国際のETF VIX短期先物指数の上場廃止:経緯と影響

著者: Single Stock編集部公開日: 2025/11/15

保有していたVIX ETFが上場廃止になった...どうすればいいの?

VIX関連ETFを保有していた投資家の中には、「国際のETF VIX短期先物指数が上場廃止になった」というニュースを聞いて驚いた方も多いでしょう。上場廃止とはどういうことか、保有者にはどんな影響があるのか、今後どう対応すればいいのか、分かりにくいのが実情です。

この記事では、国際のETF VIX短期先物指数の概要、上場廃止の経緯とスケジュール、上場廃止の理由、投資家への影響と対応方法、代替商品を詳しく解説します。

この記事のポイント:

  • 国際のETF VIX短期先物指数(1552)は2024年2月9日に上場廃止・繰上償還
  • 上場廃止の理由は「中長期的な減価特性」(Contangoによる構造的な問題)
  • 保有者には最終取引日時点の純資産価値(NAV)に基づく償還金が支払われる
  • 代替商品として318A(2025年1月東証上場)があるが、同様のリスクに注意

1. 国際のETF VIX短期先物指数とは

(1) VIX指数と恐怖指数の基礎知識

VIX指数は「恐怖指数」とも呼ばれ、S&P500の予想変動率(ボラティリティ)を示す指数です。市場が急変する際に急上昇するため、リスクヘッジの目的で注目されます。

(2) VIX短期先物指数ETF(1552)の概要

国際のETF VIX短期先物指数(証券コード1552)は、VIX短期先物指数に連動することを目指すETFで、三菱UFJ国際投信が運用していました。東京証券取引所に上場し、日本の投資家が円建てで取引できました。

(3) 運用会社と投資対象

運用会社は三菱UFJ国際投信で、投資対象はVIX短期先物指数です。VIX指数そのものではなく、VIX先物を対象とするため、価格の動きにはギャップが生じます。

2. 上場廃止の経緯とスケジュール

(1) 2024年1月11日:整理銘柄指定

2024年1月11日、日本取引所グループ(JPX)が国際のETF VIX短期先物指数を整理銘柄に指定しました。整理銘柄とは、上場廃止が決定した銘柄で、投資家への注意喚起のための区分です。

(出典: 日本取引所グループ「上場廃止等の決定:国際のETF VIX短期先物指数」https://www.jpx.co.jp/news/1023/20240111-11.html)

(2) 2024年2月9日:最終売買日・繰上償還

2024年2月9日が最終売買日となり、繰上償還が実施されました。この日以降、東京証券取引所での取引はできなくなりました。

(3) 書面決議と手続きの流れ

三菱UFJ国際投信は受益者に対して書面決議を実施し、受益権総口数の3分の2以上の賛成を得て繰上償還を決定しました。保有者には最終取引日時点の純資産価値(NAV)に基づく償還金が支払われました。

3. 上場廃止の理由:VIX先物ETFの減価メカニズム

(1) Contango(期先高)とは

Contangoとは、先物価格が将来の限月ほど高い状態のことです。VIX先物は通常Contango状態にあり、これがVIX先物ETFの減価の原因となります。

(2) 限月交代(ロール)による損失発生

VIX先物ETFは、満期が近い先物を売却し、次の限月の先物を購入する「限月交代(ロール)」を繰り返します。Contango状態では、先物を高値で買い続けることになり、損失が累積します。

(3) 中長期的な減価特性

三菱UFJ国際投信は「中長期的な減価特性」を理由に上場廃止を決定しました。VIX先物ETFは短期トレード専用ツールで、長期保有(数ヶ月以上)では価値が消失するリスクが高いのです。

(出典: 日本経済新聞「平均回帰のVIX VIX先物ETFは中長期減価で償還予定」https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUB00007_Y2A900C2000000/)

