三菱商事のADR(米国預託証券)とは|東証株との違いと株価連動性

著者: Single Stock編集部公開日: 2025/11/14

三菱商事のADR(米国預託証券)とは何か

「三菱商事は東証に上場しているのに、米国市場でも取引されているって本当?」

日本株投資経験がある投資家の中には、三菱商事が米国市場でもADR(米国預託証券)として取引されていることを知り、その仕組みと東証株との違いを理解したいと考える人が増えています。

この記事のポイント:

  • 三菱商事のADRはティッカー「MTSUY」でOTC市場で取引されている
  • ADRはドル建て、東証株は円建てで取引される
  • 株価は基本的に連動するが、為替レート・取引時間のズレで乖離することがある
  • ADRには議決権がなく、年間管理費用(0.25-5セント/株)が発生する
  • 日本円で管理したいなら東証、ドル建て資産を保有したいならADRが選択肢

(1) ADRの基本的な仕組み

ADR(American Depositary Receipt、米国預託証券)とは、米国市場で外国企業の株式を取引できるようにする仕組みです。米国の預託銀行が外国企業の株式を保管し、その代わりに発行する証券がADRです。

(2) ティッカーシンボル「MTSUY」(OTC市場)

三菱商事のADRは、ティッカーシンボル「MTSUY」でOTC(店頭取引)市場で取引されています。NYSE(ニューヨーク証券取引所)やNASDAQといった主要取引所ではなく、OTC市場で取引される点に注意が必要です(出典: Nasdaq)。

(3) Unsponsored(非スポンサー型)ADRの特徴

三菱商事のADRは「Unsponsored(非スポンサー型)」です。これは、企業が直接関与せずに預託銀行が発行するADRで、企業からの公式な情報提供が限定的です。重要な決算情報などは東証のIRサイトで確認することが推奨されます(出典: Morningstar)。

東証株(8058)とADRの違い

三菱商事は東証(証券コード8058)とOTC市場(ティッカーMTSUY)の両方に上場していますが、投資家にとってどのような違いがあるのでしょうか。

(1) 取引市場の違い(東証 vs OTC市場)

項目 東証株(8058) ADR(MTSUY)
取引市場 東京証券取引所 OTC(店頭取引)市場
通貨 日本円 米ドル

(2) 取引通貨の違い(円 vs ドル)

東証株は円建て、ADRはドル建てで取引されます。為替リスクを避けたい投資家には東証株が、ドル建て資産を保有したい投資家にはADRが適しています。

(3) 取引時間の違い

項目 東証株 ADR
取引時間 日本時間9:00-15:00 米国市場時間(日本時間23:30-6:00)

日本で働きながら夜間に取引したい投資家には、ADRが便利です。

(4) 税制の違い(配当金の課税)

東証株:

  • 日本で課税のみ(20.315%)
  • 税制がシンプル

ADR:

  • 米国で源泉徴収(10%)
  • 日本でさらに課税(20.315%)
  • 確定申告で外国税額控除が必要

東証株の方が税制がシンプルで、初心者にも扱いやすいと言えます(出典: マネックス証券)。

株価の連動性と乖離の要因

三菱商事の東証株とADRの株価は、基本的には連動しますが、一時的に乖離することがあります。

(1) 基本的には連動する

東証株とADRは同じ企業の株式を表すため、為替レートを考慮すれば基本的に価格は一致します。裁定取引により大きな乖離は解消される傾向があります。

(2) 乖離の要因①為替レート

為替レート(ドル円)の変動により、円換算でのADR価格と東証株価が一時的に乖離します。

(3) 乖離の要因②取引時間のズレ

東証株は日本時間9:00-15:00、ADRは米国時間(日本時間23:30-6:00)に取引されるため、時間差により価格が異なることがあります。

(4) 乖離の要因③流動性の差

東証株の方が取引量が多く流動性が高いため、ADRでは希望価格で売買できない場合があります。

(5) リアルタイムADR価格の確認方法(MONEY BOX、225225.jp等)

主要な比較サイト:

これらのサイトでは、ADR価格・東証株価・PTS株価をリアルタイムで比較でき、翌日の東証始値予想に活用できます。

ADRのメリットとデメリット

三菱商事ADRのメリットとデメリットを整理します。

(1) メリット①ドル建て資産として保有できる

ドル建てで資産を分散したい、将来的に海外移住を考えている投資家には、ADRが選択肢となります。

(2) メリット②米国市場の取引時間で取引可能

日本で働きながら夜間に取引したい投資家には、ADRが便利です。

(3) デメリット①議決権がない

ADRには議決権がありません。株主総会で議決権を行使したい場合は、東証で日本株として購入する必要があります(出典: 楽天証券)。

(4) デメリット②ADR管理費用(年0.25-5セント/株)

ADRには年間で管理費用(0.25-5セント/株)が発生し、配当金から自動で差し引かれます。長期保有時は累積コストとして認識する必要があります。

(5) デメリット③Unsponsoredで情報の信頼性が低い

三菱商事のADRはUnsponsored(非スポンサー型)のため、企業からの直接的な情報提供がありません。重要な決算情報は東証IRで確認することが推奨されます。

どちらで投資すべきか(東証 vs ADR)

三菱商事に投資する際、東証とADRのどちらを選ぶべきかは、投資目的によって変わります。

(1) 日本円で管理したい → 東証が有利

為替リスクを避けたい、円建てで資産を管理したい投資家には、東証株が適しています。

(2) ドル建て資産を保有したい → ADRが選択肢

ドル建てで資産を分散したい投資家には、ADRが選択肢となります。

(3) 議決権を行使したい → 東証のみ

株主総会で議決権を行使したい投資家には、東証株のみが選択肢です。

(4) 取引時間の都合 → ADR(夜間取引)vs 東証(日中取引)

日本で働いている投資家で、仕事後の夜間に取引したい場合は、ADRが便利です。

(5) 税制・手数料の比較

東証株は税制がシンプルで、初心者にも扱いやすいと言えます。ADRは二重課税リスクがあり、確定申告で外国税額控除の申請が必要です。

まとめ:三菱商事ADR投資の注意点

三菱商事のADR(ティッカー: MTSUY)は、OTC市場でドル建てで取引される米国預託証券です。東証株と基本的に連動しますが、為替レート・取引時間のズレにより一時的に乖離することがあります。

(1) Unsponsored ADRのリスク

三菱商事のADRはUnsponsored(非スポンサー型)のため、企業からの公式情報が限定的です。重要な決算情報は東証IRで確認することが推奨されます。

(2) 為替リスクの理解

ADRはドル建てで取引されるため、為替変動により円換算での損益が変動します。長期投資の場合、為替ヘッジ戦略を検討することが推奨されます。

(3) ADR管理費用の累積コスト

ADRには年間管理費用(0.25-5セント/株)が発生し、配当金から自動で差し引かれます。長期保有時は累積コストとして認識する必要があります。

(4) 重要情報は東証IRで確認

Unsponsored ADRは情報の信頼性が低いため、重要な決算情報や事業方針は東証IRサイトで確認することが推奨されます。

次のアクション:

  • 東証IRサイトで三菱商事の最新決算情報を確認する
  • MONEY BOXや225225.jpでADR価格と東証株価を比較する
  • 投資目的に応じて東証とADRのどちらで投資するか決定する

投資判断は自己責任で行い、必要に応じて税理士や金融アドバイザーに相談することをおすすめします。

※ADRの詳細は各証券会社のウェブサイトをご確認ください。

よくある質問

Q1三菱商事のADR比率(1ADR=何株)は?

A1三菱商事のADRは通常1ADR=1株の比率です。ただし、預託銀行により異なる場合があるため、購入前に証券会社で確認することが推奨されます。

Q2配当金の扱いは東証とADRでどう違う?

A2ADRは米国で源泉徴収(10%)された後、日本でさらに課税(20.315%)されます。東証は日本で課税のみ(20.315%)です。ADRは二重課税リスクがあり、確定申告で外国税額控除が必要です。

Q3ADRに議決権はある?

A3ありません。株主総会で議決権を行使したい場合は、東証で日本株として購入する必要があります。ADRは配当金受取権のみです。

Q4三菱商事はADRと東証どちらで買うべき?

A4日本円で管理したいなら東証、ドル建て資産を保有したいならADRが選択肢です。初心者は東証が手軽で税制もシンプルです。ADRはUnsponsoredで情報の信頼性が低い点に注意が必要です。

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Single Stock編集部

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