三菱重工業(MHI)のADR:米国市場での取引方法と本国株価との連動性

著者: Single Stock編集部公開日: 2025/11/15

三菱重工のADR(MHVIY)とは

「三菱重工のADRと東京市場の株価はどう違うのか?」「米国市場で三菱重工株を買う方法は?」と疑問を持っている投資家の方は多いのではないでしょうか。

三菱重工業(Mitsubishi Heavy Industries, Ltd.)は、航空・防衛・エネルギー事業を展開する日本の総合重工業メーカーです。東京証券取引所(証券コード:7011)に上場していますが、米国市場では「ADR(American Depositary Receipt、米国預託証券)」として「MHVIY」のティッカーシンボルで取引されています。

この記事では、三菱重工ADR(MHVIY)の仕組み、東京市場との価格差、米国市場での取引方法を解説します。

この記事のポイント:

  • 三菱重工のADR(ティッカー:MHVIY)はOTC市場で取引されている
  • 東京証券取引所(7011)とADR(MHVIY)の価格は為替レートの影響で変動
  • 2024年9月13日、OTC Sponsored ADRに変更された
  • 三菱重工は航空・防衛・エネルギー事業を展開する総合重工業メーカー
  • OTC市場のため、Nasdaq/NYSE上場株より流動性が低い
  • 日本の証券会社(楽天証券、SBI証券等)で購入可能

三菱重工とは:航空・防衛・エネルギー事業の総合重工業メーカー

(1) 航空・防衛・エネルギー等の事業セグメント

三菱重工業は、日本を代表する総合重工業メーカーです。主な事業セグメントは以下の通りです:

主要事業セグメント:

  • エネルギーシステム: 火力発電設備、原子力発電設備、風力発電機
  • 航空・宇宙: 民間航空機(Boeing 787・777の部品製造)、ロケット、人工衛星
  • 防衛: 戦闘機、護衛艦、潜水艦
  • 産業機械: フォークリフト、工作機械、ターボチャージャー
  • 船舶・海洋: 商船、LNG船、海洋構造物

三菱重工のエネルギーセグメントは売上の最大シェアを占めており、世界中の発電所向けに設備を供給しています。

(2) 時価総額と業績(2024-2025年)

株価推移(東京市場):

  • 2024-2025年: 過去12四半期で業績が改善傾向
  • 売上高拡大、利益率とEPSが前年比で回復

株価推移(ADR):

  • OTC市場でMHVIYとして取引
  • リアルタイム株価はYahoo Finance、Morningstar等で確認可能

三菱重工は、防衛関連事業の拡大、再生可能エネルギー事業への注力、航空機事業の回復などを背景に、業績が改善していると言われています。

(3) DJSI World Index選定(2年連続)

2024年12月26日、三菱重工はDow Jones Sustainability Index (DJSI) World Indexに2年連続で選定されました。

DJSI World Indexとは:

  • 世界の持続可能性(サステナビリティ)に優れた企業を選定する指数
  • ESG(環境・社会・ガバナンス)の観点から企業を評価

三菱重工のサステナビリティへの取り組みが評価されており、長期投資家にとっては注目すべきポイントです。

三菱重工ADRの仕組みと取引市場(OTC Market)

(1) MHVIY(ティッカーシンボル)とOTC市場

三菱重工のADRは「MHVIY」のティッカーシンボルで取引されています。取引市場は「OTC Market(店頭市場)」です。

OTC Marketとは:

  • Over-the-Counter Market(店頭市場)の略
  • Nasdaq、NYSEなどの主要取引所以外の電子取引市場
  • 取引所に上場していないため、流動性が主要取引所より低い

三菱重工のADRはNasdaq、NYSEには上場しておらず、OTC Marketで取引されています。このため、取引量が少なく、株価の変動が大きくなる傾向があります。

(2) 2024年9月のOTC Sponsored ADRへの変更

2024年9月13日、三菱重工のADRは「OTC Sponsored ADR(ティッカー: MHVIY)」に変更されました。

Sponsored ADRとは:

  • 発行企業(三菱重工)が公式に関与するADR
  • 企業がADRの管理・情報開示を支援
  • Unsponsored ADRと比べて、投資家保護が強化される

Sponsored ADRへの変更により、投資家はより信頼性の高い情報を入手できるようになりました。

(3) Level 1 ADRの特徴

三菱重工のADRは「Level 1 ADR」に分類されます。

Level 1 ADRの特徴:

  • OTC市場でのみ取引(取引所に上場していない)
  • SECへの報告要件が最小限
  • 流動性が低い(取引量が少ない)

Level 1 ADRは、取引所上場のLevel 2 ADR(トヨタ、ソニー等)と比べて流動性が低いため、売買時のスプレッド(買値と売値の差)が大きくなる可能性があります。

東京市場(7011)とADRの価格比較

(1) 東京市場(7011)とADR(MHVIY)の価格差

三菱重工の株式は、東京証券取引所(証券コード:7011)と米国OTC市場(MHVIY)の両方で取引されています。両者の価格は以下の要因で変動します:

価格差の要因:

  1. 為替レート: ADRはドル建て、東京市場は円建てのため、為替の影響を受ける
  2. 需給バランス: 米国市場と日本市場の需給が異なる場合、価格が乖離する
  3. 取引時間: 米国市場と日本市場の取引時間が異なるため、時差の影響がある

