日産自動車のADR(NSANY)とは?米国市場での投資方法を解説
「日産のADRって何?東証の株とどう違うの?」――米国株投資を始めた日本人投資家の中には、日産自動車(東証7201)の米国預託証券(ADR)の存在を知り、疑問を感じている方も多いのではないでしょうか。
日産自動車のADRは、米国市場で米ドル建てで取引される米国預託証券です。2024年にはホンダとの経営統合可能性の報道により、ADRが一時20%上昇するなど、市場の注目を集めました。
この記事では、日産自動車のADR(NSANY)の基本情報から仕組み、取引方法、メリット・デメリットまで、詳しく解説します。
この記事のポイント:
- 日産ADRはティッカーシンボル「NSANY」でOTC Markets(店頭市場)に上場
- ADRは米国銀行が日本の日産株を預かり、米国市場で発行する預託証券
- 配当利回りは約4.74%で、米ドル建てで年1回(7月)支払い
- moomoo証券、SBI証券など日本の証券会社で米国株として購入可能
- OTC市場は流動性が低く、為替リスクと二重課税に注意が必要
1. 日産自動車のADRとは何か
日産自動車のADR(American Depositary Receipt)は、日産自動車株式会社(東証プライム上場、証券コード7201)の株式を裏付けとして、米国市場で発行されている米国預託証券です。ティッカーシンボルは「NSANY」で、OTC Markets(店頭市場)で取引されています。
ADRを購入することで、日本の投資家は米ドル建てで日産株に投資でき、配当も米ドルで受け取ることができます。東証で株を買うのとは異なり、為替リスクを伴いますが、米ドル資産としての保有や米国市場での取引時間を活用できるメリットがあります。
2. ADR(米国預託証券)の仕組み
(1) ADRとは何か(定義と役割)
ADRは、米国銀行が外国企業の株式を預かり、その代わりに米国市場で発行する預託証券です。投資家はADRを購入することで、実質的に外国企業の株主となり、配当や値上がり益を享受できます。
ADRの主な役割は、外国企業への投資を簡便にすることです。例えば、中国やインドなど、外国人の直接投資が制限される国の企業にも、米国市場を通じて投資できます。
(2) 預託銀行の役割
預託銀行(Depositary Bank)は、外国企業の株式を現地で保管し、その代わりにADRを発行します。具体的には以下の業務を担当します。
- 外国企業の株式を現地で購入し、保管する
- ADRを米国市場で発行・販売する
- 配当金の受け取り、為替換算、米国投資家への支払いを代行する
- 管理手数料を徴収する
日産ADRの預託銀行は、大手金融機関(JPモルガン、シティバンク等)が務めています。
(3) ADRと通常株式の違い
ADRと通常株式の主な違いは以下の通りです。
- 取引通貨: ADRは米ドル建て、東証株は円建て
- 取引市場: ADRは米国市場、東証株は日本市場
- 取引時間: ADRは米国市場の取引時間、東証株は日本市場の取引時間
- 税金: ADRは二重課税(米国10%+日本20.315%)、東証株は日本のみ課税
実質的な経済的権利(配当・議決権)は同じですが、取引の仕組みや税金が異なります。
3. 日産ADR(NSANY)の基本情報
(1) ティッカーシンボル(NSANY)
日産ADRは、ティッカーシンボル「NSANY」で取引されています。米国の株価情報サイト(NASDAQ、Yahoo Finance、Morningstar等)で検索すると、リアルタイムの株価や過去のチャートを確認できます。
2025年11月時点では、株価は約4.61ドル前後、52週レンジは4.10~7.11ドル、時価総額は約87.5億ドルです(出典: Yahoo Finance)。
(2) 上場市場(OTC Markets)
日産ADRは、OTC Markets(店頭市場) に上場しています。OTC Marketsは取引所外で取引される市場で、NYSE(ニューヨーク証券取引所)やNASDAQのような取引所上場株と比べて、以下の特徴があります。
- 流動性が低い: 取引量が少なく、大口取引時にはスプレッド(買値と売値の差)が広がりやすい
- 情報開示が緩い: SECへの報告義務が取引所上場株よりも少ない
- 取引コストが高い場合も: 証券会社によっては手数料が割高になる場合がある
(3) 株価推移と配当利回り(約4.74%)