4. 投資家への影響と対応方法

(1) 繰上償還と償還金の受取

上場廃止時、ETFは繰上償還され、保有者には償還金が支払われます。償還金は証券口座に入金されます。

(出典: 東証マネ部!「ETFが上場廃止になったら、どうする?!」https://money-bu-jpx.com/news/article045219/)

(2) 償還金額の計算(最終取引日のNAV基準)

償還金額は、最終取引日(2024年2月9日)時点の純資産価値(NAV)に基づいて計算されます。購入価格より大幅に減価している可能性があります。

(3) 税金処理の注意点

償還金を受け取った場合、譲渡益または譲渡損が発生します。譲渡益が出た場合は課税対象となり、譲渡損が出た場合は他の売却益と損益通算できます。詳細は税理士に相談してください。

5. 代替商品と選択肢

(1) 日本市場:318A(VIX短期先物指数ETF)

2025年1月15日、318A(VIX短期先物指数ETF)がシンプレクスアセットマネジメント運用で東証に新規上場しました。S&P 500 VIX短期先物超過リターン指数に連動し、短期投資・ヘッジ用途に適しています。

(出典: シンプレクスETF「VIX短期先物指数ETF」https://www.simplexasset.com/etf/etf318A.html)

(2) 米国市場:VIXY、UVXY、VXX等

米国市場には、VIXY(ProShares VIX Short-Term Futures ETF)、UVXY(ProShares Ultra VIX Short-Term Futures ETF)、VXX(Barclays iPath Series B S&P 500 VIX Short-Term Futures ETN)等の選択肢があります。日本の証券会社で米国株取引口座を開設すれば購入可能です。

(3) 代替商品も同様のリスクを持つことに注意

代替商品(318A、VIXY等)も、VIX先物ETFと同様にContangoによる減価リスクを持ちます。短期トレード専用ツールとして、リスクを十分に理解してから投資することが重要です。

6. まとめ:VIX関連投資の注意点

国際のETF VIX短期先物指数は、2024年2月9日に上場廃止・繰上償還されました。上場廃止の理由は「中長期的な減価特性」で、Contango状態でのロール損失が累積し、長期保有に不適な構造的な問題がありました。

代替商品として318Aや米国市場のVIX ETFがありますが、これらも同様のリスクを持つため、短期トレード専用ツールとして理解し、長期保有は避けるべきです。

次のアクション:

  • VIX関連商品の仕組みとリスク(Contango、減価メカニズム)を理解する
  • 代替商品(318A、VIXY等)を検討する場合、短期トレード専用として扱う
  • 長期投資には適さないことを認識し、リスク許容度と投資目的を再確認する
  • 不明点があれば、証券会社や投資アドバイザーに相談する

※投資判断は自己責任で行い、税金の詳細は税理士に相談してください。

よくある質問

Q1上場廃止とは何ですか?

A1証券取引所での取引が終了することです。国際のETF VIX短期先物指数(1552)は2024年2月9日に最終売買日を迎え、繰上償還されました。

Q2なぜ上場廃止になったのですか?

A2三菱UFJ国際投信が「中長期的な減価特性」を理由に決定しました。VIX先物のContango(期先高)により、先物の乗り換え時に損失が発生し、長期で価値が減価する構造的な問題がありました。

Q3保有していた場合どうなりますか?

A3繰上償還され、最終取引日(2024年2月9日)時点の純資産価値(NAV)に基づく償還金が支払われます。購入価格より大幅に減価している可能性があります。

Q4代替商品はありますか?

A4日本では318A(VIX短期先物指数ETF、2025年1月東証上場)、米国ではVIXY、UVXY、VXX等があります。ただしこれらも同様の減価リスクを持つため、短期トレード専用ツールとして理解が必要です。

S

Single Stock編集部

Single Stockは、米国株式投資に関する情報を日本語で提供するメディアです。投資初心者から経験者まで、銘柄分析・市場動向・投資戦略など、株式投資に役立つ情報を分かりやすく解説しています。