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アメリカン・ウォーター・ワークス (AWK)

American Water Works

0. この記事でわかること

本記事では、アメリカン・ウォーター・ワークス(AWK)について以下の情報を提供します:

  • なぜ注目されているのか: 積極的な買収戦略(2025年に約87,000件の顧客接続を買収契約済み)、レートベース年8-9%成長、規制面での実績(2.7億ドルの新規収益権限を確保)
  • 事業内容と成長戦略: 米国最大の規制対象上下水道公益事業会社として、約1400万人に水道サービスを提供(14州)
  • 競合との差別化: 各地域の自治体営水道・民間水道会社との違い、米国最大規模と買収統合力、ドミナント企業としての参入障壁
  • 財務・配当の実績: 2024年通期EPS 5.39ドル(8%成長)、2025年に8.2%増配(年間3.31ドル)、過去5年平均8.51%増配
  • リスク要因: 高水準の負債(高ROE依存)、割高なバリュエーション(PER 26.1倍)、規制承認タイムラインの遅延リスク

アメリカン・ウォーター・ワークスは、1886年創業の水道公益事業会社です。米国最大の民間上下水道会社として、約1400万人に水道サービスを提供しています。公益事業は規制産業で、州の公益事業委員会が料金を承認する仕組みです。水道は生活必需インフラで需要が極めて安定しており、電力・ガスと異なり代替手段がありません。配当貴族候補(連続増配10年超)で、配当利回り2.37%、過去5年平均8.51%の増配を実現しています。

1. なぜアメリカン・ウォーター・ワークス(AWK)が注目されているのか

(1) 成長戦略の3つのポイント

アメリカン・ウォーター・ワークスは、3つの成長戦略で注目を集めています。第一は、積極的な買収戦略です。2025年に約87,000件の顧客接続を買収契約済み(総額5.35億ドル)で、うちNexus Water Groupシステムにより8州60システムで約46,600件の顧客接続を追加します。2024年には約69,500件の顧客接続を買収で獲得しました。米国の水処理ビジネスは細分化されており、小規模水道システムを買収して統合する余地が大きいです。カリフォルニア、イリノイ、インディアナ、アイオワ、メリーランド、ミズーリ等の複数州で小規模水道システムを積極的に買収しています。

第二は、レートベース成長です。規制対象レートベース(州の公益事業委員会が料金設定の基礎とする資産額)を年8~9%成長させる計画で、2025~2029年に170~180億ドル、2025~2034年に400~420億ドルの設備投資を計画しています。レートベースが成長すれば、料金収入も増加するため、長期的な収益成長が見込めます。2025年の設備投資33億ドルのうち上半期で既に40%(13億ドル)を実行しており、投資計画は順調に進んでいます。

第三は、規制面での実績です。2025年1月以降、2.7億ドルの新規収益権限を確保しました(一般料金ケースで2.32億ドル、インフラ投資で0.38億ドル)。ミズーリ州で年間6,300万ドルの増収決定、バージニア州で年間1,500万ドル(ROE 9.7%)を確保しています。料金値上げの承認を着実に獲得しており、規制当局との良好な関係を築いています。

(2) 注目テーマ(インフラ老朽化対策・買収統合・レートベース成長)

投資家が注目しているテーマは、「インフラ老朽化対策・設備投資」「水質改善・レジリエンス強化」「買収統合・顧客基盤拡大」の3つです。

インフラ老朽化対策は、米国水道業界全体の課題です。米国の水道管の多くは数十年前に敷設されたもので、老朽化により漏水や水質低下のリスクがあります。アメリカン・ウォーター・ワークスは、2024年に33億ドルを老朽インフラ対策、水質改善、レジリエンス強化、戦略的買収に投資しました。老朽化した水道管の更新投資(インフラ投資)は、料金収入の増加につながるため、長期成長の原動力となっています。

買収統合も重要なテーマです。米国の水処理ビジネスは細分化されており、小規模な自治体営水道や民間水道会社が多数存在します。これらの小規模事業者は、設備投資や水質管理に課題を抱えており、大手への統合ニーズが高まっています。アメリカン・ウォーター・ワークスは、米国最大の民間上下水道会社として、規模の経済と技術力を活かして小規模システムを買収・統合しています。2024年には約90,000件の顧客接続を追加(69,500件は買収)しました。

