S&P500の利回り(配当利回り)と投資戦略【初心者向け完全ガイド】

著者: Single Stock編集部公開日: 2025/11/15

S&P500の利回りとは:配当利回りとトータルリターンの違い

「S&P500の利回りは何%?」と聞かれた時、配当利回りとトータルリターンの2つの意味があります。この2つを混同すると、投資判断を誤る可能性があります。

S&P500に投資する際、配当利回りだけを見ると約1.1-1.2%と低く感じますが、トータルリターン(配当+株価変動)で見ると、1926年以降の平均は年9.8%に達します。

この記事では、S&P500の配当利回りとトータルリターンの違い、現在の水準、歴史的推移、日本からの投資方法を初心者向けに解説します。

この記事のポイント:

  • 配当利回りは約1.1-1.2%(2024-2025年時点、過去20年で最低水準)
  • トータルリターン(配当+株価変動)は1926年以降平均9.8%(インフレ調整後6%)
  • 配当利回り低下は株価上昇(過去1年で35%上昇)によるもので、配当額自体は減っていない
  • 「年利8%」は1989-2024年の米ドルベースの平均で、過去実績であり将来を保証しない
  • 日本から投資する方法:投資信託(eMAXIS Slim)、東証ETF(MAXIS [2558])、米国ETF(VOO)

(1) 配当利回りの定義

配当利回りは、株価に対する年間配当の割合を示す指標です。計算式は以下の通りです。

配当利回り = 年間配当 ÷ 株価

S&P500の配当利回りは、S&P500指数を構成する500銘柄の配当を加重平均して算出されます。2024-2025年時点で約1.1-1.2%と、過去20年で最低水準に低下しています。

(2) トータルリターンの定義

トータルリターンは、配当収入と株価変動を合わせたリターンです。計算式は以下の通りです。

トータルリターン = 配当収入 + 株価変動

S&P500のトータルリターンは、1926年以降の平均で年9.8%(インフレ調整後6%)とされています。配当を再投資することで、長期的には複利効果が働き、株価指数だけを見る場合よりも高いリターンが期待できます。

(3) どちらを重視すべきか

配当利回りとトータルリターンのどちらを重視すべきかは、投資目的によって異なります。

  • インカムゲイン(配当収入)重視: 配当利回りの高い銘柄やセクターを選ぶ(例: 高配当ETF、公益株等)
  • 資産形成・長期投資重視: トータルリターンを重視し、S&P500のようなインデックスに投資する

S&P500はトータルリターンを重視したインデックス投資に適しており、配当利回りだけで判断すると魅力が見えにくくなります。

S&P500の配当利回りの現在の水準と推移

(1) 2024-2025年の配当利回り(1.1-1.2%)

2024-2025年時点で、S&P500の配当利回りは約1.1-1.2%です(※YCharts、GuruFocus、2025年11月時点)。この水準は、過去20年で最低レベルであり、歴史的に見ても非常に低い水準です。

配当利回りが低い理由は、配当額が減少したためではなく、株価が大幅に上昇したためです。過去1年でS&P500は約35%上昇しており、配当利回り(配当÷株価)が低下しました。

(2) 過去20年で最低水準の理由

配当利回りが過去20年で最低水準に低下した理由は、以下の2つです。

  1. 株価の大幅上昇: 2020年のコロナショック以降、S&P500は急速に回復し、史上最高値を更新し続けています。株価が上昇すると、配当利回り(配当÷株価)は低下します。
  2. 成長株への比重増加: S&P500には、Amazon、Alphabet(Google)、Metaなどの成長株が含まれており、これらの企業は配当よりも成長投資を優先する傾向があります。

(3) 歴史的な配当利回り推移

歴史的に見ると、S&P500の配当利回りは以下のように推移しています。

  • 1880年以降の最高値: 約6.7%(2008-2009年の金融危機時)
  • 歴史的中央値: 約2.9%
  • 過去10年の推移: 2014年約1.90%、2015年約2.00%、2016年約2.20%、2025年約1.1-1.2%

景気後退期には株価が下落するため配当利回りが上昇し、成長期には株価が上昇するため配当利回りが低下する傾向があります。

S&P500のトータルリターン(配当込み)の歴史的推移

(1) 1926年以降の平均リターン(年9.8%)

S&P500のトータルリターン(配当再投資込み)は、1926年以降の平均で年9.8%とされています。インフレを調整すると、実質リターンは約6%です。

この数値は、配当を再投資した場合の複利リターンであり、長期的に見ればS&P500は高いリターンを提供してきました。ただし、短期的には大きな変動があり、年によってリターンは大きく異なります。

(2) 直近5年の実績(2020-2025年)

直近5年間(2020-2025年)のS&P500の実績は、以下の通りです。

  • eMAXIS Slim米国株式(S&P500)(日本の投資信託)の実績:
    • 過去1年: 18.94%
    • 過去3年: 23.51%(年率)
    • 過去5年: 26.40%(年率)

直近5年間で、S&P500は年率15.05%上昇し、円安の影響もあって日本の投資信託では年率20%を超える上昇率となりました。

ただし、この実績は過去の結果であり、将来のリターンを保証するものではありません。市場変動により大きく変わる可能性があります。

(3) インフレ調整後のリターン

S&P500のトータルリターンは名目ベースで年9.8%ですが、インフレを調整すると実質リターンは約6%になります。

インフレ調整後のリターンは、購買力ベースでの実質的な資産増加を示します。投資判断の際には、名目リターンだけでなく、インフレ調整後の実質リターンも考慮することが重要です。

「年利8%」の実態と注意点

(1) 「年利8%」はどこから来たのか

S&P500は「年利8%で回る」とよく言われますが、この数値は1989-2024年の米ドルベースの年平均リターン(CAGR)です。

この期間のS&P500は、インターネットバブル、リーマンショック、コロナショックなどの大きな下落を経験しながらも、長期的には年平均8%程度のリターンを提供してきました。

