米国株の決算発表が投資判断に重要な理由
米国株に投資している方の多くが、決算発表のタイミングで株価が大きく動くことに驚かれます。「なぜこんなに変動するのか」「決算情報をどう活用すればよいのか」といった疑問を持つ方も少なくありません。
米国株では、企業の業績発表が株価に直接的な影響を与えます。特に、アナリスト予想を上回るか下回るかが市場の注目点となります。決算発表を理解することは、投資判断の精度を高めるために欠かせません。
この記事では、米国株の決算発表の仕組み、スケジュールの確認方法、注目すべき指標、そして投資への活用法を初心者向けに解説します。
この記事のポイント:
- 米国株は年4回の四半期決算を発表し、値幅制限がないため株価変動が大きい
- 決算カレンダー(TradingView、楽天証券、SBI証券等)で発表日を確認できる
- EPS、売上高、ガイダンスの3つが市場予想を上回っているかを確認する
- 決算書類(8-K、10-Q、10-K)は企業のIRページまたはSEC EDGARで入手可能
- 決算前後の株価変動リスクを理解し、長期的な視点で活用する
米国株の決算発表の仕組み
(1) 四半期決算と年次決算のスケジュール
米国株では、企業が年4回の四半期決算を発表することが一般的です。四半期決算は、1月〜3月(Q1)、4月〜6月(Q2)、7月〜9月(Q3)、10月〜12月(Q4)の各期間の業績を報告します。
年次決算(年度末決算)は、通常Q4の決算発表と同時に行われます。決算発表のタイミングは企業ごとに異なりますが、決算期末から約1ヶ月〜1ヶ月半後に発表されることが多いです。
(2) 日本株との違い:値幅制限がない米国株の特徴
日本株では1日の株価変動幅に制限(値幅制限)が設けられていますが、米国株には値幅制限がありません。そのため、決算発表の内容次第で1日で株価が10%以上変動することもあります。
この特徴は、決算発表後の株価変動リスクが日本株よりも大きいことを意味します。ポジティブサプライズ(予想を上回る好決算)があれば大幅な上昇も期待できますが、逆に予想を下回る決算(ネガティブサプライズ)の場合は大幅な下落リスクもあります。
(3) 決算書類の種類(8-K、10-Q、10-K)
米国企業は、決算発表時にいくつかの書類をSEC(米国証券取引委員会)に提出します。個人投資家が注目すべき書類は以下の3種類です。
- 8-K(Current Report): 決算速報。決算発表時に即座に提出される重要な企業情報
- 10-Q(Quarterly Report): 四半期報告書。年3回提出(Q1、Q2、Q3)
- 10-K(Annual Report): 年次報告書。年1回提出(Q4)
これらの書類は、企業のIRページまたはSEC EDGARで無料で閲覧できます。
決算スケジュールの確認方法
(1) 決算カレンダーツールの活用(TradingView、楽天証券、SBI証券等)
決算発表日を事前に確認するには、決算カレンダーツールが便利です。主要なツールは以下の通りです。
- TradingView: 今週の決算スケジュールや過去の決算結果を確認できます
- 楽天証券: 外国株式決算カレンダーで主要企業の決算発表日を確認できます
- SBI証券: マーケット情報から米国株の決算スケジュールを確認できます
- moomoo証券: 決算カレンダー機能で発表日を追跡できます
これらのツールを活用することで、注目銘柄の決算発表日を事前に把握し、投資判断の準備ができます。
(2) 企業のIRページでの確認方法
企業の公式サイトにあるIR(Investor Relations)ページでは、決算発表日や決算書類を直接入手できます。多くの企業は、決算発表日の数週間前に「Earnings Call Date」として発表します。
また、決算発表と併せて、企業は財務実績をより簡潔で読みやすい形式にまとめたプレスリリースを発行します。プレスリリースは、決算書類よりも読みやすく、要点が整理されているため、初心者には特におすすめです。
