0. この記事でわかること
本記事では、トレード・デスク(TTD)について以下の情報を提供します:
- なぜ注目されているのか: デジタル広告のプログラマティック取引プラットフォームを提供する独立系DSP(デマンドサイドプラットフォーム)のリーダー。CTV(コネクテッドTV)広告市場で「最大・最速成長チャネル」として9,000万世帯・1.2億端末にリーチ。Kokaiプラットフォーム全面展開とUnified ID 2.0エコシステム拡大で技術優位性を確立
- 事業内容と成長戦略: 広告代理店のみに特化し、広告主側の利益を代表する中立的な立場が差別化要因。GoogleやMetaなど広告主とメディアを両方抱える垂直統合モデルと異なり、競合回避と透明性で信頼を獲得。AI駆動Kokaiプラットフォームで1秒間1,300万件のインプレッション分析、CPA削減を実現
- 競合との差別化: Google DV360、Amazon DSPなどの競合に対し、独立性・Unified ID 2.0・Kokaiプラットフォームで差別化。Netflix、Disney+、Rokuなど主要ストリーミングサービスとの提携強化でCTV市場を拡大
- 財務・配当の実績: 2024年通期でプラットフォーム支出120億ドル、売上24億ドル(26%増)、調整後EBITDA 10億ドル超、フリーキャッシュフロー6億ドル超。現金17億ドル・無借金で財務健全。ただし無配方針のためキャピタルゲイン狙いの投資
- リスク要因: 上場以来初のガイダンス未達(Q4 2024)で株価26%急落、2025年初来63%下落。Q3 2025ガイダンス14%成長(大幅減速)、Kokaiプラットフォーム不満でクライアント流出懸念、競争激化(Google・Amazon)、利益率圧力
※投資判断はご自身の責任で行ってください。
1. なぜトレード・デスク(TTD)が注目されているのか
(1) 成長戦略の3つのポイント
トレード・デスクは、デジタル広告市場の成長とプログラマティック広告の普及を追い風に、3つの成長戦略を推進しています。
第一に、Kokaiプラットフォームの全面展開です。2025年中に全クライアントへの移行を完了する予定で、Kokai AIツールは既に3分の2のクライアントが利用しています。キャンペーン管理を簡素化し、CPA(顧客獲得単価)削減を実現しています。Kokaiプラットフォームは1秒間に1,300万件の広告インプレッションを分析し、最適なタイミング・ユーザー・広告配信を実現します(出典: Invezz「Trade Desk outlines 2025 strategy to fix past mistakes」)。
第二に、Unified ID 2.0(UID2)のエコシステム拡大です。既に2,000以上のパブリッシャーが採用しており、クッキーレス時代のプライバシー重視アプローチで差別化しています(出典: Invezz)。暗号化されたメールアドレス・電話番号データで安全な識別標準を構築し、クッキー廃止後の業界標準として確立を目指しています。
第三に、コネクテッドTV(CTV)への戦略的注力です。CTVをトレード・デスク最大・最速成長チャネルと位置づけ、9,000万世帯・1.2億CTV端末にリーチしています。Warner Bros. Discovery、The Guardianなどと OpenPath経由でパートナーシップを拡大し、NY Postでは在庫充填率8.6倍・売上97%増を実現しました(出典: Invezz)。
(2) 注目テーマ(Kokai AIプラットフォーム・Unified ID 2.0・コネクテッドTV)
投資家が注目するテーマは以下の3つです。
Kokai AIプラットフォーム(全クライアント移行): Kokaiは「Koa™」とも呼ばれ、AI駆動の最適化機能を提供します。1秒間1,300万件のインプレッション分析により、最適なタイミングでユーザーに広告を配信し、CPA削減を実現します。2025年中に全クライアント移行を完了予定ですが、一部クライアントから不満の声が上がっており、Google・Amazonなどの競合を試行する動きもあります(詳細は後述のリスク要因を参照)。
Unified ID 2.0(2,000以上パブリッシャー採用): Googleのサードパーティクッキー廃止(2024年延期、将来的な廃止は確実)に対応するため、トレード・デスクはUnified ID 2.0を開発しました。暗号化されたメールアドレス・電話番号を使用してユーザーを識別し、広告ターゲティングと効果測定を可能にします。2,000以上のパブリッシャーが採用しており、クッキーレス時代の業界標準として確立しつつあります(出典: Strainer「独自の成長を続ける米アドテク企業『トレードデスク』その事業モデルとは」)。
