日立製作所のADR(米国預託証券)とは?東証株との違いと投資判断のポイント
日本を代表する企業である日立製作所は、東京証券取引所だけでなく、米国市場でもADR(米国預託証券)として取引されています。しかし、「ADRとは何か」「東証株と何が違うのか」「どちらで購入すべきか」といった疑問をお持ちの方も多いのではないでしょうか。
この記事では、日立製作所のADRの基本情報、東証株との違い、株価の連動性、メリット・デメリット、そして日本人投資家にとっての投資判断のポイントについて解説します。
この記事のポイント:
- 日立ADRはHTHIYのティッカーでOTC市場で取引される米国預託証券
- 東証株とADRの主な違いは取引市場、取引通貨、税制、管理手数料、流動性
- ADR株価は東証株価の為替換算に連動するが、米国市場の需給で乖離することもある
- メリットは夜間取引、ドル建て資産保有、デメリットは管理手数料と為替リスク
- 日本人投資家にとっては東証での購入が一般的だが、ドル建て資産保有などの理由でADRを選択する場合もある
日立製作所のADR(米国預託証券)とは何か
ADRの基本的な仕組み
ADR(American Depositary Receipt、米国預託証券)は、米国市場で取引される外国企業の株式です。預託銀行が現地(この場合は日本)の株式を保管し、米国で証券を発行します。投資家は米国市場でADRを売買することで、間接的に外国企業の株式に投資できます。
日本企業のADR上場状況(約300社)
日本では約300社の企業がADRとして米国市場に上場しています(出典: 株基礎)。主要企業の多くがカバーされており、トヨタ、ソニー、キーエンス、日立製作所などが含まれます。
日立製作所がADRを発行する理由
日立製作所がADRを発行する理由は、米国の投資家向けに株式を提供し、グローバルな資本市場へのアクセスを拡大するためです。ADRにより、米国の投資家も日立製作所の株式を容易に購入できます。
日立ADRの基本情報
ティッカーシンボル(HTHIY)と取引市場(OTC)
日立製作所のADRのティッカーシンボルは「HTHIY」です。OTC(Over-The-Counter)市場で取引されています。OTC市場は、NYSE(ニューヨーク証券取引所)やNASDAQのような主要取引所ではなく、分散型の市場です。
時価総額と配当利回り
2025年11月時点で、日立ADR(HTHIY)の時価総額は約$145.90B(約22兆円)、配当利回りは0.32%となっています(出典: Nasdaq)。
2024年7月の5対1株式分割
2024年7月10日、日立ADRは5対1の株式分割を実施しました(出典: Moomoo)。これにより、1株が5株に分割され、株価は5分の1に調整されました。流動性向上と株価の手頃さが狙いです。
52週株価レンジと最新業績
2025年11月時点で、HTHIYの52週株価レンジは$18.30~$35.00です(出典: Nasdaq)。Q2 2025では売上高が前年同期比8%増となり、AI・デジタル分野が業績を牽引しています(出典: Investing.com)。
東証株とADRの違い
取引市場と取引通貨
- 東証株: 東京証券取引所、円建て取引
- 日立ADR: OTC市場、ドル建て取引
取引時間の違い
- 東証株: 日本時間9:00-15:00(昼休み11:30-12:30)
- 日立ADR: 米国市場の取引時間(日本の夜間23:30-翌朝6:00、夏時間は22:30-翌朝5:00)
日本の夜間に米国市場で取引できるため、翌朝の東京市場の先行指標として活用できます(出典: 楽天証券)。
税制の違い(二重課税)
ADRの配当には、米国と日本の二重課税が発生します。米国で源泉徴収された後、日本でも課税されます。外国税額控除の申請により、二重課税を軽減できる場合があります。
管理手数料の有無
ADRには管理手数料がかかる場合があります。通常、0.05ドル/株程度が配当金から自動的に控除されます(出典: 楽天証券)。東証株にはこのような管理手数料はありません。
流動性とスプレッド