レートベース成長も投資家の関心を集めています。公益事業の収益基盤であるレートベースを年8~9%成長させることで、長期的な収益成長を実現しています。レートベースが成長すれば、州の公益事業委員会が承認する料金収入も増加するため、安定的な成長が見込めます。

(3) 投資家の関心・懸念点

投資家の関心は、配当貴族候補としての実績と生活必需インフラの安定性に集中しています。過去5年平均8.51%の増配を実現しており、配当性向56.23%(目標範囲55~60%内)で成長と還元のバランスが取れています。2025年に8.2%増配(年間3.31ドル)を実施し、長期的に年7~9%の配当成長を継続する目標を再確認しています。水道は生活必需インフラで需要が極めて安定しており、景気に左右されにくいディフェンシブ性が魅力です。

アナリスト評価は分かれています。アナリスト5名の平均目標株価は150.25ドル(最高160.00ドル、最低141.00ドル)で、コンセンサス評価は「ホールド」です。6名中3名が買い、3名が売り推奨で「中立」評価となっています。みんかぶ株価目標は138.37ドルで「買い」評価ですが、AI株価診断は「割高」としています。

一方で、懸念点も存在します。高水準の負債が投資家の懸念材料となっており、控えめなリターンと高い負債レベルが財務リスクの増大と将来の成長施策への影響を懸念させています。株主資本利益率(ROE)が高い負債依存に大きく依存している点も指摘されています。また、PER 26.1倍は同業他社比で割高で、株価が適正価値推定を上回るプレミアム評価となっています。

2025年第2四半期決算ではEPS 1.48ドル(前年比4.2%増)を記録しましたが、予想1.51ドルを下回りました。天候影響(第2四半期に1株当たり0.06ドルのマイナス影響)や規制承認タイムラインが短期キャッシュフローに影響する可能性も懸念されています。

2. アメリカン・ウォーター・ワークスの事業内容・成長戦略

(1) 主力事業(規制対象上下水道事業)

アメリカン・ウォーター・ワークスの主力事業は、規制対象上下水道事業です。米国最大の民間上下水道会社として、約1400万人に水道サービスを提供しています。サービスエリアは14州(ニュージャージー、ペンシルベニア等)で、住宅用・商業用・工業用・公共機関用に展開しています。

事業内容は、上水道(浄水・配水)と下水道(汚水処理)の両方を含みます。取水した原水を浄水場で処理し、各家庭・企業に配水します。下水道事業では、汚水を回収し、下水処理場で処理して河川に放流します。水道は生活必需インフラで、24時間365日の安定供給が求められます。

公益事業は規制産業で、州の公益事業委員会が料金を承認する仕組みです。料金設定は、レートベース(規制当局が料金設定の基礎とする資産額)に基づいて行われます。設備投資を実施してレートベースが増加すれば、料金収入も増加するため、長期的な収益成長が見込めます。

(2) セクター・業種の説明(Utilities - Water Utilities)

アメリカン・ウォーター・ワークスが属するセクターは「Utilities(公益事業)」、業種は「Water Utilities(水道公益事業)」です。公益事業セクターは、電力、ガス、水道などの生活必需インフラを提供する企業群で、ディフェンシブな特性を持ちます。

水道公益事業は、電力・ガスと比較して以下の特徴があります。第一に、代替手段がないため需要が極めて安定しています。電力は太陽光発電、ガスは電気への切り替えなどの代替手段がありますが、水道には代替手段がありません。第二に、規制が比較的緩やかで、料金値上げが通りやすい傾向があります。電力・ガスは政治的に敏感な料金値上げ承認が困難な場合がありますが、水道は生活必需性が高く、料金値上げの必要性が理解されやすいです。

一方で、水道公益事業はインフラ投資負担が大きいという課題があります。老朽化した水道管の更新には多額の設備投資が必要で、負債水準が高まるリスクがあります。また、天候影響を受けやすく、降雨量が多い年は水道使用量が減少するため、業績に影響します。

(3) ビジネスモデルの特徴(ドミナント企業・規制料金体系)

