米国株が下落する理由と下落率の読み解き方

著者: Single Stock編集部公開日: 2025/11/14

米国株の下落について知っておくべきこと

米国株に投資していると、突然の下落に遭遇することがあります。「このまま持ち続けて大丈夫なのか」「どこまで下がるのか」と不安を感じる投資家は少なくありません。

実際、2025年11月14日には、ダウ平均株価が797ポイント(1.65%)下落し、S&P500も1.66%安、Nasdaqは2.29%安となり、1ヶ月超ぶりの大幅下落を記録しました。AI関連株の評価懸念とFRB高官のタカ派発言が原因とされています。

この記事では、米国株が下落する主な原因、下落率の見方と歴史的な比較、そして下落時に投資家が取るべき対応について解説します。

この記事のポイント:

  • 米国株の下落は、金利政策、企業業績、地政学リスクなどが主な原因
  • 過去の暴落(ブラックマンデー、リーマンショック、コロナショック)と比較することで、現在の下落規模を相対的に評価できる
  • 下落率ランキングサイト(日経、Yahoo!ファイナンス)を活用すると、個別銘柄の状況をリアルタイムで確認できる
  • 長期投資家は、一時的な下落を過度に恐れず、分散投資でリスク管理することが重要

米国株が下落する主な原因

米国株が下落する原因は多岐にわたりますが、主に以下の3つに分類できます。

(1) 金利政策の変更

FRB(米国連邦準備制度理事会)の金利政策は、株式市場に大きな影響を与えます。金利が上昇すると、企業の借入コストが増加し、業績に悪影響を及ぼす可能性があります。また、債券の利回りが上がると、株式の相対的な魅力が低下し、投資家が株式から債券へ資金をシフトする動きが起こることがあります。

2025年11月の下落では、FRB高官のタカ派発言(金利を高く維持する姿勢)が市場の不安材料となりました。金利見通しの悪化が、株価下落の一因とされています。

(2) 企業業績の悪化

企業の四半期決算が市場予想を下回ると、株価が下落することがあります。特に、主要企業(GAFAMなど)の業績悪化は、市場全体に波及する傾向があります。

また、特定のセクター(テクノロジー、金融など)で業績懸念が広がると、そのセクター全体が売られることもあります。2025年11月の下落では、AI関連株の過大評価懸念が、テクノロジーセクターの大幅な下落を引き起こしました。

(3) 地政学リスクと政策不確実性

国際的な紛争、貿易摩擦、政治不安などの地政学リスクは、投資家のリスク回避姿勢を強め、株式市場から資金が流出する要因となります。

2025年4月には、トランプ大統領の関税発表により、世界的な株式市場が暴落しました。S&P500は2月中旬から4月初旬にかけて21.4%下落し、ベアマーケット(弱気相場)入りしました。ただし、4月9日の関税一時停止発表後、市場は急回復し、6月27日にはS&P500が2月19日の高値を超えて回復を完了しています。

下落率の見方と歴史的な比較

下落の規模を把握するには、下落率を正しく理解し、過去の事例と比較することが重要です。

(1) 下落率とベアマーケットの定義

下落率は、株価が下落した割合を示す指標で、以下の式で計算されます。

下落率(%)= (下落幅 ÷ 元の株価)× 100

一般的に、株式市場では以下のように分類されます。

  • 調整局面(Market Correction): 高値から10%程度の下落
  • ベアマーケット(Bear Market): 高値から20%以上の下落

ベアマーケット入りすると、投資家の心理が悪化し、さらなる売りが売りを呼ぶ展開になることがあります。

(2) 過去の主要な暴落事例(ブラックマンデー、リーマンショック、コロナショック)

過去の暴落局面と比較することで、現在の下落が歴史的にどの程度の規模なのかを把握できます。以下は、野村アセットマネジメントが公表している主要な暴落事例です。

暴落名 期間 最大下落率 回復までの期間
ブラックマンデー(1987年) 3ヶ月 33.5% 1年8ヶ月
ITバブル崩壊(2000-2002年) 2年7ヶ月 49.1% 4年8ヶ月
リーマンショック(2008年) 1年5ヶ月 56.8% 4年1ヶ月
コロナショック(2020年) 1ヶ月 33.9% 5ヶ月

注目すべきは、下落が急激であるほど回復も早い傾向がある点です。コロナショックは1ヶ月で33.9%下落しましたが、各国政府の大規模な金融緩和と財政出動により、5ヶ月で回復しました。

一方、リーマンショックのように金融システム全体が揺らぐ暴落では、回復に4年以上かかることもあります。下落の原因と深刻度を見極めることが重要です。

(3) 下落率ランキングサイトの活用方法

個別銘柄の下落状況を確認したい場合、以下のサイトが便利です。

  • 日本経済新聞 米国株値下がり率ランキング: NYSE、NASDAQ、ADR、ETFの下落率ランキングを毎日更新(https://www.nikkei.com/marketdata/ranking-us/price-drop/)
  • Yahoo!ファイナンス: リアルタイムの株価と下落率を確認可能
  • 株探(米国株版): 個別銘柄のニュースと下落率をまとめて確認

これらのサイトを活用することで、自分が保有する銘柄がどの程度下落しているのか、他の銘柄と比較してどうなのかを把握できます。

2025年の下落事例から学ぶ教訓

2025年は、2つの大きな下落イベントがありました。それぞれから学べる教訓を見ていきましょう。

(1) 2025年4月のトランプ関税ショック

2025年4月2日、トランプ大統領が関税政策を発表すると、世界的な株式市場が暴落しました。S&P500は2月中旬から4月初旬にかけて21.4%下落し、約5.8兆ドル(約990兆円)の時価総額が消失しました。

