つみたて米国株式S&P500の特徴と選び方:日本の主要ファンドを比較

著者: Single Stock編集部公開日: 2025/11/17

S&P500とは:米国を代表する500社の株価指数

つみたてNISAやiDeCoで米国株投資を始めたい初心者にとって、S&P500連動ファンドは最も人気のある選択肢の一つです。しかし、複数のファンドがあり、どれを選べばよいか迷う方も多いでしょう。

この記事では、つみたてNISA対象のS&P500ファンドの特徴、比較ポイント、証券会社での買い方、注意点について解説します。

この記事のポイント:

  • S&P500は米国を代表する500社で構成される株価指数で、歴史的に年平均約10%のリターンを記録
  • つみたてNISA対象の主要ファンドには、eMAXIS Slim、つみたて米国株式(S&P500)、SBI・V・S&P500等がある
  • 信託報酬はeMAXIS Slimが年0.09%台と最安、つみたて米国株式(S&P500)は年0.22%
  • 100円から積立可能で、ドルコスト平均法により購入単価を平準化できる
  • 為替変動リスクや市場の短期的変動に注意が必要

(1) S&P500の定義と構成銘柄

S&P500(Standard & Poor's 500 Stock Index)は、米国を代表する大型株500社で構成される株価指数です。S&P ダウ・ジョーンズ・インデックス社が算出・公表しており、米国株式市場全体の約80%の時価総額をカバーしています。

構成銘柄には、Apple、Microsoft、Amazon、Google(Alphabet)、Nvidiaなどのテクノロジー企業をはじめ、金融、ヘルスケア、消費財など多様なセクターの企業が含まれます。

(2) S&P500の歴史的リターン(年平均約10%)

S&P500は1927年の設定以来、年平均約10%のリターンを記録してきました。ブラックマンデー(1987年)、ITバブル崩壊(2000-2002年)、リーマンショック(2008年)、コロナショック(2020年)など、複数の大きな暴落を経験しましたが、長期的には右肩上がりの成長を続けています。

2024年には23%上昇し、2年連続で20%以上のリターンを達成しました。ただし、過去のリターンは将来のリターンを保証するものではありません。

(3) S&P500に投資するメリット

S&P500に投資するメリットは以下の通りです:

  • 分散投資: 500社に分散投資することで、個別株リスクを低減
  • 低コスト: インデックスファンドやETFを通じて、低い信託報酬で投資可能
  • 長期的な成長: 米国経済の成長とともに、長期的な資産増加が期待できる
  • 流動性: 世界中の投資家が取引しており、売買が容易

つみたてNISA対象の主要S&P500ファンド

つみたてNISA対象のS&P500連動ファンドにはいくつかの選択肢があります。

(1) つみたて米国株式(S&P500)(三菱UFJアセットマネジメント)

基本情報:

  • 信託報酬: 年0.22%
  • 設定日: 2020年3月6日
  • 純資産総額: 約1,000億円規模
  • 為替ヘッジ: なし
  • 分配金: なし(自動再投資)

つみたてNISA専用設計で、初心者にも分かりやすい商品設計が特徴です。

(2) eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)(三菱UFJアセットマネジメント)

基本情報:

  • 信託報酬: 年0.09344%(業界最安水準)
  • 設定日: 2018年7月3日
  • 純資産総額: 約4兆円規模(2025年時点)
  • 為替ヘッジ: なし
  • 分配金: なし(自動再投資)

eMAXIS Slimシリーズは「業界最低水準の運用コストを目指し続ける」ことを掲げており、信託報酬の引き下げを繰り返しています。

(3) SBI・V・S&P500インデックス・ファンド(SBIアセットマネジメント)

基本情報:

  • 信託報酬: 年0.0938%
  • 設定日: 2019年9月26日
  • 純資産総額: 約1.3兆円規模
  • 為替ヘッジ: なし
  • 分配金: なし(自動再投資)

