ADR一覧とは【米国市場で取引できる外国株のリスト】
米国株投資に興味がある日本人投資家の中には、日本企業のADR(米国預託証券)を米国市場で取引したいと考える方も多いでしょう。しかし、「ADRとは何か」「どの銘柄があるのか」を把握するのは簡単ではありません。
この記事のポイント:
- ADRとは、外国企業の株式を米国市場で取引できるようにした預託証券
- 世界で2,500以上のADR銘柄が登録され、日本株ADRは約300銘柄存在する
- JPモルガン、NYSE、ドイツ銀行のデータベースで国別・セクター別に検索可能
- スポンサード型ADRは情報開示が充実しており、アンスポンサード型より推奨される
(1) ADR(米国預託証券)の定義
ADR(American Depositary Receipt、米国預託証券)とは、外国企業の株式を米国市場で取引できるようにした証券です。預託銀行が外国企業の株式を保管し、その代わりとしてADRを発行します。
投資家はADRを米国市場で購入することで、実質的に外国企業の株主となります。配当金も米ドルで受け取れるため、日本の投資家にとっても利便性が高い仕組みです。
(2) 世界のADR銘柄数:2,500以上(2025年時点)
2025年時点で、JPモルガンのADRデータベース(adr.com)には2,500以上のADRが登録されています。これらは国別・セクター別・上場市場別に分類されており、投資家は自分のニーズに合った銘柄を検索できます。
ADRはNYSE、NASDAQ、OTC市場などで取引されており、流動性や情報開示の充実度が異なります。
ADRの基本知識【スポンサード型とアンスポンサード型の違い】
(1) スポンサード型ADR:企業が預託銀行と契約、情報開示充実
スポンサード型ADRは、企業が預託銀行と契約を結び、ADRの発行に協力する形態です。企業がSEC(米国証券取引委員会)に財務情報を提出するため、情報開示が充実しており、投資家にとって透明性が高いと言われています。
流動性も高く、NYSEやNASDAQに上場している銘柄が多いため、取引しやすいのが特徴です。
(2) アンスポンサード型ADR:第三者が発行、流動性低い
アンスポンサード型ADRは、企業の協力なく第三者(預託銀行やブローカー)が発行するADRです。企業がSECに財務情報を提出する義務がないため、情報開示が少なく、流動性も低い傾向があります。
OTC市場で取引される銘柄が多く、投資家にとってはリスクが高いとされています。
(3) ADR比率:1 ADRが何株の普通株に相当するか
ADR比率とは、1ADRあたり何株の普通株に相当するかを示す比率です。例えば、「1ADR = 0.6株」の場合、1ADRを購入すると、本国市場の0.6株分の権利を持つことになります。
ADR比率はNYSE ADR Masterなどの公式データベースで確認できます。
(4) 預託銀行:JPモルガン、シティバンク、BNY Mellon、ドイツ銀行
ADRの発行・管理を担当する預託銀行には、JPモルガン、シティバンク、BNY Mellon、ドイツ銀行などがあります。これらの銀行は、外国企業の株式を保管し、配当金の支払いやADRの管理を行います。
日本株ADR一覧【主要20銘柄とティッカーシンボル】
(1) NYSE上場の日本企業17社(トヨタ、ソニー、三井住友FG等)
NYSE(ニューヨーク証券取引所)に上場している日本企業のADRは17社あります。主要銘柄には以下のようなものがあります:
- トヨタ自動車(TM): 世界的な自動車メーカー
- ソニーグループ(SONY): 電機・エンタメ複合企業
- 三井住友フィナンシャルグループ(SMFG): メガバンク
- ホンダ(HMC): 自動車・二輪車メーカー
- キヤノン(CAJ): カメラ・事務機器メーカー
- 三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG): メガバンク
これらの銘柄は流動性が高く、情報開示も充実しているため、日本人投資家にとっても投資しやすいと言われています。
(2) NASDAQ上場の日本企業6社
NASDAQに上場している日本企業のADRは6社あります。主な銘柄には以下があります:
- Advantest(ATE): 半導体検査装置メーカー
- Tokyo Electron(TOELY): 半導体製造装置メーカー
- Nidec(NJ): 精密モーターメーカー
これらはテクノロジー関連企業が多く、NASDAQ市場で取引されています。
(3) スポンサードOTC 40社、非スポンサード201社
OTC(店頭市場)で取引される日本株ADRは、スポンサード型が40社、非スポンサード型が201社あります。OTC市場は流動性が低く、情報開示も限定的なため、NYSE/NASDAQ上場銘柄と比べるとリスクが高いとされています。
ただし、任天堂(7974)やソフトバンクグループ(9984)など、知名度の高い企業のADRもOTC市場で取引されています。
(4) 日本株ADRの特徴:夜間取引で翌日の東京市場を予想
日本株ADRは、米国市場の取引時間(日本時間23:30-翌6:00、夏時間22:30-翌5:00)に取引されます。このため、NYSEでの日本株ADRの価格変動を見ることで、翌日の東京市場の値動きを予想する参考になると言われています。
