米国株の値動きを早く知りたいけれど、時間外取引のチャートはどう見ればいいの?
米国株に投資している日本人投資家の多くが、「決算発表後すぐに値動きを確認したい」「翌日の値動きを予測したい」と考えています。しかし、通常の取引時間外の情報をどこで確認すればいいのか分からず、困っている方も多いのではないでしょうか。
この記事では、米国株の時間外取引チャートの見方と活用方法を、日本の証券会社での確認方法も含めて詳しく解説します。
この記事のポイント:
- 時間外取引には「プレマーケット」と「アフターマーケット」の2種類がある
- TradingViewやStockChartsなどのツールで時間外データを表示できる
- 日本ではマネックス証券・moomoo証券が時間外取引に対応(SBI証券は非対応)
- 時間外取引は流動性が低く、価格変動が激しいため注意が必要
- 決算発表や経済指標発表後の値動きを早期に確認できるメリットがある
1. 米国株の時間外取引とは:基本知識を理解する
米国株式市場には、通常の取引時間外にも取引できる「時間外取引」という仕組みがあります。まずは基本知識を押さえておきましょう。
(1) プレマーケットとアフターマーケットの違い
時間外取引は大きく分けて2つの時間帯があります。
プレマーケット(Pre-Market):
- 米国時間: 4:00 a.m. - 9:30 a.m. ET
- 日本時間: 20:00 - 23:30(標準時間)、19:00 - 22:30(夏時間)
- 立会時間前の取引
アフターマーケット(After-Hours):
- 米国時間: 4:00 p.m. - 8:00 p.m. ET
- 日本時間: 6:00 - 10:00(標準時間)、5:00 - 9:00(夏時間)
- 立会時間後の取引
近年、時間外取引の利用が急増しており、2025年1月時点で全米株式取引の11%超を占めています。これは2019年の5%から倍増した数値です。
(2) 時間外取引の取引時間(米国時間・日本時間)
通常の取引時間(立会時間)と時間外取引の関係を整理すると以下のようになります。
通常取引(Regular Trading Hours):
- 米国時間: 9:30 a.m. - 4:00 p.m. ET
- 日本時間: 23:30 - 6:00(標準時間)、22:30 - 5:00(夏時間)
日本時間に換算すると、プレマーケットは日本の夜、アフターマーケットは日本の早朝となります。このため、日本在住の投資家にとっては時差の関係で取引がしやすい時間帯とも言えます。
(3) 通常取引との違い(注文方法・流動性)
時間外取引には通常取引と異なる特徴があります。
注文方法の制限:
- 指値注文のみ可能
- 成行注文・逆指値注文は使用不可
流動性の低さ:
- 参加者が少なく、注文が約定しにくい
- 部分約定となる可能性が高い
価格変動の激しさ:
- 通常取引よりボラティリティが高い
- ニュース発表直後は特に値動きが激しい
これらの特徴を理解した上で、時間外取引を活用することが重要です。
2. 時間外取引チャートの見方:表示方法と読み解き方
時間外取引の値動きを確認するには、チャートツールで時間外データを表示する必要があります。主要なツールでの設定方法を見ていきましょう。
(1) TradingViewでの時間外データ表示方法
TradingViewは世界中で利用されているチャートツールで、時間外データの表示が可能です。
設定手順:
- チャート画面を開く
- チャート右下の「ETH」オプションをクリック(Extended Hours Tradingの略)
- または、設定画面の「Symbol」タブで時間外データを有効化
ETHオプションを有効にすると、通常取引時間外の値動きがチャート上に表示されます。時間外取引のローソク足は、通常取引とは異なる色や透明度で表示されることが多く、視覚的に区別できるようになっています。
(2) その他のチャートツール(StockCharts、TradeStation等)
TradingView以外にも、時間外データを表示できるツールがあります。
StockCharts:
- 設定画面から時間外データ表示を選択可能
- 米国の投資家に広く利用されている
TradeStation:
- プロ向けの高機能ツール
- 時間外データの詳細分析が可能
Interactive Brokers(IBKR):
- 証券会社が提供するチャートツール
- 取引と同時にチャート確認が可能
ツールによって時間外データの表示方法が異なるため、利用前に設定を確認することをおすすめします。
(3) チャート上での時間外取引の識別方法
チャート上で時間外取引を識別するポイントは以下の通りです。
色の違い:
- 通常取引: 通常の色(緑・赤など)
- 時間外取引: 薄い色や異なる色で表示されることが多い
出来高の差:
- 時間外取引は出来高が少ない
- 出来高チャートで視覚的に判断できる
時間帯の確認:
- 米国時間で9:30 a.m.以前、または4:00 p.m.以降の値動きは時間外取引
3. 日本の証券会社での時間外取引対応状況
日本の証券会社で米国株の時間外取引ができるかどうかは、会社によって異なります。2025年時点での主要証券会社の対応状況を確認しておきましょう。
(1) マネックス証券の時間外取引サービス
マネックス証券は、日本の主要ネット証券で唯一、プレマーケット・アフターマーケット取引の両方を提供しています。
サービス概要:
- プレマーケット取引: 対応
- アフターマーケット取引: 対応
- 注文方法: 指値注文のみ
- 取引手数料: 通常取引と同じ(詳細はマネックス証券の公式サイトでご確認ください)
時間外取引を積極的に活用したい投資家にとって、マネックス証券は有力な選択肢となります。
(2) moomoo証券の24時間取引サービス
