AVGO(ブロードコム)とは:NASDAQ上場のAI半導体大手
米国ハイテク株への投資を検討している投資家にとって、ブロードコム(ティッカーシンボル:AVGO)は注目すべき銘柄の一つです。AI半導体市場での強固なポジションと、過去10年で約30倍という驚異的な株価成長を実現した実績があります。
ブロードコムはNASDAQに上場する半導体設計・製造企業で、AI向けカスタムチップ(ASIC)市場で70-75%のシェアを持つとされています。2024年12月には時価総額1兆ドルを突破し、世界で12番目にこの水準に到達した企業となりました。
この記事では、AVGO株の基本情報、事業内容、日本の証券会社での購入方法、税金・為替リスクについて解説します。
この記事のポイント:
- AVGOはNASDAQ上場のAI半導体・インフラソフトウェア企業で、時価総額1.6兆ドル超
- AI向けカスタムチップ(ASIC)市場で70-75%のシェアを持ち、Google・Meta等の超大手企業が主要顧客
- 2024年7月に10対1の株式分割を実施し、個人投資家にとって購入しやすい価格水準になった
- 日本の主要ネット証券(SBI証券、楽天証券、マネックス証券等)で取引可能
- 配当金は二重課税されるが、外国税額控除やNISAの活用で税負担を軽減できる
(1) ブロードコムの企業概要(設立、本社、時価総額)
ブロードコム(Broadcom Inc.)は、1961年に設立された米国カリフォルニア州サンノゼに本社を置く半導体・インフラソフトウェア企業です。2025年11月時点での時価総額は約1.6兆ドルで、Apple、Microsoft、Nvidia等に次ぐ世界トップクラスの企業価値を誇ります。
ブロードコムは、AI向けカスタムチップ(ASIC)の設計・製造を主力事業とし、Google、Meta、Amazonなどの超大規模データセンター運営企業(Hyperscaler)向けに製品を提供しています。また、2023年にソフトウェア大手VMwareを690億ドルで買収し、インフラソフトウェア事業も強化しています。
(2) NASDAQとは(ハイテク企業中心の株式市場)
NASDAQは、米国の株式市場の一つで、ハイテク企業を中心に約3,000社が上場しています。ニューヨーク証券取引所(NYSE)と並ぶ主要市場で、Apple、Microsoft、Amazon、Teslaなどの有名企業もNASDAQに上場しています。
NASDAQの通常取引時間は米国東部時間の午前9時30分~午後4時(日本時間の午後11時30分~翌朝6時、夏時間は1時間早まる)です。また、プレマーケット取引(午前4時~9時30分)とアフターマーケット取引(午後4時~8時)もあり、通常取引時間外でも一部の取引が可能です。
(3) ティッカーシンボル「AVGO」の由来
ティッカーシンボルとは、株式市場で企業を識別するための略称です。ブロードコムのティッカーシンボルは「AVGO」で、これは旧社名「Avago Technologies」に由来します。ブロードコムは2016年にAvago Technologiesが旧Broadcom Corporationを買収して誕生した企業で、ティッカーシンボルはAvagoのものが引き継がれました。
ブロードコムの事業内容とセクター
ブロードコムは、半導体設計・製造とインフラソフトウェアの2つの主要事業を展開しています。
(1) 半導体設計・製造事業(AI向けASIC、ネットワークチップ)
ブロードコムの半導体事業は、AI向けカスタムチップ(ASIC)とネットワーク製品が主力です。
AI向けASIC(カスタムチップ):
ASIC(Application-Specific Integrated Circuit)は、特定用途向けに設計された集積回路で、汎用GPU(Nvidiaなどが提供)とは異なり、特定の顧客・用途に最適化されています。ブロードコムのAI向けASICは、Google、Meta、ByteDanceなどの超大手企業向けに開発されており、NvidiaのGPUと比較して75%のコスト優位性があるとされています。
2024年度のAI売上は122億ドル(前年比220%増)に達し、半導体売上全体の41%を占めるまでに成長しました。2025年度第4四半期(2025年10月)のAI売上は62億ドルと予想されており、前年比66%の高成長が続いています。
ネットワークチップ:
ブロードコムは、データセンター向けのイーサネットスイッチやルーターなどのネットワーク製品でも高いシェアを持っています。5G基地局向けチップやスマートフォン向けWi-Fiチップなども提供しており、通信インフラの重要なサプライヤーです。
(2) インフラソフトウェア事業(VMware買収の影響)