バンガード社のVOO(Vanguard S&P 500 ETF)に投資する「ファンド・オブ・ファンズ」形式で運用されています。

(4) その他の主要ファンド

他にも、楽天・全米株式インデックス・ファンド(楽天VTI)など、米国株全体に投資するファンドもありますが、S&P500に特化したファンドと比較すると、小型株も含まれるため構成が異なります。

S&P500ファンド比較のポイント

ファンドを選ぶ際のポイントを確認しましょう。

(1) 信託報酬(年0.09~0.22%)

信託報酬とは、投資信託の運用・管理にかかる年間手数料です。長期運用では、信託報酬の差が運用成果に大きく影響します。

比較例(20年間、元本100万円で年5%成長すると仮定):

  • 信託報酬0.09%: 最終資産約259万円
  • 信託報酬0.22%: 最終資産約255万円
  • 差額: 約4万円

eMAXIS Slimは信託報酬が最も低く、長期投資に適しています。

(2) 純資産総額と運用実績

純資産総額が大きいファンドは、運用が安定しており、信託報酬の引き下げ余地もあります。eMAXIS Slimは約4兆円の純資産総額を誇り、業界最大級です。

運用実績については、S&P500連動ファンドは指数との乖離(トラッキングエラー)が小さいほど優秀とされます。eMAXIS Slimは過去3年の指数騰落率を最も上回る実績を持つとされています。

(3) 為替ヘッジの有無

主要なS&P500ファンドは為替ヘッジなしが一般的です。為替ヘッジとは、為替変動の影響を抑える仕組みですが、ヘッジコストがかかるため、長期投資では為替ヘッジなしが推奨されることが多いです。

(4) 分配金の扱い(自動再投資)

主要ファンドは分配金を出さず、自動再投資する方針をとっています。分配金を出すと税金がかかり、複利効果が損なわれるため、長期投資では自動再投資が有利です。

証券会社でのS&P500ファンドの買い方

証券会社での購入手順を確認しましょう。

(1) 主要ネット証券でのファンド取扱い(SBI証券、楽天証券、マネックス証券等)

主要ネット証券では、すべてのS&P500ファンドが取り扱われています。

  • SBI証券: 取扱ファンド数が最多。Vポイント、Pontaポイント、dポイントで積立可能
  • 楽天証券: 楽天ポイントで積立可能。楽天カード決済で最大1%のポイント還元
  • マネックス証券: マネックスポイントで積立可能。UI/UXが使いやすい

(2) つみたてNISA口座の開設手順

つみたてNISA口座を開設するには、以下の手順が必要です。

  1. 証券会社で総合口座を開設
  2. つみたてNISA口座の申し込み(マイナンバーカードが必要)
  3. 税務署の審査(1-2週間程度)
  4. 口座開設完了後、積立設定

(3) 積立設定の方法(金額、頻度、ドルコスト平均法)

つみたてNISAの年間投資枠は120万円(月額10万円)です。毎月一定額を積み立てることで、ドルコスト平均法により購入単価を平準化し、リスクを低減できます。

ドルコスト平均法の例:

  • 毎月3万円を積み立てる
  • 基準価額が高い月は少ない口数を購入
  • 基準価額が低い月は多い口数を購入
  • 長期的には購入単価が平準化される

(4) 証券会社のポイント還元サービス

証券会社によっては、積立投資でポイントが貯まるサービスがあります。

  • SBI証券: 三井住友カード決済で最大0.5%のVポイント還元
  • 楽天証券: 楽天カード決済で最大1%の楽天ポイント還元
  • マネックス証券: マネックスカード決済で1.1%のポイント還元

ポイント還元を活用することで、実質的なコストをさらに削減できます。

つみたて米国株式(S&P500)投資の注意点

S&P500投資にはいくつかの注意点があります。

(1) 為替変動リスク(円高時の資産価値減少)