コネクテッドTV(最大・最速成長チャネル): CTV広告市場は急成長しており、Netflix、Disney+、Hulu、Rokuなどの主要ストリーミングサービスが広告付きプランを導入しています。トレード・デスクは9,000万世帯・1.2億CTV端末にリーチし、Disney・Roku・Netflixなどとの提携を強化しています(出典: The Trade Desk「Q2 2025 Earnings Report」)。CTV広告市場の拡大がトレード・デスクの成長を牽引しています。
(3) 投資家の関心・懸念点
投資家の関心は、デジタル広告市場の成長性とトレード・デスクの技術優位性です。2024年通期の実績は以下の通りです。
- プラットフォーム支出120億ドル
- 売上24億ドル(26%増)
- 調整後EBITDA 10億ドル超
- フリーキャッシュフロー6億ドル超
- 現金17億ドル・無借金
(出典: The Trade Desk「Q2 2025 Earnings Report」)
最新の業績ハイライト(Q2 2025):
- 売上6.94億ドル(19%増)
- EPS 0.41ドル(アナリスト予想0.34ドルを20.59%上回る)
- 調整後EBITDA 2.71億ドル(売上の39%)
(出典: The Trade Desk「Q2 2025 Earnings Report」)
一方で、投資家の懸念も深刻化しています。
上場以来初のガイダンス未達: Q4 2024でトレード・デスクは上場以来初めてガイダンス(業績見通し)を下回り、株価が26%急落しました(出典: DIGIDAY「通年で増収も目標を下回った トレードデスク」)。時価総額が大幅に減少し、投資家信頼が揺らいでいます。
成長の大幅減速: Q3 2025ガイダンスは売上7.17億ドル(14%増、政治広告除外で18%)で、従来の20%超成長から大幅に減速しました。調整後EBITDAマージンも41%から39%へ低下し、利益率圧力が顕在化しています(出典: The Fool「Investors Might Finally Know Why The Trade Desk's Growth Has Slowed So Much」)。
Kokaiプラットフォームへの不満: 新プラットフォーム導入により、一部クライアントが競合(Google・Amazon)を試行しています。CTV・リテールメディアでの競争優位性後退が「プレミアムステータス維持能力」への疑問を招いています(出典: The Fool)。
株価大幅下落: 2025年初来で株価は63%下落し、S&P500で最悪のパフォーマンスを記録しました(出典: The Fool)。高成長・高バリュエーションの期待が裏切られ、投資家心理が悪化しています。
証券詐欺調査: Pomerantz法律事務所が証券詐欺等の違法行為調査を開始しており、訴訟・評判リスクが投資家心理に影響しています(出典: The Fool)。
将来見通し: アナリスト33名の平均目標株価は88.18ドル(コンセンサス「買い」)で、売上年率17~24%成長(2026年まで20%超成長)、EPS年率27.7%成長(ソフトウェア業界平均14.55%を大幅超過)が予測されています(出典: Stock Analysis「The Trade Desk (TTD) Stock Forecast & Analyst Price Targets」)。ただし、Q4 2024未達とQ3 2025弱ガイダンスにより、成長持続性への疑問が再燃しています。
CEO Jeff Greenは15項目改革計画(Kokai移行加速、広告サプライチェーン透明性・効率化、Sincera買収でデータ洞察強化、Salesforce出身Vivek KundraをCOO任命)で再起を図っています(出典: Invezz)。
2. トレード・デスクの事業内容・成長戦略
(1) 主力事業(DSP・プログラマティック広告)
トレード・デスクは**DSP(デマンドサイドプラットフォーム)**を提供する企業です。DSPとは、広告主・広告代理店が複数の広告枠をリアルタイム入札(RTB: Real-Time Bidding)で効率的に購入できるシステムです。
トレード・デスクのプラットフォームは、CTV(コネクテッドTV)、動画、ディスプレイ、音声、ネイティブ広告など、多様な広告フォーマットに対応しています。クラウドベースの統合キャンペーン管理により、複数チャネルを一元管理できることが強みです(出典: The Trade Desk Official Website)。
