TSM (NYSE:TSM) とは:台湾セミコンダクターの企業概要と投資時の注意点

著者: Single Stock編集部公開日: 2025/11/15

TSM(NYSE)とは:台湾セミコンダクターの米国上場

「TSMって何の会社?」「半導体関連で話題になっているけれど、どうやって投資するの?」と疑問に思っている方は多いのではないでしょうか。

TSM(ティッカーシンボル: TSM)は、Taiwan Semiconductor Manufacturing Company(台湾積体電路製造、TSMC)のニューヨーク証券取引所(NYSE)上場ADR(米国預託証券)です。TSMCは世界最大の半導体受託製造(ファウンドリ)企業で、Apple、Nvidia、AMDなどの主要顧客向けにAI関連チップを製造しています。

この記事では、TSMCの企業概要、主力事業、市場シェア、NYSE上場ADRの仕組み、日本からの取引方法、そして投資時の注意点まで詳しく解説します。

この記事のポイント:

  • TSMCは世界最大のファウンドリ企業で、市場シェア約68%、先端プロセッサでは約90%を占める
  • Apple、Nvidia、AMDなどが主要顧客で、AI関連チップの需要が急増
  • NYSEにADRとして上場しており、日本の証券会社(楽天証券、SBI証券等)で購入可能
  • 2024年の売上は33.9%増の約878億ドルで過去最高を記録
  • 地政学リスク(台湾海峡の緊張)、為替リスク、AIチップ需要の変動リスクに注意が必要

(1) ティッカーシンボル「TSM」の意味

TSMは、Taiwan Semiconductor Manufacturing Companyの頭文字を取ったティッカーシンボルで、NYSEで取引されるADR(米国預託証券)を指します。

基本情報:

  • 正式名称: Taiwan Semiconductor Manufacturing Company Limited(台湾積体電路製造股份有限公司)
  • ティッカーシンボル: TSM(NYSE)、2330(台湾証券取引所)
  • 上場市場: NYSE(米国)、TWSE(台湾)
  • 本社: 台湾・新竹市

TSMCは1987年に設立され、1994年に台湾証券取引所に上場、1997年にNYSEにADRとして上場しました。日本の投資家は、米国株取引口座を持つ証券会社で、NYSEに上場するTSM(ADR)を購入できます。

(2) NYSEとTWSEの二重上場

TSMCは、台湾証券取引所(TWSE: 2330)とニューヨーク証券取引所(NYSE: TSM)の両方に上場しています。

二重上場のメリット:

  • 投資家は取引時間や為替リスクを考慮して選択できる
  • 台湾株は台湾ドル建て、米国ADRは米ドル建てで取引される
  • 日本の投資家は、米国株取引サービスを提供する証券会社で簡単にアクセスできる

台湾証券取引所での取引時間は日本時間の9:00-13:30、米国市場は日本時間の23:30-6:00(冬時間)です。日本の投資家にとっては、米国ADR(TSM)の方が取引時間の面でアクセスしやすいと言われています。

TSMCの企業概要と主力事業

(1) 世界最大のファウンドリー企業

TSMCは、世界最大の半導体受託製造(ファウンドリ)企業です。ファウンドリとは、他社の設計を受託して半導体を製造する企業を指します。

ファウンドリビジネスの特徴:

  • 設計は行わず、製造に特化
  • Apple、Nvidia、AMDなどの設計会社(ファブレス企業)が顧客
  • 先端プロセス技術への投資が競争力の源泉

TSMCは、自社では半導体の設計を行わず、顧客企業の設計に基づいて最先端の半導体を製造します。この「製造専業」モデルにより、顧客企業との競合を避け、信頼関係を築いています。

(2) 主要顧客(Apple、Nvidia、AMD等)

TSMCの主要顧客は、世界トップクラスの半導体設計企業です。

主要顧客:

  • Apple: iPhone、Mac、iPad向けのAシリーズ・Mシリーズチップ
  • Nvidia: AI加速器(GPU)、次世代BlackwellチップもTSMCが製造予定
  • AMD: CPU、GPU

2025年第3四半期(Q3)では、AI関連チップの需要により収益が前年比39%増加しました。特にNvidiaのAI加速器向けチップの需要が急増しており、TSMCの成長を牽引しています。

(3) AI関連チップの成長

TSMCの成長を牽引しているのは、AI関連チップの急増需要です。

AI関連チップの動向:

  • 2024年、AI加速器向け売上は前年比3倍に増加
  • 2025年、AI加速器向け売上は前年比2倍になる見込み
  • 2029年までのCAGR(年平均成長率)は約50%と予測される
  • HPC(ハイパフォーマンスコンピューティング)セグメントが全体の51%を占める

AIチップ需要の急増により、TSMCは2025年後半に2nmチップの量産を開始し、月産5万枚に達する見込みです。また、3D-SoIC(3次元積層パッケージング技術)も2025年に本格化する予定です。

TSMCの市場シェアと競争優位性

(1) 世界シェア68%、先端プロセッサでは90%

TSMCは、世界のファウンドリ市場で圧倒的なシェアを持っています。

市場シェア:

  • 世界ファウンドリ市場: 約68%(2024年時点)
  • 先端プロセッサ(7nm以下): 約90%
  • 競合: Samsung(約18%)、Intel Foundry(数%)

TSMCの競争優位性は、先端プロセス技術への継続的な投資と、顧客企業との長期的な信頼関係にあります。特に7nm、5nm、3nmといった最先端技術では、TSMCが世界をリードしています。

(2) 2nm技術と3D-SoIC技術の優位性

TSMCは、2nm(ナノメートル)技術と3D-SoIC技術で競合他社に先行しています。

先端技術:

  • 2nm技術: 2025年後半に量産開始、月産5万枚を予定
  • 3D-SoIC: 3次元積層によりチップ性能を向上、2025年に本格化
  • Nvidiaの次世代Blackwellチップ: TSMCが製造予定

数字が小さいほど先端技術であり、性能向上と消費電力削減が可能です。TSMCの2nm技術は、競合他社よりも1-2年先行していると言われています。

(3) 2024年の業績と2025年の見通し

TSMCは2024年に記録的な業績を達成しました。

2024年の業績:

  • 純売上高: 33.9%増の2.9兆台湾ドル(約878億ドル)
  • 1994年の上場以来最高の年間売上
  • AIチップ需要が主要な成長ドライバー

2025年の見通し:

  • AI加速器向け売上が前年比2倍になる見込み
  • HPC(ハイパフォーマンスコンピューティング)セグメントが全体の51%を占める
  • アナリストの平均目標株価は$339.90(2025年11月時点の株価$282.20から約11%の上昇余地)

※上記は執筆時点の情報です。最新の業績は公式IRサイトでご確認ください。

NYSE上場ADRの仕組みと日本からの取引方法

(1) ADR(米国預託証券)とは

ADR(American Depositary Receipt)は、米国以外の国で発行された株式を裏付けとして、米国の預託銀行が発行する証券です。

TSM(ADR)の仕組み:

  • 預託銀行が台湾証券取引所でTSMC株を保管
  • その株式を裏付けとしてADRを発行
  • 投資家はADRを保有することで、TSMC株の配当や株主権利を受け取る

TSMCのADRは、台湾株5株に対してADR1株が発行されます(ADR比5:1)。このため、ADR価格は台湾株価の約5倍となります。

(2) 日本の証券会社での購入手順

TSM(ADR)は、日本の証券会社で米国株と同じ手順で購入できます。

購入手順:

  1. 証券会社の米国株取引口座を開設(楽天証券、SBI証券、IG証券など)
  2. 円をドルに為替換算(為替手数料: 片道25銭程度)
  3. 米国株取引画面でティッカーシンボール「TSM」を検索
  4. 買い注文を発注(成行・指値など)
  5. 約定・決済

TSMは米ドル建てで取引されます。2025年11月14日時点で、株価は$282.20、52週レンジは$134.25~$311.37です。

(3) 現物取引とCFD取引の違い

TSM株には、現物取引とCFD(差金決済取引)の2つの取引方法があります。

現物取引:

  • 実際の株式を購入・保有
  • 配当金を受け取れる(配当利回り0.93%、四半期配当$0.9678)
  • 投資額: 約$282.20/株(2025年11月時点)

CFD取引:

  • レバレッジをかけて取引(最大5倍)
  • 現物投資の約5分の1の資金で投資可能
  • 配当金相当額を受け取れる(ただし調整額がかかる場合あり)
  • リスクも高まる(元本を超える損失の可能性)