2023年11月、ブロードコムは仮想化ソフトウェア大手のVMwareを690億ドルで買収しました。この買収により、ブロードコムはハードウェア(半導体)とソフトウェアの両面から企業向けインフラ市場に対応できるようになりました。
VMwareは、企業のデータセンターやクラウド環境で広く使われる仮想化技術を提供しており、ブロードコムの顧客基盤拡大と収益の安定化に寄与しています。ただし、買収に伴う負債増加や統合コストが短期的な財務リスクとなる可能性もあります。
(3) 主要顧客(Google、Meta、Apple等のHyperscaler)
ブロードコムの売上の大部分は、少数の超大手顧客(Hyperscaler)に依存しています。Hyperscalerとは、Google、Meta、Amazon、Microsoftなどの超大規模データセンターを運営する企業を指します。
これらの顧客は、AI学習や推論、クラウドサービスの提供に大量のカスタムチップを必要としており、ブロードコムはそのニーズに応える形で高成長を実現しています。一方、顧客集中度が高いため、主要顧客がカスタムチップの調達先を変更したり、内製化を進めたりした場合、業績に大きな影響を受けるリスクもあります。
AVGO株の基本情報(株価・配当・株式分割)
AVGO株の投資判断に必要な基本情報を確認しましょう。
(1) 現在の株価と時価総額(2025年11月時点)
2025年11月時点でのAVGO株の主要指標は以下の通りです。
- 株価: 約342ドル
- 時価総額: 約1.6兆ドル
- 52週レンジ: 138.10ドル~386.48ドル
- 1年リターン: 約109.78%(2024年11月からの1年間で株価が約2倍に上昇)
ブロードコムの株価は、2024年7月の株式分割後に急速に上昇し、分割直後の167ドルから約2倍の水準まで成長しました。
(2) 2024年7月の株式分割(10対1)の影響
ブロードコムは2024年7月15日に10対1の株式分割を実施しました。株式分割とは、1株を複数株に分割して株価を下げる施策で、個人投資家にとって購入しやすい価格水準にすることが目的です。
株式分割前:
- 株価: 約1,670ドル
- 保有株数: 100株なら時価167万ドル
株式分割後:
- 株価: 約167ドル(1/10)
- 保有株数: 100株 → 1,000株(10倍)
- 時価総額は変わらず167万ドル
株式分割により、1株あたりの価格が下がり、少額投資家でも購入しやすくなりました。分割後も株価は上昇を続け、2025年11月時点では342ドルと分割直後の2倍以上になっています。
(3) 配当利回りと配当方針
ブロードコムの配当利回りは約0.69%で、ハイテク成長株としては控えめな水準です。ブロードコムは成長投資(R&D、M&A)に資金を投じる方針であり、配当よりも株価上昇(キャピタルゲイン)を重視する企業と言えます。
配当金は四半期ごとに支払われ、過去10年間で安定的に増配を続けています。配当よりも成長性を重視する投資家にとっては、長期保有に適した銘柄です。
(4) PERと割高評価のリスク
AVGO株のPER(株価収益率)は約83倍で、S&P500の平均PER(約20倍前後)と比較すると割高な水準です。PERが高いということは、投資家が将来の高成長を織り込んで株価を評価していることを意味しますが、成長期待が裏切られた場合には株価が大きく調整するリスクもあります。
特に、AI市場の成長が予想を下回る場合や、競合企業(Nvidia、AMD、Marvell等)の技術革新により市場シェアを失った場合、株価が急落する可能性があります。投資判断の際には、割高評価のリスクも考慮する必要があります。
日本の証券会社でのAVGO株の買い方
日本からAVGO株を購入する方法を確認しましょう。
(1) 主要ネット証券でのAVGO取扱い(SBI証券、楽天証券、マネックス証券等)
AVGO株は、日本の主要ネット証券で取引可能です。代表的な証券会社は以下の通りです。
- SBI証券: 米国株の取扱銘柄数が最多。手数料は約定代金の0.495%(最低0ドル、上限22ドル)
- 楽天証券: 楽天ポイントが貯まり、UI/UXが使いやすい。手数料はSBI証券と同水準
- マネックス証券: 米国株の情報提供が充実。手数料は約定代金の0.495%(上限22ドル)
これらの証券会社では、AVGO株を1株から購入できます。口座開設後、米国株取引の申し込みを行い、入金すれば取引が可能になります。
(2) 銘柄コード検索方法(NASDAQ: AVGO)
証券会社の取引画面で、銘柄コードを検索する際には「AVGO」または「ブロードコム」と入力します。ティッカーシンボル「AVGO」を入力するのが最も確実です。
