/ja/stock/NJDCY-US

2024年会計不正問題と特別注意銘柄指定の影響

(1) 2024年後半の中国子会社会計不正疑惑

2024年後半、ニデックの中国子会社「Nidec Techno Motor」で会計不正疑惑が発覚しました。

会計不正問題の概要:

  • 発覚時期: 2024年後半
  • 対象子会社: Nidec Techno Motor(中国)
  • 疑惑内容: 売上の過大計上、棚卸資産の過大評価などの会計処理の不適切性
  • 調査状況: 第三者委員会による調査が進行中

経営への影響:

  • 2025年度の業績予想撤回: 会計不正の影響が不明確なため、通期業績予想を撤回
  • 中間配当見送り: 2025年度の中間配当を見送ることを発表
  • 投資家訴訟リスク: 会計不正により株価が下落したことで、投資家訴訟のリスクも浮上

※出典: AIInvest「Nidec's Accounting Crisis and Delisting Risk」https://www.ainvest.com/news/nidec-accounting-crisis-delisting-risk-reckoning-expansion-costs-corporate-culture-2511/

(2) 2025年10月の特別注意銘柄指定と日経平均除外

2025年10月27日、東京証券取引所はニデックを「特別注意銘柄」に指定しました。

特別注意銘柄指定の影響:

  • 投資家への警告: 内部管理体制に問題があるとして、投資家に注意を促す
  • 日経平均除外: 同日、日経平均株価の構成銘柄から除外(225銘柄→224銘柄)
  • 上場廃止リスク: 特別注意銘柄は上場廃止の前段階とされ、投資家は慎重な判断が求められる

市場の反応:

  • 東証: 一時ストップ安(19%下落)
  • ADR: 1日で22.44%急落

この問題により、ニデック株・ADRは大きく下落し、投資家に大きな損失をもたらしました。

※出典: Bloomberg「ニデック株が一時ストップ安、日経平均除外と特別注意銘柄指定で」https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2025-10-27/T4TB5QGOT0JK00

(3) ADR急落(1日で22.44%下落)と投資家への影響

会計不正問題と特別注意銘柄指定により、ニデックADRは1日で22.44%急落しました。

投資家への影響:

  • 資産価値の急激な減少: ADR保有者は1日で資産価値が約22%減少
  • 上場廃止リスク: 特別注意銘柄指定により、上場廃止のリスクが現実味を帯びる
  • 配当見送り: 2025年度の中間配当が見送られ、期末配当も不透明
  • 訴訟リスク: 投資家訴訟が提起される可能性があり、企業価値への影響が懸念される

今後の注意点:

  • 第三者委員会の調査結果を確認する
  • 2025年度の業績予想が再開されるまで、業績動向が不透明
  • 上場廃止リスクを考慮し、投資判断は慎重に行う

ニデックADRへの投資を検討する場合は、会計不正問題の進展を注視し、リスクを十分に理解した上で判断する必要があります。

※出典: AIInvest「Nidec's Accounting Crisis and Delisting Risk」https://www.ainvest.com/news/nidec-accounting-crisis-delisting-risk-reckoning-expansion-costs-corporate-culture-2511/

東証のニデック株との比較(価格差・配当課税・取引時間)

(1) ADRと東証株の価格差の要因(為替、取引時間)

ニデックADRと東証のニデック株(証券コード: 6594)は、実質的には同じ企業への投資ですが、以下の要因で価格差が生じることがあります。

価格差の主な要因:

1. 為替レート ADRは米ドル建て、東証株は円建てで取引されるため、為替レートの変動により価格差が生じます。

計算例:

  • 東証のニデック株: 5,000円(株式分割後)
  • ドル円レート: 150円/ドル
  • 1ADR = 0.25株(株式分割前)
  • 理論的なADR価格: (5,000円 × 0.25) ÷ 150円/ドル = 8.33ドル/ADR

実際のADR価格がこの理論値と異なる場合、裁定取引の機会が生じます。

2. 取引時間の違い 東証は日本時間9:00-15:00、米国OTC市場は日本時間22:30-翌5:00(冬時間は23:30-翌6:00)で取引されるため、時差により価格差が生じます。