moomoo証券は、約6,000銘柄で24時間取引が可能なサービスを提供しています。
サービス概要:
- 対象銘柄: 約6,000銘柄
- 取引時間: ほぼ24時間(プレマーケット・通常取引・アフターマーケット)
- 株価チャート: リアルタイムで価格変動を確認可能
2024年5月22日には、NVIDIA(NVDA)が予想を上回る決算を発表し、時間外取引で約7%上昇しました。moomoo証券のユーザーは、こうした値動きをリアルタイムで確認し、取引することができました。
(3) SBI証券・楽天証券の対応状況
一方、日本の主要ネット証券であるSBI証券と楽天証券は、現在のところ時間外取引に対応していません。
SBI証券:
- プレマーケット取引: 非対応
- アフターマーケット取引: 非対応
- チャート確認: 外部ツール(TradingView等)を利用
楽天証券:
- プレマーケット取引: 非対応
- アフターマーケット取引: 非対応
- チャート確認: 外部ツール(TradingView等)を利用
これらの証券会社を利用している場合は、時間外取引の値動きをチャートで確認することはできますが、実際の取引はできません。
4. 時間外取引チャートの活用方法
時間外取引チャートは、通常取引の前後の値動きを把握し、投資判断に活かすことができます。具体的な活用方法を見ていきましょう。
(1) 決算発表後の価格変動を確認する
米国企業の多くは、立会時間終了後(4:00 p.m. ET以降)に決算を発表します。時間外取引チャートを見れば、決算内容に対する市場の初期反応を確認できます。
活用例:
- 好決算発表後、時間外取引で株価が上昇 → 翌日の立会時間でも上昇が継続する可能性
- 悪材料発表後、時間外取引で株価が下落 → 翌日の立会時間で損切りを検討
時間外取引で購入できる証券会社を利用している場合、好決算発表後に時間外取引で購入すれば、翌日の立会時間の始値より安く買える可能性があります。
(2) 重要な経済指標発表時の値動きをチェック
雇用統計やFRBの政策金利発表など、重要な経済指標は立会時間外に発表されることもあります。時間外取引チャートで市場の反応を確認できます。
チェックすべき経済指標:
- 雇用統計(米国時間8:30 a.m. ET発表、日本時間22:30)
- CPI(消費者物価指数)
- FOMC(連邦公開市場委員会)の政策金利発表
これらの指標発表後、プレマーケット取引で株価や株価指数先物がどう動いたかを確認することで、その日の市場のトレンドを予測できます。
(3) 翌日の立会時間の値動きを予測する
時間外取引の値動きは、翌日の立会時間の値動きに影響を与えることが多いと言われています。
予測のポイント:
- プレマーケットで大きく上昇 → 立会時間の始値が高くなる可能性
- アフターマーケットで大きく下落 → 翌日の立会時間で売り圧力が強まる可能性
ただし、時間外取引の流動性は低いため、立会時間で逆方向に動くこともあります。あくまで参考情報として活用し、断定的な判断は避けるべきです。
5. 時間外取引の注意点とリスク
時間外取引には通常取引とは異なるリスクがあります。米国証券取引委員会(SEC)も時間外取引のリスクについて注意喚起を行っています。
(1) 流動性の低さと約定リスク
時間外取引は参加者が少ないため、流動性が低くなります。
主なリスク:
- 注文が約定しない可能性が高い
- 部分約定となり、希望数量を売買できないことがある
- 大口注文は特に約定しにくい
SECの公式文書でも、「時間外取引では流動性が低く、希望する価格・数量で取引できない可能性がある」と明記されています。
(2) 価格変動の激しさ(ボラティリティ)
参加者が少ないため、少量の取引でも価格が大きく変動することがあります。
リスクの例:
- ニュース発表直後に急騰・急落することがある
- 想定外の損失が発生する可能性
- 通常取引と比べてボラティリティが高い
2025年のCboeの分析によると、時間外取引量は急増していますが、依然として通常取引と比べると流動性は低く、価格変動が激しい傾向があると指摘されています。
(3) ビッド・アスク・スプレッドの拡大
流動性が低いと、買値(ビッド)と売値(アスク)の差額が広がります。
スプレッド拡大のデメリット:
- 実際の市場価格が判断しにくい
- 不利な価格で約定する可能性が高い
- 取引コストが実質的に増加する
Charles Schwabなどの米国証券会社も、時間外取引では「ビッド・アスク・スプレッドが拡大し、不利な価格で約定するリスクがある」と説明しています。
6. まとめ:時間外チャートを活用した投資判断
米国株の時間外取引チャートは、決算発表や経済指標発表後の値動きを早期に確認できる便利なツールです。しかし、流動性の低さや価格変動の激しさといったリスクも理解しておく必要があります。
この記事の要点:
- 時間外取引はプレマーケット(立会前)とアフターマーケット(立会後)の2種類
- TradingViewなどのツールでETHオプションを有効にすれば時間外データを表示できる
- 日本ではマネックス証券・moomoo証券が時間外取引に対応(SBI証券・楽天証券は非対応)
- 時間外取引は流動性が低く、価格変動が激しいため注意が必要
- 決算発表後の市場反応を早期に確認できるメリットがある
次のアクション:
- TradingViewなどのチャートツールで時間外データ表示を設定する
- 時間外取引を利用する場合は、マネックス証券やmoomoo証券の口座開設を検討する
- 時間外取引のリスクを十分に理解した上で、少額から始める
- 重要な決算発表や経済指標発表のスケジュールを確認する
時間外取引チャートは投資判断の参考情報として活用し、リスクを理解した上で慎重に取引を行いましょう。投資判断は自己責任で行ってください。
