米国株ヒートマップとは?市場を一目で把握する方法
「米国株の市場全体の動きを一目で把握したい」「複数の銘柄を一つずつチェックするのが面倒」という日本人投資家は多いのではないでしょうか。複数の銘柄を保有している場合、個別のチャートを一つずつ確認するのは時間がかかります。
この記事では、米国株ヒートマップの仕組み、見方と基本用語、無料で使えるツール比較、活用方法と分析ポイント、実践的な使い方の例を詳しく解説します。
この記事のポイント:
- ヒートマップは株価変動を色分けして視覚化するツール(緑=上昇、赤=下落、濃淡=変動率)
- 無料で使えるツールが豊富(Finviz、TradingView、moomoo証券、楽天MarketSpeed II、SBI証券)
- セクター別の強弱や急騰・急落銘柄を一目で把握できる
- リアルタイム更新はmoomoo証券・楽天MarketSpeed IIが対応、Finvizは15-20分遅延
- ヒートマップは視覚化ツールであり、投資判断の唯一の根拠とせず財務分析と併用が推奨
(1) ヒートマップの仕組み(色・濃淡・タイルサイズの意味)
ヒートマップ(Heatmap)は、データを色分けして視覚化する手法です。米国株ヒートマップでは、株価の上昇・下落を色、変動率の大きさを濃淡、時価総額をタイルサイズで表現します。
基本的な仕組み:
- 色: 緑=株価上昇、赤=株価下落
- 濃淡: 色が濃いほど変動率が大きい(濃い緑=大幅上昇、濃い赤=大幅下落)
- タイルサイズ: 大きいほど時価総額が大きい(Apple、Microsoftなどの大型株は大きなタイル)
この仕組みにより、市場全体の状況を数秒で把握できます。
(2) 市場全体の勢いやセクター別の強弱を視覚的に把握できるメリット
ヒートマップを使うことで、以下のメリットが得られます。
市場全体の勢い: 画面全体が緑色なら市場全体が上昇基調、赤色なら下落基調であることが一目で分かります。個別株のチャートを一つずつ確認する必要がありません。
セクター別の強弱: ヒートマップはセクター(業種)ごとに銘柄を分類しています。特定のセクターが緑色に固まっていれば、そのセクターが強いことが分かります。例えば、テクノロジーセクターが緑色に固まっている場合、テック株が買われている状況です。
時価総額の把握: タイルサイズで時価総額が分かるため、大型株と小型株の動きを区別できます。大型株が緑色でも小型株が赤色なら、リスクオフ(安全志向)の可能性があります。
ヒートマップの見方と基本用語
ヒートマップを効果的に活用するには、色分け、濃淡、タイルサイズ、セクター分類の意味を理解することが重要です。
(1) 色分けの意味(緑=上昇、赤=下落)
ヒートマップの色は、株価の上昇・下落を示します。
色の意味:
- 緑色: 株価が上昇している銘柄
- 赤色: 株価が下落している銘柄
- グレー: ほぼ変動なし(±0%付近)
画面全体を見て、緑色が多いか赤色が多いかで、市場全体のトレンドを把握できます。
(2) 濃淡の意味(変動率の大きさ)
色の濃淡は、変動率(上昇率・下落率)の大きさを示します。
濃淡の意味:
- 濃い緑: 大幅に上昇(例: +5%、+10%)
- 薄い緑: 小幅に上昇(例: +0.5%、+1%)
- 濃い赤: 大幅に下落(例: -5%、-10%)
- 薄い赤: 小幅に下落(例: -0.5%、-1%)
濃い色のタイルをクリックすると、その銘柄の詳細情報やニュースを確認できます。
(3) タイルサイズの意味(時価総額)
タイルの大きさは、時価総額(株価×発行済株式数)を表します。
タイルサイズの意味:
- 大きいタイル: 時価総額が大きい(Apple、Microsoft、Amazonなどの大型株)
- 小さいタイル: 時価総額が小さい(中小型株)
S&P500のヒートマップでは、上位10社程度が大きなタイルとして表示され、市場全体への影響が大きいことが分かります。
(4) セクター分類(GICS11セクター)