例えば、東証の取引時間終了後に米国で重要な経済指標が発表された場合、ニデックADRは即座にその影響を反映しますが、東証株は翌営業日まで反映されません。

ADR価格と東証の円換算値を比較することで、翌日の日本株市場の動向を予測できる場合があります。

※参考: 日経225jp「ニデック ADR株価 PTS株価 複合チャート」https://nikkei225jp.com/adr/adr.php?a=6594

(2) 配当課税の違い(二重課税なし、日本で20.315%のみ)

日本株ADRの配当課税は、東証で直接買う場合と実質的に同じです。

ニデックADRの配当課税:

  • 米国: 非課税(日本企業ADRのため)
  • 日本: 20.315%(所得税15.315%、住民税5%)

東証のニデック株の配当課税:

  • 日本: 20.315%(所得税15.315%、住民税5%)

日本株ADRは米国で配当非課税のため、二重課税はありません。配当課税の面では、ADRと東証株に実質的な違いはありません。

ただし、ADR購入時には為替手数料(片道25銭程度)が別途発生するため、総コストは東証で直接買う場合と比較検討する必要があります。

まとめ|ニデックADR投資は会計不正リスクに要注意

ニデックADR(ティッカー: NJDCY)は米国OTC市場で取引されており、米ドル建てでニデック株に投資できます。しかし、2024年後半の会計不正問題により、東証から「特別注意銘柄」に指定され、上場廃止リスクが現実味を帯びています。

この記事のまとめ:

  • ニデックADR(NJDCY)は米国OTC市場に上場し、米ドル建てで取引可能
  • 2024年10月に1株を2株に分割する株式分割を実施
  • 2024年後半に中国子会社で会計不正疑惑が発覚し、東証から「特別注意銘柄」に指定
  • 2025年10月にADRは1日で22.44%急落、日経平均からも除外
  • 配当課税は日本で20.315%のみ(米国非課税で二重課税なし)

次のアクション:

  • 第三者委員会の調査結果を確認する
  • 2025年度の業績予想が再開されるまで、業績動向を注視する
  • 上場廃止リスクを考慮し、投資判断は慎重に行う
  • 流動性が気になる場合は、東証でニデック株(証券コード: 6594)を直接購入する

ニデックADRへの投資は、会計不正問題と上場廃止リスクを十分に理解した上で、自己責任で判断しましょう。

※2025年2月時点の情報です。会計不正問題の進展、株価、配当等は変更される可能性があるため、最新情報は東京証券取引所、ニデック公式IRサイト、各証券会社でご確認ください。

よくある質問

Q1ニデックADRのティッカーシンボルは何ですか?

A1ニデックADRのティッカーシンボルは「NJDCY」で、米国OTC市場に上場しています。東証のニデック株は証券コード6594です。

Q22024年の株式分割はADR保有者にどう影響しますか?

A22024年10月9日に1株を2株に分割しました。保有ADR数は2倍になりますが、1ADRあたりの価格は半分になり、保有資産の総額は変わりません。過去の株価データを見る際は分割調整が必要です。

Q32024年の会計不正問題は投資にどう影響しますか?

A3中国子会社の会計不正疑惑により、東証から「特別注意銘柄」に指定され、ADRは1日で22.44%急落しました。上場廃止リスクもあり、投資判断には慎重な評価が必要です。第三者委員会の調査結果を確認することが重要です。

Q4ニデックADRと東証株の違いは何ですか?

A4取引市場(米国OTC vs 東証)と通貨(米ドル vs 円)が異なりますが、同じ企業への投資です。取引時間も異なり、ADRは米国市場の取引時間(日本時間22:30-翌5:00)で売買できます。配当課税は両方とも日本で20.315%のみです。

Q5ニデックADRはどの証券会社で買えますか?

A5moomoo証券、SBI証券、楽天証券、マネックス証券などの主要ネット証券で米国株口座を開設すれば取引可能です。ただしOTC市場のため流動性は低く、スプレッドが広がる可能性があるため注意が必要です。

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Single Stock編集部

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