商船三井ADRとは?米国市場での投資方法を解説

著者: Single Stock編集部公開日: 2025/11/15

商船三井ADRとは:米国市場で取引できる日本の海運大手株

商船三井に投資したいけれど、米国市場で取引したい...そんなニーズを満たすのが「商船三井ADR」です。

商船三井のADR(米国預託証券)は、日本の海運大手である商船三井の株式を米国市場で取引できるようにした証券です。ティッカーシンボル「MSLOY」でOTC市場(店頭市場)にて取引されており、米ドル建てで購入できます。

この記事では、商船三井ADRの基本情報、購入方法、配当、税金・為替リスクについて詳しく解説します。

この記事のポイント:

  • 商船三井ADRはティッカーシンボル「MSLOY」でOTC市場で取引されている
  • 日本の証券会社(moomoo証券、楽天証券、SBI証券等)で購入可能
  • 事業セグメントは5つ(ドライバルク、エネルギー、製品輸送、ウェルビーイング・ライフスタイル、関連事業)
  • 配当性向を25%から30%に引き上げ、配当下限を150円に設定
  • ADR配当には米国と日本の二重課税が適用される

(1) ADR(米国預託証券)の仕組み

ADR(American Depositary Receipt)とは、米国市場で外国企業の株式を取引できるようにした証券です。預託銀行が外国企業の株式を預かり、その株式を裏付けとしてADRを発行します。

商船三井のADRは、米国の預託銀行が日本の東京証券取引所に上場されている商船三井株を預かり、それを裏付けとして発行しています。投資家は米国市場でADRを購入することで、間接的に商船三井株を保有する形になります。

(2) 商船三井ADRの基本情報(ティッカー:MSLOY)

商船三井ADRのティッカーシンボルは「MSLOY」です。OTC市場(Over-The-Counter Market、店頭市場)で取引されており、ナスダックやニューヨーク証券取引所のような主要取引所とは異なる市場で売買されます。

基本情報:

  • ティッカーシンボル: MSLOY
  • 取引市場: OTC市場
  • 時価総額: 約$11.28B(約112億8000万ドル)
  • 企業本社: 東京・港区虎ノ門

(出典: Nasdaq - MSLOY

(3) OTC市場での取引の特徴

OTC市場は主要取引所と比較して流動性が低く、ビッド・アスクスプレッド(買値と売値の差)が広くなる可能性があります。大口取引では約定価格が不利になるリスクがあるため、成行注文よりも指値注文の利用が推奨されます。

取引時間は米国市場の営業時間(日本時間23:30~翌6:00、夏時間は22:30~翌5:00)に準じます。

商船三井の事業概要と海運業界の動向:5つのセグメントで展開

商船三井は、世界最大級の海運会社の一つとして、多様な船舶と事業セグメントで事業を展開しています。

(1) 5つの事業セグメント

商船三井の事業は、以下の5つのセグメントで構成されています。

  1. ドライバルク: 鉄鉱石、石炭、穀物などのばら積み貨物を輸送
  2. エネルギー: LNG(液化天然ガス)運搬船、タンカー等
  3. 製品輸送: 自動車専用船、コンテナ船等
  4. ウェルビーイング・ライフスタイル: フェリー、クルーズ船等
  5. 関連事業: 物流、不動産等

商船三井の船隊には、ドライカーゴ船、LNG運搬船、自動車専用船(Ro-Ro Car Carrier)、タンカー、コンテナ船などが含まれており、幅広い輸送ニーズに対応しています。

(出典: Yahoo Finance - MSLOY

(2) 船隊の構成と規模

商船三井は、世界最大級の海運会社として、多様な船舶を保有・運航しています。時価総額は約$11.28B(約112億8000万ドル)に達し、グローバルに事業を展開しています。

LNG運搬船や自動車専用船では、世界トップクラスの運航実績を誇ります。

(3) 環境対策への取り組み(ウインドチャレンジャー)

商船三井は、環境対策として「ウインドチャレンジャー」と呼ばれる風力推進補助装置(硬翼帆)の搭載を進めています。2024年7月には、ドライバルク運航船7隻に搭載することを発表し、2030年までに25隻への搭載を目指しています。

ウインドチャレンジャーは、風力を推進力として活用することで燃料消費を削減し、CO2排出量を抑制する技術です。脱炭素社会への移行が求められる中、海運業界でも環境対応が重要な課題となっています。

(出典: 商船三井公式プレスリリース

東証上場株とADRの違い:価格・配当・流動性の比較

商船三井は東京証券取引所(プライム市場)にも上場していますが、ADRと東証株にはいくつかの違いがあります。

(1) 株価の価格差とレート換算

  • 東証株: 東京証券取引所・円建て
  • ADR: OTC市場・米ドル建て

東証株は日本円で取引されるのに対し、ADRは米ドル建てで取引されます。為替レート(ドル/円)の変動により、円建てでの投資額が大きく変動します。

ADRは1ADR=1株ではなく、換算比率を確認する必要があります。基本的には為替レートで連動しますが、市場の需給差により一時的な価格乖離が発生することもあります。

(2) 配当利回りの違い(東証5.8%、ADR2.11%)

配当利回りは、東証で約5.8%、ADRで約2.11%と異なります。これは為替レートとADRの換算比率の影響によるものです。

2025年3月期の配当:

  • 東証: 年間配当280円(中間180円、期末100円)
  • 配当利回り: 5.81%

商船三井は、2023年度から配当性向を25%から30%に引き上げ、配当下限を150円に設定しています。さらに、2027年3月期からは配当性向を40%程度に引き上げる計画を発表しており、配当重視の姿勢を強めています。

