SPY Stockとは?個別株?ETF?英語圏の表現に戸惑う日本人投資家へ
「SPY stock」と英語の投資サイトで見かけて、「これは個別株なのか、それともETFなのか?」と疑問に思ったことはありませんか。多くの日本人投資家が、英語圏の投資情報を読む際に「stock」という単語がETFにも使われていることを知らず、混乱しています。
この記事では、「SPY stock」という表現の意味、SPDR S&P 500 ETF(SPY)の基本情報、VOO・IVVとの比較、日本からの購入方法、そしてメリット・リスクまで、日本人投資家の視点から詳しく解説します。
この記事のポイント:
- 英語圏では「ETF」も「Stock」と呼ぶ慣習があるため、SPYは個別株ではなくS&P500指数に連動するETF
- SPYは1993年設立の世界初の米国上場ETFで、1日平均取引高293億ドルと世界最大の流動性を誇る
- 経費率0.09%はVOO(0.03%)・IVV(0.03%)より高いが、流動性は圧倒的に高い
- 日本の証券会社(SBI証券、楽天証券等)で購入可能、NISA口座にも対応
- 2024-2025年の2年連続大幅上昇後の調整リスクと為替リスクに注意が必要
SPY Stockとは?英語圏での「Stock」表現の意味
(1) 英語圏では「ETF」も「Stock」と呼ぶ慣習がある
日本では「株式」を「株」と呼び、「ETF」を「投資信託」と区別して呼ぶのが一般的です。しかし、英語圏では「Stock」という単語が、個別企業の株式だけでなく、ETF(上場投資信託)を指す場合もあります。
これは、ETFが株式と同じように証券取引所で売買されるため、「上場している投資商品」を総称して「Stock」と呼ぶ慣習があるためです。そのため、「SPY stock」という表現は、「SPY銘柄」という意味であり、個別株を指すわけではありません。
(2) SPYは個別株ではなくS&P500指数に連動するETF
SPY(正式名称:SPDR S&P 500 ETF Trust)は、S&P500指数に連動するETFです。S&P500指数とは、米国大型株500銘柄で構成される株価指数で、SPYはこの500銘柄すべてを保有しています。
個別株(例:Apple株、Microsoft株)が単一企業への投資であるのに対し、SPYは500社への分散投資を1つの商品で実現する仕組みです。そのため、個別企業の業績リスクが分散され、米国株式市場全体の成長に投資できる商品として人気があります。
(3) ETFと個別株の違い(分散投資 vs 単一企業への投資)
ETFと個別株の主な違いは以下の通りです:
| 項目 | ETF(SPY) | 個別株(例:Apple) |
|---|---|---|
| 投資対象 | S&P500の500銘柄全体 | Apple 1社のみ |
| 分散効果 | あり(500社に分散) | なし(1社に集中) |
| リスク | 市場全体のリスク | 個別企業のリスク |
| 配当 | 年4回(構成銘柄の配当を分配) | 年4回(企業が決定) |
| 経費 | 経費率0.09%/年 | なし |
ETFは分散投資効果がある一方、個別株は特定企業の成長に賭ける投資です。どちらが優れているかは投資目的により異なります。
SPDR S&P 500 ETF(SPY)の基本情報と特徴
(1) 1993年設立、世界初の米国上場ETF
SPYは1993年に設立された、世界初の米国上場ETFです(出典:State Street)。設立から30年以上の歴史を持ち、ETFという投資商品を世界に広めた先駆的存在と言えます。
運用会社はState Street Global Advisors(SSGA)で、世界最大級の資産運用会社の一つです。SPYの純資産総額は約$6,000億(約90兆円)に達し、世界最大のETFとして知られています。
(2) S&P500指数の全500銘柄を保有
SPYは、S&P500指数の全500銘柄を保有しています。上位構成銘柄は以下の通りです(出典:Stock Analysis、2025年11月時点):
- NVIDIA:8.09%
- Apple:6.94%
- Microsoft:6.50%
- Amazon:3.8%
- Meta Platforms:2.6%