価格差が生じた場合、裁定取引(アービトラージ)が働き、大きな乖離は短期間で解消される傾向があります。

(2) 為替レートの影響

ADRの価格を円換算して東京市場と比較する際、為替レートが重要です。

例:

  • 東京市場(7011): 2,000円
  • ADR(MHVIY): $14.00
  • 為替レート: 1ドル=140円
  • ADRの円換算価格: $14.00 × 140円 = 1,960円

※ ADRの円換算価格と東京市場の株価は理論的には一致するはずですが、実際には為替や需給で若干の差が生じます。

(3) 比較ツールの活用(nikkei225jp.com、225225.jp)

東京市場とADRの価格を同時に比較できるWebサイトがあります:

比較ツール:

これらのツールを活用すると、ADRの円換算価格と東京市場の価格を簡単に比較できます。また、夜間(米国時間)のADR値動きで翌日の東証の動きを予測することも可能です。

三菱重工ADRの取引方法と注意点

(1) 日本の証券会社での購入(楽天証券・SBI証券等)

日本から三菱重工ADR(MHVIY)を購入するには、米国株取引に対応したネット証券の口座を開設します。

主要なネット証券:

  • 楽天証券: 楽天ポイントが貯まる、UI/UXが優れている
  • SBI証券: 米国株取扱数が多い、手数料が低い
  • マネックス証券: 米国株情報が充実、時間外取引も可能

購入手順:

  1. ネット証券の口座を開設
  2. 日本円を入金
  3. 円→ドルに両替(為替手数料が発生)
  4. 「MHVIY」で検索して注文
  5. 購入完了

(2) 管理手数料(配当から差し引かれる場合がある)

ADRでは、預託銀行が「管理手数料」を配当から差し引く場合があります。

管理手数料の相場:

  • 配当金から1株あたり0.05ドル前後差し引かれる場合がある
  • 銘柄により異なるため、購入前に確認が必要

管理手数料は配当から自動的に差し引かれるため、配当利回りの計算時に考慮する必要があります。

(3) 為替リスク・株主権利制限

ADRには以下のリスクと制限があります:

為替リスク:

  • ADRはドル建て取引のため、円高になると円ベースの評価額が減少
  • 配当金もドル建てのため、為替変動の影響を受ける

株主権利制限:

  • ADRでは株主権利が制限される場合が多い
  • 配当は受け取れるが、議決権や株主総会参加権は制限される可能性がある

OTC市場の流動性:

  • OTC市場のため、Nasdaq/NYSE上場株より流動性が低い
  • 売買時のスプレッド(買値と売値の差)が大きくなる可能性がある

まとめ:三菱重工ADR投資のポイント

三菱重工(MHVIY)のADRは、米国市場を通じて日本の総合重工業メーカーに投資できる手段です。東京市場(7011)とADR(MHVIY)の価格は為替レートの影響で変動しますが、裁定取引により大きな乖離は短期間で解消される傾向があります。

まとめのポイント:

  • 三菱重工のADR(ティッカー:MHVIY)はOTC市場で取引されている
  • 東京証券取引所(7011)とADR(MHVIY)の価格は為替レートの影響で変動
  • 2024年9月13日、OTC Sponsored ADRに変更された
  • OTC市場のため、Nasdaq/NYSE上場株より流動性が低い
  • 日本の証券会社(楽天証券、SBI証券等)で購入可能
  • 管理手数料、為替リスク、株主権利制限に注意

次のアクション:

  • 東京市場(7011)とADR(MHVIY)の価格を比較ツールで確認する
  • ネット証券の口座を開設する
  • 三菱重工の最新決算情報をチェックする(三菱重工公式IRサイト)
  • 夜間(米国時間)のADR値動きで翌日の東証の動きを予測する

東京市場とADR、どちらで買うべきか?

  • 流動性重視: 東京市場(7011)が有利(取引量が多い)
  • 米ドル資産として保有: ADR(MHVIY)が便利
  • 夜間取引: ADRを活用して翌日の東証の動きを予測できる

投資判断は自己責任で行ってください。三菱重工の事業内容、業績、リスクを十分に調査した上で判断することが重要です。

よくある質問

Q1三菱重工のADRと東証で直接買う場合、どちらがメリットがあるか?

A1流動性は東京市場(7011)の方が高く、取引量が多いため売買しやすいです。米ドル資産として保有したい場合や、夜間取引で翌日の東証の動きを予測したい場合はADR(MHVIY)が便利です。

Q2ADRの配当金にかかる税金はどうなるのか?

A2米国で配当を受け取る場合、米国で源泉徴収されます(日米租税条約により10%に軽減)。その後、日本でも課税されますが、外国税額控除を利用できる場合があります。詳細は税理士や国税庁にご確認ください。

Q3ADRの管理手数料はいくらかかるのか?

A3配当から1株あたり0.05ドル前後差し引かれる場合があります。銘柄により異なるため、購入前に証券会社に確認が必要です。管理手数料は配当から自動的に差し引かれます。

Q4ADRで株主権利(議決権、株主総会への参加)は得られるのか?

A4ADRでは株主権利が制限される場合が多いです。配当は受け取れますが、議決権や株主総会参加権は制限される可能性があります。株主権利を重視する場合は、東京市場(7011)で直接購入する方が有利です。

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Single Stock編集部

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