はじめてのNISA米国株式インデックスファンドの選び方

著者: Single Stock編集部公開日: 2025/11/17

NISA口座での米国株式インデックス投資を始めたいけれど、どのファンドを選べばいいか分からない

米国株投資に関心を持つ日本人投資家の多くが、「NISA口座で米国株式インデックスファンドを買いたいけれど、種類が多くて選べない」と悩んでいます。「はじめてのNISA」のような商品名を見かけても、S&P500や全米株式など指数の違いがよく分からない、信託報酬はどれくらいが妥当なのか、といった疑問は尽きません。

この記事では、NISA制度を活用した米国株式インデックス投資の始め方と、初心者向けのファンド選び方を、制度の仕組み・商品の種類・注意点を含めて解説します。

この記事のポイント:

  • 新NISA制度では年間360万円まで非課税投資が可能で、値上がり益・配当金に通常かかる20.315%の税金が免除される
  • S&P500連動ファンド(eMAXIS Slim、はじめてのNISA等)は1957年以降年平均リターン約10%で長期投資の基本として最適
  • 信託報酬0.03%~0%の超低コストファンドを選ぶことで、長期では大きなコスト差が生まれる
  • 楽天証券・SBI証券では米国株式の売買手数料が0円で、少額から始められる
  • NISA口座では損益通算・繰越控除ができず、米国株配当は米国で10%源泉徴収される点に注意

NISA制度の概要と米国株投資のメリット

NISA(少額投資非課税制度)は、投資で得た利益に税金がかからない制度です。2024年に開始した新NISA制度では、年間360万円(つみたて投資枠120万円+成長投資枠240万円)まで非課税投資が可能になりました。

(1) 新NISA制度の概要(年間360万円の非課税枠)

新NISA制度では、通常の投資で得た利益にかかる20.315%の税金が非課税になります。例えば、100万円の利益が出た場合、通常は約20万円が税金として引かれますが、NISA口座では100万円がそのまま手元に残ります。

投資可能期間は無期限で、非課税保有期間も無期限です。生涯投資枠は1,800万円(成長投資枠は1,200万円まで)となっており、長期的な資産形成に活用できます。

※2024年開始の新NISA制度に関する詳細は、金融庁のウェブサイトをご確認ください。

(2) つみたて投資枠と成長投資枠の違い

新NISAには「つみたて投資枠」と「成長投資枠」の2つがあります。

つみたて投資枠(年間120万円まで):

  • 長期・積立・分散投資向け
  • 金融庁が選定した投資信託が対象
  • 米国株式インデックスファンドの多くが対象

成長投資枠(年間240万円まで):

  • 幅広い投資が可能
  • 個別株・ETF・REITなども対象
  • つみたて投資枠対象の投資信託も購入可能

初心者には、つみたて投資枠でドルコスト平均法(毎月定額投資)を活用することが推奨されています。

(3) 値上がり益・配当金の非課税メリット(通常20.315%の税金が免除)

通常の証券口座では、株式の値上がり益や配当金に20.315%(所得税15.315%+住民税5%)の税金がかかります。NISA口座では、この税金が免除されます。

例えば、投資信託が10年後に2倍になった場合:

  • 通常の証券口座: 100万円の利益 → 税金約20万円 → 手取り約80万円
  • NISA口座: 100万円の利益 → 税金0円 → 手取り100万円

長期投資では、この差が複利効果と相まって大きな違いを生みます。

(4) 長期投資で大きな税制優遇効果

S&P500は1957年以降、年平均リターン約10%で推移してきました。仮に毎月3万円を年利10%で30年間積み立てた場合:

  • 投資元本: 1,080万円
  • NISA口座での最終資産: 約6,286万円(税金0円)
  • 通常口座での最終資産: 約5,227万円(税金約1,059万円)

NISA口座を活用することで、約1,000万円の税制優遇を受けられる計算になります。

※上記は試算であり、将来の運用成果を保証するものではありません。

米国株式インデックスファンドの種類と特徴

米国株式インデックスファンドには、連動する指数によっていくつかの種類があります。

(1) S&P500連動ファンド(eMAXIS Slim、はじめてのNISA等)

S&P500は米国の大型株500銘柄で構成される代表的な株価指数です。

主要なS&P500連動ファンド:

  • eMAXIS Slim 米国株式(S&P500): 信託報酬0.09372%、つみたてNISAで最人気
  • はじめてのNISA・米国株式インデックス(S&P500): 野村アセットマネジメントが運用する初心者向けファンド
  • SBI・V・S&P500インデックス・ファンド: 信託報酬0.0938%程度

これらのファンドは、米国の主要企業(Apple、Microsoft、NVIDIA等)に分散投資できる点が魅力です。

(2) 全米株式連動ファンド(S&P500より広範囲)

S&P500が大型株500銘柄に限定されるのに対し、全米株式インデックスは中小型株も含めた約4,000銘柄に投資します。

主要な全米株式連動ファンド:

  • 楽天・全米株式インデックス・ファンド: バンガード・トータル・ストック・マーケットETF(VTI)に投資
  • SBI・V・全米株式インデックス・ファンド

中小型株の成長機会も取り込みたい場合に適していますが、S&P500と比較して長期リターンに大きな差は見られないことが多いです。

(3) 均等加重S&P500(集中リスク軽減型)

通常のS&P500は時価総額加重平均のため、大型株の影響が大きくなります。2025年時点では、上位3銘柄(NVIDIA・Microsoft・Apple)がS&P500の21%を占めています。

均等加重S&P500(Equal-Weight S&P 500)は、各銘柄を均等に配分することで、この集中リスクを軽減します。ただし、日本のつみたてNISA対象ファンドとしてはまだ普及していません。

(4) 主要ETF(VOO、信託報酬0.03%)

米国市場では、Vanguard S&P 500 ETF(VOO)やFidelity ZEROファンド(信託報酬0%)など、超低コストETFが充実しています。

ただし、日本のつみたてNISA対象ファンドは投資信託が中心で、海外ETFは成長投資枠での購入となります。初心者には、つみたて投資枠対象の投資信託から始めることが推奨されます。

初心者向けのファンド選び方(信託報酬・指数・純資産)

ファンド選びでは、信託報酬・指数・証券会社の3つが重要です。

(1) 信託報酬の比較(0.03%~0%の超低コストファンド)

信託報酬は、ファンドを保有している間ずっとかかるコストです。長期投資では、わずかな差が大きな影響を与えます。

例えば、100万円を30年間運用した場合(年利10%と仮定):

  • 信託報酬0.03%: 最終資産約1,743万円
  • 信託報酬0.5%: 最終資産約1,568万円
  • 差額: 約175万円

日本のつみたてNISA対象ファンドでは、0.09~0.1%程度が最安水準です。

(2) S&P500と全世界株式(オルカン)の選択基準

「S&P500」と「全世界株式(オール・カントリー、通称オルカン)」のどちらを選ぶかは、リスク許容度と投資哲学により異なります。

S&P500を選ぶ理由:

  • 米国経済の成長を信じる
  • 過去のリターンが高い(年平均10%)
  • シンプルで分かりやすい

全世界株式を選ぶ理由:

  • 米国以外の成長機会も取り込みたい
  • 地域分散でリスク軽減
  • 米国の比重が下がる可能性に備える

初心者には、どちらか一方に絞るよりも、両方を組み合わせる選択肢もあります。

(3) ドルコスト平均法(毎月定額投資)の活用

ドルコスト平均法は、毎月一定額を投資する手法です。市場が高い時には少ない口数、安い時には多い口数を購入することで、市場タイミングのリスクを軽減できます。

例えば、毎月3万円を積み立てる場合:

  • 基準価額10,000円の月: 3口購入
  • 基準価額15,000円の月: 2口購入
  • 基準価額7,500円の月: 4口購入

これにより、平均購入単価を抑えられる可能性があります。

(4) 証券会社の選び方(楽天証券・SBI証券の米国株売買手数料0円)

楽天証券・SBI証券では、米国株式の売買手数料が0円です。また、つみたてNISA対象のファンドも充実しています。

主要証券会社の比較:

  • 楽天証券: 楽天ポイントが貯まる・使える、UI/UXが優れている
  • SBI証券: 取扱銘柄数が多い、三井住友カードでの積立でポイント還元

どちらも新NISA対応が充実しており、初心者にはこの2社から選ぶことが推奨されます。

NISA口座での米国株投資の注意点

NISA口座には税制優遇がある一方で、いくつかの制約もあります。

(1) 損益通算・繰越控除ができない

通常の証券口座では、損失が出た場合、他の利益と相殺(損益通算)したり、翌年以降に繰り越したり(繰越控除)できます。しかし、NISA口座ではこれができません。

例えば、NISA口座で50万円の損失が出ても、通常口座の100万円の利益と相殺することはできません。

(2) 米国株配当は米国で10%源泉徴収される(NISA口座でも免除されない)

米国株の配当金には、米国で10%の源泉徴収税がかかります。この税金は、NISA口座でも免除されません。

ただし、日本での20.315%の税金は免除されるため、通常口座(合計28.2835%の税金)と比較すれば、NISA口座の方が有利です。

(3) 集中リスク(2025年時点でテクノロジーセクターがS&P500の35%)

2025年時点では、テクノロジーセクターがS&P500の35%を占めています。また、上位3銘柄(NVIDIA・Microsoft・Apple)が21%を占めており、集中リスクがあります。

テクノロジーセクターの下落時には、S&P500全体も大きく影響を受ける可能性があります。分散投資の一環として、全世界株式や均等加重インデックスを検討する選択肢もあります。

(4) 元本保証はなく、市場下落時には損失が発生する

インデックスファンドでも、元本保証はありません。市場下落時には損失が発生します。

2025年4月には急落がありましたが、その後S&P500は37%超上昇しました。このように、長期投資では一時的な下落を乗り越えて回復する傾向がありますが、短期的な価格変動には注意が必要です。

※投資判断は自己責任で行い、余裕資金で行うことが重要です。

まとめ:NISA活用で米国株投資を始める第一歩

NISA制度を活用した米国株式インデックス投資は、長期的な資産形成に適した選択肢です。信託報酬の低いファンドを選び、ドルコスト平均法で積み立てることで、市場タイミングのリスクを軽減できます。

この記事のまとめ:

  • 新NISA制度では年間360万円まで非課税投資が可能で、長期投資で大きな税制優遇を受けられる
  • eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)など、信託報酬0.09%程度の超低コストファンドが人気
  • 楽天証券・SBI証券では米国株売買手数料が0円で、初心者にも始めやすい
  • NISA口座では損益通算・繰越控除ができず、米国株配当は米国で10%源泉徴収される点に注意
  • 元本保証はなく、投資判断は自己責任で行うことが重要

次のアクション:

  • 楽天証券またはSBI証券でNISA口座を開設する
  • つみたて投資枠で、信託報酬の低いS&P500連動ファンドを選ぶ
  • 毎月の積立額を設定し、ドルコスト平均法で長期投資を始める
  • 定期的に資産状況を確認し、必要に応じて積立額を調整する

長期的な視点で、NISA制度を活用した米国株投資を始めましょう。

よくある質問

Q1NISAで米国株インデックスファンドは買えますか?

A1はい、つみたて投資枠・成長投資枠の両方で購入可能です。eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)など、金融庁が選定した投資信託がつみたて投資枠の対象となっています。楽天証券・SBI証券では米国株式の売買手数料が0円で、少額から始められます。

Q2S&P500と全米株式(オルカン)のどちらを選ぶべきですか?

A2リスク許容度と投資哲学により選択が異なります。S&P500は1957年以降年平均リターン約10%で、米国大型株500銘柄に集中投資します。全世界株式(オルカン)は、米国以外の成長機会も取り込みたい場合に適しています。初心者には、どちらか一方に絞るよりも、両方を組み合わせる選択肢もあります。

Q3米国株の配当にも税金がかかりませんか?

A3配当は米国で10%源泉徴収され、NISA口座でも免除されません。ただし、日本での20.315%の税金は免除されます。通常口座では合計28.2835%の税金がかかるため、NISA口座の方が有利です。

Q4初心者におすすめの証券会社はどこですか?

A4楽天証券・SBI証券では米国株式の売買手数料が0円で、少額から始められます。楽天証券は楽天ポイントが貯まり、UI/UXが優れています。SBI証券は取扱銘柄数が多く、三井住友カードでの積立でポイント還元があります。どちらも新NISA対応が充実しており、初心者にはこの2社から選ぶことが推奨されます。

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Single Stock編集部

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