FRB政策金利の仕組みと米国株投資への影響:日本の投資家が知るべき基礎知識

著者: Single Stock編集部公開日: 2025/11/17

FRB政策金利とは何か

「FRB政策金利」という言葉を聞いたことがあるけれど、具体的に何を指すのか、米国株投資にどう影響するのかわからない、と感じている投資家は少なくありません。

FRB政策金利は、米国の中央銀行であるFRB(Federal Reserve Board、米連邦準備制度理事会)が設定するFF金利(フェデラル・ファンド金利)のことです。この金利は、米国経済全体の金利水準に影響を与え、米国株市場にも大きな影響を及ぼします。

この記事では、FRB政策金利の仕組み、決定プロセスとFOMC、金利変動が米国株価に与える影響、セクター別の影響の違い、日本の投資家への影響について解説します。

この記事のポイント:

  • FRB政策金利(FF金利)は現在4.25~4.5%、FOMCが年8回の定例会合で決定
  • 利上げ時は債券が魅力的となり株式市場が圧迫される傾向
  • 利下げ時は株式が魅力化するが、リセッション懸念で株安になることも
  • 過去の利下げ局面で、リセッション回避なら株高、入りなら株安という傾向
  • 日本の投資家には為替レート(FRBと日銀の金利差)や外国人投資家の行動を通じて影響

(1) FF金利(フェデラル・ファンド金利)の仕組み

FF金利は、銀行間の翌日物貸出金利のことです。FRBは、このFF金利の誘導目標レンジを設定することで、米国経済全体の金利水準をコントロールします。

現在のFF金利の誘導目標レンジは4.25~4.5%です。FRBは、金利を上げることで景気過熱やインフレを抑制し、金利を下げることで景気を刺激します。

(出典: みんかぶ FX/為替: アメリカ・FRB政策金利(FOMC)

(2) FRBの目的(雇用最大化・物価安定)

FRBの金融政策の目的は、「雇用最大化」「物価安定」「長期金利の緩和」の3つです。特に雇用最大化と物価安定は「デュアル・マンデート(二重の責務)」と呼ばれ、FRBが最も重視する目標です。

FRBはインフレ率を2%前後に保つことを目標としており、インフレ率が高すぎる場合は利上げ、低すぎる場合は利下げを行います。

(出典: Federal Reserve Board - Monetary Policy

政策金利の決定プロセスとFOMC

(1) FOMCの開催頻度(年8回の定例会合)

FOMC(Federal Open Market Committee、連邦公開市場委員会)は、FRBの金融政策決定機関で、年8回の定例会合でFF金利を決定します。

FOMCは、経済指標(雇用統計、インフレ率、GDP成長率など)をもとに、金利の引き上げ、引き下げ、据え置きのいずれかを決定します。

(2) FOMC声明と経済見通し(SEP)の重要性

FOMC会合後には、FOMC声明が発表され、金利決定の理由や今後の金融政策の方向性が示されます。また、四半期ごとに経済見通し(SEP: Summary of Economic Projections)が発表され、FRBの金利予測やインフレ見通しが示されます。

投資家はFOMC声明と議事要旨を注視し、FRBの政策方針を把握することが重要です。

(出典: 三菱UFJ銀行 Money Canvas: アメリカFRBの利上げ・利下げは日本にどう影響する?

(3) 日本時間でのFOMC発表の確認方法

FOMCの金利発表は、通常、米国東部時間の午後2時(日本時間では翌朝3時、サマータイムでは翌朝2時)に行われます。

日本の証券会社のマーケット情報ページや、FRB公式サイトで最新情報を確認できます。

金利変動が米国株価に与える影響

(1) 利上げ時の影響(債券魅力化・株式圧迫)

金利が上昇すると、債券の利回りが上昇し、債券が魅力的になります。その結果、株式から債券へ資金が移動し、株価が下落する傾向があります。

また、企業の借入コストが上昇し、業績にマイナス影響を与える可能性があります。

(出典: 松井証券: FOMCとは?市場や経済に与える影響と投資家が注目すべきポイント

(2) 利下げ時の影響(株式魅力化・リセッション懸念)

金利が低下すると、低金利環境が株式市場を後押しし、株価が上昇しやすくなります。

しかし、利下げは景気減速への懸念から行われることも多く、利下げ後にリセッション(景気後退)に入る場合は株価が下落する可能性があります。

(3) 過去の事例分析(リセッション回避なら株高、入りなら株安)

三井住友DSアセットマネジメントの分析によると、過去の利下げ局面で、半年以内にリセッション回避なら日米株とも株高、リセッション入りなら株安という傾向が見られます。

利下げ後のダウは過去6回中4回上昇しており、深刻な金融危機でなければ利下げ後は底堅く推移する可能性が高いとされています。

(出典: 三井住友DSアセットマネジメント: 過去の事例から考える米利下げ後の日米株価動向

セクター別の影響の違い

(1) 金利上昇で不利なセクター(不動産・公益事業)

