ソフトバンクADRとは【米国市場で取引できる日本株】
ソフトバンクグループは日本を代表する投資会社で、東京証券取引所(証券コード9984)に上場していますが、米国市場ではADR(米国預託証券)としても取引されています。
「ソフトバンクのADRはどこで買えるのか」「東証株とADRの違いは何か」「どちらで買う方が有利なのか」といった疑問を抱えている投資家も多いでしょう。
この記事では、ソフトバンクADRの基本情報と日本からの投資方法、東証株との比較を詳しく解説します。
この記事のポイント:
- ソフトバンクグループのADR(SFTBY)は米国市場で米ドル建てで取引される
- ADRは日本の証券会社(SBI証券、楽天証券、マネックス証券等)から購入可能
- ADRはLevel 1(OTC市場)のため、流動性が低く、スプレッドに注意が必要
- 東証株とADRの違いは、取引時間、手数料、税制、為替リスク
- 手数料と税制のシンプルさを重視するなら東証株、米国株口座を活用したいならADRが選択肢
(1) ソフトバンクグループADR(SFTBY)の概要
ソフトバンクグループのADRは、ティッカーシンボル「SFTBY」で米国OTC(店頭市場)で取引されています。
基本情報:
- ティッカー: SFTBY
- 市場: OTC市場(Level 1 ADR)
- 配当利回り: 約0.19%(2025年時点)
- 年間配当: 約0.15ドル(ADR比率に依存)
ソフトバンクグループは、Arm、Alibaba、OpenAI、NVIDIAなどに投資する世界有数の投資会社で、その株式を米国市場でも取引できるのがADRの特徴です。
(2) ADRのメリット:米国株口座で購入可能
ADRの最大のメリットは、日本の証券会社の米国株口座で購入できることです。すでに米国株投資を行っている投資家にとって、ソフトバンクグループに投資する際の選択肢が増えます。
主なメリット:
- 米国株口座で一括管理できる
- 米国市場の取引時間(プレマーケット、アフターマーケット)で取引可能
- 米ドル建て資産として為替分散効果
ただし、ADRには為替リスクやカストディアンフィー(預託手数料)など、特有のコストもあります。
ADR(米国預託証券)の基本知識【仕組みと3つのレベル】
ADRの仕組みと種類を理解することで、ソフトバンクADRの特性をより深く理解できます。
(1) ADRの定義:預託銀行が外国株を預かり発行
ADR(American Depositary Receipt)は、米国の預託銀行が外国企業の株式を預かり、その証券として発行するものです。
仕組み:
- 預託銀行(J.P. Morgan、Citibank等)が外国株を預かる
- 預託銀行が米ドル建てのADRを発行
- 投資家は米国市場でADRを購入(外国株を間接的に保有)
- 配当や議決権は預託銀行を通じて行使
ADRは、米国の投資家が外国株に投資する際の手軽な手段として広く利用されています。
(2) Level 1・2・3の違い(OTC市場 vs 取引所上場)
ADRには3つのレベルがあり、それぞれ規制や取引市場が異なります。
Level 1(OTC市場):
- 最も簡易的なADR、OTC市場でのみ取引
- SEC(米国証券取引委員会)への報告義務が最小限
- 流動性が低く、スプレッドが広い可能性
- ソフトバンクグループのADR(SFTBY)はLevel 1
Level 2(取引所上場):
- NYSE、Nasdaqなどの取引所に上場可能
- 年次報告(Form 20-F)が必要
- 流動性が高く、取引しやすい
Level 3(資金調達可能):
- 資金調達が可能な最高レベルのADR
- 米国企業と同等のSEC報告義務
- 最も規制が厳しい
ソフトバンクグループのADRはLevel 1のため、Level 2/3と比べて流動性が低く、売買スプレッドが広い可能性があることに注意が必要です。
(3) ADR比率:1 ADRが何株の日本株に相当するか
ADR比率は、1株のADRが何株の原株(日本株)に相当するかを示す比率です。この比率は預託銀行によって設定され、銘柄ごとに異なります。
ADR比率の例:
- 1 ADR = 1株の日本株
- 1 ADR = 10株の日本株
ソフトバンクグループのADR比率は、購入前に証券会社のサイトで最新情報を確認することが推奨されます。ADR比率により、配当額や株価の換算が変わるため、重要な情報です。
(4) カストディアンフィー:預託手数料(年1-3セント/株)
