米国株ETFで配当収入を得る方法
定期的な配当収入を得たいと考えている投資家にとって、米国株ETFは魅力的な選択肢です。しかし、「どのETFを選べばいいのか」「配当利回りが高ければ良いのか」「税金はどうなるのか」といった疑問を持つ方も多いでしょう。
この記事では、米国株ETFの配当利回りの基礎知識から、代表的な高配当ETF(VYM、HDV、SPYD、SCHD)の比較、税金の仕組みまで、体系的に解説します。
この記事のポイント:
- 米国株ETFは年4回配当を出すため、日本株(年2回)より頻度が高い
- 代表的な高配当ETFは、VYM(2.49%)、HDV(3.7%)、SPYD(4.31%)、SCHD(3.88-4%)
- 配当利回りだけでなく、経費率、配当成長率、トータルリターンも重要
- 米国で10%源泉徴収、日本で20.315%課税。外国税額控除で二重課税を一部調整可能
(1) 米国株ETFの配当の仕組み
米国株ETFは、保有する株式から受け取った配当金を、投資家に「分配金」として支払います。分配金は、ETFが保有する銘柄全体の配当を合算し、保有口数に応じて按分されます。
配当利回りは、年間分配金をETFの株価で割った数値で表されます。例えば、株価100ドルで年間配当4ドルのETFなら、配当利回りは4%です。
(2) 年4回配当のメリット(日本株との違い)
米国株ETFは、通常、3月・6月・9月・12月の四半期ごとに配当を支払います。これは、日本株の年2回(中間配当と期末配当)と比べて頻度が高く、定期的なキャッシュフローを得やすいメリットがあります。
例えば、VYMの2025年9月の配当は1株あたり$0.8417でした(出典: NerdWallet)。四半期ごとに配当を受け取ることで、再投資や生活費の補填に活用しやすくなります。
(3) NISA制度での配当金の扱い
2024年から始まった新NISA制度では、成長投資枠で外国株・ETFの取引が可能です。NISA口座で購入した米国株ETFの配当金・売却益は、日本での課税が非課税になります。
ただし、米国での10%源泉徴収は適用されます。つまり、NISA口座でも米国での10%課税は避けられませんが、日本での20.315%課税は免除されます。
配当利回りの基礎知識(計算方法と見方)
(1) 配当利回りとは?計算式
配当利回りは、以下の式で計算されます。
配当利回り(%)= 年間配当金 ÷ 現在の株価 × 100
例えば、株価100ドル、年間配当4ドルのETFなら、配当利回りは4%です。
ETFの場合、保有する銘柄全体の配当を合算した平均利回りが表示されます。時価総額が大きい銘柄ほど、ETF全体の利回りへの影響が大きくなります。
(2) 配当利回りが高いほど良いとは限らない理由
配当利回りが高いETFは魅力的に見えますが、必ずしも「高利回り = 優良投資先」ではありません。
高利回りのリスク:
- 株価下落による見かけの高利回り: 株価が下がると、計算上の配当利回りは上がります。しかし、これは企業の業績悪化を反映している可能性があります
- 配当削減リスク: 高配当を維持できず、将来的に減配される可能性があります
- 値上がり益が控えめ: 2024年のデータでは、VYMのトータルリターンが12.29%だったのに対し、高利回りのSPYDは5.50%にとどまりました(出典: etf.com)
配当利回りだけでなく、配当の持続可能性(配当成長率)や財務健全性も重要です。
(3) トータルリターン(配当+値上がり益)の重要性
投資のリターンは、「配当金」と「株価の値上がり益」の2つで構成されます。これをトータルリターンと呼びます。
2024年の高配当ETFのパフォーマンスを見ると、配当利回りが高いETFほど、値上がり益が控えめな傾向があります。
2024年のパフォーマンス例(出典: CNBC):
- AB US High Dividend ETF: 26%のトータルリターン
- Fidelity High Dividend ETF: 22%のトータルリターン
長期投資では、配当利回りだけでなく、トータルリターンを総合的に評価することが重要です。
高配当ETFの代表的な種類(VYM、HDV、SPYD、SCHD)
(1) VYM:広範囲に分散(400銘柄以上)
**VYM(Vanguard High Dividend Yield ETF)**は、400銘柄以上に分散投資する高配当ETFです。
主な特徴:
- 配当利回り: 2.49%(2024年時点、出典: etf.com)
- 経費率: 0.06%(低コスト)
- 保有銘柄数: 400銘柄以上
- 2024年のトータルリターン: 12.29%
広範囲に分散しているため、特定の業種やセクターの影響を受けにくく、安定性を重視する投資家に適しています。
(2) HDV:財務健全性重視
**HDV(iShares Core High Dividend ETF)**は、財務健全性の高い企業を選定する高配当ETFです。
主な特徴:
- 配当利回り: 3.7%(2024年時点)
- 経費率: 0.08%(VYM、SPYDよりやや高め)
- 銘柄選定基準: 財務健全性、配当支払い能力
HDVは、配当の持続可能性を重視し、減配リスクの低い企業に投資したい投資家に適しています。
(3) SPYD:高利回り重視(S&P500上位80銘柄)