AI関連銘柄(NVIDIA、Microsoft、Amazon等)が上位を占めており、2024-2025年の株価上昇はこれらの銘柄の好調が大きく寄与しています。
(3) 1日平均取引高293億ドル(世界最大の流動性)
SPYの1日平均取引高は約293億ドル(約4.4兆円)で、世界で最も流動性の高いETFです(出典:State Street)。これは、売買したいときにすぐに取引が成立することを意味し、スプレッド(売値と買値の差)も非常に小さくなります。
流動性が高いため、機関投資家だけでなく、個人投資家にとっても使いやすいETFと言えます。
SPYとVOO・IVVの比較(経費率・流動性)
(1) 経費率の比較(SPY 0.09% vs VOO/IVV 0.03%)
S&P500指数に連動するETFは、SPY以外にも複数あります。主なものは以下の3つです:
| ETF | 運用会社 | 経費率 | 純資産総額 |
|---|---|---|---|
| SPY | State Street | 0.09% | $600B |
| VOO | Vanguard | 0.03% | $1,400B |
| IVV | BlackRock | 0.03% | $500B |
経費率では、VOOとIVVが0.03%と、SPYの0.09%より低くなっています。長期保有する場合、この経費率の差が累積され、リターンに影響します。
例えば、$10,000を10年間保有した場合:
- SPYの経費:約$90
- VOO/IVVの経費:約$30
差額は約$60(約9,000円)ですが、複利効果を考慮すると差はさらに広がります。
(2) 流動性の違い(SPYが圧倒的に高い取引量)
流動性では、SPYが圧倒的に高い取引量を誇ります:
- SPY:1日平均取引高293億ドル
- VOO:1日平均取引高20億ドル
- IVV:1日平均取引高50億ドル
この流動性の差は、頻繁に売買する投資家にとって重要です。SPYはスプレッドが非常に小さく、大口の売買でも価格への影響が少ないため、デイトレーダーや機関投資家に好まれます。
(3) パフォーマンスの違い(追跡する指数は同じ、長期で経費率の差が蓄積)
SPY、VOO、IVVはいずれもS&P500指数を追跡しているため、パフォーマンスはほぼ同じです。ただし、長期では経費率の差が蓄積されるため、VOO/IVVの方がわずかに有利です。
過去10年のトータルリターン(配当込み):
- SPY:年平均10.66%(出典:Stock Analysis)
- VOO:年平均10.72%(Vanguard公式)
- IVV:年平均10.71%(BlackRock公式)
差はわずかですが、長期保有する場合はVOO/IVVの方が経費率が低い分、有利です。
日本からSPYを購入する方法と証券会社
(1) 日本の証券会社での米国株取引(SBI証券、楽天証券、マネックス証券等)
SPYは、日本の主要証券会社で購入可能です:
- SBI証券:米国株取引手数料0.495%(最低0ドル、上限22ドル)、為替手数料片道25銭
- 楽天証券:米国株取引手数料0.495%(最低0ドル、上限22ドル)、為替手数料片道25銭、楽天ポイントが貯まる
- マネックス証券:米国株取引手数料0.495%(最低0ドル、上限22ドル)、為替手数料片道25銭、米国株情報ツールが充実
いずれの証券会社でも、米国株取引口座を開設すればSPYの購入が可能です。
(2) NISA口座での購入メリット(つみたて投資枠・成長投資枠の両方で利用可能)
SPYはNISA口座での購入にも対応しています。2024年からの新NISA制度では、SPYは「成長投資枠」での購入が可能です(つみたて投資枠では購入不可)。
NISA口座で購入すれば、配当金と売却益の両方が非課税になります。ただし、米国株の配当には米国で10%が源泉徴収されるため、日本の税金(20.315%)は非課税になりますが、米国の10%は課税されます(外国税額控除を利用すれば、米国で課税された分を日本の所得税から差し引くことも可能です。詳細は税理士や国税庁にご確認ください)。
(3) 国内投資信託(eMAXIS Slim等)との比較
日本でS&P500に投資する方法として、国内投資信託(eMAXIS Slim米国株式(S&P500)等)もあります。SPY(米国ETF)と国内投資信託の比較は以下の通りです:
| 項目 | SPY(米国ETF) | eMAXIS Slim米国株式(S&P500) |
|---|---|---|
| 通貨 | ドル建て | 日本円建て |
| 購入単位 | 1株単位($600~700程度) | 100円から |
| 自動積立 | 不可 | 可能 |
| リアルタイム取引 | 可能 | 不可(1日1回の基準価額) |
| 為替手数料 | あり | なし(投資信託内で処理) |
| 経費率 | 0.09% | 0.09372%(ほぼ同じ) |
| NISA対応 | 成長投資枠のみ | つみたて投資枠・成長投資枠両方 |
少額から自動積立したい場合は国内投資信託、リアルタイム取引や大口投資をしたい場合はSPYが適しています(出典:マネックス証券)。
SPY投資のメリットとリスク
(1) メリット:分散投資効果、高流動性、配当利回り1.08%、過去10年平均リターン10.66%
SPY投資の主なメリットは以下の通りです:
- 分散投資効果:S&P500の500銘柄に一括投資できるため、個別企業リスクが分散される
- 高流動性:1日平均取引高293億ドルで、売買したいときにすぐ取引が成立
- 配当利回り1.08%:年4回配当が支払われ、配当再投資で複利効果を得られる(出典:株探)
- 過去10年平均リターン10.66%:長期的に安定したリターンを実現(出典:Stock Analysis)
- 世界最大のETF:純資産総額$6,000億で、運用会社の信頼性も高い
(2) リスク:2024-2025年の2年連続大幅上昇後の調整リスク、為替リスク、経費率がVOOより高い
一方で、以下のようなリスクにも注意が必要です:
- 2024-2025年の2年連続大幅上昇後の調整リスク:2024年は+24.89%、2023年は+26%と2年連続で大幅上昇しており、歴史的にこうした上昇の後には調整局面が訪れる可能性があります(出典:etf.com)
- 為替リスク:ドル建て資産のため、円高時は円換算のリターンが減少します。例えば、株価が10%上昇しても、円が10%上昇(ドル安)すれば、円換算のリターンはゼロになります
- 経費率がVOOより高い:経費率0.09%は、VOO(0.03%)より高く、長期保有では差が蓄積されます
- AI関連銘柄の集中リスク:上位構成銘柄にNVIDIA(8.09%)、Apple(6.94%)、Microsoft(6.50%)等のAI関連銘柄が集中しており、これらの銘柄が調整すればSPYも影響を受けます
(3) AI関連銘柄の集中リスク(上位構成銘柄にNVIDIA、Apple、Microsoft等)
2024-2025年のSPYの上昇は、主にAI関連銘柄の好調によるものです。NVIDIA、Apple、Microsoft、Amazon、Meta Platformsの5社でSPYの約28%を占めており、これらの銘柄が調整すればSPY全体のパフォーマンスにも大きな影響を与えます。
歴史的には、1990年代後半のインターネットバブル時にも、IT関連銘柄の集中が進み、その後の調整で大きな下落を経験しました。AI関連銘柄の成長が今後も続くかは不透明であり、リスクとして認識しておく必要があります(出典:etf.com)。
まとめ:SPYへの投資判断のポイント
「SPY stock」という表現は、英語圏で「ETF」も「Stock」と呼ぶ慣習があるためであり、SPYは個別株ではなくS&P500指数に連動するETFです。1993年設立の世界初の米国上場ETFで、1日平均取引高293億ドルと世界最大の流動性を誇ります。
経費率0.09%はVOO(0.03%)・IVV(0.03%)より高いですが、流動性は圧倒的に高く、頻繁に売買する投資家には適しています。
投資判断のポイント:
- 英語圏では「ETF」も「Stock」と呼ぶことを理解する
- S&P500への分散投資を目的とするならSPY、VOO、IVVいずれも有効
- 長期保有なら経費率の低いVOO/IVVが有利、頻繁な売買ならSPYが有利
- 2024-2025年の2年連続大幅上昇後の調整リスクに注意
- 為替リスク(円高時の円換算リターン減少)も考慮
- NISA口座での購入で売却益を非課税にできる(配当は米国で10%課税)
投資判断は自己責任で行い、ポートフォリオ全体のバランスを考慮して検討することをおすすめします。