(出典: ザイ・オンラインRising Bull

(3) 流動性とスプレッドの違い

OTC市場は主要取引所と比較して流動性が低く、ビッド・アスクスプレッド(買値と売値の差)が広くなる可能性があります。大口取引では約定価格が不利になるリスクがあるため、指値注文の利用が推奨されます。

東京証券取引所で取引される商船三井株の方が流動性は高いため、頻繁に売買する投資家には東証株の方が適している場合もあります。

商船三井ADRの購入方法:日本の証券会社での取引手順

商船三井ADRは、米国株を扱う日本の証券会社で購入できます。

(1) 米国株取引口座の開設

商船三井ADRを購入するには、米国株取引に対応した証券口座を開設する必要があります。

(2) ADR取扱証券会社の選択

以下の証券会社で商船三井ADR(MSLOY)の取り扱いがあります。

  • moomoo証券: リアルタイムチャート、財務情報、最新ニュースを日本語で提供
  • 楽天証券: 米国株取引に対応
  • SBI証券: 米国株取引に対応

ADRの取り扱い銘柄は証券会社によって異なるため、事前に確認することをおすすめします。

(出典: moomoo証券 - MSLOY

(3) 購入手順と注文方法

  1. 証券口座の開設: 米国株取引に対応した証券口座を開設
  2. 米ドルの準備: 円を米ドルに両替(証券会社の為替手数料に注意)
  3. 注文: ティッカーシンボル「MSLOY」で検索し、購入

米国株として取引されるため、日本株とは異なる単位で購入できます。

税金と為替リスクの注意点:ドル建て投資の留意点

商船三井ADRに投資する際は、税金と為替リスクを理解しておく必要があります。

(1) ADR配当金の課税(米国源泉徴収+日本課税)

商船三井ADRの配当は、米国で源泉徴収が行われた後、日本でも課税されます。これを「二重課税」と呼びます。

東証での配当金がドル換算でADR保有者に支払われますが、米国で源泉徴収後、日本でも課税されるため、実質的な配当利回りは下がります。

外国税額控除の制度を利用すれば、米国で支払った税金の一部を日本の所得税から差し引けますが、確定申告が必要です。

※外国税額控除の詳細は、税理士や国税庁のウェブサイトをご確認ください。

(出典: 国税庁「外国税額控除」)

(2) 為替レート変動が投資額に与える影響

ADRは米ドル建てで取引されるため、為替レート(ドル/円)の変動により、円建てでの投資額が大きく変動します。

  • 円安(ドル高): ADRの円換算値が上昇(プラス要因)
  • 円高(ドル安): ADRの円換算値が下落(マイナス要因)

為替リスクを軽減したい場合は、東京証券取引所で取引される商船三井株を選択する方法もあります。

(3) 海運市況や景気サイクルの影響

海運業は景気サイクル、燃料価格、運賃相場の変動に大きく影響される業種です。

コンテナ運賃やドライバルク運賃の変動が業績に直結するため、市況動向の確認が重要です。2025年度上半期(4-9月)は減収減益となり、売上高8,697億円(前年比3.4%減)、経常利益1,146億円(同54.3%減)となっています。

海運業への投資は、景気敏感業種であることを理解した上で、リスク管理を行う必要があります。

まとめ:商船三井ADRへの投資判断のポイント

商船三井ADRは、日本の海運大手である商船三井を米国市場で取引できる証券です。ティッカーシンボル「MSLOY」でOTC市場にて取引され、米ドル建てで購入できます。

商船三井ADRへの投資判断のポイント:

  • 配当性向の引き上げ: 2023年度から30%に引き上げ、2027年3月期からは40%程度を目標
  • 配当下限の設定: 年間配当150円を下限として設定し、安定配当を重視
  • 環境対策: ウインドチャレンジャー搭載船25隻を2030年までに実現
  • 流動性リスク: OTC市場は流動性が低く、スプレッドが広い可能性がある

注意点:

  • OTC市場は主要取引所と比較して流動性が低い
  • 配当には米国と日本の二重課税が適用される
  • 為替リスク(ドル/円の変動)が投資額に影響する
  • 海運業は景気サイクルや燃料価格、運賃相場の影響を受けやすい

次のアクション:

  • 証券会社の公式サイトで取扱銘柄を確認する
  • 東証株とADRの違いを理解し、自分に合った投資方法を選ぶ
  • 配当の税金や為替リスク、海運市況の動向を考慮して投資判断を行う

投資判断は自己責任で行い、ご自身の投資スタイルに合った方法を選択してください。

よくある質問

Q1商船三井ADRと東証上場株の価格差はありますか?

A1為替レートと需給により価格差が生じます。ADRは1ADR=1株ではなく、換算比率を確認する必要があります。基本的には為替レートで連動しますが、市場の需給差により一時的な乖離が発生することもあります。

Q2商船三井ADRの配当はどうなりますか?

A2東証での配当金がドル換算でADR保有者に支払われます。配当利回りはADRで約2.11%、東証で5.8%と異なりますが、これは為替レートと換算比率の影響です。米国で源泉徴収後、日本でも課税されます。

Q3商船三井ADRはどこで買えますか?

A3moomoo証券、楽天証券、SBI証券など米国株取引が可能な日本の証券会社で購入可能です。ティッカーシンボルは「MSLOY」でOTC市場で取引されています。

Q4OTC市場の流動性リスクは何ですか?

A4OTC市場はナスダックやNYSEと比較して流動性が低く、ビッド・アスクスプレッドが広くなる可能性があります。大口取引では約定価格が不利になるリスクがあるため注意が必要です。

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Single Stock編集部

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