検索結果には、株価、前日比、時価総額、PER、配当利回りなどの基本情報が表示されます。企業の詳細情報や財務データも確認できるため、投資判断の参考にしましょう。
(3) 円貨決済と外貨決済の選択
米国株を購入する際、円貨決済と外貨決済(ドル決済)の2つの方法があります。
円貨決済:
- 日本円で注文を出すと、証券会社が自動的にドルに両替して購入
- 為替手数料が割高(片道25銭~1円程度)
- 為替レートを気にせず手軽に取引できる
外貨決済:
- 事前にドルを購入し、ドルで株を買う
- 為替手数料が安い(片道10銭~25銭程度)
- 為替リスクを直接管理できる
長期投資の場合、外貨決済の方が為替手数料を抑えられるため、コストメリットがあります。
(4) 最低購入金額と手数料
AVGO株は1株から購入できます。2025年11月時点での株価が約342ドルであるため、1ドル=150円と仮定すると、最低購入金額は約51,300円(342ドル×150円)となります。
これに加えて、取引手数料が発生します。たとえば、SBI証券で342ドルの株を1株購入する場合、手数料は約1.69ドル(342ドル×0.495%)です。為替手数料(円貨決済の場合)も考慮すると、総コストは約53,000円程度になります。
AVGO株投資の税金・為替リスク
米国株投資には、配当金の二重課税や為替リスクなどの注意点があります。
(1) 配当金の二重課税(米国10%源泉徴収 + 日本20.315%)
米国株の配当金は、まず米国で10%の源泉徴収が行われ、残りの90%が日本の投資家に支払われます。さらに、日本でも20.315%(所得税15.315% + 住民税5%)が課税されるため、二重課税が発生します。
例: 配当金100ドルの場合
- 米国で10%源泉徴収 → 90ドルが支払われる
- 日本で20.315%課税 → 手取りは約71.7ドル
- 実質税率: 約28.3%
この二重課税を軽減するため、外国税額控除の制度があります。
(2) 外国税額控除の仕組み(概要)
外国税額控除は、外国で支払った税金の一部を日本の税額から差し引ける制度です。確定申告を行うことで、米国で徴収された10%の一部を取り戻せる可能性があります。
ただし、控除額には上限があり、所得や他の所得との兼ね合いで控除できる金額が変わります。詳細な計算方法や申告手続きについては、税理士や国税庁のウェブサイトを参照してください。
(3) 為替変動リスク(ドル建て資産のリスク)
AVGO株はドル建てで取引されるため、為替レートの変動が投資成績に影響します。
円高の場合(例: 1ドル=150円 → 140円):
- 株価が変わらなくても、円換算での資産価値は減少
- 342ドルの株を150円で購入した場合、51,300円だが、140円になると47,880円に減少(-6.7%)
円安の場合(例: 1ドル=150円 → 160円):
- 株価が変わらなくても、円換算での資産価値は増加
- 342ドルの株が160円になると54,720円に増加(+6.7%)
為替リスクを完全に回避することは難しいですが、長期的にはドル建て資産の保有が分散投資として有効とされています。
(4) NISAでの購入可否と非課税メリット
AVGO株は、日本のNISA(少額投資非課税制度)口座でも購入できます。NISA口座で購入した場合、配当金と売却益が非課税になります。
NISAのメリット:
- 配当金: 米国10%の源泉徴収は発生するが、日本の20.315%は非課税
- 売却益: 完全非課税
注意点:
- 米国の10%源泉徴収は回避できない(NISA口座でも徴収される)
- 外国税額控除は使えない(二重課税の軽減は不可)
NISAの非課税メリットを活用することで、税負担を大幅に軽減できます。
まとめ:AVGOの銘柄情報と投資の注意点
ブロードコム(AVGO)は、AI半導体市場での強固なポジションと高い成長性を持つ銘柄です。日本の主要ネット証券で1株から購入でき、NISAを活用すれば税負担も軽減できます。
一方、PER 83倍の割高評価や、主要顧客への依存度の高さ、為替リスクなどの注意点もあります。投資判断は自己責任で、企業の財務状況や市場動向を継続的に確認しながら行うことが重要です。
次のアクション:
- ブロードコムの公式IRサイトや最新の決算資料を確認する
- 日本の証券会社で口座を開設し、米国株取引を申し込む
- 少額から購入を始め、長期的な視点で保有する
- NISAの活用を検討し、税負担を最小化する
情報を収集し、慎重に投資判断を行いましょう。
※投資判断は自己責任で行ってください。本記事は情報提供を目的としており、特定銘柄の推奨ではありません。