金利上昇時には、高配当セクター(不動産、公益事業)が不利になります。これらのセクターは、債券に代わる利回り投資として人気がありますが、債券利回りが上昇すると魅力が相対的に低下します。

(2) 金利低下で有利なセクター(グロース株・ハイテク)

金利低下時には、グロース株(成長株)やハイテクセクターが有利になります。これらの企業は、将来の成長期待が高く、低金利環境で企業価値が高まります。

(3) 景気循環性の高いセクター(金融・工業)

金融セクターは金利上昇で有利(貸出利ざやが拡大)、工業セクターは景気拡大局面で有利です。

日本の投資家への影響(為替・日本株への波及)

(1) FRBと日銀の金利差と為替レート

FRBと日銀の金利差は、為替レートに大きな影響を与えます。FRBが利下げし、日銀が利上げする局面では、金利差が縮小し、円高・ドル安に動く傾向があります。

2025年はFRBが利下げペース減速、日銀が利上げ検討という「金利差縮小」局面で、為替や資金フローに注意が必要です。

(2) 米国株価が日本株に与える影響

米国株価が下落すると、リスクオフの動きが広がり、日本株も連動して下落する傾向があります。米国株はグローバル市場の指標となっているため、日本の投資家も米国株の動向を注視する必要があります。

(3) 外国人投資家の行動変化

FRBの金利政策は、外国人投資家の行動に影響を与えます。FRBが利下げすると、米国株の魅力が相対的に低下し、外国人投資家が日本株や新興国株に資金を振り向ける可能性があります。

(出典: 三菱UFJ銀行 Money Canvas: アメリカFRBの利上げ・利下げは日本にどう影響する?

長期投資家が知っておくべき対応策

FRB政策金利は、米国株市場に大きな影響を与える重要な指標です。ただし、長期投資を前提とする場合、金利変動は短期的なノイズと捉えることができます。

FRB政策金利と米国株投資のポイント:

  • FOMCの金利決定と声明を注視する
  • 利上げ・利下げの背景(景気・インフレ)を理解する
  • セクター別の影響の違いを考慮してポートフォリオを調整
  • FRBと日銀の金利差と為替レートの関係を把握
  • 長期投資なら一時的な変動に動じず、分散投資でリスクを軽減

次のアクション:

  • FOMC日程を確認し、金利発表と議長会見を注視する
  • 金利変動に強いセクター(金融、ハイテク)への分散を検討
  • 為替リスクを考慮し、米国株と日本株のバランスを見直す

FRB政策金利は投資判断に役立つ重要な情報ですが、長期的な視点で冷静に対応しましょう。

よくある質問:

Q: FOMCの政策金利発表日はいつですか? A: 年8回の定例会合で決定されます。日程はFRB公式サイトで確認可能です。日本時間では通常早朝(午前3-4時頃)に発表されます。

Q: 利上げすると株価は必ず下がりますか? A: 必ずしも下がりません。利上げでも企業業績が好調なら株価上昇もあり得ます。重要なのは利上げ後の景気動向とインフレ鎮静化の見通しです。

Q: 日本の金利とFRBの金利はどう違いますか? A: FRBはFF金利(4.25~4.5%)、日銀は政策金利(0.25%)です。金利差が為替レートに影響し、FRB利下げ・日銀利上げなら円高・ドル安になります。

Q: 長期投資家は金利変動にどう対応すべきですか? A: 金利は短期的なノイズです。長期投資なら分散投資で一時的な変動に動じない姿勢が重要です。FOMCは注視しますが、過度な売買は避けましょう。

※この記事は2025年1月時点の情報をもとに作成しています。金利政策や経済見通しは変化する可能性があるため、最新情報はFRB公式サイトや各メディアでご確認ください。投資判断は自己責任でお願いします。

よくある質問

Q1FOMCの政策金利発表日はいつですか?

A1年8回の定例会合で決定されます。日程はFRB公式サイトで確認可能です。日本時間では通常早朝(午前3-4時頃)に発表されます。

Q2利上げすると株価は必ず下がりますか?

A2必ずしも下がりません。利上げでも企業業績が好調なら株価上昇もあり得ます。重要なのは利上げ後の景気動向とインフレ鎮静化の見通しです。

Q3日本の金利とFRBの金利はどう違いますか?

A3FRBはFF金利(4.25~4.5%)、日銀は政策金利(0.25%)です。金利差が為替レートに影響し、FRB利下げ・日銀利上げなら円高・ドル安になります。

Q4長期投資家は金利変動にどう対応すべきですか?

A4金利は短期的なノイズです。長期投資なら分散投資で一時的な変動に動じない姿勢が重要です。FOMCは注視しますが、過度な売買は避けましょう。

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Single Stock編集部

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