(3) 日本時間での発表タイミングの確認
米国株の決算発表は、米国時間の取引前(Pre-Market)または取引後(After-Market)に行われることが一般的です。日本時間では、米国の取引前は日本時間の夜(午後9時〜午後11時頃)、取引後は日本時間の早朝(午前5時〜午前7時頃)に相当します。
時差を考慮して、決算発表のタイミングを事前に確認しておくことが重要です。
決算情報の見方:注目すべき3つの指標
(1) EPS(1株当たり利益)とアナリスト予想との比較
EPS(Earnings Per Share)は、企業の純利益を発行済株式総数で割った指標です。EPSは企業の収益力を示す基本的な指標であり、投資家が最も注目する数値の一つです。
決算発表時には、実際のEPSがアナリスト予想(コンセンサス)を上回っているか(Beat)、下回っているか(Miss)を確認します。EPSが予想を上回ると株価は上昇しやすく、下回ると下落しやすい傾向があります。
(2) 売上高(Revenue)の成長性
売上高(Revenue)は、企業が商品やサービスの販売から得た総収入を示します。売上高は企業の収益力を示す基本的な指標であり、成長性を判断する重要な要素です。
売上高がアナリスト予想を上回っているかどうか、また前年同期比でどれくらい成長しているかを確認します。売上高が伸びていても、利益が伴わない場合は注意が必要です。
(3) ガイダンス(業績予想)の内容
ガイダンス(Guidance)は、企業が発表する将来の業績見通しです。ガイダンスには、次の四半期や年度の売上高、利益、EPSの予想が含まれます。
ガイダンスが市場予想を下回ると、たとえ当期の決算が好調でも株価が下落することがあります。市場は将来の成長性を重視するため、ガイダンスの内容は非常に重要です。
決算情報を投資に活かす方法と注意点
(1) 決算前後の株価変動リスク
決算発表前後は株価が大きく変動するため、短期的な売買にはリスクが伴います。決算発表前にポジションを持つ場合は、予想外の結果による損失リスクを理解しておく必要があります。
初心者の場合は、決算発表前に売買を控えるか、長期的な視点で投資することをおすすめします。
(2) アナリスト予想(コンセンサス)の活用法
アナリスト予想(コンセンサス)は、複数のアナリストによる業績予想を平均した数値です。コンセンサスは市場の期待値を示す指標として参考になりますが、実際の市場反応は予想との乖離の大きさや投資家心理にも左右されます。
アナリスト予想はあくまで参考情報であり、絶対的なものではない点に注意が必要です。
(3) 長期投資家向けの決算情報の見方
長期投資家にとって、決算情報は企業の成長性や財務健全性を確認する重要な機会です。短期的な株価変動よりも、売上高の成長率、利益率の推移、キャッシュフローの健全性に注目します。
2025年のS&P 500のEPS成長率予想は前年比+14.3%とされており、セクター別では情報技術が+21.1%、一般消費財が+11.9%、通信サービスが+14.6%の成長が見込まれています(※三井住友DSアセットマネジメント、2024年12月時点)。こうしたマクロトレンドも参考にしながら、長期的な視点で投資判断を行うことが重要です。
まとめ:決算情報を賢く活用するために
米国株の決算発表は、投資判断に欠かせない重要な情報源です。決算カレンダーで発表日を確認し、EPS、売上高、ガイダンスの3つの指標に注目することで、企業の業績と市場の期待を理解できます。
決算発表前後の株価変動リスクを理解し、短期的な売買ではなく、長期的な視点で投資に活かすことが成功の鍵です。
次のアクション:
- 決算カレンダーツール(TradingView、楽天証券、SBI証券等)で注目銘柄の決算発表日を確認する
- 企業のIRページやSEC EDGARで決算書類を入手する
- 決算発表後の株価変動を冷静に分析し、長期的な投資判断に活かす
決算情報を賢く活用し、米国株投資の精度を高めましょう。