S&P500ファンドは米ドル建て資産に投資するため、為替変動リスクがあります。円高ドル安が進むと、円換算での資産価値が減少します。

例:

  • 1ドル=150円の時に1万ドル(150万円)の資産を保有
  • 1ドル=130円に円高が進むと、資産価値は130万円に減少(-13.3%)

ただし、長期投資では為替リスクは平準化される傾向があります。

(2) 市場の短期的変動(過去の暴落事例)

S&P500は長期的には成長してきましたが、短期的には大きな変動があります。

過去の暴落例:

  • ブラックマンデー(1987年): 1日で22.6%の下落
  • ITバブル崩壊(2000-2002年): 約49%の下落
  • リーマンショック(2008年): 約57%の下落
  • コロナショック(2020年): 約34%の下落

これらの暴落を経験しても、長期的には回復し、成長を続けてきました。短期的な変動に惑わされず、長期保有の覚悟が必要です。

(3) 長期投資の覚悟(10-20年の保有前提)

つみたてNISAやS&P500投資は、10-20年以上の長期保有を前提としています。短期的な利益を求める投資には向いていません。

(4) 過去のリターンは将来を保証しない

S&P500が過去に年平均10%のリターンを記録してきたからといって、将来も同じリターンが得られるとは限りません。投資判断は自己責任で行う必要があります。

まとめ:S&P500ファンドの選び方と活用法

S&P500連動ファンドは、米国経済の成長に長期的に投資したい初心者に適した選択肢です。

ファンド選びのポイント:

  • 信託報酬重視: eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)が最安水準(年0.09%台)
  • 初心者向け: つみたて米国株式(S&P500)は設計がシンプル
  • ポイント還元: 証券会社のポイント還元サービスを活用
  • 長期保有: 10-20年以上の長期保有を前提に

次のアクション:

  • 証券会社で口座を開設し、つみたてNISA口座を申し込む
  • 毎月の積立額を決定し、自動積立設定を行う
  • 短期的な変動に惑わされず、長期保有を続ける
  • 年に1回程度、運用状況を確認する

つみたてNISAを活用し、S&P500への長期投資で資産形成を目指しましょう。

※投資判断は自己責任で行ってください。本記事は情報提供を目的としており、特定商品の推奨ではありません。

よくある質問

Q1つみたて米国株式(S&P500)に為替ヘッジはある?

A1主要なS&P500ファンド(eMAXIS Slim、つみたて米国株式、SBI・V・S&P500等)は為替ヘッジなしが一般的です。為替変動リスクを受けますが、長期投資では為替リスクは平準化される傾向があります。為替ヘッジ付きファンドもありますが、ヘッジコストがかかるため、長期投資では為替ヘッジなしが推奨されることが多いです。

Q2S&P500ファンドの信託報酬はどれくらい違う?

A2eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)が年0.09344%と最安水準、つみたて米国株式(S&P500)は年0.22%です。長期運用では信託報酬の差が運用成果に大きく影響します。20年間で約4万円の差が出る可能性があるため、信託報酬の低いファンドを選ぶことが推奨されます。

Q3S&P500ファンドの分配金はどうなる?

A3主要ファンド(eMAXIS Slim、つみたて米国株式、SBI・V・S&P500等)は分配金を出さず、自動再投資する方針をとっています。分配金を出すと税金がかかり、複利効果が損なわれるため、長期投資では自動再投資が有利です。

Q4どのS&P500ファンドを選ぶべき?

A4信託報酬の低さを重視するならeMAXIS Slim 米国株式(S&P500)(年0.09%台)がおすすめです。つみたてNISA対象で初心者向けのシンプルな設計を求めるなら、つみたて米国株式(S&P500)も選択肢です。証券会社のポイント還元サービス(楽天証券の楽天ポイント、SBI証券のVポイント等)も考慮しましょう。

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Single Stock編集部

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