日産ADRの配当利回りは約4.74%です(2025年時点、出典: Investing.com)。配当は年1回、7月に米ドル建てで支払われます。
2024年12月には、ホンダとの経営統合可能性の報道により、日産ADRが一時20%上昇し、1998年以来最大の日中上昇率を記録しました(出典: Bloomberg)。2日間の上昇率は30%を超え、市場は統合によるシナジー効果に期待を示しています。
4. 日産ADRの取引方法
(1) 対応証券会社(moomoo証券、SBI証券等)
日産ADRは、米国株を取り扱う日本の証券会社で購入できます。主要な選択肢は以下の通りです。
- moomoo証券: リアルタイムチャートや時間外取引情報が充実
- SBI証券: 米国株取扱銘柄数が最多(5,000銘柄以上)、OTC銘柄にも対応
- マネックス証券: 米国株の情報量が豊富、分析ツールが充実
購入方法は通常の米国株と同じで、米ドル建てでの取引となります。
(2) 米国株口座での購入方法
日産ADRを購入するには、以下の手順を踏みます。
- 証券会社で米国株取引口座を開設する
- 日本円を米ドルに換える(為替手数料が発生)
- 「NSANY」で検索し、購入数量を指定して注文する
- 売買手数料(約定代金の0.495%程度、上限22ドル)が発生
NISA口座でも購入可能で、売却益が非課税となります。
(3) リアルタイム株価の確認方法
日産ADRの株価は、以下のサイトでリアルタイム確認できます。
- moomoo証券(https://www.moomoo.com/ja/stock/NSANY-US): 日本語でリアルタイムチャート、決算情報、アナリスト評価を確認
- NASDAQ(https://www.nasdaq.com/market-activity/stocks/nsany): 米国市場での公式株価情報
- Yahoo Finance(https://finance.yahoo.com/quote/NSANY/): 株価チャート、財務データ、ニュース
5. 日産ADRのメリット・デメリット
(1) メリット(米ドル建て取引、配当受取等)
日産ADRのメリットは以下の通りです。
- 米ドル資産として保有できる: 円安が進むと為替差益を得られる
- 米国市場の取引時間を活用できる: 日本時間の夜間に取引可能
- 配当利回りが高い: 約4.74%の配当利回り
- NISA口座で購入可能: 売却益が非課税
(2) デメリット(流動性リスク、為替リスク)
一方、デメリットも存在します。
- 流動性が低い: OTC市場のため、大口取引時にはスプレッドが広がりやすい
- 為替リスク: 円高が進むと為替差損が発生する
- 業績リスク: 2024年は連結売上高が前年同期比4.7%減少し、純損失1,060億円を計上するなど業績が悪化
(3) 二重課税と外国税額控除
日産ADRの配当には、二重課税があります。
- 米国での配当課税: 10%
- 日本での配当課税: 20.315%
ただし、外国税額控除を利用すれば、米国で課税された10%の一部を日本の所得税から差し引くことができます。確定申告時に外国税額控除を申請することで、税負担を軽減できます。
6. まとめ:日産ADR投資の判断ポイント
日産自動車のADR(NSANY)は、米国市場で米ドル建てで取引できる選択肢です。配当利回りが約4.74%と高く、ホンダとの経営統合の可能性など、今後の動向に注目が集まっています。
日産ADR投資の判断ポイント:
- 業績悪化やリストラが継続しており、最新の決算情報(2025年11月発表予定)の確認が重要
- OTC市場上場で流動性が低いため、大口取引には注意が必要
- 為替リスクを考慮し、円高・円安の見通しを持って投資判断を行う
- 二重課税に注意し、外国税額控除の利用を検討する
次のアクション:
- moomoo証券やSBI証券で米国株口座を開設する
- リアルタイム株価と東証株価(7201)の動きを比較する
- ホンダとの統合交渉の進展状況や決算情報を定期的に確認する
日産ADRは、東証株と比べると取引コストや流動性の面でやや不利ですが、米ドル資産として保有したい場合には有効な選択肢となります。自分の投資スタイルに合うか、慎重に検討してみましょう。
※本記事は2025年11月時点の情報を基に作成しています。最新のデータや税制は国税庁や証券会社の公式サイトでご確認ください。投資判断は自己責任でお願いします。
