0. この記事でわかること
本記事では、オクシデンタル・ペトロリアム(OXY)について以下の情報を提供します:
- なぜ注目されているのか: 米国独立系石油大手でパーミアン盆地に強み、バークシャー・ハサウェイが27%出資、炭素回収・貯留(CCS)技術のリーダーシップでCCS市場は2032年350億ドル・将来3兆~5兆ドルに成長見込み
- 事業内容と成長戦略: 石油・天然ガス開発(パーミアン盆地中心)、化学事業OxyChem、直接空気回収(DAC)施設STRATOS稼働(2025年半ば)、ペルミアン盆地の井戸コスト13%削減・掘削期間15%短縮
- 競合との差別化: ConocoPhillips・EOG Resources・Pioneer Natural Resourcesとの競争で、CCS技術のリーダーシップ、パーミアン盆地の規模、バフェット出資が差別化要因
- 財務・配当の実績: 2025年売上2%増予想・EPS18%減見通し、2022年2月に1,200%増配実施、2021年に67億ドル債務削減達成も2024年CrownRock買収120億ドルで負債再増加
- リスク要因: CrownRock買収120億ドルによる巨額負債、原油価格下落で過去12か月で株価40%下落(2024年17%減、2025年前半15%減)、OxyChem売却による収益源喪失(市場価値33億ドル蒸発)
1. なぜオクシデンタル・ペトロリアム(OXY)が注目されているのか
(1) 成長戦略の3つのポイント
オクシデンタル・ペトロリアムは、米国独立系石油大手として、以下3つの成長戦略を推進しています:
① 炭素回収・貯留(CCS)事業への積極投資
2025年半ばにSTRATOS施設が稼働開始予定です(初期25万トン/年、最終50万トンのCO2を回収)。CCS市場は2022年の60億ドルから2032年には350億ドル以上、将来的に3兆~5兆ドルの巨大市場に成長する見込みです。直接空気回収(DAC)技術は、大気中から直接CO2を回収する先進技術であり、OXYは世界的なリーダーシップを確立しています。
② 化学事業の拡張
OxyChem(化学部門)のメキシコ湾岸工場増強プロジェクトとBattleground工場の近代化・拡張が2025年と2026年半ばに完了予定です。生産量増加、物流効率化、コスト削減で利益率向上を目指しています。ただし、後述の通りOxyChem売却の懸念があります。
③ 生産能力の増強と債務削減
2025年Q3の生産量は142万~146万バレル/日を見込みます。CrownRock買収後に75億ドルの債務を返済し、総額40億ドル近い資産売却を発表して財務健全化を推進しています。
(2) 注目テーマ(直接空気回収DAC、ペルミアン盆地効率化、バフェット出資)
投資家が注目する主要テーマは以下の通りです:
- 直接空気回収(DAC)技術: STRATOS施設が2025年半ばに稼働開始。CCS市場は将来3兆~5兆ドルの巨大市場に成長見込み
- ペルミアン盆地の掘削効率化(井戸コスト13%削減、掘削期間15%短縮): テキサス・ニューメキシコにまたがる米国最大のシェールオイル産地で、掘削効率向上によりコスト競争力を強化
- 低炭素エネルギープラットフォームの構築: 石油・天然ガス生産と並行してCCS技術を推進し、低炭素エネルギー時代への移行をリード
(3) 投資家の関心・懸念点
関心点:
- バフェット氏率いるバークシャー・ハサウェイが大株主として買い増しを継続(27%出資)
- 2026年に自社株買い再開の可能性、2026-27年で43.5億ドルのフリーキャッシュフロー創出予想
- 年間収益成長率21.94%で業界平均6.3%を上回る見込み
- CCS市場は2022年の60億ドルから2032年には350億ドル以上に拡大見込み
懸念点:
- CrownRock買収(120億ドル)で負債が急増。原油価格下落により過去12か月で株価40%下落、2024年は17%減、2025年前半も15%減と低迷継続
- OxyChem売却による収益源喪失懸念。2026年までに大幅なキャッシュフロー増加が見込まれていた事業の売却により、市場価値33億ドル(7%)が蒸発
- 2025年のアナリスト予想は売上2%増、EPSは18%減で、原油価格の低迷が収益を圧迫
- 関税や貿易戦争の激化による操業コスト上昇が懸念材料
2. オクシデンタル・ペトロリアムの事業内容・成長戦略
(1) 主力事業(石油・天然ガス開発、化学事業OxyChem、CCS事業)
オクシデンタル・ペトロリアムは、以下3つの事業セグメントに経営資源を集中しています:
