SPY(S&P500連動ETF)完全ガイド:特徴・買い方・投資戦略を徹底解説

著者: Single Stock編集部公開日: 2025/11/17

SPY(S&P500連動ETF)、世界最大のETFで米国株500社にまとめて投資できる?

「SPYスパイって何?」「S&P500に投資したいけど、どのETFを選べばいいの?」と疑問を持つ投資家の方は多いのではないでしょうか。SPY(SPDR S&P 500 ETF Trust)は、S&P500指数に連動する世界最大級のETFであり、米国を代表する500社に一括投資できる魅力があります。しかし、経費率や配当の税金、他のS&P500連動ETF(VOO、IVV等)との違いを理解しないまま投資を始めると、長期的なリターンに差が出る可能性があります。

この記事では、SPYの特徴、購入方法、他のETFとの比較、投資リスクを、日本人投資家にも分かりやすく解説します。

この記事のポイント:

  • SPYは1993年設定の世界初の米国上場ETFで、S&P500の全500銘柄を保有(フルレプリケーション)
  • 世界最高の流動性(平均日次取引高293億ドル)、運用資産額5000億ドル突破(2024年2月)
  • 配当利回り約1.07%、四半期ごとの配当支払、2011年以降増配継続
  • 経費率0.0945%はVOO(0.03%)より高いが、短期トレードでは流動性が優位
  • 日本の証券会社(SBI、楽天、マネックス等)で購入可能、NISA(成長投資枠)でも取引できる

1. SPY(S&P500連動ETF)とは:世界最大級のETFの基本

(1) SPYの正式名称(SPDR S&P 500 ETF Trust)

SPYの正式名称は**SPDR S&P 500 ETF Trust(スパイダー・エスアンドピー500・イーティーエフ・トラスト)**です。「SPDR」は「Spider(クモ)」に由来し、「Standard & Poor's Depositary Receipts」の略称です。

SPYは、S&P500指数に連動する投資成果を目指すETFで、米国を代表する500社に一括投資できる仕組みを提供します。

(2) S&P500指数に連動するETFとは

ETF(Exchange Traded Fund、上場投資信託)は、株式市場で取引される投資信託です。SPYはS&P500指数に連動するため、S&P500を構成する500社の株価を平均した動きと同じパフォーマンスを目指します。

S&P500指数は、米国の主要企業500社(Apple、Microsoft、Amazon、Google、Tesla等)で構成されており、米国経済全体の動向を示す重要な指標です。

(3) 運用会社State Street Global Advisors

SPYの運用会社は、**State Street Global Advisors(ステート・ストリート・グローバル・アドバイザーズ)**です。State Streetは世界3大資産運用会社の一つであり、SPDRシリーズのETFを提供しています。

(4) 1993年設定の世界初の米国上場ETF

SPYは1993年1月22日に設定された、世界初の米国上場ETFです。30年以上の運用実績があり、ETFの歴史そのものとも言える存在です。

設定以来、SPYは米国株式市場の成長とともに拡大し、世界最大のETFとしての地位を確立しています。

2. SPYの特徴と仕組み

(1) フルレプリケーション戦略(S&P500の全500銘柄を保有)

SPYは、S&P500指数を構成する全500銘柄を保有する「フルレプリケーション戦略」を採用しています。これにより、指数との連動性が高く、トラッキングエラー(指数とのパフォーマンス差)が最小限に抑えられます。

保有銘柄のトップ3は以下の通りです(Yahoo Financeより):

  1. Nvidia Corp(8.18%)
  2. Microsoft
  3. Apple

セクター配分では、**情報技術セクターが約35.6%**で最大の配分となっています。

(2) 世界最高の流動性(平均日次取引高293億ドル)

SPYは、平均日次取引高293億ドルと、世界最高の流動性を誇ります。これにより、大口の売買でもスプレッド(買値と売値の差)が狭く、取引コストを抑えられます。

短期トレーダーやデイトレーダーにとって、この高い流動性は大きな魅力です。

(3) 運用資産額5000億ドル突破(2024年2月、ETF史上初)

2024年2月、SPYは運用資産額(AUM)5000億ドル(約70兆円)を突破し、ETF史上初の快挙を達成しました(State Street公式発表)。これは、SPYが世界中の投資家から圧倒的な支持を受けていることを示しています。

(4) 東証にも重複上場(証券コード1557)

