IHI(石川島播磨重工業)ADRの特徴と投資のポイント

著者: Single Stock編集部公開日: 2025/11/15

IHI ADRに投資したいけれど、IHI ETFと混同していないか不安...

米国株・日本株の両方に投資している投資家の中で、「IHI ADRを米国市場で買いたい」「IHIという名前のETFがあるが違いは何か」と悩んでいる人がいます。実は、「IHI」という名前には2つの異なる意味があり、ティッカーシンボルの混同に注意が必要です。

この記事では、IHI ADR(日本のIHI株式会社の米国預託証券)の基礎知識、ADRの仕組み、基本情報、IHI ETF(医療機器ETF)との違い、投資のリスクと注意点を詳しく解説します。

この記事のポイント:

  • IHI ADRは日本のIHI株式会社(航空エンジン・プラント事業)の米国預託証券(ティッカー: IHICY)
  • IHI ETFは米国医療機器セクターのETFで全く別物。ティッカーシンボルの混同に注意
  • ADR投資には為替リスク(ドル/円レート変動)とOTC市場の流動性リスクがある
  • 航空宇宙・防衛セクターに投資したい場合は、ITA ETF(iShares U.S. Aerospace & Defense ETF)が正しい選択肢

1. IHI ADRとは【日本のIHI株式会社の米国預託証券】

(1) ADRの定義

ADR(American Depositary Receipt)は、米国預託証券のことで、外国企業の株式を米国市場で取引できる形態にしたものです。外国企業の株式を米国の預託銀行が保管し、それに対応する預託証券を米国市場で発行します。

ADRの特徴:

  • 米ドル建てで取引
  • 配当もドルで受け取る
  • 米国市場で簡単に取引可能
  • 為替リスクあり

(2) IHI株式会社の概要(航空エンジン、プラント、物流システム等)

IHI株式会社(石川島播磨重工業)は、1853年に設立された日本の総合重工業メーカーです。

主要事業:

  • 航空・宇宙・防衛: 航空エンジン、宇宙開発、防衛装備品
  • エネルギー・プラント: 火力・原子力発電所、LNGプラント
  • 社会基盤・海洋: 橋梁、水門、海洋構造物
  • 物流・産業システム: 物流機器、ターボチャージャー

従業員数約27,990人、時価総額184.6億ドル(2025年11月時点)の大手企業です。

(3) 米国市場での取引のメリット

IHI ADRを米国市場で取引するメリットは以下の通りです。

  • ドル建てで取引できる(ドル資産として保有可能)
  • 米国の証券会社で簡単に購入できる
  • 配当もドルで受け取れる

ただし、為替リスクやOTC市場の流動性リスクに注意が必要です。

2. ADR(米国預託証券)の仕組みと取引方法

(1) ADRの仕組み(預託証券の構造)

ADRは以下の仕組みで成り立っています。

  1. 預託銀行: 外国企業の株式を預かる
  2. 預託証券発行: 預かった株式に対応するADRを米国市場で発行
  3. 投資家: ADRを米国市場で購入

ADRは本国市場の株式と同じ経済的権利(配当受取、議決権等)を持ちますが、為替リスクや本国市場との価格乖離リスクがあります。

(2) OTC市場とは

IHI ADR(IHICY)はOTC(Over-The-Counter)市場で取引されます。OTC市場は証券取引所を通さない店頭取引市場で、NYSE(ニューヨーク証券取引所)やNASDAQに比べて流動性が低い傾向があります。

OTC市場の特徴:

  • 取引量が少ない場合がある
  • ビッドアスクスプレッドが広い場合がある
  • 株価の変動が大きくなる可能性

(3) 換算比率と配当の受取方法

ADRには換算比率があり、1 ADR = 本国株式の何株に相当するかが決められています。IHI ADRの換算比率は、公式情報または証券会社の取引画面で確認できます。

配当は、本国(日本)で支払われた配当を預託銀行が受け取り、ドル建てに換算して米国の投資家に支払います。配当には日本の源泉税(10%)と米国の税金が課されるため、外国税額控除の適用を検討する必要があります。

3. IHI Corp ADRの基本情報【ティッカー・株価・事業内容】

(1) ティッカーシンボル: IHICY

基本情報:

  • ティッカー: IHICY
  • 市場: OTC(Over-The-Counter)
  • 企業名: IHI Corp ADR

購入前に必ずティッカーシンボル「IHICY」を確認してください。IHI ETF(医療機器ETF)のティッカーは「IHI」で全く別の商品です。

(2) 株価情報(時価総額184.6億ドル、52週レンジ)

株価情報(2025年11月時点):

  • 時価総額: 184.6億ドル
  • 52週レンジ: $11.40 - $32.65
  • 従業員数: 27,990人

株価は為替レートや本国市場の動向に影響されるため、日本株(東証: 7013)の値動きも合わせて確認することが推奨されます。

(3) 事業内容(航空宇宙・防衛・エネルギー)

IHI株式会社は、航空エンジン、プラント、物流システムなど幅広い事業を展開しています。

主要セグメント:

  • 航空・宇宙・防衛: 航空エンジン(GEとの合弁事業など)、宇宙ロケット、防衛装備品
  • エネルギー・プラント: LNGプラント、火力・原子力発電所
  • 社会基盤・海洋: 橋梁、水門、海洋構造物
  • 物流・産業システム: ターボチャージャー、物流機器

航空宇宙・防衛セクターは、地政学的リスクのヘッジや政府予算の安定性から注目されています。

4. 注意:「IHI」という名前のETF【医療機器ETFとの混同を避ける】

(1) IHI ETF = iShares U.S. Medical Devices ETF(医療機器セクター)