① 石油・天然ガス開発(主力事業)
パーミアン盆地(テキサス・ニューメキシコ)を中心に、カリフォルニア、メキシコ湾沖、オマーン、UAE、アルジェリアで事業展開しています。2025年Q3の生産量は142万~146万バレル/日を見込みます。井戸コスト13%削減、掘削期間15%短縮により、コスト競争力を強化しています。
② 化学事業(OxyChem)
メキシコ湾岸・Battleground工場の増強プロジェクトが2025-2026年に完了予定です。塩素、ソーダ灰、塩化ビニルなどの化学製品を生産しています。ただし、OxyChem売却の懸念があり(後述)、収益源喪失リスクに注意が必要です。
③ 炭素回収・貯留(CCS)事業
直接空気回収(DAC)技術でCO2を大気中から直接回収し、地下に貯蔵します。STRATOS施設が2025年半ばに稼働開始予定(初期25万トン/年、最終50万トンのCO2回収能力)。CCS市場は将来3兆~5兆ドルの巨大市場に成長する見込みです。
(2) セクター・業種の説明(エネルギー・石油ガス燃料)
オクシデンタル・ペトロリアムは、エネルギー(Energy)セクターの石油・ガス・燃料(Oil, Gas & Consumable Fuels)業種に属します。エネルギーセクターは原油・天然ガス価格の変動に大きく影響を受け、景気サイクル、地政学リスク、脱炭素政策の影響も受けやすい業種です。
(3) ビジネスモデルの特徴(レガシー資産重視、二次・三次回収)
オクシデンタル・ペトロリアムのビジネスモデルには、以下の特徴があります:
レガシー資産重視:
大規模で長寿命の「レガシー資産」を重視しています(カリフォルニア、パーミアン盆地など)。レガシー資産とは、既に開発済みで長期的な生産が見込める油田・ガス田のことです。新規開発よりも既存資産の二次・三次回収(Enhanced Oil Recovery: EOR)に注力し、生産効率を最大化しています。
二次・三次回収技術:
二次回収は水やガスを注入して油層圧力を維持し、三次回収は化学物質やCO2を注入して残留原油を回収する技術です。OXYは二次・三次回収の技術ノウハウと規模の経済を活用し、既存油田からの生産を最大化しています。
CCS技術と戦略的パートナーシップ:
世界の人為的CO2排出削減を推進するCCS技術開発で、戦略的パートナーシップを構築しています。2025年半ばにSTRATOS施設が稼働開始し、将来的にCCS事業が新たな収益源となる可能性があります。
※2025年10月時点のデータです。最新情報はOccidental Petroleum Corporation公式IRページをご確認ください。
(出典: Occidental Petroleum Corporation Q2 2025 Earnings Report, Investor Relations)
3. 競合との差別化
(1) 主要競合企業(ConocoPhillips、EOG Resources、Pioneer Natural Resources)
オクシデンタル・ペトロリアムの主要競合企業は以下の通りです:
- ConocoPhillips(COP): 米国独立系石油大手1位。グローバル展開で多角化
- EOG Resources(EOG): 米国独立系石油大手。シェールオイル生産に強み
- Pioneer Natural Resources(買収済): パーミアン盆地の最大手だったが、2024年にExxonMobilが買収
(2) 競合優位性(CCS技術のリーダーシップ、パーミアン盆地の規模)
オクシデンタル・ペトロリアムの競合優位性は以下の通りです:
CCS技術のリーダーシップ:
直接空気回収(DAC)技術で世界的なリーダーシップを確立しています。STRATOS施設が2025年半ばに稼働開始予定で、CCS市場は2032年350億ドル、将来3兆~5兆ドルの巨大市場に成長する見込みです。ConocoPhillipsやEOG Resourcesと比較しても、CCS技術での先行優位性を持ちます。
パーミアン盆地の規模:
2024年のCrownRock買収(120億ドル)により、パーミアン盆地での生産規模を大幅に拡大しました。井戸コスト13%削減、掘削期間15%短縮により、コスト競争力を強化しています。
バークシャー・ハサウェイの出資:
バフェット氏率いるバークシャー・ハサウェイが27%出資しており、大株主として買い増しを継続しています。バフェット氏の投資判断は、同社の長期的な価値を評価していると解釈されます。