アメリカン・ウォーター・ワークスのビジネスモデルの最大の特徴は、「ドミナント企業」としての地位です。州政府が新規参入を制限しているため、各地域で支配的立場(エリア支配的立場・参入障壁)を持ちます。水道事業は自然独占の性質が強く、同一地域に複数の水道事業者が競合することは効率的ではありません。そのため、州政府が特定の事業者にサービスエリアを割り当て、独占的に事業を展開する仕組みとなっています。

規制料金体系も重要なビジネスモデルの特徴です。州の公益事業委員会が料金を承認する仕組みで、設備投資を実施してレートベースが増加すれば、料金収入も増加します。料金設定は、レートベースに一定の利益率(ROE)を乗じた額を収益として認める方式です。例えば、バージニア州で年間1,500万ドルの増収決定(ROE 9.7%)を確保したように、州ごとに利益率が設定されています。

買収統合による成長モデルも特徴的です。米国の水処理ビジネスは細分化されており、小規模水道システムを買収して統合する余地が大きいです。小規模事業者は、設備投資や水質管理に課題を抱えており、大手への統合ニーズが高まっています。アメリカン・ウォーター・ワークスは、米国最大の民間上下水道会社として、規模の経済と技術力を活かして小規模システムを買収・統合し、顧客基盤を拡大しています。

3. 競合との差別化

(1) 主要競合企業(各地域の自治体営水道、民間水道会社)

アメリカン・ウォーター・ワークスの競合は、各地域の自治体営水道(公営)と一部の民間水道会社です。

自治体営水道は、多くの地域で水道事業を運営しており、全米の水道事業の大部分を占めます。自治体営水道は、公営であるため利益追求の必要がなく、料金を低く抑えることができます。一方で、設備投資や水質管理に課題を抱えており、老朽化したインフラの更新が遅れているケースが多いです。近年、財政難に陥った自治体が、水道事業を民間に売却するケースが増えています。

民間水道会社では、California Water Service Group、Essential Utilities、SJW Groupなどが主要競合です。これらの企業も、各地域で上下水道事業を運営していますが、規模ではアメリカン・ウォーター・ワークスが圧倒的です。

(2) 競合優位性(米国最大規模、参入障壁、買収統合力)

アメリカン・ウォーター・ワークスの最大の競合優位性は、米国最大規模の民間上下水道会社であることです。約1400万人にサービスを提供し、14州で事業を展開しています。規模の経済により、設備投資や運営コストを効率化でき、小規模事業者より高い収益性を実現しています。

参入障壁も競合優位性です。州政府が新規参入を制限しているため、ドミナント企業として各地域で支配的立場を持ちます。水道事業は自然独占の性質が強く、同一地域に複数の水道事業者が競合することは効率的ではありません。そのため、既存事業者は安定的に事業を展開できます。

買収統合力も重要な優位性です。米国の水処理ビジネスは細分化されており、小規模水道システムを買収して統合する余地が大きいです。アメリカン・ウォーター・ワークスは、豊富な資金力と買収実績を活かし、小規模システムを積極的に買収・統合しています。2025年に約87,000件の顧客接続を買収契約済み(総額5.35億ドル)で、2024年には約69,500件の顧客接続を買収で獲得しました。買収後は、規模の経済と技術力を活かして効率化を図り、収益性を向上させています。

(3) 市場でのポジショニング(北米最大の民間上下水道会社)

アメリカン・ウォーター・ワークスは、北米最大の民間上下水道会社として確固たる地位を築いています。約1400万人にサービスを提供し、14州で事業を展開しています。時価総額は279.7億ドル(2025年3月時点)で、公益事業セクター内では中堅規模です。

水道公益事業市場では、自治体営水道が大部分を占めますが、民間水道会社の中ではアメリカン・ウォーター・ワークスが圧倒的なシェアを持ちます。近年、財政難に陥った自治体が、水道事業を民間に売却するケースが増えており、民間水道会社の市場シェアは拡大傾向にあります。

配当貴族候補として、配当収入を重視する投資家に注目されています。過去5年平均8.51%の増配を実現しており、配当性向56.23%で成長と還元のバランスが取れています。公益事業セクターの中でも、水道公益事業は需要が極めて安定しており、ディフェンシブな投資先として評価されています。