IHI ETF(医療機器ETF)の基本情報:

  • ティッカー: IHI
  • 正式名称: iShares U.S. Medical Devices ETF
  • 運用会社: BlackRock(iSharesブランド)
  • 投資対象: 米国医療機器セクター
  • 経費率: 0.38%
  • NAV: $63.18(2025年11月12日時点)
  • 2024年リターン: +8.62%
  • 2025年YTD: +3.25%

IHI ETFは日本のIHI株式会社とは全く関係なく、米国の医療機器セクターに投資するETFです。

(2) ITA ETF = iShares U.S. Aerospace & Defense ETF(航空宇宙・防衛セクター)

航空宇宙・防衛セクターに投資したい場合は、IHI ETFではなくITA ETFが正しい選択肢です。

ITA ETF(航空宇宙・防衛ETF)の基本情報:

  • ティッカー: ITA
  • 正式名称: iShares U.S. Aerospace & Defense ETF
  • 運用会社: BlackRock(iSharesブランド)
  • 投資対象: 米国航空宇宙・防衛セクター
  • 純資産: 121億ドル(最大の防衛ETF)
  • 特徴: 地政学的リスクのヘッジ、政府予算の安定性

ITA ETFは、Boeing、Lockheed Martin、General Dynamicsなど米国の主要防衛企業に投資します。

(3) ティッカーシンボルの確認が重要

まとめ:

  • IHICY = IHI Corp ADR(日本のIHI株式会社)
  • IHI = iShares U.S. Medical Devices ETF(米国医療機器セクター)
  • ITA = iShares U.S. Aerospace & Defense ETF(米国航空宇宙・防衛セクター)

投資前に必ずティッカーシンボルを確認し、混同しないようにしてください。

5. IHI ADR投資のリスクと注意点【為替・OTC市場・流動性】

(1) 為替リスク(ドル/円レート変動)

IHI ADRはドル建てで取引されるため、為替リスクがあります。

例:

  • 投資時: 1ドル=140円でIHI ADR 1株($20)購入(2,800円)
  • 売却時: 1ドル=130円でIHI ADR 1株($20)売却(2,600円)
  • 為替差損: 200円

円高時には円換算の評価額が下落するリスクがあるため、為替動向も考慮する必要があります。

(2) OTC市場の流動性の低さ

IHI ADR(IHICY)はOTC市場で取引されるため、流動性が低い場合があります。

リスク:

  • 取引量が少なく、売買が成立しにくい
  • ビッドアスクスプレッドが広く、取引コストが高い
  • 株価の変動が大きくなる可能性

流動性リスクを避けたい場合は、日本の東証(証券コード: 7013)で本体株を取引する方法もあります。

(3) 本体株(7013)との価格乖離

ADRは本国市場の株価と連動しますが、為替レートやOTC市場の需給により価格乖離が発生する場合があります。

注意点:

  • 本体株(東証: 7013)の株価をドル換算した価格とADR価格を比較
  • 大きな乖離がある場合は、割高・割安を判断

6. まとめ:IHI ADRへの投資を検討する際のチェックポイント

IHI ADR(ティッカー: IHICY)は、日本のIHI株式会社の米国預託証券で、航空エンジン、プラント、物流システムなどの事業を展開する総合重工業メーカーです。OTC市場で取引され、時価総額184.6億ドル、52週レンジ$11.40-$32.65で推移しています。

IHI ADRへの投資を検討すべき投資家:

  • 日本の重工業株をドル建てで保有したい
  • 航空宇宙・防衛セクターに興味がある
  • 為替リスクとOTC市場の流動性リスクを許容できる

重要な注意点:

  • IHI ETF(医療機器ETF)との混同に注意。ティッカーシンボルを必ず確認
  • 航空宇宙・防衛セクターに投資したい場合は、ITA ETFが正しい選択肢
  • 為替リスク、OTC市場の流動性リスクを十分に理解する

次のアクション:

投資判断は自己責任で行い、ティッカーシンボルの混同、為替リスク、流動性リスクを十分に理解した上でIHI ADRへの投資を検討してください。

よくある質問

Q1IHI ADRのティッカーシンボルは?

A1IHI ADRのティッカーシンボルは「IHICY」です。OTC(Over-The-Counter)市場で取引されています。「IHI」というティッカーは医療機器ETF(iShares U.S. Medical Devices ETF)なので、混同しないよう注意してください。

Q2IHI ADRとIHI ETFの違いは?

A2IHI ADR(ティッカー: IHICY)は日本のIHI株式会社(航空エンジン・プラント事業)の米国預託証券です。一方、IHI ETF(ティッカー: IHI)は米国医療機器セクターのETFで全く別物です。ティッカーシンボルを必ず確認してください。

Q3IHI ADRの為替リスクは?

A3IHI ADRはドル建てで取引されるため、為替リスクがあります。円高時には円換算の評価額が下落します。例えば、1ドル=140円で購入し、1ドル=130円で売却した場合、ドル建ての株価が変わらなくても円建てでは損失が発生します。

Q4航空宇宙・防衛セクターに投資したい場合は?

A4航空宇宙・防衛セクターに投資したい場合は、ITA ETF(iShares U.S. Aerospace & Defense ETF)が正しい選択肢です。IHI ETFは医療機器セクターのETFなので注意してください。ITA ETFは純資産121億ドルで最大の防衛ETFです。

S

Single Stock編集部

Single Stockは、米国株式投資に関する情報を日本語で提供するメディアです。投資初心者から経験者まで、銘柄分析・市場動向・投資戦略など、株式投資に役立つ情報を分かりやすく解説しています。