ファイザー(NYSE: PFE)とは?製薬大手の事業内容と配当・株価動向を解説

著者: Single Stock編集部公開日: 2025/11/13

1. ファイザー(NYSE: PFE)への投資関心が高まる背景

ヘルスケアセクターの安定性と高配当を求める日本人投資家の間で、ファイザー(Pfizer Inc., NYSE: PFE)への関心が高まっています。

ファイザーは、COVID-19ワクチン(コミナティ)で世界的に有名になった米国最大手の製薬会社です。配当利回りは約6.65%と高く、長期保有投資家に人気があります。一方で、COVID-19ワクチン売上の減少やPER約10倍という割安バリュエーションが注目を集めています。

この記事では、ファイザーの企業概要、主力製品、配当政策、最新動向(肥満治療薬参入等)、投資リスクを詳しく解説します。

この記事のポイント:

  • ファイザーは1849年創業の米国最大手製薬会社、時価総額1000億ドル超
  • 配当利回り6.65%(年間$1.72)と高配当だが、配当性向98.7%で増配余地は限定的
  • 2025年9月にMetseraを100億ドルで買収し肥満治療薬市場に参入
  • 主力薬エリキュースの特許切れ(2029年頃)、COVID-19ワクチン売上減少などリスクに注意

2. ファイザー企業概要と主力製品

(1) 企業概要(1849年創業、米国最大手製薬会社、時価総額1000億ドル超)

Pfizer Inc.は、1849年にニューヨーク市で創業された米国最大手の製薬会社です。170年以上の歴史を持ち、世界中で医薬品を販売しています。

企業情報:

  • 創業: 1849年
  • 本社: ニューヨーク州ニューヨーク市
  • CEO: Albert Bourla(2019年就任)
  • 従業員数: 約8万人以上(2024年時点)
  • 上場: NYSE(ニューヨーク証券取引所)
  • ティッカーシンボル: PFE
  • 時価総額: 約1000億ドル超

ファイザーは、COVID-19ワクチン(コミナティ、BioNTechと共同開発)で世界的に有名になり、パンデミック中に急成長しました。

(2) 主力製品(エリキュース、COVID-19ワクチン等)

ファイザーの主力製品は以下の通りです。

主力製品:

エリキュース(Eliquis):

  • 抗凝固剤(血液をサラサラにする薬)
  • 2024年売上74億ドル(総売上の11.6%)
  • 心房細動や深部静脈血栓症の治療に使用
  • 2029年頃に特許切れ予定(ジェネリック参入リスク)

COVID-19ワクチン(コミナティ):

  • BioNTechと共同開発
  • パンデミック中に数百億ドルの売上を記録
  • 2024年以降は需要減により売上が大幅に減少

その他の主力製品:

  • バキスブリ(がん治療薬)
  • プレブナー13/20(肺炎球菌ワクチン)
  • イブランス(がん治療薬)

エリキュースがファイザーの最大の収益源ですが、2029年頃に特許が切れるため、ジェネリック参入による売上減少が懸念されています。

(3) 収益構造とビジネスモデル

製薬業界のビジネスモデルは、特許で保護された独占期間中に高収益を上げ、特許切れ後はジェネリック医薬品の参入により売上が急減する「パテントクリフ(特許切れ)」が特徴です。

ファイザーの収益構造(2024年):

  • 総売上: 636億ドル(前年比6.84%増)
  • 純利益: 80.3億ドル(前年比279%増)
  • COVID-19ワクチン売上減少により、非COVID事業の成長が重要

ファイザーは、M&A(企業買収)や新薬開発パイプラインを通じて、特許切れによる売上減少を補う戦略を取っています。

3. ファイザーの配当・株主還元政策

(1) 高配当利回り(6.65%、年間$1.72)

ファイザーは高配当銘柄として知られており、長期保有投資家に人気があります。

配当情報(2025年11月時点):

  • 配当利回り: 6.65%
  • 年間配当: $1.72
  • 四半期配当: $0.43(年4回支払い)
  • 次回権利落ち日: 2025年11月7日 (出典: NASDAQ公式サイト)