東証株の方が流動性が高く、スプレッド(売買価格差)は狭い傾向にあります。ADRは流動性が低く、スプレッドが広い可能性があります。
株価の連動性と乖離の要因
ADR株価の算出方法(為替換算)
ADR株価は、東京市場の円建て株価を為替レート(米ドル/円)で換算したものに連動します。例えば、東証株が1,000円、為替レートが1ドル=150円の場合、ADR株価は約6.67ドル(1,000円÷150円/ドル)となります。
為替変動の影響
為替レートが変動すると、ADR株価も変動します。円高時(例: 1ドル=140円)にはADR株価が上昇し、円安時(例: 1ドル=160円)にはADR株価が下落します。
米国市場の需給による乖離
ADR株価は東京市場の為替換算価格に連動しますが、米国市場独自の需給によって乖離することがあります。特に、米国市場が大きく変動した場合、翌朝の東京市場でその影響が反映されることがあります。
翌朝の東京市場の先行指標としての活用
日本の夜間に米国市場でADR株価が動くため、翌朝の東京市場の値動きを予測する先行指標として活用されています(出典: MONEY BOX)。
メリットとデメリット
メリット:夜間取引、ドル建て資産保有、米国口座での一括管理
メリット
- 夜間取引: 日本の夜間に米国市場で取引できる
- ドル建て資産保有: 円安リスクのヘッジとしてドル建て資産を保有できる
- 米国口座での一括管理: 米国株ポートフォリオと一緒に管理できる
デメリット:管理手数料、為替リスク、流動性の低さ
デメリット
- 管理手数料: 0.05ドル/株程度が配当から控除される
- 為替リスク: 東京株価の円ドル変動とADR取引時の円ドル変動のダブルリスク
- 流動性の低さ: 東証株と比べて流動性が低く、スプレッドが広い
- 二重課税: 米国と日本で課税される(外国税額控除で軽減可能)
日本人投資家にとっての判断基準
東証株を選ぶべき場合:
- 円建てで投資したい
- 流動性を重視する
- 管理手数料を避けたい
日立ADRを選ぶべき場合:
- ドル建て資産として保有したい
- 米国市場の取引時間に売買したい
- 米国株ポートフォリオと一緒に管理したい
まとめ:日本人投資家にとってのADR投資
日立製作所のADR(HTHIY)は、米国市場で取引される日本企業の米国預託証券です。東証株と比較すると、取引市場、取引通貨、税制、管理手数料、流動性などに違いがあります。
日立ADRの特徴:
- ティッカーシンボル: HTHIY
- 取引市場: OTC市場
- 時価総額: $145.90B(約22兆円)
- 配当利回り: 0.32%
- 2024年7月に5対1の株式分割を実施
- Q2 2025で売上高8%増(AI・デジタル分野が牽引)
東証株との主な違い:
- 取引市場: OTC市場 vs 東京証券取引所
- 取引通貨: ドル建て vs 円建て
- 取引時間: 米国市場時間 vs 日本市場時間
- 税制: 二重課税あり vs 日本のみ課税
- 管理手数料: あり(0.05ドル/株程度)vs なし
- 流動性: 低い vs 高い
購入方法:
- SBI証券、楽天証券、マネックス証券などの米国株取引対応証券会社で購入可能
- ティッカーHTHIYで検索
投資判断のポイント:
- 円建て資産として保有したい → 東証株
- ドル建て資産として保有したい → 日立ADR
- 流動性を重視する → 東証株
- 米国市場の取引時間に売買したい → 日立ADR
注意点:
- ADRには管理手数料(0.05ドル/株程度)がかかる
- 為替リスクがダブルで発生する(東京株価の円ドル変動+ADR取引時の円ドル変動)
- 流動性は東証株より低く、スプレッドが広い可能性がある
- 二重課税が発生するため、外国税額控除の申請を検討する
日本人投資家にとっては、一般的に東証株での購入がコストや流動性の面で有利です。しかし、ドル建て資産としての保有や、米国市場での取引時間を活用したい場合には、ADRも選択肢となります。投資判断は必ず自己責任で行い、最新情報は公式IRや証券会社の情報を確認してください。
