ソフトバンクグループのADRとは何か、投資家が注目する理由
ソフトバンクグループの株価を調べると、「SFTBY」というティッカーシンボルが出てきて混乱した経験はありませんか?
ソフトバンクグループは東京証券取引所に上場している日本企業(証券コード: 9984)ですが、米国市場でも「ADR(米国預託証券)」として取引されています。ADRは「SFTBY」というティッカーで、OTC市場で取引されており、東証株とは価格が異なります。
この記事では、ソフトバンクグループのADR株価の見方、東証株との違い、為替レートの影響、そしてADRで投資するメリット・デメリットを詳しく解説します。
この記事のポイント:
- ADRは米国市場で取引される米ドル建ての証券(1 ADR = 0.5株)
- 為替レートと取引時間差により、ADRと東証株の価格は異なる
- ADRは夜間取引が可能で、米ドル建て資産として保有できる
- 為替リスクと流動性の違いに注意が必要
ADR(米国預託証券)の仕組みと換算比率
(1) ADR(American Depositary Receipt)とは
ADR(米国預託証券)は、外国企業の株式を米国市場で取引できるようにした証券です。預託銀行が外国企業の株式を保管し、その代わりにADRを発行します。
ソフトバンクグループの場合、東証に上場している株式(9984)を預託銀行が保管し、米国市場で「SFTBY」として取引されています。投資家はADRを通じて、米国証券口座でソフトバンクグループ株を売買できます。
(2) ソフトバンクグループの換算比率(1 ADR = 0.5株)
ソフトバンクグループのADRは、1 ADR = 0.5株の換算比率です(出典: NASDAQ公式サイト)。
例えば、東証株が1株8,000円の場合、ADRの理論価格は以下のように計算できます:
- 東証株価: 8,000円
- 換算: 8,000円 × 0.5株 = 4,000円
- 為替レート: 1ドル = 150円と仮定
- ADR理論価格: 4,000円 ÷ 150円 = 約26.67ドル
ただし、実際のADR価格は為替レートや需給バランスにより、この理論価格と乖離する場合があります。
(3) 取引時間の違い(プレマーケット・レギュラー・アフターマーケット)
ADRは米国市場で取引されるため、取引時間が東証株と異なります:
- プレマーケット: 日本時間 19:00–23:30(夏時間: 18:00–22:30)
- レギュラー: 日本時間 23:30–翌6:00(夏時間: 22:30–翌5:00)
- アフターマーケット: 日本時間 翌6:00–翌8:00(夏時間: 翌5:00–翌7:00)
このため、日本時間の夜間にもソフトバンクグループ株の値動きを追うことができ、翌日の東証株価の予測材料として活用されています。
ソフトバンクグループADRの株価確認方法とツール
(1) 複合チャートでの確認(nikkei225jp.com、adr-stock.com等)
日本語で東証株とADRを同時に確認できるツールとして、以下のサイトが便利です:
- nikkei225jp.com: 東証株価・ADR円換算・為替レートを同時表示
- adr-stock.com: ADR東証比(プレミアム/ディスカウント)を表示
- 225225.jp: 複合チャートで翌日の株価予測材料を提供
これらのツールでは、ADRの円換算価格と東証株価を比較でき、どちらが割高・割安かを一目で確認できます。
(2) NASDAQ公式サイトでのリアルタイム株価
NASDAQ公式サイト(https://www.nasdaq.com/market-activity/stocks/sftby)では、SFTBYのリアルタイム株価、チャート、出来高、52週高値・安値などの基本情報を確認できます。
(3) Yahoo Finance、moomoo証券での確認
- Yahoo Finance: 米国版(finance.yahoo.com)で決算情報、アナリスト評価、ニュースを確認