ADRには、カストディアンフィー(預託手数料)と呼ばれる管理費用が年1-3セント/株かかります。この手数料は、配当金から差し引かれることが一般的です。
カストディアンフィーの影響:
- 配当利回りが実質的に低下
- 年間1-3セント/株は小さいが、長期保有で累積
ソフトバンクグループのADRの配当利回りは約0.19%と低いですが、カストディアンフィーの影響も考慮する必要があります。
ソフトバンクグループと子会社の違い【9984と9434】
「ソフトバンク」と一口に言っても、親会社(ソフトバンクグループ)と子会社(ソフトバンク)の2つがあり、混同されやすいため、明確に区別することが重要です。
(1) ソフトバンクグループ(9984):親会社、投資会社
ソフトバンクグループ(証券コード9984)は、孫正義氏が率いる投資会社です。
主な投資先:
- Arm Holdings(半導体設計)
- Alibaba(中国のEコマース)
- OpenAI(AI企業、ChatGPT開発)
- NVIDIA株式の売却(2025年、58.3億ドル)
ソフトバンクグループは、世界中のテクノロジー企業に投資し、キャピタルゲイン(株式売却益)を追求するビジネスモデルです。
(2) ソフトバンク(9434):子会社、通信事業
ソフトバンク(証券コード9434)は、ソフトバンクグループの子会社で、日本国内の通信事業(携帯電話、インターネット等)を営んでいます。
主な事業:
- 携帯電話事業(ソフトバンクブランド)
- インターネット事業(Yahoo! JAPAN等)
- 法人向けソリューション
ソフトバンク(9434)は、安定した通信事業から配当を出すビジネスモデルで、ソフトバンクグループ(9984)とは全く異なる投資対象です。
(3) ADRはソフトバンクグループ(親会社)のみ
ソフトバンクADR(SFTBY)は、ソフトバンクグループ(9984)のみを対象としています。ソフトバンク(9434)のADRは存在しません。
このため、通信事業に投資したい場合は、東京証券取引所でソフトバンク(9434)を購入する必要があります。
ソフトバンクADR(SFTBY)の買い方【日本の証券会社から購入可能】
ソフトバンクADRは、日本の証券会社から簡単に購入できます。以下では、具体的な購入方法を解説します。
(1) 証券会社の選び方:SBI証券、楽天証券、マネックス証券等
ソフトバンクADRを購入するには、米国株取引を提供する証券会社で米国株口座を開設する必要があります。
主な証券会社:
- SBI証券: 米国株取引手数料0.495%(最低0ドル、上限22ドル)、為替手数料片道25銭
- 楽天証券: 米国株取引手数料0.495%、為替手数料片道25銭、楽天ポイントが貯まる
- マネックス証券: ADR取扱一覧を公式サイトで公開(https://info.monex.co.jp/us-stock/adrlist.html)
証券会社を選ぶ際は、米国株取引手数料と為替手数料を比較することが推奨されます。
(2) 購入手順:米国株口座で通常の株式と同じ手順
ソフトバンクADRの購入手順は、通常の米国株と同じです。
購入手順:
- 証券会社で米国株口座を開設
- 日本円を米ドルに両替(為替手数料が発生)
- ティッカー「SFTBY」を検索
- 購入数量と価格を指定して注文
- 約定後、米国株口座にSFTBYが保有される
ADRは通常の米国株と全く同じ要領で取引できるため、米国株投資経験者にとっては簡単です。
(3) 手数料:米国株取引手数料と為替手数料
ソフトバンクADRの購入には、以下の手数料がかかります。
主な手数料:
- 米国株取引手数料: 約定代金の0.495%(上限22ドル)
- 為替手数料: 片道25銭程度(SBI証券、楽天証券等)
- カストディアンフィー: 年1-3セント/株(配当金から差し引かれる)
東証株と比較すると、為替手数料が追加でかかるため、総コストはやや高くなります。
(4) リアルタイム株価の確認方法:moomoo証券、Yahoo Finance
ソフトバンクADRのリアルタイム株価は、以下のサイトで確認できます。
主な株価確認サイト:
- moomoo証券(https://www.moomoo.com/ja/stock/SFTBY-US): 日本語でリアルタイム株価、掲示板、時間外取引情報を提供
- Yahoo Finance(https://finance.yahoo.com/quote/SFTBY/): 包括的な投資情報、ニュース、財務データ