4. 財務・配当の実績

(1) 売上高・利益の推移(2024年通期実績、2025年ガイダンス)

2024年通期(2024年1月-12月期)の業績は以下の通りです(2025年1月発表):

  • EPS: 5.39ドル(前年比8%成長)
  • 設備投資: 30億ドル超(老朽インフラ対策、水質改善、レジリエンス強化、戦略的買収)
  • 顧客接続追加: 約70,000件(うち69,500件は買収)

2025年第2四半期(2025年4月-6月期)の業績:

  • EPS: 1.48ドル(前年比4.2%増、予想1.51ドルを下回る)
  • 売上高: 12.8億ドル(予想を5.79%上回る)
  • 規制事業の純利益: 2.88億ドル(前年比5.1%増)
  • 年初来EPS: 9.4%増(天候正規化ベース)

2025年のガイダンス:

  • EPS: 5.70~5.75ドル(8.6%成長見込み)
  • 長期目標: 年7~9%のEPS・配当成長
  • 設備投資: 33億ドル(2025年)、2025~2029年で170~180億ドル、2025~2034年で400~420億ドル
  • レートベース成長: 年8~9%

過去5年のEPS推移(単位:ドル):

会計年度 EPS 成長率
2020年度 4.11 5%
2021年度 4.31 5%
2022年度 4.50 4%
2023年度 5.00 11%
2024年度 5.39 8%

(出典: American Water Investor Relations, 2024年通期決算発表)

EPSは安定的に成長しており、年7~9%の成長目標を達成しています。2025年の設備投資33億ドルのうち上半期で既に40%(13億ドル)を実行しており、投資計画は順調に進んでいます。

(2) 配当履歴(年間3.31ドル、過去5年平均8.51%増配、配当性向56.23%)

アメリカン・ウォーター・ワークスは、株主還元に積極的な企業です。配当履歴は以下の通りです:

  • 年間配当: 3.31ドル(2025年時点、四半期ごとに0.8275ドル)
  • 配当利回り: 2.37%(株価約140ドル時点)
  • 連続増配年数: 10年超(配当貴族候補)
  • 配当性向: 56.23%(目標範囲55~60%内)
  • 過去5年平均増配率: 8.51%

2025年に8.2%増配を実施し、長期的に年7~9%の配当成長を継続する目標を再確認しています。配当性向56.23%は、利益の半分以上を株主還元に充てていることを示しており、成長投資と還元のバランスが取れています。

過去5年の配当推移:

会計年度 年間配当(ドル) 増配率
2020年度 2.10 10%
2021年度 2.32 10%
2022年度 2.60 12%
2023年度 2.84 9%
2024年度 3.06 8%
2025年度 3.31 8.2%

(出典: Dividend.com - AWK Dividend History)

※2025年10月時点のデータです。最新情報はAmerican Water公式IRページをご確認ください。

(3) 財務健全性(レートベース年8-9%成長、170-180億ドル投資計画)

アメリカン・ウォーター・ワークスの財務健全性は以下の通りです:

  • レートベース成長: 年8~9%(規制対象レートベースを拡大)
  • 設備投資計画: 2025~2029年で170~180億ドル、2025~2034年で400~420億ドル
  • PER: 25.68倍(2025年3月時点)
  • 時価総額: 279.7億ドル(2025年3月時点)
  • ROE: 高い負債依存に大きく依存(リスク要因)

レートベース成長は、公益事業の収益基盤を拡大する重要な指標です。年8~9%の成長により、長期的な収益成長が見込めます。設備投資計画も順調で、2025年の設備投資33億ドルのうち上半期で既に40%(13億ドル)を実行しています。

一方で、高水準の負債が財務上の懸念材料です。控えめなリターンと高い負債レベルが財務リスクの増大と将来の成長施策への影響を懸念させています。株主資本利益率(ROE)が高い負債依存に大きく依存している点も指摘されています。PER 25.68倍は公益事業セクターとしては割高で、株価が適正価値推定を上回るプレミアム評価となっています。