SPYは、米国のNYSE Arcaに上場しているだけでなく、東京証券取引所にも重複上場しています(証券コード:1557)。

東証版は円建てで取引できるため、為替リスクを避けたい投資家には便利ですが、流動性は米国版に比べて低い点に注意が必要です。

3. SPYの配当と経費率

(1) 配当利回り約1.07%

SPYの配当利回りは**約1.07%**です(2025年時点)。これは、S&P500を構成する企業が支払う配当金を、SPYの保有者に分配する仕組みです。

配当利回りは米国株の平均(約1.5-2%)より若干低めですが、キャピタルゲイン(値上がり益)を狙う長期投資に適しています。

(2) 四半期ごとの配当支払(年4回)

SPYの配当は、**年4回(四半期ごと)**に支払われます。配当支払月は以下の通りです:

  • 3月、6月、9月、12月

(3) 2011年以降増配を継続(増配率5%以上)

SPYは、2011年以降、増配を継続しており、増配率は5%以上で推移しています。これは、S&P500を構成する企業の業績成長と配当政策の改善を反映しています。

長期投資では、この増配実績が安定した収入源となります。

(4) 経費率0.0945%

SPYの経費率は**0.0945%**です。これは、年間の運用コストとして、保有資産額の0.0945%が差し引かれることを意味します。

例えば、100万円相当のSPYを保有している場合、年間の経費は約945円です。低コストとは言えますが、後述するVOO(0.03%)やIVV(0.03%)と比較すると高めです。

4. 日本からSPYを購入する方法

(1) 主要ネット証券での購入(SBI、楽天、マネックス等)

SPYは、日本の主要ネット証券で購入できます:

  • SBI証券: 米国株取引手数料が業界最安水準
  • 楽天証券: 楽天ポイントが貯まる、使いやすいアプリ
  • マネックス証券: 米国株の銘柄数が豊富、情報ツールが充実

購入手順は以下の通りです:

  1. 証券会社で米国株取引口座を開設する
  2. 円から米ドルに両替する(または外貨建MMFで米ドルを保有)
  3. ティッカーシンボル「SPY」で検索し、購入注文を出す

(2) NISA(成長投資枠)での取引(つみたて投資枠は対象外)

SPYは、**新NISA(成長投資枠)**で購入できます。成長投資枠では年間240万円まで非課税で投資できます。

ただし、つみたて投資枠では海外ETFは対象外です。つみたて投資枠は、金融庁が指定した投資信託(eMAXIS Slim米国株式(S&P500)等)のみが対象となります。

また、米国での10%源泉徴収は免除されません。NISA口座でも、配当の10%は米国で差し引かれます。残りの90%は日本で非課税となります。

(3) 取引手数料と為替手数料

米国ETFの取引手数料は、証券会社によって異なりますが、一般的に**約定代金の0.45-0.495%**程度です。

  • SBI証券: 約定代金の0.495%(最低0ドル、上限22ドル)
  • 楽天証券: 約定代金の0.495%(最低0ドル、上限22ドル)
  • マネックス証券: 約定代金の0.495%(最低0ドル、上限22ドル)

これに加えて、円から米ドルへの為替手数料(片道25銭程度)がかかります。

(4) 定期買付機能での積立投資

一部の証券会社では、ETFでも定期買付機能を提供しており、積立投資が可能です。

  • SBI証券: 米国株式・ETF定期買付サービス
  • マネックス証券: 米国株定期買付サービス

これらのサービスを利用することで、毎月自動的にSPYを購入でき、ドルコスト平均法による分散投資が実現できます。

5. 他のS&P500連動ETFとの比較(VOO、IVV)

(1) 経費率の違い(SPY 0.0945% vs VOO 0.03% vs IVV 0.03%)

S&P500に連動するETFは、SPY以外にも複数存在します。主な比較は以下の通りです:

項目 SPY VOO IVV
運用会社 State Street Vanguard BlackRock
経費率 0.0945% 0.03% 0.03%
設定年 1993年 2010年 2000年
平均日次取引高 293億ドル 約30億ドル 約60億ドル
運用資産額 5000億ドル 約5000億ドル 約4000億ドル

経費率の差は、長期保有では累積します。例えば、100万円を30年間保有した場合、SPYとVOOの経費率の差(0.0645%)は、約19万円の差を生む可能性があります。

(2) 流動性の違い(SPYが最高)

SPYの最大の強みは、圧倒的な流動性です。平均日次取引高293億ドルは、VOO(約30億ドル)、IVV(約60億ドル)を大きく上回ります。

この高い流動性は、短期トレードやデイトレードにおいて、スプレッド(買値と売値の差)を最小限に抑えるため、取引コストを削減できます。

(3) 用途の違い(SPYは短期トレード向き、VOO/IVVは長期保有向き)

  • SPY: 短期トレード、デイトレード向き(流動性が高く、取引コストが低い)
  • VOO/IVV: 長期保有向き(経費率が低く、長期的なリターンが有利)

