2023年の米国株市場を振り返る意義
「米国株の2023年の見通しはどうだったのか」「予想は当たったのか」—2023年の米国株市場は、多くの専門家の予想を大きく裏切る結果となりました。年初には景気後退懸念から慎重な見通しが多数を占めていましたが、実際にはS&P500が+24.2%の上昇を記録し、2019年以来の好成績となりました。
本記事では、2023年の米国株市場の実績を振り返り、年初予想と実績の乖離、セクター別パフォーマンス、そして投資家が学ぶべき教訓を詳しく解説します。
この記事のポイント:
- 2023年のS&P500は+24.2%で多くの予想を上回る好成績
- 年初には景気後退懸念から慎重な見通しが多数
- マグニフィセント・セブンが市場全体の約3分の2のリターンに寄与
- 専門家でも市場予測は困難で長期投資の重要性を再認識
- 過去の実績は将来を保証しない
2023年の主要イベントと市場動向
2023年の米国株市場は、予想外の好成績を記録しました。ここでは主要なイベントと市場の動きを確認します。
(1) 2023年の株価パフォーマンス(S&P500 +24.2%、ナスダック+43%、ダウ+13%)
2023年の米国株市場は、主要3指数すべてがプラスで終了しました。
- S&P500: +24.2%(2019年以来の高成績)
- ナスダック総合: +43%(テクノロジー株の急伸)
- ダウ平均: +13%
モーニングスター米国市場指数は+26.4%を記録し、2019年以来の最大上昇率となりました。第4四半期だけで+12.1%上昇し、2020年後半以来の最高四半期パフォーマンスとなりました。
(出典: CBS News「Stocks close out 2023 with a 24% gain」、Morningstar「15 Charts On the Surprise 'Everything Rally' for 2023」)
(2) 年前半の安値圏推移と年後半の急上昇
2023年は「年前半安値・年後半高値」という展開でした。
年前半は景気後退懸念から株価は安値圏で推移し、バリュー株(割安株)がグロース株(成長株)をアウトパフォームしました。しかし年後半からはGAFAM(Google、Apple、Facebook、Amazon、Microsoft)等のグロース株中心に相場が上昇しました。
(3) FRBの利上げ停止と利下げシグナル
2023年の株高の最大要因は、FRB(米連邦準備制度理事会)の政策転換期待でした。FRBは2022年から続けてきた急激な利上げを2023年半ばに停止し、年末には利下げシグナルを発信しました。
FF金利(米連邦基金金利)の上昇停止と今後の利下げ期待が、株式市場にとって大きな追い風となりました。
(4) 景気後退の回避(ソフトランディング実現)
2023年初には多くの専門家が景気後退を予想していましたが、実際には景気後退は回避され、「ソフトランディング」(景気後退を回避しながらインフレを抑制する理想的なシナリオ)が実現しました。
経済の底堅さと企業業績の予想超えが、株価上昇を支えました。
(5) AI革命(ChatGPT登場)と企業業績の予想超え
2023年は「AI元年」とも呼ばれる年でした。OpenAIのChatGPTが大きな注目を集め、AI関連企業の株価が急騰しました。特にエヌビディア(NVIDIA)は、AI向け半導体の需要拡大により株価が大幅上昇しました。
企業業績も予想を上回る結果が相次ぎ、テクノロジー株を中心に株価上昇が続きました。
2023年初の予想と実績の大きな乖離
2023年は「多くの専門家の予想が外れた年」として有名です。ここでは年初予想と実績の乖離を確認します。
(1) 年初予想:S&P500平均4,009、レンジ3,675~4,500(ウォール街)
ロイターが41社のストラテジストを対象に実施した調査では、S&P500の2023年末予想の中央値は4,200でした。また別の調査では、ウォール街の平均予想は4,009、予想レンジは3,675~4,500でした。
最も弱気だったバークレイズは3,675、最も強気だったドイツ銀行は4,500という予想でした。
(出典: Financial Samurai「2023 Wall Street Forecasts For The S&P 500」、TKER「Wall Street's 2023 outlook for stocks」)
(2) 年初予想:S&P500 4,150(三井住友DS)、4,300(マネックス証券)
日本の大手金融機関も慎重な見通しを発表していました。
- 三井住友DSアセットマネジメント: S&P500 4,150、ダウ35,000、ナスダック11,520
- マネックス証券: S&P500 4,300(予想EPS 235ドルの18倍)、景気後退確率65%
(出典: 三井住友DSアセットマネジメント「2023年の米国株見通し」、マネックス証券「2023年の相場見通し」)
(3) 実績:S&P500 4,400超(予想を大幅上回る)
実際の2023年末のS&P500は4,400超で終了し、年間で+24.2%上昇しました。これは年初予想の平均4,009を大幅に上回る結果でした。
(4) 予想が外れた理由(景気後退回避、AI熱、FRB政策転換期待)
予想が外れた主な理由は以下の通りです。
- 景気後退の回避: 多くの専門家が予想した景気後退が起きなかった
- AI革命: ChatGPT登場によるAI熱が株価を押し上げた
- FRB政策転換期待: 利上げ停止と利下げシグナルが追い風に
- 企業業績の予想超え: 特にテクノロジー企業の業績が好調
(5) 市場予測の限界と不確実性
