楽天ADRは存在する?|米国市場での取引可能性を解説
「楽天の株を米国市場で買いたいけれど、楽天ADRは存在するの?」「日本企業のADRはどうやって調べればいいの?」と疑問に感じている方は多いのではないでしょうか。楽天ADRは実際に存在し、米国OTC市場で取引されています。
この記事では、楽天ADR(ティッカー: RKUNY)の基本情報、株価・配当、取引方法、メリットとデメリット、東証の楽天グループ株との比較まで徹底解説します。
この記事のポイント:
- 楽天ADR(ティッカー: RKUNY)は米国OTC市場に上場し、米ドル建てで取引可能
- Level I ADRのため主要取引所には非上場で、流動性は低め
- SBI証券・楽天証券などの主要ネット証券で購入可能
- メリットは米ドル建て保有と米国市場の取引時間、デメリットは流動性の低さと為替リスク
- 配当課税は日本で20.315%のみ(米国非課税で二重課税なし)
楽天ADRは存在する|RKUNY(OTC市場)の基本情報
(1) 楽天ADR(ティッカー: RKUNY)の概要
楽天ADRは存在し、米国OTC市場で取引されています。ティッカーシンボルは「RKUNY」で、米ドル建てで取引されます。
楽天ADRの基本情報:
- ティッカーシンボル: RKUNY
- 取引市場: OTC市場(Over-The-Counter、店頭市場)
- ADRレベル: Level I(OTC市場のみ、主要取引所には非上場)
- 東証の証券コード: 4755(楽天グループ株式会社)
ADRの仕組みは以下の通りです。
- 預託銀行が楽天株を購入: 米国の預託銀行が東京証券取引所で楽天株(証券コード: 4755)を購入し保管します。
- ADRとして証券を発行: 預託銀行は保管した株式に対応するADRを発行し、米国OTC市場で取引可能にします。
- 投資家がADRを購入: 投資家は米国市場で楽天ADRを購入し、配当金も米ドル建てで受け取ります。
楽天ADRは「Sponsored ADR」に分類され、楽天が預託銀行と正式契約を結んでいるため、情報開示が充実しています。
※出典: Nasdaq「Rakuten Group Inc. ADR (RKUNY)」https://www.nasdaq.com/market-activity/stocks/rkuny
(2) 楽天のビジネスモデル(Eコマース・Fintech・モバイル)
楽天グループは、Eコマース、Fintech、モバイル事業を中心に展開する日本の大手インターネット企業です。
楽天の主なビジネスモデル:
1. Eコマース事業
- 楽天市場(日本最大級のオンラインショッピングモール)
- 楽天トラベル、楽天ブックス等
2. Fintech事業
- 楽天カード(クレジットカード)
- 楽天銀行、楽天証券、楽天ペイ等
3. モバイル事業
- 楽天モバイル(第4の携帯キャリア)
4. その他
- 楽天生命、楽天損保(保険)
- Rakuten Viber(メッセージングアプリ)
楽天は「楽天エコシステム(楽天経済圏)」を構築し、複数のサービスを連携させて楽天ポイントを共通通貨として活用しています。
※出典: Investing.com「Rakuten Inc ADR Stock Price Today」https://www.investing.com/equities/rakuten-adr
楽天ADR(RKUNY)の株価・配当・Level I ADRの特徴
(1) 2024-2025年の株価パフォーマンス(約6.26ドル)
2024-2025年の楽天ADRの株価は以下の通りです。
株価データ(2025年2月時点):
- 現在値: 約6.26ドル
- アナリスト予想(2025年11月): 6.37ドル(約2%上昇)
- 長期予想(2030年): 7.10ドル
楽天は楽天モバイル事業への投資により赤字が続いていますが、Eコマース・Fintech事業の収益力は安定しています。アナリスト予想は控えめですが、長期的な成長余地はあると見られています。
※出典: Investing.com「Rakuten Inc ADR Stock Price Today」https://www.investing.com/equities/rakuten-adr、WalletInvestor「Rakuten Inc ADR Stock Forecast」https://walletinvestor.com/stock-forecast/rkuny-stock-prediction
(2) Level I ADRとは何か(OTC市場のみ、流動性が低い)
ADRは上場基準により「Level I」「Level II」「Level III」の3段階に分類されます。楽天ADRは「Level I」に該当します。
Level Iの特徴:
- 取引市場: OTC市場のみ(NYSE・NASDAQなど主要取引所には非上場)
- SECへの登録: 不要(最低限の情報開示のみ)
- 流動性: 低い(主要取引所上場のLevel II/IIIと比較)
Level II/IIIとの違い:
