S&P500のPERは今、割高?割安?株価収益率で見る投資タイミング
「S&P500に投資したいけれど、今は割高なのでは?」――米国株投資を検討している日本人投資家の多くが、こうした不安を抱えています。株価が史上最高値を更新し続ける中、本当に今が買い時なのか、判断に迷う方も少なくありません。
その判断材料の一つとして注目されるのが、PER(株価収益率) です。S&P500のPERを見れば、市場が割高なのか割安なのか、客観的な視点を得ることができます。
この記事では、S&P500のPERの基本から歴史的推移、確認方法、投資判断への活用法まで、日本人投資家が知っておくべき情報を詳しく解説します。
この記事のポイント:
- PER(株価収益率)は株価が1株当たり利益の何倍かを示す指標で、割高・割安判断に有効
- S&P500の歴史的平均PERは15~17倍、2025年11月時点では約30倍と割高水準
- PERはMultpl.comやYahoo Finance(VOO)、証券会社ツールで簡単に確認できる
- PER14倍以下は割安、25倍以上は過熱サインとされるが、金利や成長期待も考慮すべき
- 投資判断ではPERだけでなく、CAPE比率やBuffett Indicatorなど複数の指標を併用することが重要
1. S&P500のPERとは何か、なぜ重要なのか
PER(株価収益率、Price-to-Earnings Ratio)は、株価が企業の利益に対して何倍の水準にあるかを示す指標です。S&P500のPERを確認することで、米国株式市場全体が割高なのか割安なのかを客観的に判断する材料となります。
S&P500は米国を代表する500社で構成される株価指数であり、そのPERは米国株式市場全体のバリュエーション(価値評価)を反映します。投資家にとって、「今は買い時か、それとも様子見すべきか」を考える際の重要な参考指標となります。
2. PERの基本知識(定義・計算方法)
(1) PER(株価収益率)とは
PERは、株価が1株当たり利益(EPS: Earnings Per Share)の何倍かを示す指標で、以下の式で計算されます。
PER = 株価 ÷ 1株当たり利益(EPS)
例えば、株価が100ドル、EPSが5ドルの場合、PERは20倍となります。これは「投資家が利益の20倍の価格を支払っている」ことを意味します。
(2) S&P500のPER計算方法
S&P500のPERは、指数全体の株価を構成銘柄の1株当たり利益(EPS)の合計で割って算出されます。個別銘柄のPERとは異なり、500社全体のバリュエーションを反映するため、市場全体の割高・割安を把握するのに適しています。
(3) 実績PERと予想PERの違い
PERには大きく2種類あります。
- 実績PER(Trailing P/E): 過去の実績利益を基に計算したPER
- 予想PER(Forward P/E): 将来予想される利益を基に計算したPER
実績PERは過去のデータに基づくため信頼性が高く、予想PERは将来の成長期待を反映します。投資判断では両方を参照することが推奨されます。
3. S&P500の歴史的PER水準と現在値
(1) 歴史的平均PER(15~17倍)
S&P500の長期平均PERは約15~17倍とされています。過去90年間のデータを見ると、平均的なTTM(直近12ヶ月)PERは約16.2倍程度でした(出典: MacroTrends)。この水準は「市場の正常な状態」の目安とされ、15~17倍を基準に割高・割安を判断する投資家が多くいます。
(2) 過去の最高値・最低値
歴史的に見ると、S&P500のPERは大きく変動してきました。
- 最高値: 131.39倍(リーマンショック後の利益急減時)
- 最低値: 5.31倍(1917年、第一次世界大戦期)
- 平均的な高値水準: 25~30倍(市場過熱時)
- 平均的な安値水準: 10~14倍(市場悲観時)
ただし、PERが異常値を示す場合(特に利益が大幅に減少した時期)は、他の指標と併用して判断する必要があります。
(3) 2025年11月時点の現在値(約30倍)
2025年11月時点で、S&P500のPERは約30倍前後とされています(出典: Multpl.com、実績PER約30.43倍)。歴史的平均の15~17倍と比較すると、明らかに割高水準にあります。
JPMorganのデータによると、フォワードPERは約22.5倍で、5年平均の19.9倍と比べて約13.1%割高、10年平均と比べて約21%割高となっています(出典: JPMorgan Guide to the Markets)。
4. S&P500のPERを確認する方法
(1) Multpl.comでの確認方法
(2) Yahoo Finance(VOO)での確認方法
Yahoo Finance(英語版)で「VOO」(S&P 500を追跡するETF)を検索すると、リアルタイムのPERを簡単に確認できます。VOOはS&P500に連動するETFのため、そのPERは指数全体のPERとほぼ一致します。
(3) 証券会社ツールでの確認方法
SBI証券、楽天証券、マネックス証券などの主要証券会社は、投資情報ツールでS&P500のPERや他のバリュエーション指標を提供しています。口座開設後、情報ツールから簡単にアクセス可能です。
5. 投資判断へのPER活用法(割高・割安の判断)
(1) PER水準による割高・割安判断(14倍以下は割安、25倍以上は過熱)
一般的に、以下の目安が使われます。
- PER 10倍以下: 市場悲観論が強い、極端な割安
- PER 14倍以下: 割安、株価反発の目安
- PER 15~17倍: 適正水準
- PER 20倍以上: やや割高
- PER 25倍以上: 市場過熱、調整リスクに注意
ただし、PERは市場環境や金利水準、企業の成長期待によって変動するため、単独での判断は避けるべきです。
(2) 「20の法則」を活用した判断方法
「20の法則」は、米国CPI(消費者物価指数)とS&P500の実績PERを合計した値で割高・割安を判断する方法です。
CPI + PER = 20以上 → 割高
CPI + PER = 20未満 → 割安
例えば、CPI が3%、PERが20倍の場合、合計23となり割高と判断されます。この指標は、インフレと株価のバランスを考慮した判断方法として知られています(出典: ピクテ投信投資顧問)。
(3) 他の指標との併用(CAPE比率、Buffett Indicator等)
PERだけで投資判断を行うのはリスクがあります。以下の指標も併用することが推奨されます。
- CAPE比率(Shiller PE): 過去10年間の平均利益を調整したPER、長期バリュエーション指標
- Buffett Indicator: 株式市場の時価総額÷GDP、Warren Buffettが好む指標
- Price-to-Sales比率: 売上高対比での株価評価
- VIX指数: 市場のボラティリティ(恐怖指数)
複数の指標を総合的に判断することで、より精度の高い投資判断が可能になります。
6. まとめ:PERを活用する際の注意点
S&P500のPERは、米国株式市場全体の割高・割安を判断する重要な指標です。2025年11月時点では約30倍と歴史的平均を大きく上回り、割高水準にあります。しかし、PERが高いからといって必ずしも投資を控えるべきとは限りません。
投資判断時の注意点:
- PERは参考指標の一つであり、金利水準や成長期待、市場環境も考慮する
- 高PER時でも長期投資なら時期分散(ドルコスト平均法)が有効
- ショック相場や業績悪化時はPERが異常値を示すため、他の指標を併用する
- 最新の財務データや経済指標を定期的に確認する
次のアクション:
- Multpl.comやYahoo FinanceでS&P500のPERを定期的に確認する
- 証券会社の投資情報ツールで複数のバリュエーション指標を参照する
- 長期投資なら時期分散を活用し、一括投資は慎重に検討する
PERを正しく理解し、総合的な判断材料の一つとして活用することで、より賢明な投資判断が可能になります。
※本記事は2025年11月時点の情報を基に作成しています。最新のデータや税制は国税庁や証券会社の公式サイトでご確認ください。投資判断は自己責任でお願いします。