- moomoo証券: 日本語で時間外取引情報、掲示板、リアルタイムチャートを表示
(4) 東証株(9984)との比較表示
Yahoo!ファイナンス日本版(finance.yahoo.co.jp)では、東証株(9984.T)の株価・チャート・ニュースを確認できます。ADRと東証株を並べて表示し、価格差を確認することで、為替レートの影響や需給バランスを分析できます。
ADRと東証株の違いと価格乖離が生じる理由
(1) 為替レートの影響(米ドル建て vs 円建て)
ADRは米ドル建て、東証株は円建てです。このため、為替レートの変動が価格に大きく影響します。
例:
- 東証株: 8,000円(変動なし)
- 為替レート: 1ドル = 150円 → 145円(円高進行)
- ADR理論価格: 4,000円 ÷ 150円 = 26.67ドル → 4,000円 ÷ 145円 = 27.59ドル
円高が進むと、東証株価が変わらなくてもADRのドル建て価格は上昇します。逆に円安が進むと、ADRのドル建て価格は下落します。
(2) 取引時間差による価格乖離
ADRは日本時間の夜間も取引されるため、東証が閉まっている間に株価が変動します。
- 夜間にポジティブなニュース発表 → ADRが上昇 → 翌日の東証株も上昇する傾向
- 夜間にネガティブなニュース発表 → ADRが下落 → 翌日の東証株も下落する傾向
このため、ADRの夜間取引を確認することで、翌日の東証株価の動向を予測する投資家が多くいます。
(3) ADR東証比(プレミアム/ディスカウント)の見方
ADR東証比とは、ADRの円換算価格と東証株価の差を示す指標です:
- プレミアム(プラス): ADRが東証株より高い → 翌日の東証株は上昇する可能性
- ディスカウント(マイナス): ADRが東証株より安い → 翌日の東証株は下落する可能性
ただし、これはあくまで参考材料であり、必ずしも予測通りに動くとは限りません。
ADRで投資するメリット・デメリット
(1) メリット:米ドル建て資産の保有、夜間取引が可能
米ドル建て資産として保有できる: 円安が進んだ場合、米ドル建て資産の価値は円換算で上昇します。円安ヘッジとして、米ドル建て資産を保有したい投資家にとって、ADRは有効な選択肢です。
夜間取引が可能: プレマーケット・アフターマーケットを含む夜間取引が可能なため、日本時間の夜間にも売買できます。急な市場変動に対応しやすいというメリットがあります。
(2) デメリット:為替リスク、流動性の違い
為替リスク: 円高が進んだ場合、ADRの円換算価値は下落します。例えば、ADRを30ドルで保有していても、為替レートが1ドル = 150円から140円に円高進行すると、円換算価値は4,500円から4,200円に下落します。
流動性の違い: ADRの取引量は東証株より少ない場合があります。特にOTC市場で取引されるSFTBYは、東証株(9984)より流動性が低く、売買スプレッド(買値と売値の差)が大きくなる可能性があります。
(3) 配当の受取方法と税金
ADRの配当は米ドルで受け取ります。ADRの配当には、米国と日本の両方で税金がかかります。二重課税を調整する外国税額控除という制度もあります。税金の詳細については、税理士や国税庁のウェブサイトをご確認ください。
配当を円転する際に為替レートの影響を受けるため、円高時には円換算の配当金額が減少します。
まとめ:ADRと東証株、どちらを選ぶべきか
ソフトバンクグループのADR(SFTBY)と東証株(9984)は、どちらも同じ企業の株式ですが、取引市場・通貨・取引時間が異なります。
ADRを選ぶべき投資家:
- 米ドル建て資産を増やしたい
- 夜間取引を活用したい
- 円安ヘッジとして米ドル建て資産を保有したい
東証株を選ぶべき投資家:
- 為替リスクを避けたい
- 流動性を重視する(取引量が多い市場で売買したい)
- 円建てで資産を管理したい
どちらを選ぶかは、投資目的と為替見通しによって判断しましょう。投資判断は自己責任で行い、必要に応じて専門家に相談することをおすすめします。