- Level II: NYSE・NASDAQなど主要取引所に上場、厳格な情報開示義務、流動性が高い(例: ソニー、トヨタ)
- Level III: Level IIの要件に加え、資金調達(新規株式発行)が可能
楽天ADRはLevel Iのため、主要取引所上場のADRと比べて流動性が低く、売買が成立しにくい場合があります。大口の売買注文では価格が不利に動く可能性があるため、注意が必要です。
※出典: Vested Finance「A Complete Guide to American Depository Receipts (ADRs)」https://vestedfinance.com/blog/a-complete-guide-to-american-depository-receipts-adrs/
(3) アナリスト予想と配当状況
楽天ADRの配当状況は以下の通りです。
配当データ:
- 配当支払い: 2020年以降は無配(楽天モバイル事業への投資により)
- 将来の配当: 楽天モバイルが黒字化すれば配当再開の可能性あり
アナリスト予想は「2025年11月に6.37ドル(約2%上昇)」と控えめですが、長期的には楽天モバイルの黒字化、Fintech事業の成長により株価上昇の可能性があります。
ただし、アナリスト評価はあくまで参考情報であり、投資判断は自己責任で行う必要があります。
※出典: WalletInvestor「Rakuten Inc ADR Stock Forecast」https://walletinvestor.com/stock-forecast/rkuny-stock-prediction
楽天ADRの取引方法と証券会社(楽天証券・SBI証券等)
(1) 米国株口座の開設と取引手順
楽天ADRを購入するには、以下の手順で証券会社に口座を開設します。
1. 証券会社で口座開設 主要ネット証券(SBI証券、楽天証券、マネックス証券等)で証券総合口座を開設します。
2. 外国株式口座を開設 証券総合口座開設後、外国株式取引専用の口座を開設します(オンラインで手続き可能)。
3. 米ドルを入金または購入 楽天ADRは米ドル建てで取引されるため、事前に米ドルを証券口座に入金するか、円から米ドルに両替します。
4. RKUNYを検索して購入 通常の米国株と同じ取引画面で、ティッカーシンボル「RKUNY」を検索し、購入します。
(2) 日本の主要ネット証券の取扱状況
日本の主要ネット証券は、すべて米国ADRの取引に対応しています。
SBI証券:
- 取扱銘柄: 5,000銘柄以上(楽天ADRを含む)
- 取引手数料: 約定代金の0.495%(最低0ドル、上限22ドル)
- 為替手数料: 片道25銭
- NISA対応: あり
楽天証券:
- 取扱銘柄: 4,000銘柄以上(楽天ADRを含む)
- 取引手数料: 約定代金の0.495%(最低0ドル、上限22ドル)
- 為替手数料: 片道25銭
- 楽天ポイント: 取引で貯まる・使える
- NISA対応: あり
- NISA成長投資枠: 米国株取引手数料無料
マネックス証券:
- 取扱銘柄: 5,000銘柄以上(楽天ADRを含む)
- 取引手数料: 約定代金の0.495%(最低0ドル、上限22ドル)
- 為替手数料: 片道25銭(買付時は無料キャンペーンあり)
- NISA対応: あり
各証券会社の手数料やサービス内容を比較し、自分に合った証券会社を選びましょう。
※参考: 楽天証券「米国株式・海外ETF」https://www.rakuten-sec.co.jp/web/us/
楽天ADRのメリットとデメリット(流動性リスク・為替リスク)
(1) メリット:米ドル建て保有、米国市場の取引時間で売買可能
楽天ADR投資には以下のメリットがあります。
1. 米ドル建てで日本株を保有できる 楽天ADRは米ドル建てで取引されるため、円安時には為替差益を得られます。ドル建て資産として保有することで、通貨分散効果も期待できます。
2. 米国市場の取引時間で売買できる 東京証券取引所は日本時間9:00-15:00ですが、米国OTC市場は日本時間22:30-翌5:00(冬時間は23:30-翌6:00)で取引できます。日本市場の取引時間外でも価格動向を確認し、売買できる利便性があります。
3. 夜間の市場動向に対応できる 日本株の価格は、日本市場の取引時間外に発表される米国経済指標や国際ニュースの影響を受けます。楽天ADRなら、夜間の市場動向に即座に対応できます。
4. 配当金が米ドルで受け取れる 配当金は米ドル建てで証券口座に入金されます(現在は無配ですが、将来的に配当が再開された場合)。
(2) デメリット:Level Iのため流動性が低い、為替リスク、上場廃止リスク
一方で、楽天ADR投資には以下のデメリットもあります。
1. 流動性が低い(Level I ADRの特徴) 楽天ADRはLevel I(OTC市場のみ)のため、主要取引所上場のADRと比べて流動性が低く、売買が成立しにくい場合があります。大口の売買注文では価格が不利に動く可能性があるため、注意が必要です。