(3) 市場でのポジショニング(米国独立系石油大手、バークシャー・ハサウェイ27%出資)
オクシデンタル・ペトロリアムは、米国独立系石油大手として、ConocoPhillipsに次ぐ地位を確立しています。パーミアン盆地での生産規模拡大とCCS技術のリーダーシップにより、差別化を図っています。バークシャー・ハサウェイの27%出資は、投資家の信頼性を高める要因となっています。
4. 財務・配当の実績
(1) 売上高・利益の推移(2025年売上2%増予想、EPS18%減見通し)
2025年のアナリスト予想は以下の通りです:
| 項目 | 金額・成長率 | 備考 |
|---|---|---|
| 2025年売上成長率 | +2% | 原油価格低迷により小幅成長 |
| 2025年EPS | -18%減 | 原油価格下落が収益を圧迫 |
| 2025年Q2 EPS | $0.39 | 予想$0.28を39.3%上回るも前年比62.1%減 |
| 2025年Q1 EPS | $0.87 | 予想$0.69を上回る |
| 2025年Q1売上 | 68.4億ドル | 予想67.1億ドルを上回る |
過去12か月で株価40%下落、2024年は17%減、2025年前半も15%減と低迷が継続しています。原油価格の低迷が主因です。
※2025年10月時点のデータです。最新情報はOccidental Petroleum Corporation公式IRページをご確認ください。
(出典: Occidental Petroleum Corporation Q1-Q2 2025 Earnings Reports, Investor Relations)
(2) 配当履歴(2022年2月に1,200%増配、2021年に67億ドル債務削減)
オクシデンタル・ペトロリアムは、2022年2月に1,200%増配という驚異的な増配を実施しました。2021年には過去最高のフリーキャッシュフロー(FCF)を創出し、67億ドルの債務削減を達成しました。配当利回りは株価と原油価格により変動しますが、2025年時点で約2-3%程度です(株価により変動)。
ただし、2024年のCrownRock買収(120億ドル)により負債が再増加しており、原油価格低迷により配当の持続性に注意が必要です。
(3) 財務健全性(CrownRock買収120億ドルで負債増、75億ドル債務返済)
2024年のCrownRock買収(120億ドル)により負債が急増しました。買収後に75億ドルの債務を返済し、総額40億ドル近い資産売却を発表して財務健全化を推進しています。2026年に自社株買い再開の可能性があり、2026-27年で43.5億ドルのフリーキャッシュフロー創出が予想されています。
ただし、OxyChem売却による収益源喪失懸念があり(市場価値33億ドル蒸発)、原油価格下落により債務返済が困難になるリスクがあります。
5. リスク要因
(1) 事業リスク(巨額負債と原油価格下落、過去12か月で株価40%下落)
CrownRock買収(120億ドル)で負債が急増しました。原油価格下落により過去12か月で株価40%下落、2024年は17%減、2025年前半も15%減と低迷が継続しています。2025年のアナリスト予想は売上2%増、EPSは18%減で、原油価格の低迷が収益を圧迫しています。
原油価格が長期的に低迷すると、債務返済が困難になり、配当削減や自社株買い中止のリスクがあります。
(2) 市場環境リスク(OxyChem売却による収益源喪失、市場価値33億ドル蒸発)
OxyChem売却による収益源喪失懸念があります。2026年までに大幅なキャッシュフロー増加が見込まれていた事業の売却により、市場価値33億ドル(7%)が蒸発しました。化学事業は石油・天然ガス開発とは異なる収益源であり、その喪失は事業ポートフォリオの多角化を損なう可能性があります。
為替レートの変動により、円建てでの投資収益が大きく変動する可能性もあります。
(3) 規制・競争リスク(関税・貿易戦争による操業コスト上昇、CCS技術リスク)
関税や貿易戦争の激化による操業コスト上昇が懸念材料です。米国の関税政策が変更されると、輸入設備・部品のコストが上昇し、利益率が圧迫されるリスクがあります。
また、CCS事業は新興市場であり、技術的・規制的リスクが存在します。DAC技術は実用化段階であり、大規模展開には技術的課題、規制認可、経済性の確保が必要です。CCS市場が期待通りに成長しない場合、投資回収が困難になるリスクがあります。
