アドバンテストADRへの投資を検討する理由
アドバンテスト(東証プライム6857)は、半導体テスト装置の世界的リーダーです。米国市場ではADR(米国預託証券)として取引されており、日本の投資家でも米国株口座を通じて投資できます。
この記事のポイント:
- アドバンテストは半導体テスター市場で世界シェア58%を持つリーディングカンパニー
- ADR(ATEYY)は米国OTC市場で取引されており、東証株(6857)とは取引市場が異なる
- 2024年度はAI半導体テスト需要の急増で過去最高の業績を記録
- ADR比率は4:1(東証株4株=ADR1株)のため、価格比較時は為替と比率を考慮する必要がある
(1) 半導体テスター市場での世界シェア58%
アドバンテストは、半導体テスト装置(ATE: Automated Test Equipment)市場で世界シェア58%(2024年)を占めています。半導体テスト装置とは、半導体チップの性能や品質を検査する装置で、スマートフォン、パソコン、自動車など、あらゆる電子機器に使われる半導体の製造に不可欠です。
特にAI・データセンター向けの高性能半導体テストでは、アドバンテストの技術力が評価されており、今後も成長が期待されています。
(2) AI半導体テスト需要の急増で業績好調
2024年度(2025年3月期)の連結業績は、売上高7,797億円(前年比+60.3%)、営業利益2,281億円(前年比+179.0%)と過去最高を記録しました。これは、AI・データセンター向けの高性能半導体テスト需要が急増したことが主な要因です。
2025年10月には、通期営業利益予想を3,000億円から3,740億円に上方修正し、1,500億円の自社株買いを発表しました。株価は2024年で91.74%上昇しています。
アドバンテストとADRの基礎知識
(1) アドバンテストの事業内容(半導体テスター)
アドバンテストは、1954年に創業した日本の半導体テスト装置メーカーです。主力製品は半導体テスター(SoC: System on Chip用テスター、メモリ用テスター)で、これらの装置は半導体の良品・不良品を判別するために使用されます。
AI・5G・データセンターなどの成長分野で需要が拡大しており、世界中の半導体メーカーから高い評価を得ています。
(2) ADR(米国預託証券)とは
ADR(American Depositary Receipt、米国預託証券)とは、外国企業の株式を米国市場で取引できるようにした証券です。預託銀行が外国企業の株式を保管し、その代わりとしてADRを発行します。
アドバンテストのADRは、日本の投資家でも米国株口座を通じて購入できます。配当金も米ドルで受け取れるため、為替リスクがある一方で、米国市場での取引時間帯(日本時間23:30-翌6:00、夏時間22:30-翌5:00)に取引できる利点があります。
(3) 東証株(6857)とADRの違い
東証株(6857)とADRの主な違いは以下の通りです:
- 取引市場: 東証株は東京証券取引所プライム市場、ADRは米国OTC市場
- 取引時間: 東証は日本時間9:00-15:00、米国市場は日本時間23:30-翌6:00(夏時間22:30-翌5:00)
- 通貨: 東証株は円建て、ADRはドル建て
- 流動性: 東証の方が流動性が高い(OTC市場はスプレッドが広い)
- ADR比率: 4:1(東証株4株=ADR1株)
アドバンテストADR(ATEYY)の基本情報
(1) ティッカーシンボル:ATEYY(OTC市場)
アドバンテストのADRは、ティッカーシンボル「ATEYY」で米国OTC市場で取引されています。日本の証券会社(SBI証券、楽天証券、マネックス証券等)の米国株口座でも購入可能です。
ただし、OTC市場は取引所市場(NYSE、NASDAQ)と比べて流動性が低く、スプレッド(売値と買値の差)が広い傾向があります。
(2) NYSE上場から上場廃止までの経緯(2001-2016年)
アドバンテストは、2001年にNYSE(ニューヨーク証券取引所)に上場しました。当時のティッカーシンボルは「ATE」でした。しかし、2016年に自主的にNYSEから上場廃止を選択し、現在はOTC市場でATEYYとして取引されています。
上場廃止の理由は、米国市場での取引量が限定的であったことや、規制コストの削減などが考えられますが、ADRプログラム自体は継続しており、OTC市場で取引が可能です。
(3) ADR比率:4:1(東証株4株=ADR1株)