2. 為替リスク 楽天ADRは米ドル建てで取引されるため、為替レートの変動により、円ベースでの投資収益が大きく変動する可能性があります。円高時には為替差損が発生します。
3. 上場廃止リスク 日本企業ADRは企業判断で任意廃止する可能性があります。実際、キヤノン、京セラは2023年にADRを上場廃止しています。廃止後は東証株への転換または現金化が必要です。
ただし、中国企業ADRのような政治リスクによる強制廃止(HFCAA法)は日本企業ADRには適用されません。
4. 管理手数料 預託銀行はADRの管理手数料を徴収します。手数料は銘柄により異なりますが、年1-3セント/株が一般的です。配当金から自動的に差し引かれます(現在は無配のため影響なし)。
※出典: Interactive Brokers「Benefits & Risks of ADRs」https://www.interactivebrokers.com/campus/trading-lessons/sponsored-and-unsponsored-adrs/、日本経済新聞「キヤノン、米国預託証券(ADR)のニューヨーク証券取引所における上場廃止予定について発表」https://www.nikkei.com/article/DGXZRSP649308_T10C23A2000000/
東証の楽天グループ株との比較(価格差・配当課税・取引時間)
(1) ADRと東証株の価格差の要因(為替、取引時間)
楽天ADRと東証の楽天グループ株(証券コード: 4755)は、実質的には同じ企業への投資ですが、以下の要因で価格差が生じることがあります。
価格差の主な要因:
1. 為替レート ADRは米ドル建て、東証株は円建てで取引されるため、為替レートの変動により価格差が生じます。
計算例:
- 東証の楽天株: 900円
- ドル円レート: 150円/ドル
- 理論的なADR価格: 900円 ÷ 150円/ドル = 6ドル/株
実際のADR価格がこの理論値と異なる場合、裁定取引の機会が生じます。
2. 取引時間の違い 東証は日本時間9:00-15:00、米国OTC市場は日本時間22:30-翌5:00(冬時間は23:30-翌6:00)で取引されるため、時差により価格差が生じます。
例えば、東証の取引時間終了後に米国で重要な経済指標が発表された場合、楽天ADRは即座にその影響を反映しますが、東証株は翌営業日まで反映されません。
3. 流動性の違い 東証の楽天株は流動性が高く取引量が多いですが、楽天ADR(Level I)は流動性が低く取引量が少ないため、価格が不安定になる場合があります。
※参考: Yahoo!ファイナンス「楽天グループ(株)【RKUNY】:株価・株式情報」https://finance.yahoo.co.jp/quote/RKUNY
(2) 配当課税の違い(二重課税なし、日本で20.315%のみ)
日本株ADRの配当課税は、東証で直接買う場合と実質的に同じです。
楽天ADRの配当課税:
- 米国: 非課税(日本企業ADRのため)
- 日本: 20.315%(所得税15.315%、住民税5%)
東証の楽天株の配当課税:
- 日本: 20.315%(所得税15.315%、住民税5%)
日本株ADRは米国で配当非課税のため、二重課税はありません。配当課税の面では、ADRと東証株に実質的な違いはありません。
ただし、ADR購入時には為替手数料(片道25銭程度)が別途発生するため、総コストは東証で直接買う場合と比較検討する必要があります。
※参考: 楽天証券「ADRの仕組み~ADRは株なの?」https://www.rakuten-sec.co.jp/web/special/master_adr/master_adr_01.html
まとめ|楽天ADRで米ドル建て投資は可能だが流動性に注意
楽天ADR(ティッカー: RKUNY)は米国OTC市場で取引されており、米ドル建てで楽天グループに投資できます。ただし、Level I ADRのため流動性が低く、売買が成立しにくい場合がある点に注意が必要です。
この記事のまとめ:
- 楽天ADR(RKUNY)は米国OTC市場に上場し、米ドル建てで取引可能
- Level I ADRのため主要取引所には非上場で、流動性は低め
- SBI証券・楽天証券などの主要ネット証券で購入可能
- メリットは米ドル建て保有と米国市場の取引時間、デメリットは流動性の低さと為替リスク
- 配当課税は日本で20.315%のみ(米国非課税で二重課税なし)
次のアクション:
- 主要ネット証券で外国株式口座を開設する
- 少額から楽天ADRに投資し、流動性を確認する
- 為替リスクを理解した上で、ドル建て資産として保有を検討する
- 流動性が気になる場合は、東証で楽天グループ株(証券コード: 4755)を直接購入する
楽天ADRは米ドル建てで日本株を保有できる便利な手段ですが、流動性の低さを理解した上で、自分の投資スタイルに合った選択をしましょう。
※2025年2月時点の情報です。株価、配当、手数料等は変更される可能性があるため、最新情報は各証券会社の公式サイトや楽天の公式IRサイトでご確認ください。