6. まとめ:投資判断のポイント
(1) この銘柄の強み(CCS技術、パーミアン盆地、バフェット出資)
オクシデンタル・ペトロリアムの主な強みは以下の通りです:
- CCS技術: 直接空気回収(DAC)技術で世界的リーダーシップ。CCS市場は2032年350億ドル、将来3兆~5兆ドルに成長見込み
- パーミアン盆地: CrownRock買収により生産規模拡大。井戸コスト13%削減、掘削期間15%短縮
- バフェット出資: バークシャー・ハサウェイが27%出資、大株主として買い増し継続
(2) リスク要因(再掲:巨額負債、原油価格依存、OxyChem売却)
主なリスク要因は以下の通りです:
- 巨額負債: CrownRock買収120億ドルで負債急増。原油価格下落により債務返済が困難
- 原油価格依存: 原油価格下落で過去12か月で株価40%下落(2024年17%減、2025年前半15%減)
(3) 向いている投資家(原油価格上昇期待、長期CCS市場成長信奉、バフェット追随)
オクシデンタル・ペトロリアムは、以下のような投資家に向いています:
- 原油価格上昇期待の投資家: 原油価格が上昇局面に入ると、収益・株価が大きく回復する可能性
- 長期CCS市場成長信奉の投資家: CCS市場の長期成長(2032年350億ドル、将来3兆~5兆ドル)を信じる投資家
- バフェット追随の投資家: バフェット氏の投資判断を追随し、長期的な価値創造を期待する投資家
一方、以下のような投資家には不向きです:
- 低リスク志向の投資家: 巨額負債と原油価格変動リスクが大きい
- 短期的な業績改善を期待する投資家: 原油価格低迷により2025年EPS18%減見通し
- 脱炭素政策を重視する投資家: 石油・天然ガス開発が主力事業であり、脱炭素トレンドに逆行
免責事項: 本記事は情報提供を目的としており、個別銘柄の推奨ではありません。投資判断はご自身の責任で行ってください。最新の財務データ・市場動向は、Occidental Petroleum Corporation公式IRページ、SEC EDGAR、各種金融情報サービスでご確認ください。
Q: オクシデンタル・ペトロリアムの配当利回りは?
A: 2025年時点で約2-3%程度です(株価と原油価格により変動)。2022年2月に1,200%増配という驚異的な増配を実施しましたが、2024年のCrownRock買収(120億ドル)により負債が再増加しており、原油価格低迷により配当の持続性に注意が必要です。2021年には過去最高のフリーキャッシュフロー(FCF)を創出し67億ドルの債務削減を達成しましたが、現在は原油価格下落の影響を受けています。詳細は財務・配当の実績セクションを参照してください。
Q: オクシデンタル・ペトロリアムの主な競合は?
A: ConocoPhillips(COP、米国独立系石油大手1位)、EOG Resources(EOG、米国独立系石油大手)などの米国独立系石油会社です。OXYは炭素回収・貯留(CCS)技術のリーダーシップとバークシャー・ハサウェイ27%出資が特徴です。直接空気回収(DAC)技術でSTRATOS施設が2025年半ばに稼働開始予定(初期25万トン/年、最終50万トンのCO2回収能力)。
Q: オクシデンタル・ペトロリアムのリスク要因は?
A: 主なリスク要因は以下の通りです:
- CrownRock買収120億ドルによる巨額負債: 原油価格下落により債務返済が困難
- 原油価格下落: 過去12か月で株価40%下落、2024年17%減、2025年前半15%減と低迷継続
- OxyChem売却による収益源喪失: 市場価値33億ドル(7%)が蒸発。2026年までに大幅なキャッシュフロー増加が見込まれていた事業の喪失
- 2025年EPS18%減見通し: 原油価格低迷により収益を圧迫
詳細はリスク要因セクションを参照してください。
Q: オクシデンタル・ペトロリアムは長期投資に向いている?
A: 原油価格上昇期待とCCS市場の長期成長(2032年350億ドル、将来3兆~5兆ドル)を信じ、バフェット氏の投資判断を追随したい投資家に向いています。バークシャー・ハサウェイが27%出資し、大株主として買い増しを継続しています。直接空気回収(DAC)技術でSTRATOS施設が2025年半ばに稼働開始予定です。ただし巨額負債(CrownRock買収120億ドル)と原油価格変動リスクを許容する必要があります。2025年EPS18%減見通しであり、短期的な業績改善は期待できません。投資判断はご自身の責任で行ってください。