収益モデル: トレード・デスクはプラットフォームで管理される広告支出の一定割合を収益として得ます。高度分析ツールなどプレミアムサービスで追加収益も得ています。2024年通期のプラットフォーム支出は120億ドルで、売上24億ドルを生み出しました。
技術優位性:
- 独立アイデンティティソリューション(UID2): クッキーレス時代の識別標準として業界で採用拡大
- AI駆動最適化(Koa™): 1秒間1,300万件のインプレッション分析で最適配信
- カスタムアルゴリズム機能: 広告主ごとに最適化されたアルゴリズムでCPA削減
- シームレスなクロスチャネルターゲティング: CTV・動画・ディスプレイ・音声を統合管理
(出典: The Trade Desk Official Website)
(2) セクター・業種の説明(Information Technology - Software)
トレード・デスクはInformation Technology(情報技術)セクターのSoftware(ソフトウェア)業種に分類されます。デジタル広告市場は2023年に10.5%成長して6,270億ドルに達し、2026年まで成長継続が予測されています(出典: note「ザ・トレードデスクの5年後の姿」)。
デジタル広告市場の成長ドライバーは以下の通りです。
- CTV・eコマースへの消費者行動シフト: ストリーミングサービスとオンラインショッピングの普及により、デジタル広告需要が拡大
- プログラマティック広告の普及: 自動化・データ駆動による広告効率化が進展
- クッキー廃止への対応: プライバシー重視の識別技術(UID2等)が新たな標準に
トレード・デスクは広告費に占める比率を2023年の7.8%から2026年には11.7%へ拡大すると予測されています(出典: note)。
(3) ビジネスモデルの特徴(広告代理店特化・独立性)
トレード・デスクのビジネスモデルには2つの独自性があります。
広告代理店のみに特化、広告主と直接取引せず競合回避: トレード・デスクは広告代理店のみにサービスを提供し、広告主と直接取引しません。これにより、ブランド顧客を巡ってエージェンシーと競わない戦略を採用しています。運用業務・必要ツールをプラットフォーム上に集約し、代理店が一元管理できる環境を提供しています(出典: Strainer)。
独立性による中立的な立場: GoogleやMetaなど、広告主とメディアを両方抱える垂直統合モデルと異なり、トレード・デスクは広告主側の利益を代表する中立的な立場を取ります。2019年9月に「Media for Humankind」キャンペーンを展開し、Google・Facebookの代替として「より透明なデジタル広告」を訴求しました(出典: The Trade Desk Official Website)。
この独立性により、広告主は利益相反のないプラットフォームとして信頼し、透明性の高い広告運用を実現できます。トレード・デスクは世界最大の独立DSPとしての地位を確立しています。
長期的な財務実績: 2016年IPO以来、売上1,930%増、純利益567%増を達成し、2013年から一貫して黒字を維持しています(出典: Strainer)。
3. 競合との差別化
(1) 主要競合企業(Google DV360・Amazon DSP・MediaMath)
トレード・デスクの主要競合は以下の企業です。
Google DV360(Display & Video 360): Googleのプログラマティック広告プラットフォームで、YouTubeやGoogle広告ネットワークと連携しています。垂直統合モデルによる広範なリーチが強みですが、利益相反の懸念があります。
Amazon DSP: Amazonのプログラマティック広告プラットフォームで、eコマースデータを活用したターゲティングが強みです。特にリテールメディアとCTV広告で競争が激化しています。
MediaMath(破綻): かつての主要競合でしたが、2023年に破産申請し市場から退出しました。これによりトレード・デスクの市場シェア拡大の機会が生まれました。
(2) 競合優位性(独立性・UID2・Kokaiプラットフォーム)
トレード・デスクの競合優位性は以下の3点です。
独立性: GoogleやMetaなど広告主とメディアを両方抱える垂直統合モデルと異なり、トレード・デスクは広告主側の利益を代表する中立的な立場を取ります。利益相反がなく、透明性の高い広告運用を提供できることが最大の差別化要因です。Google・Facebookと連携しつつ、Netflix・ESPN・CBS等の主要TV向けプラットフォーム・放送局とも提携済みです(出典: Strainer)。