配当利回り6.65%は、S&P500の平均配当利回り約1.5%を大きく上回っており、安定したインカム収入を求める投資家に適しています。

(2) 配当支払い履歴と安定性

ファイザーは、長期にわたって安定した配当を支払ってきました。

配当履歴:

  • 1974年以降、継続的に配当を支払い
  • 過去5年間の配当成長率: +2.53%
  • 将来の配当成長率予測: 1.55%と限定的 (出典: TradingView、MacroTrends)

ファイザーは「配当貴族」ではありませんが、長期的な配当支払い実績があり、安定性が高いと評価されています。

(3) 配当性向98.7%と増配余地の限定性

ファイザーの配当性向は98.7%と非常に高く、これは純利益のほぼ全額を配当に回していることを意味します。

配当性向の影響:

  • 増配余地が限定的(純利益が増加しない限り増配は困難)
  • 業績悪化時には減配リスクがある
  • 成長投資(R&D、M&A)への資金が制約される可能性

高い配当性向は、安定したインカム収入を求める投資家には魅力的ですが、成長性を重視する投資家にはリスク要因となります。

4. ファイザーの最新動向(2024-2025年)

(1) 肥満治療薬市場への参入(Metsera買収100億ドル)

ファイザーは2025年9月、Metseraを100億ドルで買収し、肥満治療薬市場に本格参入しました。

Metsera買収の詳細:

  • 買収額: 1株$47.50で計算、追加で$22.50支払い可能性(計100億ドル)
  • 主力薬: MET-233i(早期開発段階)
  • 臨床試験結果: 36日で体重8.4%減少を示す
  • 市場規模: 肥満治療薬市場は2030年に1000億ドル規模に成長予測 (出典: Bloomberg、2025年9月22日)

肥満治療薬市場は、Novo Nordisk(Wegovy)とEli Lilly(Zepbound)が先行しており、ファイザーは後発参入となります。競争は激しいですが、市場規模が大きいため、成功すれば大きな収益源となる可能性があります。

(2) 2025年Q3決算とガイダンス上方修正

ファイザーの2025年Q3決算は、アナリスト予想を上回る好調な結果となりました。

2025年Q3決算(2025年11月発表):

  • 売上: 226億ドル(アナリスト予想34億ドルを大幅に上回る)
  • 通期ガイダンスを上方修正
  • 「慎重な楽観論」との評価 (出典: TipRanks、Stock Analysis)

Q3決算の好調により、株価は一時的に上昇しましたが、長期的な成長見通しについては慎重な見方が続いています。

(3) アクティビスト投資家Starboard Valueの離脱

2025年11月、アクティビスト投資家Starboard Valueがファイザー株を全株売却しました。

Starboard Valueの動向:

  • 2023年にファイザー株を取得、経営改革を要求
  • 2025年11月に改革キャンペーン失敗と判断し全株売却
  • 経営刷新への期待が後退 (出典: Yahoo Finance、2025年11月)

Starboard Valueの離脱により、短期的な経営改革への期待は後退しましたが、長期的な成長戦略は変わりません。

5. ファイザー投資のリスクと注意点

(1) 主力薬エリキュースの特許切れリスク(2029年頃)

ファイザーの最大のリスクは、主力薬エリキュースの特許切れです。

特許切れの影響:

  • エリキュース売上: 2024年に74億ドル(総売上の11.6%)
  • 特許切れ予定: 2029年頃
  • ジェネリック参入による売上減少: 通常80-90%の売上減少

特許切れ後、ジェネリック医薬品が参入すると、価格が大幅に下がり、ファイザーの売上は急減します。この「パテントクリフ(特許切れ)」は製薬業界共通のリスクですが、エリキュースはファイザーの収益の11.6%を占めるため、影響が大きいと予想されます。

(2) COVID-19ワクチン売上減少と株価下落

COVID-19ワクチンの売上減少も、ファイザーの成長を鈍化させています。

COVID-19ワクチン売上の推移:

  • パンデミック中(2021-2022年): 数百億ドルの売上
  • 2024年以降: 需要減により売上が大幅に減少
  • 株価: 2021年の$50超から2024年には$30未満に下落

COVID-19ワクチンの需要減少により、ファイザーは非COVID事業の成長を強化する必要があります。

(3) 肥満治療薬開発の失敗リスクと後発参入の競争

肥満治療薬市場への参入にはリスクがあります。

リスク要因:

  • 開発失敗リスク: ファイザーは以前、肥満治療薬ダヌグリプロンを肝障害で開発中止した実績あり
  • 後発参入の競争劣位: Novo Nordisk(Wegovy)とEli Lilly(Zepbound)が先行
  • Metsera買収(100億ドル)は早期開発段階でリスクが高い

肥満治療薬市場は2030年に1000億ドル規模に成長すると予測されていますが、競争が激しく、市場シェア獲得は容易ではありません。

6. まとめ:ファイザー投資判断のポイント

ファイザー(NYSE: PFE)は、1849年創業の米国最大手製薬会社で、高配当銘柄として長期保有投資家に人気があります。

投資判断のポイント:

  • 高配当利回り: 6.65%(年間$1.72)と高配当、安定したインカム収入
  • 割安バリュエーション: PER約10倍、PBR1倍未満と割安水準
  • 肥満治療薬市場への参入: Metsera買収(100億ドル)で2030年1000億ドル市場を狙う

投資リスク:

  • 特許切れリスク: エリキュース(2029年頃)のジェネリック参入で売上減少
  • COVID-19ワクチン売上減少: 2021年の$50超から2024年には$30未満に株価下落
  • 高い配当性向: 98.7%で増配余地が限定的、業績悪化時の減配リスク
  • 肥満治療薬開発の失敗リスク: 後発参入の競争劣位

アナリスト評価(2025年11月時点):

  • コンセンサスレーティング: Hold(買い3、保留10、売り1)
  • 平均目標株価: $29.00(レンジ$24-$34)
  • 現在価格から約13.7%の上昇余地 (出典: TipRanks、Stock Analysis)

次のアクション:

ファイザーへの投資は、高配当と安定性を求める長期投資家に適しています。情報収集を続け、自己責任で投資判断を行いましょう。

よくある質問

Q1ファイザーとは何ですか?

A11849年創業の米国最大手製薬会社で、COVID-19ワクチン(コミナティ、BioNTechと共同開発)で有名です。ティッカーシンボルはPFE、ニューヨーク証券取引所(NYSE)に上場し、時価総額は約1000億ドル超です。主力製品はエリキュース(抗凝固剤)で、2024年売上74億ドルを記録しました。

Q2配当利回りはどのくらいですか?

A2約6.65%と高配当で、年間$1.72を四半期ごとに支払います(四半期配当$0.43)。配当性向は98.7%と高いため、増配余地は限定的です。過去5年間の配当成長率は+2.53%、将来の配当成長率予測は1.55%と緩やかです。長期的な配当支払い実績があり、安定したインカム収入を求める投資家に適しています。

Q3肥満治療薬への参入はどうなっていますか?

A32025年9月にMetseraを100億ドル(1株$47.50、追加$22.50)で買収し肥満治療薬市場に参入しました。主力薬MET-233iは臨床試験で36日で体重8.4%減少を示し、2030年に1000億ドル規模の市場を狙います。ただし、Novo Nordisk(Wegovy)とEli Lilly(Zepbound)が先行しており、後発参入の競争劣位リスクがあります。

Q4主なリスクは何ですか?

A4主力薬エリキュース(2024年売上74億ドル、総売上の11.6%)の特許切れ(2029年頃)によるジェネリック参入リスク、COVID-19ワクチン売上減少(2021年の$50超から2024年には$30未満に株価下落)、高い配当性向98.7%による増配余地の限定性と減配リスク、肥満治療薬開発の失敗リスク、後発参入による競争劣位があります。

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Single Stock編集部

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