Nikkei225jp.comなどのサイトでは、日本株ADRの全銘柄をリアルタイム円換算価格で表示しており、夜間の価格変動を確認できます。
国別・セクター別ADRデータベースの活用方法【JPモルガン・NYSE・ドイツ銀行】
(1) JPモルガンのADR.com:2,500以上のADR検索可能
JPモルガンのADR.com(https://www.adr.com/)は、世界最大級のADRデータベースです。2,500以上のADRを国別・セクター別・預託銀行別でフィルタリングでき、投資対象を効率的に検索できます。
上場タイプ(NYSE/NASDAQ/OTC)でも絞り込めるため、自分の投資スタイルに合った銘柄を見つけやすいと言われています。
(2) NYSE ADR Master:預託銀行名・ADR比率等の公式データ
NYSE ADR Master(https://www.nyse.com/market-data/reference/nyse-group-adr-security-master)は、NYSEとNYSE AmericanのADR公式データベースです。
預託銀行名、ADR比率、公開株式数(Public Float)などの詳細データが日次更新で提供されており、投資判断の材料として活用できます。
(3) ドイツ銀行:地域別ADR検索(アフリカ、アジア、欧州等)
ドイツ銀行のADRデータベース(https://www.adr.db.com/)では、地域別(アフリカ、アジア、欧州、南米等)にADRを検索できます。新興国のADR投資を検討している投資家にとって便利なツールです。
(4) 国別ADR数:中国112、英国37、ブラジル26、日本16
2025年時点で、国別のADR銘柄数は以下の通りです:
- 中国: 112銘柄(最多)
- 英国: 37銘柄
- ブラジル: 26銘柄
- イスラエル: 17銘柄
- 日本: 16銘柄(NYSE/NASDAQ上場のみのカウント)
- フランス: 15銘柄
これらの数字は、JPモルガンやドイツ銀行のデータベースで確認できます。
ADRの取引方法と証券会社の選び方【楽天・SBI・マネックス等】
(1) 日本の証券会社の取扱ADR一覧:マネックス、楽天、SBI
日本の証券会社でもADRを取引できますが、取扱銘柄数は証券会社によって異なります。
- マネックス証券: 幅広いADR銘柄を取り扱い(NYSE上場17社、NASDAQ上場6社、スポンサードOTC 40社、非スポンサード201社等)
- 楽天証券: 主要ADRをカバー、アジア地域のADRに強み
- SBI証券: 米国株取扱銘柄数が多く、主要ADRも網羅
投資前に各証券会社の公式サイトで取扱ADR一覧を確認することが重要です。
(2) 証券会社によって取扱銘柄数が異なる
一部のADRは、海外の証券会社でしか取引できない場合があります。特にOTC市場のアンスポンサード型ADRは、日本の証券会社では取り扱っていないケースが多いため、注意が必要です。
(3) 株探(かぶたん)、Nikkei225jp.comでリアルタイム株価確認
株探(かぶたん)の米国株ADR一覧(https://us.kabutan.jp/tanken/adr)や、Nikkei225jp.comのADR日本株全銘柄一覧(https://nikkei225jp.com/adr/)では、リアルタイム株価や円換算価格を確認できます。
これらのサイトを活用することで、夜間のADR価格変動をチェックし、翌日の東京市場の予想に役立てることができます。
(4) 取引時間:米国市場(日本時間23:30-翌6:00、夏時間22:30-翌5:00)
ADRは米国市場で取引されるため、取引時間は日本時間で夜23:30から翌朝6:00(夏時間は22:30から翌朝5:00)です。この時間帯に取引を行う必要があるため、日本の会社員投資家にとっては時差が課題となる場合があります。
まとめ:ADR一覧を活用した投資戦略【2025年の注意点】
(1) ADRデータベースで投資対象を発見する
JPモルガンのADR.com、NYSE ADR Master、ドイツ銀行のデータベースを活用することで、国別・セクター別に投資対象を効率的に発見できます。これらのツールは無料で利用でき、最新の上場情報や財務データも確認できます。
(2) スポンサード型ADRを優先的に選ぶ
アンスポンサード型ADRは情報開示が少なく、流動性も低いため、初心者にはリスクが高いとされています。投資するなら、企業が預託銀行と契約を結んでいるスポンサード型ADRを優先的に選ぶことが推奨されます。
(3) 上場廃止銘柄を定期的にチェックする
ADR銘柄は上場廃止になる場合があります。ADRデータベースは定期的に更新されるため、投資前に最新情報を確認し、上場廃止のリスクを把握することが重要です。
次のアクション:
- JPモルガンやNYSEのADRデータベースで投資対象を検索する
- 日本の証券会社(マネックス、楽天、SBI)の取扱ADR一覧を確認する
- スポンサード型ADRを中心に投資候補を絞り込む
ADR一覧を活用して、自分に合った投資戦略を構築しましょう。