ヒートマップは、銘柄をセクター(業種)ごとに分類しています。一般的にはGICS(Global Industry Classification Standard)の11セクターが使われます。
GICS11セクター:
- 情報技術(Information Technology)
- ヘルスケア(Health Care)
- 金融(Financials)
- 一般消費財(Consumer Discretionary)
- コミュニケーション・サービス(Communication Services)
- 資本財(Industrials)
- 生活必需品(Consumer Staples)
- エネルギー(Energy)
- 公益事業(Utilities)
- 不動産(Real Estate)
- 素材(Materials)
セクターごとに色の傾向を見ることで、どの業種が強い・弱いかを把握できます。
無料で使える米国株ヒートマップツール比較
米国株ヒートマップを提供する無料ツールは多数あります。主要なツールを比較し、それぞれの特徴を解説します。
(1) Finviz(フィンビズ):S&P500全銘柄をセクター別に表示
Finviz(フィンビズ)は、最も人気の無料ヒートマップツールです。
特徴:
- S&P500全銘柄をセクター別に色分け表示
- 期間切替機能(24時間、1週間、1ヶ月、3ヶ月、半年、1年)
- PER、PBR、配当利回りをマップ表示可能
- スマホブラウザでも閲覧可能
- 完全無料(アカウント登録不要)
注意点:
- リアルタイム更新ではなく、15-20分の遅延がある
- 英語表記(日本語非対応)
URL: https://finviz.com/map.ashx?t=sec_all
(2) TradingView:84取引所対応、45種類のフィルター
TradingViewは、84の取引所に対応した多機能ヒートマップツールです。
特徴:
- 84取引所対応(米国株だけでなくFX、暗号資産にも対応)
- 45種類のファンダメンタル・テクニカルフィルター
- 日本語版あり
- スマホアプリ(iOS/Android)提供
- 無料プランで利用可能(有料プランもあり)
注意点:
- 無料プランは一部機能が制限される
- カスタマイズ性が高い分、初心者には複雑に感じる場合がある
URL: https://www.tradingview.com/heatmap/stock/
(3) moomoo証券:リアルタイム無料、米国株・日本株両対応
moomoo証券は、リアルタイム株ヒートマップを無料提供しています。
特徴:
- リアルタイム更新(遅延なし)
- 米国株・日本株両対応
- S&P500、NYSEなど主要指数の価格変動を即座に把握
- 日本語対応
- アカウント登録が必要(無料)
注意点:
- アカウント登録が必要(証券口座開設は不要)
URL: https://www.moomoo.com/ja/heatmap-us
(4) 楽天MarketSpeed II:ズーム・リプレイ機能搭載
楽天証券の取引ツール「MarketSpeed II」には、ヒートマップ機能が搭載されています。
特徴:
- リアルタイム更新
- ズーム機能(特定のセクターを拡大表示)
- リプレイ機能(過去の時点のヒートマップを再生)
- 日本語対応
- 楽天証券口座開設者は無料
注意点:
- 楽天証券の口座開設が必要
(5) SBI証券ヒートマップPlus:口座開設者無料
SBI証券は、「SBIヒートマップPlus」を提供しています。
特徴:
- 緑と赤の濃淡で個別銘柄の上昇・下落を視覚的に捉える
- 日本語対応
- SBI証券口座開設者は無料
注意点:
- SBI証券の口座開設が必要
ヒートマップの活用方法と分析ポイント
ヒートマップを効果的に活用するには、セクター分析、期間切替、バリュエーション指標の活用が重要です。
(1) セクター別の強弱を把握して投資方針を決める
ヒートマップでセクター別の色の傾向を見ることで、どの業種が強い・弱いかを把握できます。
活用例:
- テクノロジーセクターが緑色に固まっている → テック株が買われている