Unified ID 2.0: クッキー廃止後の代替技術として、暗号化されたメールアドレス・電話番号を使用してユーザーを識別します。プライバシーを重視しつつ広告ターゲティング・効果測定を可能にし、2,000以上のパブリッシャーが採用する業界標準となっています(出典: Strainer)。
Kokaiプラットフォーム: AI駆動の最適化機能により、1秒間1,300万件のインプレッション分析を行い、最適なタイミングでユーザーに広告を配信します。CPA削減とキャンペーン管理の簡素化を実現し、既に3分の2のクライアントが利用しています(出典: Invezz)。
(3) 市場でのポジショニング(世界最大の独立DSP)
トレード・デスクは「世界最大の独立DSP」として、プログラマティック広告市場で確固たる地位を築いています。独立性を武器に、広告主と代理店からの信頼を獲得し、透明性の高い広告運用を提供しています。
CTV市場でのリーダーシップ: トレード・デスクは9,000万世帯・1.2億CTV端末にリーチし、Disney・Roku・Netflixなどの主要ストリーミングサービスと提携しています。Warner Bros. Discovery、The GuardianなどとOpenPath経由でパートナーシップを拡大し、NY Postでは在庫充填率8.6倍・売上97%増を実現しました(出典: Invezz)。
ただし、競争環境は厳しさを増しています。Google・Amazonとの競争激化により、CTV・リテールメディアでの競争優位性が後退しているとの指摘があります(出典: The Fool)。Kokaiプラットフォームへの不満でクライアントが競合を試行する動きもあり、「プレミアムステータス維持能力」への疑問が浮上しています。
4. 財務・配当の実績
(1) 売上高・利益の推移(Q2 2025実績含む)
トレード・デスクの財務実績は、長期的には高成長を維持しています。
2024年通期実績:
- プラットフォーム支出120億ドル超
- 売上24億ドル(26%増)
- 調整後EBITDA 10億ドル超
- フリーキャッシュフロー6億ドル超
- 現金17億ドル・無借金
(出典: The Trade Desk「Q2 2025 Earnings Report」)
Q2 2025実績:
- 売上6.94億ドル(19%増)
- EPS 0.41ドル(アナリスト予想0.34ドルを20.59%上回る)
- 調整後EBITDA 2.71億ドル(売上の39%)
(出典: The Trade Desk「Q2 2025 Earnings Report」)
Q3 2025ガイダンス:
- 売上最低7.17億ドル(14%増、政治広告除外で18%)
- 調整後EBITDAマージン39%(Q2 2024の41%から低下)
(出典: The Fool)
長期実績: 2016年IPO以来、売上1,930%増、純利益567%増を達成し、2013年から一貫して黒字を維持しています(出典: Strainer)。
課題: Q4 2024で上場以来初のガイダンス未達により株価が26%急落し、Q3 2025ガイダンスは14%成長(大幅減速)を示しました。調整後EBITDAマージンも41%から39%へ低下し、利益率圧力が顕在化しています。
(2) 配当履歴(無配方針・成長投資優先)
トレード・デスクは無配方針を採用しており、配当利回りは0%です。配当を支払わず、利益を成長投資(技術開発、M&A、市場拡大)に再投資する方針です。
そのため、トレード・デスクへの投資はキャピタルゲイン(株価上昇益)狙いとなります。配当収入を期待する投資家には不向きですが、成長性を重視する投資家には魅力的です。
フリーキャッシュフロー6億ドル超を戦略投資と自社株買いに活用しています(出典: The Trade Desk「Q2 2025 Earnings Report」)。
(3) 財務健全性(現金17億ドル・無借金)
トレード・デスクの財務健全性は非常に良好です。
現金17億ドル・無借金: 財務ポジションは強固で、負債より現金が多く、戦略投資や自社株買いに活用できる余力があります(出典: The Trade Desk「Q2 2025 Earnings Report」、note)。
売上総利益率81.29%: 高い売上総利益率を維持しており、ソフトウェアビジネスの高収益性を示しています(出典: note)。
フリーキャッシュフロー6億ドル超: 営業キャッシュフローから設備投資を差し引いても潤沢なキャッシュを生み出しており、成長投資や株主還元(自社株買い)の原資となっています。
トレード・デスクは、強固な財務基盤と高い収益性により、成長投資を継続できる余力があります。ただし、Q3 2025ガイダンスで調整後EBITDAマージンが41%から39%へ低下しており、利益率圧力が懸念されています。Bank of Americaは「営業費用が売上増を上回るペース増加」「EBITマージン見通し4%超過大」と警告しています(出典: DIGIDAY)。
