JPモルガン米国株式プレミアムインカムETF(JEPI)とは
米国株で配当収入を得たいと考えているものの、「高利回りのETFはないか」「毎月分配金がもらえるETFは?」と探していませんか?
JPモルガン米国株式プレミアムインカムETF(ティッカー: JEPI)は、カバードコール戦略により8〜12%の高利回りと毎月分配を実現するETFです。
この記事では、JEPIの仕組み、メリット・デメリット、購入方法、税金までを中立的に解説します。
この記事のポイント:
- JEPIはカバードコール戦略により配当金+オプションプレミアムの2つの収入源を確保
- 配当利回り8〜12%、毎月分配(年12回)で定期収入を得られる
- S&P500よりボラティリティが低く(9.15% vs 17%)、下落相場に強い
- 上昇相場ではリターンが制限され、税効率も悪い(普通所得課税)
- リタイア世代や定期収入を求める投資家向け、長期成長を目指す初心者には不向きの場合も
(1) JEPIの概要(ティッカー: JEPI、設定日: 2020年5月)
JEPIは、JPモルガン・アセット・マネジメントが運用するアクティブETFです。
基本情報:
- ティッカー: JEPI
- 設定日: 2020年5月
- 運用資産総額(AUM): 約407億ドル(2024年12月時点)
- 経費率: 0.35%
- 分配頻度: 毎月(年12回)
2020年の設定以来、50億ドル以上の純流入があり、高利回りを求める投資家から高い人気を集めています。
(2) プレミアムインカム戦略の目的(配当収入+値上がり益)
プレミアムインカム戦略とは、株式からの配当収入と、オプション売却によるプレミアム収入の両方を獲得する戦略です。
2つの収入源:
- 株式の配当金(S&P500構成銘柄を保有)
- オプションプレミアム(コールオプション売却)
これにより、通常の株式投資よりも高い利回りを実現しています。
JEPIの基本情報と投資戦略
JEPIの具体的な投資戦略を見ていきます。
(1) 投資対象(S&P500構成銘柄)
JEPIは、S&P500構成銘柄を主な投資対象とします。
投資方針:
- S&P500構成銘柄のうち、配当利回りやボラティリティを考慮して銘柄を選定
- 分散投資により特定銘柄のリスクを軽減
- アクティブ運用により市場環境に応じてポートフォリオを調整
S&P500は米国の優良企業500社で構成されるため、投資対象の質は高いと考えられます。
(2) 経費率(0.35%)と運用資産総額(AUM: 400億ドル超)
JEPIの経費率は0.35%です。
経費率の比較:
- S&P500インデックスETF(VOO、IVV): 0.03%
- JEPI: 0.35%
- 高配当ETF(SPYD、VYM): 0.06〜0.07%
アクティブ運用のため、インデックスETFより経費率は高めですが、高配当ETFと比較すると5倍程度のコストがかかります。
(3) 分配金(毎月分配、年12回)
JEPIは毎月分配を目指しており、年12回の分配金を支払います。
分配金の実績(2024年):
- 年間分配金: 1株あたり約4.72ドル
- 配当利回り: 約8.30%
- 分配頻度: 年12回(毎月)
毎月分配により、定期的なキャッシュフローを確保できる点が特徴です。
カバードコール戦略の仕組み
JEPIの核となるカバードコール戦略を解説します。
(1) カバードコールとは何か(株式保有+コールオプション売却)
カバードコールとは、保有株式に対してコールオプション(買う権利)を売却する戦略です。
仕組み:
- S&P500構成銘柄を保有する
- その株式に対してコールオプションを売却する
- オプションの買い手からプレミアム(料金)を受け取る
- 株価が行使価格を超えた場合、株式を売却する(利益が制限される)
この戦略により、株価が横ばいや下落の局面でもオプションプレミアムを獲得できます。
(2) 2つの収入源(配当金+オプションプレミアム)
JEPIは、2つの収入源により高利回りを実現しています。
収入源の内訳:
- 配当金: S&P500構成銘柄からの配当(利回り1〜2%程度)
- オプションプレミアム: コールオプション売却による収入(利回り6〜10%程度)
- 合計: 8〜12%の配当利回り
オプションプレミアムが配当収入の大部分を占めるため、市場のボラティリティ(変動性)が高いほどプレミアムも高くなる傾向があります。
(3) ELN(株価連動債)の使用
JEPIは、ELN(Equity-Linked Notes、株価連動債)を使用してコールオプション売却を実施します。
ELNの特徴:
- 株式のパフォーマンスに連動する債券
- オプション取引を効率的に実行できる
- 税務上、分配金が普通所得として課税される(後述)