しかし、4月9日に関税の一時停止が発表されると、市場は急回復し、6月27日にはS&P500が2月19日の高値を超えて回復を完了しました。

教訓:

  • 政策変更による下落は、政策の修正により急速に回復する可能性がある
  • 暴落時にパニック売りをせず、政策動向を注視することが重要
  • 短期的な下落を過度に恐れず、長期的な視点を保つ

(2) 2025年11月のAI株評価懸念による下落

2025年11月14日、米国株は1ヶ月超ぶりの大幅下落となりました。ダウは797ポイント(1.65%)下落、S&P500は1.66%安、Nasdaqは2.29%安となりました。

AI関連株の評価懸念(株価が実態以上に高くなっているのではないかという懸念)と、FRB高官のタカ派発言が原因とされています。特に、テクノロジーセクターや高PER(株価収益率)銘柄が大きく下落しました。

教訓:

  • 高評価銘柄(特にハイテク株)は、調整局面で大きく下落するリスクがある
  • セクター別の動向を確認し、特定セクターへの集中投資を避ける
  • FRBの金利政策動向を常にチェックする

下落時に投資家が取るべき対応

下落時の対応は、投資スタイルや資金状況によって異なります。以下の基本姿勢を参考にしてください。

(1) 長期投資家の基本姿勢

長期投資を前提としている場合、一時的な下落を過度に恐れる必要はありません。過去のデータを見ても、米国株式市場は長期的には右肩上がりの成長を続けています。

基本姿勢:

  • 下落時も保有継続を基本とする
  • 市場のタイミングを計るのではなく、時間分散(ドルコスト平均法)を活用
  • 短期的な値動きに一喜一憂しない

(2) 買い増しと損切りの判断基準

下落時に買い増しをするか、損切りをするかは、以下の基準で判断すると良いでしょう。

買い増しを検討する場合:

  • 余裕資金の範囲内で実施
  • 下落の原因が一時的なもの(政策変更、市場のパニックなど)と判断できる
  • 長期的な成長が期待できる銘柄・セクターである

損切りを検討する場合:

  • 投資方針の見直しが必要な場合(企業の根本的な業績悪化、不正発覚など)
  • リスク許容度を超えた損失が発生している
  • 資金が必要な時期が近づいている

※個別銘柄の「買い推奨」「売り推奨」は金融商品取引法に抵触する可能性があるため、最終的な投資判断はご自身の責任で行ってください。

(3) 為替リスクへの注意

日本人投資家が米国株に投資する場合、為替リスクも考慮する必要があります。

米国株が下落している時に、同時に円高ドル安が進行すると、円換算での評価額はさらに大きく下がることがあります。逆に、円安ドル高が進行すれば、株価下落の影響を一部相殺できることもあります。

為替リスク対策:

  • 為替ヘッジ付きのETFや投資信託を検討
  • ドル建て資産と円建て資産をバランスよく保有
  • 為替相場の動向も定期的にチェック

まとめ:冷静に下落と向き合うために

米国株の下落は、投資家にとって不安な出来事ですが、冷静に対処することで、長期的な資産形成を続けることができます。

この記事のまとめ:

  • 米国株の下落は、金利政策、企業業績、地政学リスクなどが主な原因
  • 過去の暴落(ブラックマンデー33.5%、リーマンショック56.8%、コロナショック33.9%)と比較することで、現在の下落規模を相対評価できる
  • 2025年4月のトランプ関税ショック(21.4%下落)は、政策修正により急速に回復した
  • 長期投資家は、一時的な下落を過度に恐れず、分散投資とドルコスト平均法でリスク管理を
  • 為替リスクにも注意し、円建て資産とのバランスを保つ

次のアクション:

  • 日経新聞やYahoo!ファイナンスで、主要3指数(ダウ、S&P500、Nasdaq)の動向を定期的に確認
  • 自分の投資方針を再確認し、長期的な視点を保つ
  • 下落の原因を冷静に分析し、パニック売りを避ける

※この記事は情報提供を目的としており、投資助言ではありません。投資判断は自己責任で行ってください。

よくある質問

Q1米国株はどこまで下がるのか?

A1過去のベアマーケットでは、20-56%下落した事例があります。リーマンショックでは56.8%、コロナショックでは33.9%下落しました。ただし、底値を正確に予測することは困難です。長期投資を前提とするなら、一時的な下落を過度に恐れず、分散投資でリスク管理することが重要です。

Q2下落時は売るべき?それとも買い増しすべき?

A2長期投資を前提とする場合、基本的には保有継続が推奨されます。買い増しは余裕資金の範囲内で、ドルコスト平均法を活用すると良いでしょう。損切りは、企業の根本的な業績悪化や投資方針の見直しが必要な場合に検討します。最終的な投資判断はご自身の責任で行ってください。

Q3米国株の下落率はどこで確認できる?

A3日本経済新聞の米国株値下がり率ランキング、Yahoo!ファイナンス、株探などで日本語で確認できます。主要3指数(ダウ、S&P500、Nasdaq)の動向を毎日チェックすることで、市場全体の流れを把握できます。

Q4過去の暴落と比べて今回の下落はどうなのか?

A42025年4月のトランプ関税ショック(21.4%下落)はベアマーケット入りしましたが、リーマンショック(56.8%)やITバブル崩壊(49.1%)と比較すると軽度です。ただし、回復の早さは政策対応や市場環境に依存するため、過去のパターンが必ずしも当てはまるとは限りません。

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Single Stock編集部

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