(2) 過去実績と将来予測の違い

「年利8%」は過去の実績であり、将来を保証するものではありません。市場環境、経済状況、企業の業績により、将来のリターンは大きく変わる可能性があります。

過去実績を参考にしつつ、将来のリターンは不確実であることを理解し、長期的な視点で投資することが重要です。

(3) 円換算での実績(為替の影響)

S&P500は米ドル建ての指数です。日本人投資家にとって、円換算でのリターンは為替レートの影響を受けます。

  • 円安時: 円ベースのリターンが増加(例: 2020-2025年の円安局面)
  • 円高時: 円ベースのリターンが減少(例: 2008-2012年の円高局面)

為替リスクを考慮し、長期的な視点で投資することが推奨されます。

日本からS&P500に投資する方法

(1) 投資信託(eMAXIS Slim等)

日本の投資信託でS&P500に投資する方法は、初心者におすすめです。代表的なファンドは以下の通りです。

  • eMAXIS Slim米国株式(S&P500): 信託報酬0.09372%で最低クラス、純資産4兆円超、つみたてNISA対応
  • SBI・V・S&P500インデックス・ファンド: 信託報酬0.0938%、つみたてNISA対応

投資信託のメリットは、自動積立設定が可能で、つみたてNISAを利用すれば税制優遇も受けられる点です。

(2) 東証上場ETF(MAXIS [2558]等)

東証上場のS&P500連動ETFも投資の選択肢です。代表的なETFは以下の通りです。

  • MAXIS米国株式(S&P500)上場投信 [2558]: 信託報酬0.077%、東証で円貨決済可能
  • iシェアーズ S&P 500 米国株 ETF [1655]: 信託報酬0.077%、東証で円貨決済可能

東証ETFのメリットは、リアルタイムで取引でき、円貨決済が可能な点です。

(3) 米国上場ETF(VOO)

米国上場のS&P500連動ETFは、経費率が最安です。代表的なETFは以下の通りです。

  • VOO(Vanguard S&P 500 ETF): 経費率0.03%、配当利回り1.11%、純資産$600B超

米国ETFのメリットは経費率が最安である点ですが、為替手数料や配当課税(米国と日本の二重課税)を考慮する必要があります。税金の詳細については、税理士や国税庁のウェブサイトをご確認ください。

(4) コスト・利便性の比較

各投資方法のコスト・利便性を比較すると、以下の通りです。

投資方法 経費率/信託報酬 為替手数料 配当課税 利便性
投資信託(eMAXIS Slim) 0.09372% 込み 自動再投資 ◎(自動積立可能)
東証ETF(MAXIS [2558]) 0.077% 込み 手動再投資 ○(リアルタイム取引)
米国ETF(VOO) 0.03% 別途必要 二重課税リスク △(為替・税務複雑)

初心者には、自動積立が可能でつみたてNISA対応の投資信託(eMAXIS Slim)がおすすめです。

まとめ:S&P500投資で重視すべきポイント

S&P500の配当利回りは約1.1-1.2%(2024-2025年時点)と低水準ですが、トータルリターン(配当+株価変動)で見ると、1926年以降の平均は年9.8%に達します。

配当利回りだけでなく、トータルリターンを重視し、長期的な視点で投資することが重要です。日本からS&P500に投資する方法は、投資信託(eMAXIS Slim)、東証ETF(MAXIS [2558])、米国ETF(VOO)の3つがあり、初心者には投資信託がおすすめです。

次のアクション:

  • S&P500の配当利回りとトータルリターンの違いを理解する
  • 過去実績(年利8%)は参考程度にとどめ、将来を保証するものではないことを認識する
  • つみたてNISAを活用し、投資信託(eMAXIS Slim等)で長期積立投資を始める
  • 為替リスクを考慮し、長期的な視点で資産形成を行う

S&P500投資では、短期的な配当利回りではなく、長期的なトータルリターンを重視しましょう。

よくある質問

Q1S&P500の利回りは何%?

A1配当利回りは約1.1-1.2%(2024-2025年時点、過去20年で最低水準)です。トータルリターン(配当+株価変動)で見ると、1926年以降の平均は年9.8%(インフレ調整後6%)です。配当利回りだけでなく、トータルリターンを重視することが重要です。

Q2S&P500の配当利回りが低い理由は?

A2株価が過去1年で約35%上昇したため、配当利回り(配当÷株価)が過去20年で最低水準に低下しています。配当額自体は減っておらず、株価上昇により計算上の配当利回りが低下しただけです。また、S&P500には成長株(Amazon、Alphabet、Meta等)が含まれており、これらの企業は配当よりも成長投資を優先する傾向があります。

Q3S&P500は本当に年利8%で回るのか?

A31989-2024年の米ドルベースでは年平均8%程度でした。ただし、これは過去の実績であり、将来を保証するものではありません。市場環境、経済状況、企業の業績により、将来のリターンは大きく変わる可能性があります。長期的な視点で、過去実績を参考程度にとどめることが重要です。

Q4日本からS&P500に投資する最適な方法は?

A4投資信託(eMAXIS Slim米国株式)が信託報酬0.09372%で最低クラスであり、自動積立が可能でつみたてNISA対応のため、初心者におすすめです。米国ETF(VOO)は経費率0.03%と最安ですが、為替手数料や配当課税(米国と日本の二重課税)を考慮する必要があります。税金の詳細については、税理士や国税庁のウェブサイトをご確認ください。東証ETF(MAXIS [2558])は中間的な選択肢で、リアルタイム取引と円貨決済が可能です。

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Single Stock編集部

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