ELNの使用により、大規模なオプション取引を効率的に行えますが、税効率が悪くなるデメリットもあります。
メリットとデメリット
JEPIのメリットとデメリットを整理します。
(1) メリット(高利回り8-12%、低ボラティリティ、下落相場での強さ)
主なメリット:
高利回り(8〜12%):
- 2024年の配当利回りは約8.30%
- 10年国債利回りを2.8ポイント上回る魅力的な水準
- 毎月分配で定期収入を確保
低ボラティリティ(9.15%):
- S&P500のボラティリティ(17%)の約半分
- 株価変動が小さく、リスク回避型の投資家に適している
下落相場での強さ:
- 2018年Q4: S&P500を5.49ポイント上回る
- 2022年の下落局面: S&P500を14.23ポイント上回る
- 最大下落率: JEPI -13.71% vs S&P500 -24.5%
下落相場では、カバードコール戦略によりオプションプレミアムが損失を軽減する効果があります。
(2) デメリット(上昇相場でのリターン制限、税効率の悪さ、長期投資には不向き)
主なデメリット:
上昇相場でのリターン制限:
- 2023年11月〜2024年3月の上昇局面: S&P500を12ポイント下回る
- カバードコール戦略により、株価が大幅上昇した際の利益が制限される
- 長期的なトータルリターン: S&P500(13.46%)> JEPI(10.29%)
税効率の悪さ:
- ELN使用により、分配金の大部分が普通所得として課税される
- 適格配当(Qualified Dividends)の低税率適用を受けられない
- 高税率が適用される可能性がある
長期投資には不向きの可能性:
- 上昇相場でのリターン制限により、長期的な資産成長は限定的
- 長期的な資産成長を目指す投資家にはS&P500インデックスファンドの方が適している場合も
購入方法・税金・コスト
JEPIの購入方法と税金について解説します。
(1) 購入方法(楽天証券、マネックス証券等)
JEPIは、米国株取扱のある証券会社で購入できます。
主要ネット証券:
- 楽天証券: 米ドル為替手数料片道0円、NISA口座対応
- マネックス証券: 米国株情報が充実、NISA口座対応
- SBI証券: 取扱銘柄数が豊富、NISA口座対応
ティッカー「JEPI」で検索し、通常の米国株と同様に購入できます。
(2) 税金(米国10%源泉徴収+日本20.315%、外国税額控除)
JEPIの分配金には、米国と日本で課税されます。
課税の仕組み:
- 米国での源泉徴収: 10%
- 日本での課税: 20.315%(所得税15.315%+住民税5%)
- 合計: 約28%の税金
外国税額控除: 確定申告により、米国で源泉徴収された10%の一部を日本の所得税から取り戻せる可能性があります。ただし、所得額や控除額により取り戻せる金額は異なります。
(3) NISA口座での注意点(外国税額控除が適用されない)
NISA口座でJEPIを保有する場合、注意点があります。
NISA口座の特徴:
- 日本での課税(20.315%)は非課税
- 米国での源泉徴収(10%)は課税される
- 外国税額控除が適用されない(NISA口座は非課税のため)
NISA口座では外国税額控除を受けられないため、米国の10%課税を取り戻せません。配当収入を重視する場合、課税口座で外国税額控除を活用する方が有利なケースもあります。
まとめ:JEPIに向いている人
JEPIは、高利回りと低ボラティリティを両立するETFです。
JEPIに向いている人:
- 定期的な配当収入を重視する人(毎月分配)
- リスクを抑えつつ高利回りを得たい人(8〜12%)
- リタイア世代や定期収入を求める人
- 下落相場でのリスク軽減を重視する人
- 経験豊富でリスク回避型の投資家
他の選択肢を検討すべき人:
- 長期的な資産成長を最優先する人(S&P500インデックスファンドが適している)
- 上昇相場でのリターンを最大化したい人
- 税効率を重視する人(適格配当の低税率適用を受けられるETFを検討)
- 投資初心者(まずはS&P500インデックスファンドから始めることを推奨)
次のアクション:
- カバードコール戦略の仕組みを理解する
- S&P500インデックスファンドとのパフォーマンスを比較する
- 自分の投資目的(定期収入 vs 長期成長)を明確にする
- 証券会社でJEPIの詳細情報を確認する
投資信託・ETFは元本保証ではなく、株価変動や為替変動により損失が生じる可能性があります。カバードコール戦略は上昇相場でのリターンが制限されるリスクがあります。投資判断は自己責任で行い、不明点は専門家にご相談ください。
※本記事の情報は執筆時点のものです。最新の配当利回り、経費率、税制は目論見書や証券会社の公式サイトでご確認ください。