CFD取引は資金効率が高い一方、リスクも高まるため、初心者には現物取引がお勧めです。

TSMCへの投資時の注意点とリスク

(1) 地政学リスク(台湾海峡の緊張)

TSMCは台湾に本拠を置いているため、地政学リスクがあります。

地政学リスク:

  • 台湾海峡の緊張が高まると、株価に影響を及ぼす可能性がある
  • 中国との関係悪化や軍事的緊張のニュースで株価が変動することがある

リスク分散策:

  • TSMCは米国アリゾナ州に1000億ドルを追加投資し、米国での生産能力を大幅に拡大
  • 2021年には熊本県菊陽町に12nm半導体工場を建設中
  • 地理的分散により、地政学リスクを軽減する取り組みを進めている

(2) 為替リスクと株価の変動性

TSM(ADR)は米ドル建てで取引されるため、為替リスクがあります。

為替リスク:

  • 円高(ドル安)時には円建てリターンが減少
  • 円安(ドル高)時には円建てリターンが増加

株価の変動性:

  • 52週レンジが$134.25~$311.37と大きく変動
  • AIチップ需要の変動やFed(米連邦準備制度理事会)の金利政策により大きく値動きする可能性がある

投資判断の際は、為替リスクと株価の変動性を考慮し、ポートフォリオ全体のバランスを調整することが重要です。

(3) AIチップ需要の変動リスク

TSMCの成長はAIチップ需要に大きく依存しているため、需要の変動リスクがあります。

AIチップ需要の変動リスク:

  • AI技術の進展が予想より遅い場合、需要が減少する可能性
  • 競合他社(Samsung、Intel Foundry等)の技術進展により市場シェアが低下する可能性
  • 過度な設備投資により、需要減少時に収益性が悪化する可能性

一方で、2025年以降もAIチップ需要は高い成長が予測されており、アナリストの96%が買い推奨を出しています(2025年11月時点)。

まとめ:TSM投資のポイント

TSM(NYSE: TSM)は、世界最大の半導体ファウンドリ企業TSMCのADR(米国預託証券)です。Apple、Nvidia、AMDなどの主要顧客向けにAI関連チップを製造し、2024年には過去最高の売上を記録しました。

TSMCへの投資を検討する際は、以下の点を確認しましょう:

投資のポイント:

  • 世界シェア68%、先端プロセッサでは90%の圧倒的な市場シェア
  • AIチップ需要の急増により、2025年以降も高い成長が期待される
  • 日本の証券会社で米国株と同じ手順で購入可能(楽天証券、SBI証券等)
  • 地政学リスク(台湾海峡の緊張)、為替リスク、AIチップ需要の変動リスクに注意

次のアクション:

  • TSMC公式IRサイトで最新の業績と見通しを確認
  • 日本の証券会社で米国株取引口座を開設
  • 少額から投資を始めて、TSMCの成長性と変動性を実感する
  • 地政学リスクを考慮し、ポートフォリオ全体のバランスを調整

TSMC株は成長性が高い一方、変動性も大きい銘柄です。長期的な視点で、リスクを理解した上で投資判断を行いましょう。

※投資判断は自己責任で行ってください。この記事は情報提供を目的としており、特定の銘柄の推奨を行うものではありません。過去のパフォーマンスは将来のリターンを保証しません。

よくある質問

Q1TSMCとは何をしている会社?

A1世界最大の半導体受託製造(ファウンドリ)企業で、2024年時点で世界市場シェア約68%、先端プロセッサでは約90%のシェアを持っています。Apple、Nvidia、AMDなどの主要顧客向けにAI関連チップを製造しています。

Q2TSMの主要顧客は誰?

A2Apple、AMD、Nvidiaなどが主要顧客で、AI関連チップの需要が急増しています。2025年Q3ではAIチップ需要により収益が前年比39%増加しました。Nvidiaの次世代BlackwellチップもTSMCが製造予定です。

Q3日本からTSM株を買える?

A3はい、楽天証券、SBI証券、IG証券などで米国株と同じ手順で購入できます。NYSEにADRとして上場しており(ティッカー: TSM)、米国株取引口座があれば簡単に購入できます。

Q4TSMCの配当利回りは?

A42025年11月時点で配当利回りは0.93%で、四半期配当は1株あたり$0.9678です。TSMCは配当よりも成長性を重視する銘柄で、AI関連チップの成長により株価上昇が期待されています。

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Single Stock編集部

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