NYSEARCA:SPYとは?S&P500 ETFの基本情報
「NYSEARCA:SPY」という株式コードを見かけたことはありませんか?これは、S&P500指数に連動する世界最大級のETF(上場投資信託)であるSPDR S&P 500 ETF Trustのティッカーシンボルです。米国株投資を始める上で、SPYは多くの投資家にとって入り口となる銘柄の一つです。
この記事のポイント:
- SPYはS&P500指数に連動する米国初のETF(1993年設定)
- NYSE Arca(ニューヨーク証券取引所のテクノロジー取引プラットフォーム)に上場
- 運用資産6000億ドル超、1日平均取引高293億ドルと世界最大の流動性
- 経費率0.0945%と低コストで、S&P500の500社全てに完全複製戦略で投資
- 日本の証券会社から1株約680ドル(約10万円)で購入可能、東証にも上場(1557)
(1) NYSE ArcaとティッカーシンボルSPYの基礎知識
NYSE Arca(ニューヨーク証券取引所アーカ)は、ニューヨーク証券取引所が運営するテクノロジー取引プラットフォームで、ETFの主要な上場市場として知られています。SPYはこのNYSE Arcaで取引されています。
ティッカーシンボルは、株式やETFを識別するためのコードで、投資家が売買する際に使用します。日本の証券会社でSPYを購入する場合も、「SPY」というシンボルで検索して注文を出します。
(2) S&P500指数とは?
S&P500指数は、米国の主要500社の株価を時価総額加重平均で算出した株価指数です。米国株式市場全体の約80%をカバーしており、米国経済の動向を示す代表的な指標として広く利用されています。
S&P500指数に連動するETFは、この500社全てに分散投資できるため、個別株のリスクを抑えながら米国株式市場全体の成長を享受できます。
(3) 1993年設定の米国初のETF
SPYは、1993年1月29日に設定された米国初のETFです。設定から30年以上が経過しても、依然として世界最大級のETFとして君臨しています。
ステート・ストリート・グローバル・アドバイザーズが運用しており、長年の実績と信頼性が評価されています。
※出典: State Street、Yahoo Finance、2025年11月時点
SPYの特徴と強み(米国初のETF、世界最大の流動性)
(1) 完全複製戦略でS&P500の500社全てを保有
SPYは、「完全複製戦略」を採用しています。これは、S&P500指数の構成銘柄500社全てを、指数と同じ比率で保有する運用方法です。
完全複製戦略のメリットは以下の通りです。
- トラッキングエラーが小さい: 指数との乖離が最小限に抑えられる
- 透明性が高い: 保有銘柄が明確で、運用方針が分かりやすい
- 信頼性: 指数の動きを忠実に再現できる
(2) 1日平均取引高293億ドルと極めて高い流動性
SPYの最大の強みは、圧倒的な流動性です。1日平均取引高は293億ドル(約4.5兆円)に達し、世界で最も取引量が多いETFとして知られています。
高流動性のメリット:
- スプレッドが狭い: 買値と売値の差が小さく、取引コストが低い
- 約定しやすい: 大量の売買でも即座に約定する
- 短期トレードに有利: デイトレードやスイングトレードにも適している
(3) 運用資産6000億ドル超、ETF史上初の5000億ドル突破
SPYの運用資産は6000億ドル(約92兆円)を超えており、2024年2月にはETF史上初めて運用資産5000億ドルを突破しました。
この規模は、世界中の投資家から信頼されている証と言えます。
※出典: State Street、Yahoo Finance、2025年11月時点
(4) 経費率0.0945%とオプション市場の充実
SPYの経費率は0.0945%と低コストです。ただし、後発のVOOやIVV(経費率0.03%)と比べると若干高めです。
一方で、SPYはオプション市場が圧倒的に充実しており、カバードコールなどのオプション戦略を活用したい投資家にとっては魅力的です。
SPY・VOO・IVVの比較(経費率、流動性、配当利回り)
(1) 経費率の比較(SPY 0.0945% vs VOO 0.03% vs IVV 0.03%)
S&P500に連動するETFの代表格として、SPY、VOO、IVVの3つがあります。それぞれの経費率を比較すると以下の通りです。
経費率の比較:
- SPY: 0.0945%
- VOO: 0.03%(バンガード運用)
- IVV: 0.03%(ブラックロック運用)
VOOとIVVは経費率が低く、長期保有に適しています。一方、SPYは経費率がやや高いものの、流動性とオプション市場の充実により、短期トレードに有利です。
(2) 流動性とスプレッドの違い
流動性の面では、SPYが圧倒的に優位です。
1日平均取引高の比較:
- SPY: 293億ドル
- VOO: 約10億ドル
- IVV: 約15億ドル
SPYのスプレッド(買値と売値の差)は極めて狭く、大口の売買でも約定しやすいです。VOOやIVVも十分な流動性がありますが、SPYには及びません。
(3) 配当利回りとパフォーマンスの差
配当利回りとパフォーマンスは、3つのETFでほぼ同じです。いずれもS&P500指数に連動しているため、長期的なリターンに大きな差はありません。