※2025年10月時点のデータです。最新情報はThe Trade Desk Inc公式IRページをご確認ください。
5. リスク要因
(1) 事業リスク(初のガイダンス未達・成長減速・Kokai不満)
トレード・デスクの事業リスクは以下の通りです。
上場以来初のガイダンス未達: Q4 2024で上場以来初めてガイダンス(業績見通し)を下回り、株価が26%急落しました(出典: DIGIDAY)。時価総額が大幅に減少し、投資家信頼が揺らいでいます。ガイダンス未達は企業の信頼性に大きな影響を与え、株価の大幅調整を招きます。
成長の大幅減速: Q3 2025ガイダンスは売上7.17億ドル(14%増、政治広告除外で18%)で、従来の20%超成長から大幅に減速しました(出典: The Fool)。アナリストは「20%超長期成長の持続性」に懸念を表明しており、Bank of Americaは二段階格下げを実施しました。
Kokaiプラットフォームへの不満とクライアント流出懸念: 新プラットフォーム導入により、一部クライアントが競合(Google・Amazon)を試行しています(出典: The Fool)。Kokai移行が2025年に全クライアント完了予定ですが、不満が解消されない場合、クライアント流出リスクがあります。
株価大幅下落: 2025年初来で株価は63%下落し、S&P500で最悪のパフォーマンスを記録しました(出典: The Fool)。高成長・高バリュエーションの期待が裏切られ、投資家心理が悪化しています。
(2) 市場環境リスク(競争激化・プログラマティック広告市場成長鈍化)
競争激化: Google・Amazonとの競争が激化しており、CTV・リテールメディアでの競争優位性が後退しているとの指摘があります(出典: The Fool)。特にAmazonはeコマースデータを活用したターゲティングでリテールメディア市場を拡大しており、トレード・デスクの「プレミアムステータス維持能力」への疑問が浮上しています。
プログラマティック広告市場成長鈍化: プログラマティック広告購入市場の成長が予想より遅い場合、トレード・デスクの成長にも影響します(出典: Stock Analysis)。デジタル広告市場は2026年まで成長継続が予測されていますが、景気後退や広告費削減があれば、市場全体が冷え込むリスクがあります。
為替リスク: トレード・デスク株は米ドル建てで取引されるため、円高・円安の影響を受けます。円高局面では円換算の株価が減少し、円安局面では増加します。為替手数料も証券会社により異なるため(片道0.25円/ドル程度)、取引コストを考慮する必要があります。
(3) 規制・競争リスク(CTV競争・利益率圧力・証券詐欺調査)
CTV競争リスク: CTV広告市場は高成長が見込まれますが、Amazon等の競合との競争も激化しています(出典: Stock Analysis)。Netflix、Disney+、Rokuなどのストリーミングサービスとの提携を維持・拡大できるかが鍵です。
利益率圧力: Bank of Americaは「営業費用が売上増を上回るペース増加」「EBITマージン見通し4%超過大、売上成長見通し2-3%積極的過ぎ」と警告しています(出典: DIGIDAY)。Q3 2025ガイダンスで調整後EBITDAマージンが41%から39%へ低下しており、利益率圧力が顕在化しています。コスト管理に失敗すれば収益性が悪化します。
証券詐欺調査リスク: Pomerantz法律事務所が証券詐欺等の違法行為調査を開始しています(出典: The Fool)。訴訟・評判リスクが投資家心理に影響し、株価にマイナス影響を与える可能性があります。
プライバシー規制: GDPR(EU一般データ保護規則)、CCPA(カリフォルニア州消費者プライバシー法)などのプライバシー規制が強化されれば、広告ターゲティングの精度が低下するリスクがあります。ただし、トレード・デスクはUID2によりプライバシー重視のアプローチを採用しており、規制対応力は高いと評価されています。
6. まとめ:投資判断のポイント
(1) この銘柄の強み(CTV成長・UID2エコシステム・Kokaiプラットフォーム)
トレード・デスクの強みは以下の3点です。
CTV市場での成長: CTV広告市場は急成長しており、トレード・デスクは9,000万世帯・1.2億CTV端末にリーチし、Disney・Roku・Netflixなどの主要ストリーミングサービスと提携しています。CTVを「最大・最速成長チャネル」と位置づけ、継続的な成長を見込んでいます。