アドバンテストのADR比率は4:1です。つまり、東証株4株がADR1株に相当します。
例えば、東証株の株価が20,000円の場合、ADR価格は以下のように計算されます:
ADR価格(ドル)= 東証株価(円)÷ 4 ÷ 為替レート(円/ドル)
為替レート150円/ドルの場合: ADR価格 = 20,000円 ÷ 4 ÷ 150 = 約33.33ドル
ADR株価と東証株価を比較する際は、この比率と為替レートを考慮する必要があります。
ADR株価と東証株価の比較
(1) 為替レートの影響
ADRはドル建てで取引されるため、円ドル為替レートの変動がADR価格に影響します。円安(ドル高)の場合、円換算でのADR価格は上昇し、円高(ドル安)の場合は下落します。
このため、ADR投資では株価変動リスクに加えて為替リスクも考慮する必要があります。
(2) 複合チャートで価格差を確認
nikkei225jp.comやMONEY BOXなどのサイトでは、ADR株価と東証株価の複合チャートを提供しています。これらを活用することで、価格差や裁定機会を確認できます。
ADR株価と東証株価には、為替レートやADR比率の影響により、若干の価格乖離が生じる場合があります。
(3) 2024-2025年の株価推移
2024年のアドバンテスト株価は、AI半導体テスト需要の急増を背景に91.74%上昇しました。東証株の52週レンジは4,703円~23,675円となっています。
2025年10月には営業利益予想を3,740億円に上方修正し、1,500億円の自社株買いを発表したことで、株価はストップ高となりました。しかし、2025年11月にはZacks Researchがレーティングを「strong-buy」から「hold」に引き下げ、Goldman Sachsもconviction listから除外したことで、株価は調整局面に入る可能性があると言われています。
アドバンテストADRに投資する際のポイント
(1) 流動性の違い(東証の方が高い)
アドバンテストADR(ATEYY)は米国OTC市場で取引されているため、東証株(6857)と比べて流動性が低く、スプレッドが広い傾向があります。
取引量が少ない場合、希望する価格で売買できない可能性があるため、流動性を重視する投資家は東証株を選ぶことが推奨されます。
(2) 為替リスクとADR比率の計算
ADR投資では、以下のリスクと計算を理解する必要があります:
- 為替リスク: 円ドル為替レートの変動により、円換算での投資価値が変動する
- ADR比率: 東証株4株=ADR1株のため、価格比較時は比率を考慮する
- 価格乖離: ADR株価と東証株価は完全に連動しない場合がある
為替リスクを避けたい場合は、東証株(6857)を選ぶことが推奨されます。
(3) 半導体市況とアナリスト評価
アドバンテストの株価は、半導体市況の影響を強く受けます。AI・データセンター向けの高性能半導体テスト需要が今後も続くかどうかが、株価の重要な判断材料となります。
2025年11月時点では、Zacks ResearchやGoldman Sachsがレーティングを引き下げており、短期的には調整局面に入る可能性があると言われています。投資判断は、最新のアナリスト評価や四半期決算を確認した上で行うことが重要です。
まとめ:投資判断のポイント
アドバンテストADR(ATEYY)は、半導体テスター市場で世界シェア58%を持つリーディングカンパニーのADRです。2024年度はAI半導体テスト需要の急増で過去最高の業績を記録しましたが、2025年11月にはアナリストがレーティングを引き下げており、調整局面の可能性もあります。
投資判断のポイント:
- 流動性: 東証株(6857)の方が流動性が高い。ADRはOTC市場のためスプレッドが広い
- 為替リスク: ADRはドル建てのため為替変動の影響を受ける。為替リスクを避けたい場合は東証株を選ぶ
- ADR比率: 4:1(東証株4株=ADR1株)のため、価格比較時は比率と為替レートを考慮する
- 半導体市況: AI・データセンター向けテスト需要の動向が株価に影響する
次のアクション:
- アドバンテストの最新決算資料を確認する
- ADR株価と東証株価の複合チャートで価格差を確認する
- 為替リスクと流動性を考慮して、東証株かADRかを選択する
- アナリスト評価や半導体市況を定期的にチェックする
投資判断は自己責任で行い、最新の財務情報や市場動向を確認した上で決定してください。