パフォーマンス(2024年):
- SPY: 24.89%
- VOO: 約25%
- IVV: 約25%
経費率の差が僅かなため、パフォーマンスにもほとんど影響がありません。
※出典: Yahoo Finance、ETF.com、2025年11月時点
日本からSPYを購入する方法
(1) 日本の証券会社での購入手順(SBI証券、楽天証券等)
日本からSPYを購入するには、米国株取引が可能な証券会社で口座を開設する必要があります。主要な選択肢は以下の通りです。
SBI証券
- 取引手数料: 約定代金の0.495%(上限22ドル)
- 為替手数料: 片道25銭
- 米国株の取扱銘柄が豊富
楽天証券
- 取引手数料: 約定代金の0.495%(上限22ドル)
- 為替手数料: 片道25銭
- 楽天ポイントが貯まる・使える
マネックス証券
- 取引手数料: 約定代金の0.495%(上限22ドル)
- 為替手数料: 片道25銭(買付時は無料キャンペーン実施中の場合あり)
- 米国株の情報ツールが充実
購入手順は以下の通りです:
- 証券会社の米国株口座を開設
- 日本円を米ドルに両替
- ティッカーシンボル「SPY」で検索
- 希望の株数と価格を入力して注文
SPYは1株から購入できるため、少額からの投資も可能です。
(2) 東証上場ETF(1557)での円建て取引
SPYは、東京証券取引所にも重複上場しており、証券コード「1557」で円建て取引ができます。
東証上場SPY(1557)のメリット:
- 日本円で取引できるため、為替手数料がかからない
- 日本株と同様の取引時間で売買できる
- 特定口座での管理が簡単
デメリット:
- 流動性が米国市場より低い
- 株価は米国市場の動きに連動するため、為替リスクは残る
(3) 必要な資金の目安(1株約680ドル、約10万円)
SPYを1株購入する場合、必要な資金は以下の通りです。
- 株価: 約680ドル(約10万円、1ドル=153円換算)
- 取引手数料: 約3.37ドル(株価の0.495%)
- 為替手数料: 往復で約50銭(1ドルあたり)
SPYはS&P500指数の約1/10の価格設計となっており、指数が6800ポイントの場合、SPYは約680ドルになります。
※出典: Yahoo Finance、2025年11月時点
SPY投資における税金と為替の注意点
(1) 米国株ETFの税金(配当税、売却益課税、外国税額控除)
米国株ETFの配当には、米国で10%、日本で20.315%の税金がかかります(二重課税)。ただし、確定申告で「外国税額控除」を申請すれば、米国で課税された分を日本の所得税から差し引くことができます。
売却益については、日本で20.315%の税金がかかります。特定口座(源泉徴収あり)を利用すれば、証券会社が自動的に税金を計算・納付してくれます。
※出典: 国税庁「外国税額控除」
(2) 為替リスクと為替手数料
米国株ETFはドル建てで取引されるため、為替レートの変動により円換算での損益が変わります。ETFの価格が上昇しても、円高ドル安が進めば、円換算での利益が減少する可能性があります。
為替手数料も考慮が必要です。日本円を米ドルに交換する際、片道25銭程度の手数料がかかることが一般的です。
(3) 市場リスクと集中リスク(上位10社が約30%)
SPYは、S&P500指数と同じボラティリティ(変動性)を持ちます。株式市場全体が下落すれば、SPYも同様に下落します。
また、S&P500指数は時価総額加重平均のため、上位10社(主にハイテク大手)が全体の約30%を占めています。これらの企業の株価が大きく下落すれば、指数全体にも影響が及びます。
上位10社の例(2025年11月時点):
- Apple
- Microsoft
- Amazon
- NVIDIA
- Alphabet(Google)
- Meta(Facebook)
- Tesla
このセクター集中リスクを理解した上で、投資判断を行うことが重要です。
まとめ:SPYへの投資判断のポイント
NYSEARCA:SPY(SPDR S&P 500 ETF Trust)は、S&P500指数に連動する米国初のETFとして、1993年の設定以来、世界中の投資家に利用されています。運用資産6000億ドル超、1日平均取引高293億ドルと圧倒的な流動性を誇り、短期トレードから長期投資まで幅広く活用できます。
投資判断のポイント:
- 経費率0.0945%と低コストだが、VOO・IVV(0.03%)より若干高い
- 流動性とオプション市場が圧倒的に充実しており、短期トレードに有利
- S&P500の500社全てに分散投資でき、個別株リスクを抑えられる
- 上位10社(主にハイテク大手)が約30%を占め、セクター集中リスクあり
- 為替リスクと税金(二重課税)を考慮する必要がある
次のアクション:
- 各証券会社の米国株取引条件を比較する
- VOO・IVVとの違いを理解し、自分の投資スタイルに合ったETFを選ぶ
- 東証上場の1557(円建て)と米国市場のSPY(ドル建て)を比較検討する
- 外国税額控除の手続きを理解しておく
SPYへの投資は、米国株式市場全体に分散投資する手段として優れていますが、為替リスクや市場リスクを理解した上で、慎重に判断することが大切です。