ゴールドマンサックスは2023年初に「フラットリターン」(収益成長ゼロ)を予想していましたが、実際には+24.2%の上昇となりました。このように、専門家でも市場予測は非常に困難であることが改めて示されました。
(出典: Goldman Sachs「US Stocks are Forecast to Have Less Pain but No Gain in 2023」)
2023年のセクター別パフォーマンス
2023年は特定のセクターに投資リターンが集中しました。
(1) トップパフォーマンス:テクノロジー+59.1%(2009年以来の最高)
テクノロジー株は2023年に+59.1%上昇し、2009年以来の最高成績を記録しました。AI関連企業を中心に株価が急騰しました。
(2) マグニフィセント・セブンの寄与度(市場全体の約3分の2のリターン)
「マグニフィセント・セブン」(アップル、マイクロソフト、エヌビディア、アマゾン、メタ、アルファベット、テスラの7社)は、市場全体のリターンの約3分の2を占めました。
この7社に投資していなかった投資家は、市場平均を大幅に下回るリターンとなった可能性があります。
(出典: Morningstar「2023 In Review and 2024 Market Outlook」)
(3) 成長株が過去25年で最高のパフォーマンス(特にメガキャップ・テクノロジー株)
成長株(グロース株)は2023年に過去25年で最高のパフォーマンスを記録しました。特にメガキャップ(大型株)のテクノロジー株が牽引しました。
(4) 年前半:バリュー株がグロース株をアウトパフォーム
年前半は景気後退懸念から、バリュー株がグロース株をアウトパフォームしました。高配当株(スターバックス、コカコーラ、P&G等)やエネルギー株が推奨されました。
(出典: SBI証券「2023年の相場大予想」)
(5) 年後半:GAFAM等のグロース株中心に上昇
年後半からはFRBの利上げ停止期待を背景に、GAFAM等のグロース株中心に相場が上昇しました。
2023年の経験から学ぶべき投資の教訓
2023年の経験から、投資家が学ぶべき重要な教訓があります。
(1) 専門家でも市場予測は困難(多くの悲観的予想が外れた)
2023年は、多くの専門家の悲観的予想が外れた年でした。景気後退確率65%という予想もありましたが、実際には景気後退は回避されました。
教訓: 専門家の予想を鵜呑みにせず、自分の投資方針を持つことが重要です。
(2) 景気後退懸念時の安値圏は買い場だった
2023年前半の安値圏は、結果的に絶好の買い場でした。多くの投資家が悲観的な時こそ、長期的な視点で投資を継続することが重要です。
(3) マグニフィセント・セブン集中の重要性(市場の3分の2のリターン)
マグニフィセント・セブンが市場全体のリターンの約3分の2を占めたため、これらの銘柄に投資していなかった投資家は市場平均を下回るリターンとなりました。
注意: ただし、特定銘柄への過度な集中はリスクも伴います。過去の実績は将来を保証しないため、分散投資の原則を忘れないでください。
(4) 長期投資と分散投資の原則
2023年は短期的な市場予測の難しさを改めて示しました。長期投資と分散投資の原則を守ることが、安定的なリターンを得るために重要です。
(5) 過去の実績は将来を保証しない
2023年の好成績は、2024年以降も続くとは限りません。過去の実績は将来を保証しないため、常にリスク管理を忘れずに投資を行うことが重要です。
注意: 投資判断は自己責任で行ってください。不安な場合はファイナンシャルプランナー等の専門家にご相談ください。
まとめ:市場予測の限界と長期投資の重要性
2023年の米国株市場は、多くの専門家の予想を裏切る好成績となりました。年初には景気後退懸念から慎重な見通しが多数を占めていましたが、実際にはS&P500が+24.2%上昇し、2019年以来の高成績となりました。
重要なポイント:
- 専門家でも市場予測は非常に困難
- 悲観的な時こそ長期的な視点で投資を継続することが重要
- マグニフィセント・セブンが市場の3分の2のリターンに寄与
- 過去の実績は将来を保証しない
次のアクション:
- 短期的な予想に惑わされず、長期投資を継続する
- 分散投資の原則を守る
- 自分の投資方針を持つ
- 不安な場合は専門家に相談する
2023年の経験から学び、長期的な視点で資産形成を目指しましょう。
よくある質問:
Q: 2023年の予想は当たりましたか? A: 年初予想のS&P500平均4,009に対し、実際は4,400超で終了し、多くの予想を上回りました。ゴールドマンサックスはフラットリターンを予想していましたが、実際は+24.2%上昇しました。このように、専門家でも市場予測は非常に困難であることが示されました。
Q: 2023年は何が市場を動かしましたか? A: 経済の底堅さ、企業業績の予想超え、FRBの利上げ停止、AI熱(ChatGPT登場)が追い風となりました。年前半は安値圏で推移しましたが、年後半に急上昇し、マグニフィセント・セブンが市場全体のリターンの約3分の2に寄与しました。
Q: 2023年の予想外の出来事は何ですか? A: 多くの専門家が予想した景気後退が回避され、ソフトランディングが実現しました。また、テクノロジー株が+59.1%と2009年以来の最高成績を記録し、S&P500が予想を大幅に上回る結果となりました。
Q: 2023年から何を学ぶべきですか? A: 専門家でも市場予測は困難であり、悲観的な予想に惑わされず長期投資を継続することが重要です。景気後退懸念時の安値圏は買い場となりました。ただし、過去の実績は将来を保証しないため、常にリスク管理を忘れずに投資を行ってください。