長期投資(10年以上)であれば、経費率の低いVOOやIVVが有利です。一方、短期トレードや頻繁に売買する場合は、SPYの高い流動性が魅力となります。

6. SPY投資の注意点とリスク

(1) 配当の二重課税(米国10% + 日本20.315%)

SPYの配当には、二重課税が適用されます:

  1. 米国での源泉徴収: 配当の**10%**が米国で差し引かれます
  2. 日本での課税: 残りの90%に対して、日本でさらに20.315%(所得税15.315%+住民税5%)が課税されます

この二重課税を軽減するため、外国税額控除の手続きを行うことで、米国で支払った税金の一部を日本の税金から差し引くことができます。詳細は税理士や国税庁のウェブサイト(https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1240.htm)を参照してください。

(2) 為替リスク(ドル建て資産のため円高で資産価値減少)

SPYは米ドル建てで取引されるため、為替リスクがあります:

  • 円安時: 米ドルベースでの値上がり分に加え、為替差益が上乗せされる
  • 円高時: 米ドルベースで上昇していても、円換算では資産価値が減少する場合がある

長期投資では、為替変動もリスクとリターンの一部として受け入れる姿勢が求められます。

(3) 経費率の差が長期保有で累積

SPYの経費率0.0945%は、VOO(0.03%)やIVV(0.03%)と比べて高めです。長期保有(10年以上)では、この経費率の差が累積し、リターンに影響します。

例えば、100万円を30年間保有した場合、SPYとVOOの経費率の差は約19万円の差を生む可能性があります。

(4) 外国税額控除の手続き

特定口座やNISA以外の口座でSPYの配当を受け取った場合、確定申告時に外国税額控除の手続きを行うことで、米国で支払った税金の一部を日本の税金から差し引くことができます。

手続きは複雑ですが、証券会社から送られる「外国所得税の額等を証する書類」を確定申告書に添付することで申請できます。詳細は税理士や国税庁(https://www.nta.go.jp/)に相談してください。

※税制は変更される可能性があります。最新情報は国税庁や証券会社の公式サイトをご確認ください。

まとめ:SPY投資の判断ポイント

SPY(SPDR S&P 500 ETF Trust)は、S&P500指数に連動する世界最大級のETFです。世界最高の流動性と30年以上の運用実績があり、短期トレードに適しています。一方で、経費率0.0945%は長期保有ではVOO(0.03%)やIVV(0.03%)より不利です。

投資判断のポイント:

  • 短期トレード・デイトレードなら、SPYの高い流動性が有利
  • 長期保有(10年以上)なら、経費率の低いVOOやIVVが有利
  • 配当の二重課税と外国税額控除を理解する
  • 為替リスクを許容できるか検討する
  • NISA(成長投資枠)で購入可能だが、つみたて投資枠は対象外

次のアクション:

  • 主要ネット証券で米国株口座を開設する
  • 投資スタイル(短期 or 長期)に応じてSPY、VOO、IVVを選択する
  • 定期買付機能で積立投資を検討する
  • 外国税額控除の手続きについて税理士や国税庁に相談する

投資判断は最終的に自己責任となります。SPYの特徴とリスクを十分に理解した上で、慎重に判断してください。

よくある質問

Q1SPYはどこで買えますか?

A1主要ネット証券(SBI証券、楽天証券、マネックス証券等)で米国株口座を開設して購入できます。新NISA(成長投資枠)でも取引可能ですが、つみたて投資枠は海外ETFが対象外のため利用できません。

Q2SPYとVOOの違いは何ですか?

A2どちらもS&P500に連動するETFですが、経費率が異なります。SPYは0.0945%、VOOは0.03%です。SPYは流動性が高く短期トレード向き、VOOは経費率が低く長期保有向きです。

Q3SPYの配当はどのくらいもらえますか?

A3配当利回りは約1.07%です(2025年時点)。四半期ごと(年4回)に配当が支払われます。2011年以降、増配を継続しており、増配率は5%以上で推移しています。

Q4SPYの配当にかかる税金はどうなりますか?

A4米国で10%源泉徴収され、さらに日本で20.315%課税される二重課税となります。確定申告時に外国税額控除の手続きを行うことで、米国で支払った税金の一部を日本の税金から差し引くことができます。

Q5東証上場版(1557)と米国版(SPY)の違いは?

A5基本的に同じETFですが、流動性は米国版が圧倒的に高いです。短期トレードなら流動性の高い米国版、円建て取引を希望するなら東証版(1557)を選択してください。

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Single Stock編集部

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