5. リスク要因

(1) 事業リスク(高水準の負債、天候影響、規制承認タイムライン)

アメリカン・ウォーター・ワークスの最大の事業リスクは、高水準の負債です。控えめなリターンと高い負債レベルが投資家の懸念を高め、財務リスクの増大と将来の成長施策への影響が心配されています。株主資本利益率(ROE)が高い負債依存に大きく依存しており、金利上昇局面では利息負担が増加し、収益性が悪化するリスクがあります。

天候影響も重要なリスクです。降雨量が多い年は水道使用量が減少するため、業績に影響します。2025年第2四半期には、天候影響により1株当たり0.06ドルのマイナス影響を受けました。水道は生活必需インフラですが、庭の散水や洗車などの用途では天候の影響を受けやすく、短期的な業績変動のリスクがあります。

規制承認タイムラインの遅延リスクも懸念されています。料金値上げや設備投資は、州の公益事業委員会の承認が必要であり、承認が遅れた場合、短期キャッシュフローに影響する可能性があります。規制当局との良好な関係を維持することが重要ですが、政治的な要因により承認が遅れるリスクもあります。

(2) 市場環境リスク(金利上昇、為替変動、割高なバリュエーション)

公益事業セクターは、金利上昇局面で株価が下落しやすい特性があります。高配当株全般の特徴として、金利が上昇すると債券との相対的な魅力が低下し、株価が下落します。また、公益事業は設備投資に多額の資金を要するため、金利上昇により調達コストが増加し、収益性が悪化するリスクがあります。

為替リスクも重要です。米国株投資では、為替レートの変動により円ベースのリターンが変動します。円高局面では、ドル建て株価が上昇しても円ベースでは損失が出る可能性があります。米国株投資では為替リスクを常に意識する必要があります。

割高なバリュエーションもリスク要因です。PER 26.1倍は同業他社比で割高で、株価が適正価値推定を上回るプレミアム評価となっています。アナリスト評価も6名中3名が買い、3名が売り推奨で「中立」評価であり、株価上昇余地は限定的との見方もあります。AI株価診断は「割高」としており、短期的な株価調整のリスクがあります。

(3) 規制・競争リスク(料金値上げ承認遅延、自治体営水道との競争)

規制産業であるため、料金値上げ承認の遅延リスクがあります。州の公益事業委員会が料金を承認する仕組みで、承認が遅れた場合、収益計画に影響します。政治的な要因により、料金値上げが認められないケースもあり、規制当局との良好な関係維持が重要です。

自治体営水道との競争もリスクです。多くの地域で水道事業は自治体営で運営されており、公営であるため利益追求の必要がなく、料金を低く抑えることができます。民間水道会社は、自治体営水道より高い料金を設定せざるを得ないケースがあり、料金競争力で劣る可能性があります。

水質管理の失敗リスクも懸念されています。水道事業では、水質基準を満たすことが絶対条件であり、水質管理の失敗は企業の信用を大きく損ないます。設備投資や運営管理を適切に行わなければ、水質問題が発生し、顧客離れや規制当局からの処分を受けるリスクがあります。

6. まとめ:投資判断のポイント

(1) この銘柄の強み(生活必需インフラ、配当貴族候補、買収成長モデル)

アメリカン・ウォーター・ワークスの強みは、以下の3点です:

  1. 生活必需インフラの安定性: 水道は生活必需インフラで需要が極めて安定しており、景気に左右されにくいディフェンシブ性を持つ。電力・ガスと異なり代替手段がなく、需要が安定している。
  2. 配当貴族候補: 過去5年平均8.51%の増配を実現しており、配当性向56.23%で成長と還元のバランスが取れている。2025年に8.2%増配を実施し、長期的に年7~9%の配当成長を継続。
  3. 買収成長モデル: 米国の水処理ビジネスは細分化されており、小規模水道システムを買収して統合する余地が大きい。2025年に約87,000件の顧客接続を買収契約済み(総額5.35億ドル)。

(2) リスク要因(再掲)(高負債水準、割高評価)

一方で、以下のリスク要因に注意が必要です:

  1. 高水準の負債: 控えめなリターンと高い負債レベルが財務リスクの増大と将来の成長施策への影響を懸念させる。株主資本利益率(ROE)が高い負債依存に大きく依存。
  2. 割高なバリュエーション: PER 26.1倍は同業他社比で割高。株価が適正価値推定を上回るプレミアム評価で、短期的な株価調整のリスクがある。
  3. 規制承認タイムラインの遅延: 料金値上げや設備投資は州の公益事業委員会の承認が必要で、承認が遅れた場合、短期キャッシュフローに影響する可能性がある。

(3) 向いている投資家(配当収入重視、ディフェンシブ銘柄志向)

アメリカン・ウォーター・ワークスは、以下のような投資家に向いています:

  1. 配当収入を重視する投資家: 過去5年平均8.51%の増配を実現しており、配当性向56.23%で安定した配当成長が期待できる。配当利回り2.37%と株価上昇を合わせたトータルリターンを狙う投資家に適している。
  2. 景気変動の影響を受けにくいディフェンシブ銘柄を求める投資家: 水道は生活必需インフラで需要が極めて安定しており、景気に左右されにくい。安定的な収益基盤を持つ企業を求める投資家に向いている。
  3. 公益事業セクターの長期成長に期待する投資家: 老朽化インフラ更新需要が長期成長の原動力となっており、2025~2034年で400~420億ドルの設備投資を計画している。レートベース年8~9%成長により、長期的な収益成長が見込める。

一方で、以下のような投資家には向いていない可能性があります:

  1. 低負債・財務健全性を重視する投資家: 高水準の負債が財務リスクの増大を懸念させており、財務健全性を重視する投資家には向いていない。
  2. 割安株を求める投資家: PER 26.1倍は同業他社比で割高で、AI株価診断は「割高」としている。割安株を求める投資家には向いていない。

※本記事は情報提供を目的としており、個別銘柄の推奨ではありません。投資判断は自己責任で行ってください。最新情報はAmerican Water公式IRページをご確認ください。

よくある質問

Q1アメリカン・ウォーター・ワークスの配当利回りは?

A12.37%程度です(2025年時点、年間3.31ドル)。過去5年平均8.51%の増配を実現しており、配当性向56.23%(目標範囲55~60%内)で安定した配当成長が期待できます。2025年に8.2%増配を実施し、長期的に年7~9%の配当成長を継続する目標を再確認しています。配当貴族候補として、配当収入を重視する投資家に注目されています。

Q2アメリカン・ウォーター・ワークスの主な競合は?

A2各地域の自治体営水道(公営)と一部の民間水道会社(California Water Service Group、Essential Utilities、SJW Group等)が競合です。AWKは米国最大の民間上下水道会社として、約1400万人にサービスを提供し、規模の経済と買収統合力で差別化しています。2025年に約87,000件の顧客接続を買収契約済みで、買収による成長を継続しています。

Q3アメリカン・ウォーター・ワークスのリスク要因は?

A3高水準の負債(高ROE依存)、割高なバリュエーション(PER 26.1倍)、天候影響による業績変動(2025年第2四半期に1株当たり0.06ドルのマイナス影響)、規制承認タイムラインの遅延リスクなどがあります。控えめなリターンと高い負債レベルが財務リスクの増大と将来の成長施策への影響を懸念させています。詳細は本文の「リスク要因」セクションを参照してください。

Q4アメリカン・ウォーター・ワークスは長期投資に向いている?

A4配当収入を重視する投資家、景気変動の影響を受けにくいディフェンシブ銘柄を求める投資家に向いています。水道は生活必需インフラで需要が極めて安定しており、老朽化インフラ更新が長期成長を支えます。一方で、高水準の負債と割高なバリュエーション(PER 26.1倍)が懸念材料です。投資判断はご自身で慎重に行ってください。

Q5アメリカン・ウォーター・ワークスと電力・ガス株の違いは?

A5水道は代替手段がないため電力・ガスより需要が安定しています。電力は太陽光発電、ガスは電気への切り替えなどの代替手段がありますが、水道には代替手段がありません。また、電力・ガスより規制が緩やかで、料金値上げが通りやすい傾向があります。生活必需性が高く、料金値上げの必要性が理解されやすいため、長期的な収益成長が見込めます。