- エネルギーセクターが赤色に固まっている → 原油価格下落など、エネルギー関連が売られている
- 生活必需品セクターが緑色 → リスクオフ(安全志向)の可能性
セクター別の強弱を理解することで、次に投資する銘柄の選択に役立ちます。
(2) 期間切替機能の活用(24時間、1週間、1ヶ月、3ヶ月等)
Finvizなど一部のツールでは、表示期間を切り替えることができます。
期間切替の活用:
- 24時間: 当日の市場動向を把握
- 1週間: 短期的なトレンドを確認
- 1ヶ月: 中期的なセクターローテーション(資金がどのセクターに移動しているか)を把握
- 3ヶ月、半年、1年: 長期的なトレンドを確認
期間を変えることで、短期的な変動と長期的なトレンドを区別できます。
(3) PER・PBR・配当利回りをマップ表示して割安株を探す
Finvizでは、株価変動率だけでなく、PER(株価収益率)、PBR(株価純資産倍率)、配当利回りをヒートマップで表示できます。
活用例:
- PERマップ: PERが低い銘柄(濃い緑色)を探し、割安株候補をリストアップ
- 配当利回りマップ: 配当利回りが高い銘柄(濃い緑色)を探し、インカムゲイン重視の投資候補を発見
バリュエーション指標をマップ表示することで、効率的に割安株を探すことができます。
実践的な使い方の例(セクター分析・急騰急落銘柄の発見)
ヒートマップの実践的な使い方を、具体的な例で解説します。
(1) 市場全体の地合いを確認する(リスクオン・リスクオフの判断)
毎朝、ヒートマップを確認することで、市場全体の地合い(リスクオン・リスクオフ)を把握できます。
リスクオン(リスクを取る姿勢):
- テクノロジー、一般消費財などの成長株が緑色
- 小型株も緑色が多い
- 市場全体が緑色に傾いている
リスクオフ(安全志向):
- 生活必需品、公益事業などの防御的セクターが緑色
- 大型株は緑色だが小型株は赤色
- 市場全体が赤色に傾いている、または防御的セクターのみ緑色
この判断により、当日の投資戦略(積極的に買うか、様子見か)を決めることができます。
(2) 急騰・急落銘柄を発見してニュースを確認する
濃い緑色または濃い赤色のタイルをクリックすることで、急騰・急落している銘柄を発見できます。
活用方法:
- 濃い緑色のタイルを見つける(大幅上昇銘柄)
- その銘柄のティッカーシンボルを確認
- ニュースサイトで検索し、上昇理由を確認(決算発表、新製品発表、業界ニュース等)
急騰・急落の理由を理解することで、市場のセンチメント(投資家心理)を把握できます。
(3) 保有銘柄のセクター偏りをチェックする
ヒートマップで保有銘柄のセクター分布を確認することで、ポートフォリオの偏りをチェックできます。
活用方法:
- 保有銘柄がすべてテクノロジーセクターに集中している場合、リスク分散が不十分
- 他のセクター(ヘルスケア、金融等)への分散投資を検討
- セクター全体が赤色になった場合、ポートフォリオ全体が下落する可能性を理解
セクター偏りをチェックすることで、分散投資の効果を高めることができます。
まとめ:ヒートマップを日々の投資判断に活かそう
米国株ヒートマップは、市場全体の動きやセクター別の強弱を一目で把握できる便利なツールです。Finviz、TradingView、moomoo証券、楽天MarketSpeed II、SBI証券など、無料で使えるツールが豊富にあります。
次のアクション:
- 無料ツールを試してみる(Finviz、TradingView等)
- 毎朝ヒートマップを確認し、市場全体の地合いを把握する習慣をつける
- セクター別の強弱を分析し、投資方針に活かす
- 急騰・急落銘柄を発見し、ニュースを確認する
- 保有銘柄のセクター偏りをチェックし、分散投資を実践する
ヒートマップはあくまで視覚化ツールです。投資判断の唯一の根拠とせず、財務分析・業績確認と併用することが推奨されます。ヒートマップを日々の投資判断に活かし、効率的な情報収集を実践しましょう。