Unified ID 2.0エコシステム: クッキー廃止後の代替技術として、2,000以上のパブリッシャーが採用する業界標準を確立しています。プライバシーを重視しつつ広告ターゲティング・効果測定を可能にし、競合との差別化要因となっています。
Kokaiプラットフォーム: AI駆動の最適化機能により、1秒間1,300万件のインプレッション分析を行い、CPA削減とキャンペーン管理の簡素化を実現しています。2025年全クライアント移行完了予定で、技術優位性を強化します。
(2) リスク要因(再掲)
一方で、以下のリスク要因に注意が必要です。
上場以来初のガイダンス未達・成長減速: Q4 2024で初未達、株価26%急落。Q3 2025ガイダンス14%成長(大幅減速)で投資家信頼が揺らいでいます。
Kokaiプラットフォーム不満でクライアント流出懸念: 一部クライアントが競合(Google・Amazon)を試行しており、移行完了が遅れれば成長鈍化リスクがあります。
競争激化・利益率圧力: Google・Amazonとの競争激化、調整後EBITDAマージン41%→39%低下で収益性悪化懸念があります。
(3) 向いている投資家(グロース志向・デジタル広告市場成長期待・高リスク許容)
トレード・デスクは以下のタイプの投資家に向いています。
グロース株志向の投資家: デジタル広告市場の成長とプログラマティック広告の普及を期待し、長期的な株価上昇を狙う投資家に適しています。無配方針のためキャピタルゲイン狙いの投資となります。
デジタル広告市場の成長を期待する投資家: CTV広告市場の急成長、クッキーレス時代のUID2エコシステム拡大など、デジタル広告市場の構造変化を追い風と捉える投資家に向いています。
高リスクを許容できる投資家: ガイダンス未達、成長減速、Kokai不満、競争激化など、複数のリスク要因があります。株価は2025年初来63%下落しており、高いボラティリティ(変動性)に耐えられる投資家向けです。
免責事項: 本記事は情報提供を目的としており、個別銘柄の推奨ではありません。投資判断はご自身の責任で行ってください。トレード・デスクはガイダンス未達と成長減速により株価が大幅下落しており、高リスク銘柄です。
※2025年10月時点の情報に基づいています。最新情報はThe Trade Desk Inc公式IRページ、SEC EDGAR、各証券会社の情報をご確認ください。
Q: トレード・デスクの配当利回りは?
A: トレード・デスクは無配方針を採用しており、配当利回りは0%です。配当を支払わず、利益を成長投資(技術開発、M&A、市場拡大)に再投資する方針のため、投資はキャピタルゲイン(株価上昇益)狙いとなります。配当収入を期待する投資家には不向きですが、成長性を重視する投資家には魅力的です。フリーキャッシュフロー6億ドル超を戦略投資と自社株買いに活用しています。
Q: トレード・デスクの主な競合は?
A: Google DV360、Amazon DSP、MediaMath(破綻)などが主要競合です。トレード・デスクは独立性・Unified ID 2.0・Kokaiプラットフォームで差別化しています。GoogleやMetaなど広告主とメディアを両方抱える垂直統合モデルと異なり、トレード・デスクは広告主側の利益を代表する中立的な立場を取ります。これにより利益相反がなく、透明性の高い広告運用を提供できることが最大の差別化要因です。
Q: トレード・デスクのリスク要因は?
A: 上場以来初のガイダンス未達(Q4 2024)で株価26%急落、2025年初来63%下落。Q3 2025ガイダンス14%成長(大幅減速)、Kokaiプラットフォーム不満でクライアント流出懸念、競争激化(Google・Amazon)、調整後EBITDAマージン低下(41%→39%)で利益率圧力、証券詐欺調査などがあります。Bank of Americaは「営業費用が売上増を上回るペース増加」「EBITマージン見通し4%超過大、売上成長見通し2-3%積極的過ぎ」と警告しています。詳細は本文のリスク要因セクションを参照してください。
Q: トレード・デスクは長期投資に向いている?
A: グロース志向・デジタル広告市場の成長を期待し、高リスクを許容できる投資家に向いています。CTV広告市場の急成長、UID2エコシステム拡大、Kokaiプラットフォーム全面展開など、長期的な成長ドライバーがあります。ただしガイダンス未達と成長減速により株価が大幅下落しており、高いボラティリティ(変動性)に耐えられる投資家向けです。無配方針のためキャピタルゲイン(株価上昇益)狙いの投資となります。投資判断はご自身で行ってください。