**SPYD(SPDR Portfolio S&P 500 High Dividend ETF)**は、S&P500の中で配当利回りが高い上位80銘柄に投資するETFです。
主な特徴:
- 配当利回り: 4.31%(2024年時点、出典: etf.com)
- 経費率: 0.07%(低コスト)
- 保有銘柄数: 80銘柄
- 2024年のトータルリターン: 5.50%
配当利回りを最優先する投資家に適していますが、値上がり益は控えめな傾向があります。
(4) SCHD:配当成長性重視
**SCHD(Schwab U.S. Dividend Equity ETF)**は、配当の質と成長性を重視した高配当ETFです。
主な特徴:
- 配当利回り: 3.88-4%(2025年時点、出典: NerdWallet)
- 経費率: 0.06%(低コスト)
- 銘柄選定基準: 配当成長率、配当支払い実績
SCHDは、配当利回りとトータルリターンのバランスを重視する投資家に人気があります。
高配当ETFの選び方(利回り・経費率・配当成長率)
(1) 配当利回りの比較(2-5%の範囲)
代表的な高配当ETFの配当利回りを比較すると、以下のようになります。
配当利回り比較(2024-2025年時点):
- SPYD: 4.31%(最も高い)
- SCHD: 3.88-4%
- HDV: 3.7%
- VYM: 2.49%
配当利回りを最優先するならSPYD、安定性を重視するならVYMが適しています。
(2) 経費率の比較(0.06-0.54%)
経費率は、ETFの年間運用コストです。低いほど投資家に有利で、長期投資では大きな差になります。
経費率比較:
- VYM: 0.06%
- SCHD: 0.06%
- SPYD: 0.07%
- HDV: 0.08%
- PEY: 0.54%(やや高め)
VYM、SCHD、SPYDは0.06-0.07%と低コストで、長期投資に適しています。
(3) 2024年のパフォーマンス比較
2024年は米国経済の成長により、S&P500が25%上昇しました(出典: Charles Schwab)。高配当ETFも好調でしたが、配当利回りが高いほど値上がり益は控えめでした。
2024年のトータルリターン:
- VYM: 12.29%(配当利回り2.49%)
- SPYD: 5.50%(配当利回り4.31%)
- AB US High Dividend ETF: 26%(出典: CNBC)
配当利回りとトータルリターンのバランスを考慮して選ぶことが重要です。
配当金にかかる税金と外国税額控除
(1) 米国での10%源泉徴収
米国株ETFの配当金には、米国で10%の源泉徴収税がかかります。これは、ETFが配当金を支払う時点で自動的に差し引かれます。
例えば、年間配当100ドルを受け取る場合、米国で10ドルが源泉徴収され、手取りは90ドルになります。
(2) 日本での20.315%課税
米国で源泉徴収された後、日本でさらに20.315%(所得税15.315%+住民税5%)の税金がかかります。
例えば、米国で10%源泉徴収後の90ドルに対し、日本で約18.28ドルが課税され、最終的な手取りは約71.72ドルになります(簡易計算)。実際の計算は複雑なため、税理士へご確認ください。
ただし、NISA口座で購入した場合、日本での20.315%課税は免除されます。米国での10%源泉徴収は適用されますが、手取りは90ドルとなります。
(3) 外国税額控除の概要(詳細は税理士へ)
外国税額控除とは、米国で源泉徴収された税金を、日本の所得税から差し引ける制度です。これにより、二重課税を一部調整できます。
外国税額控除を利用するには、確定申告が必要です。具体的な計算方法や申告手順については、税理士や国税庁のウェブサイト(https://www.nta.go.jp/)を参照することをおすすめします。
まとめ:配当利回りだけでなく総合的に判断を
米国株ETFは、定期的な配当収入を得るための魅力的な投資手段です。代表的な高配当ETF(VYM、HDV、SPYD、SCHD)は、それぞれ異なる特徴を持ち、投資家のニーズに応じて選択できます。
ただし、配当利回りが高いほど良いとは限りません。以下のポイントを総合的に判断することが重要です。
確認すべきポイント:
- 配当利回り: 高いほど定期収入は増えるが、値上がり益は控えめな傾向
- 経費率: 低いほど長期投資に有利(0.06-0.08%が目安)
- 配当成長率: 配当の持続可能性を示す指標
- トータルリターン: 配当+値上がり益の総合的な投資成果
- 税金: 米国10%+日本20.315%の二重課税。NISA口座で日本分を免除可能
- 為替リスク: 円高時には円換算での受取額が減少
次のアクション:
- 自分の投資目的(配当重視 or トータルリターン重視)を明確にする
- NISA口座の開設を検討し、税負担を軽減する
- 複数のETFに分散投資することでリスクを軽減する
- 定期的にポートフォリオを見直し、パフォーマンスを確認する
投資判断は自己責任で行い、不明点があれば専門家(税理士、ファイナンシャルプランナー等)に相談することをおすすめします。
※2025年時点の情報です。配当利回りや税率は変動する可能性があります。最新情報は、ETF発行会社の公式サイトや国税庁のウェブサイトをご確認ください。