- Nasdaq(https://www.nasdaq.com/market-activity/stocks/sftby): ナスダック公式サイトでSFTBYの株価データ
これらのサイトを活用すると、米国市場の時間外取引(プレマーケット、アフターマーケット)での株価変動も確認できます。
ADRと東証株の比較【手数料・税制・取引時間の違い】
ソフトバンクグループに投資する際、ADR(SFTBY)と東証株(9984)のどちらを選ぶべきかは、投資家のニーズによって異なります。以下では、主な違いを比較します。
(1) 取引時間:米国市場(プレマーケット、アフターマーケット対応)
ADRは米国市場で取引されるため、東証株と取引時間が異なります。
取引時間の比較:
- ADR(米国市場): 現地時間9:30-16:00、プレマーケット(4:00-9:30)、アフターマーケット(16:00-20:00)対応
- 東証株(日本市場): 9:00-11:30、12:30-15:00(PTS時間外取引あり)
ADRは、米国市場の時間外取引で売買できるため、重要ニュース発表後の即座の対応が可能です。
(2) 手数料:ADRは米国株手数料、東証株は国内株手数料
手数料はADRと東証株で大きく異なります。
手数料の比較:
- ADR: 米国株取引手数料(約定代金の0.495%)+ 為替手数料(片道25銭)+ カストディアンフィー(年1-3セント/株)
- 東証株: 国内株取引手数料(証券会社により異なる、多くは無料または低額)
手数料面では、東証株の方が有利です。
(3) 税制:配当の二重課税と外国税額控除
ADRと東証株では、配当課税の仕組みが異なります。
税制の比較:
- ADR: 米国で10%源泉徴収 → 日本で20.315%課税(外国税額控除で調整可能)
- 東証株: 日本のみで20.315%課税
ADRは二重課税のリスクがありますが、外国税額控除を申請すれば調整できます。ただし、確定申告が必要で手続きが煩雑です。
(4) 流動性:ADRはLevel 1のためOTC市場、スプレッドに注意
ソフトバンクグループのADRはLevel 1のため、OTC市場でのみ取引されます。Level 2/3と比べて流動性が低く、売買スプレッド(買値と売値の差)が広い可能性があります。
流動性の比較:
- ADR(SFTBY): OTC市場、流動性が低い、スプレッドが広い可能性
- 東証株(9984): 東京証券取引所、流動性が高い、スプレッドが狭い
大口取引や頻繁な売買を行う場合、東証株の方が有利です。
まとめ:ソフトバンクADRに投資すべきか【東証株との使い分け】
ソフトバンクグループに投資する際、ADR(SFTBY)と東証株(9984)のどちらを選ぶかは、投資家の目的と状況によって異なります。
(1) ADRが向いている投資家:米国株口座を活用したい人
ADRが向いているのは、以下のような投資家です。
ADR向きの投資家:
- すでに米国株投資を行っており、米国株口座でまとめて管理したい
- 米ドル建て資産として為替分散効果を求めたい
- 米国市場の時間外取引(プレマーケット、アフターマーケット)で売買したい
(2) 東証株が向いている投資家:手数料を抑えたい人
東証株が向いているのは、以下のような投資家です。
東証株向きの投資家:
- 手数料を抑えたい(為替手数料、カストディアンフィーがかからない)
- 税制のシンプルさを重視(二重課税の心配がない)
- 流動性が高く、売買スプレッドが狭い市場で取引したい
多くの日本人投資家にとって、手数料と税制のシンプルさを考えると、東証株(9984)の方が有利と言えます。
(3) 為替リスクの理解:円高時には米ドル建て資産が目減り
ADRは米ドル建てで取引されるため、為替リスクがあります。円高が進行すると、米ドル建てのADR価格が円換算で目減りします。
為替リスクの例:
- 1ドル=150円のときSFTBYを購入
- 円高進行で1ドル=130円に → 円換算価値が約13%減少
為替リスクを理解した上で、ポートフォリオ全体のバランスを考慮することが重要です。
次のアクション:
- ソフトバンクグループ(9984)と子会社(9434)の違いを理解する
- ADRと東証株の手数料・税制・取引時間を比較し、自分に合った選択肢を選ぶ
- 米国株口座を活用したい場合、証券会社の米国株取引手数料と為替手数料を比較する
ソフトバンクグループへの投資を通じて、長期的な資産形成を目指しましょう。投資判断は自己責任で行い、必要に応じて専門家に相談することをおすすめします。
